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【完結】百合なペットと二人暮らし  作者: くもくも
3章 いちゃラブ生活
16/17

16. 不安定な気持ち

「長崎だったら、まずはチャンポンとカステラかあ。うん、悪くないね。オススメのお店に連れて行ってよねキナコ」


「うん、それはいいんだけど、まだ年末まで何ヵ月もありますからね? ちょっと気が早いんじゃないかな」


 ある日の夜。私はお風呂場でキナコの髪を丁寧にシャンプーしてあげつつ、遠い長崎、キナコのふるさとに思いを馳せていた。


 もう少し日程が近づいたら、着ていく服とか手土産とか、色々考えないとなあ。


「ちなみにつばめちゃん、うちの実家は、長崎県の中でもちょっと北の方の、佐世保ってとこなんです。大きな米軍基地とかがあって、ハンバーガーが名物なんですよ」


 佐世……保? なんか、聞いたことあるような無いような。


「へえ、佐世保ねえ。今度色々調べてみるよ」


 キナコの髪をシャワーで流しながら、私はいまいちぼんやりしていた。


「あ、それならつばめちゃん、佐世保の街は私にいっぱい案内させて下さい。あんまり先に調べるのはダメだよ」


 キナコはまだ泡の残った髪で、いたずらっぽく笑った。

 泡をきれいに洗い流してあげると、最近少し髪が伸びたのか、付け根の方がキナコ色ではなくなってきているのが目立つ。


「あれ、キナコ。そろそろ美容室行った方がいいかもよ? きちんと染め直さないと、お仕事に影響あるんじゃない?」


 何せ、売れていないとはいえ、一応プロのモデルさんだもんね。


 私に言われてキナコは、お風呂場の鏡で自分の髪の根元を見ようと四苦八苦している。


「うーん、よく見えないですけど、つばめちゃんがそう言うなら。じゃあ、次はどんな色に染めてみようかなあ」


 は?

 私は唖然とした。


「いやいやいや……キナコはかわいいから、どんな色に染めても、そりゃかわいいよ、かわいいしかないよ。でもね、あくまでも私の個人的な希望だけどね、今のきな粉色のまんまの方が、やっぱりキナコっぽいっていうか、一番かなあって」


 もしピンクやら青やらの奇抜な色に染められてしまったら、私が撫で撫でタイムになんだか落ち着かないじゃないか!


 キナコは慌てた様子の私を見て、久しぶりに猫のように目を細めている。


「……ふーん、やっぱりこの色じゃなきゃだめなんですね。なーるほど、つばめちゃんって結構、相手に自分の好みを押し付けるんだあ。まあ、そりゃそうですよね。だって女の子をペットにするような人ですもんね」


 ……なーんか、嫌な言い方。


「べ、別にそういうんじゃないよ。私の好みをちょっと言ってみただけだし。キナコの髪なんだから、キナコが勝手に好きな色に染めたらいいじゃん」


 あ……なんか、私も嫌な言い方しちゃったな……。


 しまった、と思っていると、キナコは急に裸のまま立ち上がって、こちらを睨み付けてきた。

 ちょうど中腰になっていた私の目の前にキナコのプリティーなお胸がドンと現れる。

 初めて見る、キナコの威嚇のポーズ!


「だったら、明日ピンクに染めてきますからね! ……つばめちゃんが私を、まだ猫みたいに思ってるのか、ちゃんと恋人だと思ってるのか、よくわからないよ! ていうか、こんな時までおっぱいばっかり見ないで下さい!」


 あ……そういうことか。

 私が昔の猫のキナコと同じ色にして欲しくて、きな粉色にこだわってると思われちゃったんだな。

 ちょっとした嫉妬っていうか、未だにペット扱いっていうか、そういうので嫌な気分にさせちゃったのかな。


 ていうか、そのおっぱいはむしろ、キナコが見せつけてきたんじゃないか。


 キナコはプリプリしながらお風呂場を出て行った。

 髪から跳ねた雫が、私の顔にかかる。


 ……でも、私の言い方が悪かったにしても、ちょっと怒りの沸点が低くない? 

 なんか、ムカつくな。




 と、思った私の怒りは、わずか三分しか続かなかった。

 キナコがロフトに逃げ込んだのを見て、あれ、これはもしかして、今日はもうイチャイチャ無しなの? と寂しさが押し寄せてきたのだ。


 よくよく思えば、キナコと険悪なムードになったのなんて、最初に出会った日以来かも。

 二人のケンカ記念日だと思えば、ちょっとこんな出来事も愛おしく感じるな。


 私はそのまま何も言わずキッチンに向かい、棚からホットケーキミックスを取り出した。




「う、うまあ! ずるいですよつばめちゃん! わたし怒ってたのに! クッキーの匂いはずるい!」


 手際よくホットケーキミックスで作ったクッキーは、全てハート型にしておいた。

 私からの、愛の証だからね。


 オーブンでお菓子を焼く匂いは、部屋中にただようから、やっぱりキナコはそれに耐えることはできなかったみたいだ。


 結局、ペットは食べ物で釣るのが一番だな。


 そして、ここから一気に流れを掴む!


 私はにっこりと笑ったまま席をたち、まんまとトラップにかかってクッキーを貪っているキナコの腕をつかむと、そのまま床に押し倒した。




「はあ、はあ……。ず……ずるいよ、つばめちゃん……。こんなの、もう怒れないじゃん……」


 私からのいわゆる、夜のお仕置き、によって、キナコは裸のまま息も絶え絶えになった。

 飼い主の大勝利である。


 いや、ちょっとしたケンカがある意味スパイスになって、逆にちょっと盛り上がってしまったな。


「キナコ、さっきはごめんね? 大好きだよ」


 正直、クッキーを作っていたあたりで、何のケンカだったかもさっぱり忘れてしまったが、一応謝っておく。


「うん、わたしもごめんねつばめちゃん。なんか最近わたし、先代猫のキナコ先輩にも嫉妬しちゃうんです。比べられてないかな、とか、どっちの方が大切なのかな、とか」


 キナコは、本当にしょんぼりした顔で、私にぴったりくっついてくる。


「前のペットだって、大切な家族だったから、どっちが好きとかは言わないよ。でも、今の私にとって一番大切なのはキナコだし、これからの私の人生でそれは、ずーっと変わらないよ」


 キナコは私の胸に顔をうずめ、むにむにしながらうなずいた。


「わかってます。わたしもです。……つばめちゃん、さっきは嫌な感じになって、本当にごめんなさい」


 私のおっぱいの中から、キナコの謝る声がする。

 私はキナコの顔をずいっと胸から離し、2回キスをした。


「いいって。嫌な気分にさせちゃって、私もごめん。……私の嫌なところとか、本当はこうして欲しいとか、隠さないで言ってね。私、頑張って直すし」


 とりあえず、今回の反省は……えっと、なんだっけ。

 まあ、次回から反省する、ということで。


「じゃあ、わたしのことを、もっと好きになって欲しいです」


 キナコは、何度も私にキスを繰り返しながら、苦しそうな目で言った。


「え? 今でもめちゃくちゃ大好きなのに、大丈夫? キナコは私の愛に耐えられるかなあ?」


 私がふざけて言うと、キナコは私を力いっぱい抱き締めてくれる。


「もっと、もっと好きになって下さい。全然、まだまだ全然足りないよ。もっと、いっぱいいっぱい好きになって欲しいです。ずっとずっと、もっともっと、わたしを愛して下さい」


 キナコは言いながら、抑えきれないように、何度も、好き、好き、とうわ言のように繰り返して、わたしにキスを続ける。

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