17. 百合なペットと二人暮らし
最近はめっぽう朝晩涼しくなってきた。
日が落ちる時間もどんどん早くなっていて、夜は虫の鳴くきれいな音も聞こえる。
待望の秋の訪れだ。
何を隠そうこの私、一年の中で最も好きなのが、この秋なのだ。
特に旬の食材を使ったお料理がこれまた楽しい。
しかも今回の秋は、大好きなかわいいかわいいキナコと一緒に過ごす秋。
どう考えたって、最高のシーズンになるに違いない。
が、なんと本日、キナコの帰宅予定は23時頃となっております。
秋の夜長も相まって、心の底から寂しいです。
今回は、最近流行っているという、キャンプ関係の雑誌のお仕事らしく、キャンプ道具が主役、キナコは何となく雰囲気を出すためのモブ要因として写真に写り込むお仕事をするらしい。
しかも夜のキャンプ場での写真も撮影するということで、無駄に帰りが遅い。
遅すぎる。
そもそも、お仕事があるのはいいことだけど、キナコのこの売れないモデルさんっぷりは、もう少しどうにかならないものか。
モブ扱いなんて、とにかく不憫でならない。あんなにかわいいかわいいキナコなのに。
私は不在のキナコの代わりに、キナコが朝まで着ていた部屋着を丸めて、それをクンクンして気を紛らわしている。
キナコ、早く帰ってこないかなあ。
キナコの部屋着からは、嗅ぎなれたキナコの女の子らしい匂いがして、すごく落ち着く。
まだ出会って数ヶ月だというのに、キナコがいる生活が、私にとってはすっかり当たり前のことになっている。
このアパートの、決して広くはない部屋のなかに、キナコが立てる物音があって、キナコの匂いがあって、キナコのいる雰囲気がないと、ちっとも落ち着かない。
だけど、遅くなってもキナコがちゃんとこの部屋に帰ってくると、そう信じられるくらいには、きちんと自分が愛されている自信もある。
晩御飯の支度はとっくに出来上がっているけど、遅くまで頑張っているキナコに、少しおしゃれな飲み物も用意しよう。
ちょうど朝ごはんに使ったリンゴとイチゴがあったので、切って大きめのグラスに入れておき、買い置きして冷蔵庫で冷やしていた白ワインに浸けておく。
フルーツの種類が少なめだけど、これで白ワインベースのサングリアが完成だ。
正直、味は安物ワインだからそこそこだろうけど、見た目がおしゃれだと、なんだか味も良いように感じるし、雰囲気が大事だ。
あとはこのまま、グラスごと冷蔵庫に入れて冷やしておこう。
お風呂上がりに出してあげたら、きっと喜んでくれるはず。
フルーツを切ったまな板とナイフを洗いながら、どこかで今もお仕事を頑張っているキナコに思いを馳せる。
いつもキナコは、私が仕事から帰るのを待つ間、おんなじように寂しく感じているのかなあ。
明日からも、確実な定時退社を続けていきたいものだ。
冬になったら、キナコの実家にご挨拶に行くことになる。
女同士だし、キナコのご両親がどんなリアクションをしてくるのか心配ではあるけれど、それでもきちんと認めてもらえるように、私が頑張らなきゃね。
娘さんを私に下さい!
娘さんを私に下さい!
今のうちからたくさん練習しておこう。
その前に、冬が近づいたら、今年は早めにコタツを出そうと思う。
間違いなくキナコはコタツが好きなはず。
コタツで丸くなるキナコちゃん、それはもう、絶対最高にかわいいだろう。
暖房にはあんまり頼らず、石油ストーブを買ってみるのもいいかもしれない。
ストーブの上で、お芋やおもちなんかを焼いてみたり、お茶を沸かしてみたりして。
キナコと一緒に迎える冬なら、いっぱいいっぱいやりたいことも浮かんでくるなあ。
取り留めもなく頭に浮かんでくる私の未来には、その全部に、愛しいキナコの姿がある。
夏の始まり頃に出会った、かわいいかわいい私のペットは、その一夏のうちに私の恋人になった。
そしてきっと来年の頭には、私の実質的な結婚相手になる。
この秋の間にも、私達の関係はもっともっと深まっていくのだろう。
この先も二人で暮らした時間が伸びていくにつれ、私はきっと、もっともっとキナコのことを大好きになる。
これは、そうだったらいいな、なんていう甘い願望ではなく、確実な未来の話だ。
だってキナコは私にとって、恋人以上、家族以上の大切なペットだから。
目を閉じれば、幸せな明日の自分がみえる。
私の未来には、ずっとずっと、愛するキナコがそばにいる。
ずっとずっと、キナコを大好きな私がいる。
玄関から、鍵をあける音がした。
私はまるで自分の方がペットになったみたいに、愛するキナコのお出迎えに向かった。
ドアを開けたら、今日のキナコはどんな顔で、どんな言葉で、私に愛を伝えてくれるだろう。
この秋が過ぎて、冬を越して、春に、そしてまた次の夏にも、秋にも、私達の二人暮らしは続いていく。
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