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【完結】百合なペットと二人暮らし  作者: くもくも
3章 いちゃラブ生活
13/17

13. 田舎道のお散歩

 金曜日の夜に炊いたあんこの出来映えは上々だった。


 炊いた直後は、ちょっと甘すぎるかな、くらいに仕上げておくのがコツだ。おはぎにするときは冷えているので、少し甘さが控え目に感じるようになる。

 逆に塩は、ちょっと少ないかな、と思うくらいでちょうどよい仕上がりになる。


「つぶあんうまあ! すごい、甘すぎないのにどっしりくるこの感じ、和菓子屋さんに勝ってますよこれは!」


 土曜日の朝早くからせっせとおはぎをこしらえていると、起きたばかりのキナコがやってきて、さっそくあんこを味見していた。


「だめだよキナコ、味見一回でキス一回だよ!」


 ニヤニヤしながら言ってみると、キナコはそのままあんこをさらに二口食べて、全部で三回、いやそれよりずっと多く、おはようのキスをしてくれた。


 天使かな?


「それでつばめちゃん、お墓参りは何時頃に出発するの?」


 そう、今週末はお盆なので、先代猫のキナコと両親のお墓参りに行くのだ。

 キナコの方は、先代様にご挨拶を、ということでついてきてくれるらしい。


 両親にも紹介できるみたいな気分で、ちょっと嬉しい。

 でも、もし両親が生きていたら、さすがに女の子の恋人ができたと言ったら驚いただろうな。

 ただ、反対されたとしても、全力で立ち向かった自信だけはある。


「おはぎが完成したらすぐ出発だよ。きな粉味はもう完成したし、お供えものに持っていくぶんはタッパーに詰めたから、あと少しだね」


 言いながらせっせともち米をあんこでくるんでいく。

 衛生面に配慮して、ラップを使ってあんこを扱う。

 そしてあんこは過剰気味に分厚く。

 それが私流のおはぎ作りである。


「なんか楽しそうですね! わたしもやってみたい!」


 お手伝いを始めたキナコは、ちょっとあんこを欲張って入れすぎたみたいで、すごく大きなおはぎになってしまっていた。


「……うーん、これはつばめちゃんにあげますね。失敗したなあ、もう一回チャレンジしてみようっと」


 言われなくとも、キナコが作ってくれた分は全部私が平らげるつもりだ。

 二人でおはぎを作る平和なお盆休み。

 幸せ。




 電車を乗り継いで1時間。

 郊外の駅に到着した私達は、両親のお墓に向かって歩きだした。

 

 お墓の場所までは徒歩10分くらい。

 今日は曇り空でわりと涼しいので、キナコと二人ならちょうどいいお散歩だ。


 お供え物のおはぎは、痛まないように小さな保冷バッグに入れている。


 のどかな田舎道。

 駅前だけはいくらかお店も広がっていたので、帰りは遅めのお昼ごはんを食べて帰ろう。



「キナコのかわいいところが好き。かわいいかわいいところが好き!」


 唐突だが、駅を出たところから、お互いのどこに惚れたのかを言い合うゲームを始めたのだった。

 なお、照れてギブアップした方が負け。


「そういうんじゃなくて、もう少し具体的な感じで聞きたいんですけど」


 おはぎより甘口のゲームに、キナコはちょっと照れたような顔で文句を言う。

 お、これは楽勝かな?


「じゃあ、気持ちがすぐ顔に出てかわいいところが好き。撫でられてだらだらしてるときの、幸せそうなとこがかわいくて好き。一緒にいると安心できて、幸せな気持ちにしてくれるのが大好き」


 キナコの好きなところなんて、100個でも200個でもスルスル出てくるよ。


「ちょ、ちょっともういいです! ストップストップ! 照れるってば流石に」


 勝った……。

 このゲーム、負ける気がしない。


 第一試合勝者の私は、道端の自販機でアイスコーヒーをキナコにおごってもらった。

 勝利の証の空き缶は、持ち帰って部屋に飾ろう。


「じゃあ、次はキナコね。でもそういえばキナコって、そもそもなんで私なんかを好きになったの? キナコなら、もっといいお相手も探せたんじゃない? ……いや、ダメダメ今の無し! キナコには私が一番だから! 他の人は探しちゃだめだよ!」


 危ない危ない。メス猫の浮気防止も徹底しておかないとね。


 キナコは、何かためらっているような顔をしたが、私の催促の視線に負けて話しだした。


「……最初は、居酒屋の入口で見かけたんですよ。すっごくつらそうな表情のおねーさんが、居酒屋に入って行ったので、妙に気になって。で、一時間後くらいに入口から覗いたら、その人がカウンターに潰れてるのが見えて」


 え? 何それ。

 そこは初耳だったな。


「……で、正直、あわよくばワンチャンあるかな、と思って、狙ってお店に入って、わざわざ横の席に座りました。……実は話しかけたのもわたしからです」


 衝撃の事実じゃん。私が一方的に絡んできた、みたいな言い方してたくせに。


「何それ! 酔っぱらい狙いのナンパみたいな感じだったの!? 悪いペットだなあ! 私の身体狙いだったのか、このエロ猫! エッチ猫!」


 なんか嬉しいような、残念なような変な感じ。

 いや、ちょっと嬉しいが勝ってるかも。キナコに狙ってもらえたなんて、なんか嬉しいかも。


「だってわたし、スーツ姿の女の人が大好物だから……つばめちゃん結構タイプだし。……でも、なんか妙にそのときのつばめちゃんが印象に残ったんだよね。ていうか女同士ですから、出会いも少ないんだよ? 酔っぱらいにワンチャン期待して何が悪いんですか」


 すけべ猫! 嬉しいけどさあ!


「そもそも、家に誘ったのも、エッチなことしてきたのも、そこは間違いなくつばめちゃんからですからね? わたしはちゃんと、自分が女の子が好きな人だって、事前に居酒屋で言いましたからね」


 すけべな私! これは本当にごめんなさい!


「……でも、居酒屋でお話してるだけで、つばめちゃんがすごくペットの先代様を大事にしてたのが伝わってきて。わたしも、この人におんなじように愛されたら幸せだろうなーって、思ったんでですよ。つばめちゃんに可愛がってもらえるなら、恋人が無理でも、ペットにしてほしいって、本気で思ったんです」


 これは、結構照れるかも。

 私をチラチラ見ながら話すキナコ、かわいいよう……。


「つばめちゃんの、そういう愛情深いところが大好きです。わたしと一緒に幸せそうに過ごしてくれるとこも、お料理が上手なところも、いっぱい甘やかしてくれるとこも、全部大好きなんだあ」


「ああああもうだめぇ! ギブアップ! 参りました! キナコかわいすぎるよう!」


 私はキナコの愛の言葉に、流石に精神が限界に至った。

 帰り道はちょっと、この田舎道のそういうエッチなホテルで、一時間か二時間は休憩して帰らないとダメかも。


 第二ラウンドの勝者キナコは、自販機で桃の味のジュースを私におごらせて、嬉しそうに、そして少し恥ずかしそうに笑っていた。


 目的地まではもうすぐ。

 キナコと一緒だと、田舎道でのただのお散歩が、最高に幸せな時間になる。


 雲の切れ間から少し太陽の日差しが差し込んで、夏の坂道を照らしていた。

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