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【完結】百合なペットと二人暮らし  作者: くもくも
3章 いちゃラブ生活
12/17

12. 恋人同士

 実に数年ぶりの快挙。

 わたくし三条つばめ、恋人をゲット致しました。

 なお、女の子同士という点では、人生初の快挙となっております。 


「ね、ねえつばめちゃん、最近の撫で方、ちょっとエッチすぎません? そ、そこばっかり触られたら……」


 これまでの慢性的な欲求不満から解き放たれた私は、まさにおさるさんと化してしまっていた。


「はあああ! キナコかわいいよう! しゅきしゅきい!」


 胸を撫で、お尻を撫で、髪を撫でつつ匂いを嗅ぐ。

 我慢のいらないフルパワーの撫で撫で祭りが、温泉旅行から帰って以来、毎日開催中だ。


 大手を振って相手にしゅきしゅき言えるのが、こんなにも幸せなことだとは。


 もちろん寝る前には、全裸の撫で撫で祭りもひっそりと開催されている。

 あらゆる意味で大満足の日々。


 今日は仕事を終え、かわいいかわいいペット兼恋人のキナコとの夕食の後、二人で一緒に入浴も済ませ、先日の温泉旅行のお土産に買ってきたお菓子をつまみつつ、キナコ撫で撫でフェスティバルを実施している。


「そういえばつばめちゃん、さっきごはんの後、何か作ってたみたいですけど、もしかしてまたお菓子?」


 私の撫でを全身で受け止めつつ、ちっとも嫌そうな表情をしないキナコ。

 普通の猫なら10分も撫でられたら、ちょっと嫌そうに離れていくものだが、うちのペットは1時間撫でていてもなお嬉しそうだ。


「ああ、週末におはぎ作るから、その準備ね。アンコの小豆を水に浸けとくの。あ、もちろんきな粉味も作ってあげるからね」


 次の週末はお盆と重なっているので、先代キナコと両親のお墓参りに行こうと思っている。

 なんとなくそのときには、おはぎをお供えしようと思っていたのだ。


「わあ、わたしおはぎ大好きです! つぶあんがいいな! でもうちの実家だと、ぼたもちって呼んでたんですよね。何が違うんだろ」


 さっそくスマホで調べ出したキナコ。

 私はニヤニヤしながら、撫でていたキナコのきな粉色の髪を、目のあたりまでぐちゃぐちゃにして、スマホを見にくくしてやった。


「ちょっとつばめちゃん! やめてくださいよう」


 はあ……反応までいちいちかわいすぎ。


「ふふ、春に作るつぶあんのやつがぼたもち、お盆に作るこしあんがおはぎだよ。でも地方とかで呼び方違うらしいし、最近だと全部おはぎって言うことが多いみたいだね」


 実は私も先日、気になって調べていたのだ。

 ふふ、知的な部分もアピールして、キナコの心をガッチリ掴んでおかないとね。


「つばめおばあさんの豆知識ですねえ。あ、でもそれじゃあ今回はこしあんってことですか……ちょっと残念」


 本当にちょっと悲しそうな表情のキナコ。

 こんなの、つぶあんに路線変更確定ですわ。


「今後、我が家で制作するおはぎは、つぶあん限定といたします。もちろんきな粉味は別でね」


 嬉しそうに笑うキナコを見ていると、もう、本当に幸せとしか言いようがない。

 


 その後、ロフトの自分のスペースに移動したキナコを見送りつつ、私はスマホの写真の整理を開始した。

 先日の旅行で撮ったたくさんの写真をフォルダ分けしていく。


 特に気に入ったのは、正式に恋人になった翌朝早くに温泉街を浴衣姿でお散歩したときの、朝日できらめくキナコの笑顔の写真だ。

 この表情はほんとに最高で、キナコがモデルのお仕事をしているときのカメラマンさんでは、絶対に撮れないだろうという自信がある。


 私はこの芸術的一枚を、迷うことなくスマホの待ち受け画面に設定しておいた。


 なお、二番目にお気に入りな写真は、寝起きのキナコの裸の写真。

 素直にエロい。

 これは絶対に他の人には見せられないし、本人も恥ずかしがりそうなので、こっそり秘密のフォルダに移動させておく。


 ピロンと私のスマホから音がした。

 ロフトからキナコがメッセージを送ってきたみたいだ。

 チェックすると、私の着替え中の下着姿の写真が添付されていた。


 なんだと、あのすけべ猫め!


 ロフトを睨み付けると、キナコがこちらをニヤニヤしながら見ているところだった。


「ちょっとキナコ、私のそういう写真は削除してもらうからね!」


 私は自分のことを棚に上げ、ロフトに登っていき、逃げようとするキナコのスマホをキャッキャウフフと奪い取る。


「ああ! ずるいずるい! つばめちゃんだって私のエッチな写真撮ってたじゃないですか!」


 右手でキナコのスマホをチェックしつつ、左手でキナコを抑えつける。


「いやいや、キナコのきれいな体の写真は芸術だからさ。エッチとは違うよ。私は芸術作品を生み出しているだけだからさ」


 あ、あったぞ写真フォルダ。


 すっすと画面を順に見ていくうち、私は顔が熱くなってきた。


 出会った日から、この間の旅行、最近の普段の生活まで、キナコの写真フォルダは、全部私の写真でいっぱいだった。


 一応、出会う前の時期の写真も見てみたが、食べ物の写真とかばっかり。


「か、返して下さいよう……」


 顔が真っ赤のキナコを見て、私も自分の顔が同じくらい真っ赤なのを自覚していた。


「ねえ、キナコってもしかして、私のこと大好きなの?」


 いじわるを言う私に、キナコは自分のスマホを取り返して、お布団にくるまりながら抗議する。


「好きに決まってるでしょ! 恋人なんですから! つばめちゃんがわたしをペットとしてしか見てないときから、こっちはずっと大好きだったんですからね!」


 かわいすぎるキナコの言葉に、胸がいっぱいになる。

 愛されるって、幸せだなあ。


「そうだ、つばめちゃんの写真も見せてもらいますよ!」


 キナコは素早く私を押し倒してくる。ほとんど一瞬で、部屋着のポケットからスマホが奪い取られた。

 まずい、形勢逆転だ。


「うわあ! 待って待ってキナコ! 絶対一枚も消しちゃだめだよ! 全部私のお宝写真なんだから!」


 キナコに馬乗りになられたまま、あわあわと手を伸ばすが、まるで取り返せない。

 運動不足の私では、本気のキナコには勝ち目がないのだ。


 私のスマホをチェックしながら、キナコの顔は、また真っ赤になっていく。


「……ちょっと、わたしの写真ばっかりこんなにいっぱい……うわ、これ私の事務所のサイトに上げてる写真じゃないですか……あ、な、なんですかこのフォルダ! いつこんな写真を撮って……つばめちゃんのエッチ!」


 私は顔を背けながら、ニヤリと笑う。


「ほら、芸術作品っていうのは、ちょっとエッチな感じになることも多いんだよねえ。キナコの体がきれいすぎるのが悪いんだよ」


 呆れた様子で、でもやっぱりどこか嬉しそうな表情のキナコ。

 そのままの体勢で、私達は短くキスをして、また笑った。


「あ、このフォルダ、先代猫のキナコ様の写真がいっぱいですね! わあ、本当にわたしの髪とおんなじ色だあ!」 


 二人で先代キナコの写真を眺めながら、私はさっきのキナコのスマホで見た写真を思い出していた。


 キナコが私と同じように撮影していた、朝の温泉街での写真。


 その写真の中で幸せそうに笑っていた私の表情は、さっき私が待ち受けに設定したばかりの、キナコの幸せそうな笑顔の写真と、全く同じようにキラキラしていた。

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