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【完結】百合なペットと二人暮らし  作者: くもくも
3章 いちゃラブ生活
14/17

14. お盆といえばお墓参り

 久しぶりに訪れたお墓の周りには、少し雑草が増えてしまっていた。

 周りにも二組ほどお墓の掃除をしている家族がいて、これぞ日本のお盆、といった感じだ。


 キナコ全面協力の元、墓石もざっくりキレイに拭き掃除完了。こんなかわいい女の子にキレイにしてもらえて、ご先祖様もみんな喜んでいることでしょう。


「そういえばつばめちゃん、先代猫のキナコ先輩のお墓もこのあたりにあるんですか? 今日でどっちもお墓参りするって言ってましたけど」


 お墓にろうそくをセットしながら、二代目キナコちゃんが尋ねてくる。


「え? いや、このお墓に猫のキナコも一緒に入ってるんだよ。ほら、ここに書いてあるでしょ?」


 メインの墓石の横にある、先祖の皆様の名前が掘られた石には、確かに三条キナコと書いてある。


「え、これつばめちゃんが自分で名前書いたでしょ!? ……油性マジックで書いてあるなんて……こんなの初めて見ましたよ。つばめちゃん、正気ですか?」


 いや、確かに当時は正気を失っていたかも。

 先代キナコが死んでしまったあと、火葬した猫の骨をこっそりお墓の中に収容し、この石に油性マジックで名前を追加しておいたのである。


「へへ、まあ私以外このお墓に誰が来るわけでもないし、大丈夫でしょ。私のお父さんも猫派だったからさ、天国でかわいがってくれてるよ、きっと」


 熱心な宗教家の人に見られたらすごく怒られそうな気がするけど、先代キナコも間違いなくこの三条一族の一員だったのだから、まあこのくらいはオッケーだろう。


 二代目の人間キナコは、ちょっと引いたような目で私を見ている。


「つばめちゃんのこのぶっ飛んでる部分は、ご両親の遺伝なんでしょうかね? 親の顔が見てみたいっていうの、本気で思ったよ……」


「おやおや、そんなこと言っちゃいけないよ。ほらキナコだって、おばあちゃんになって、死んじゃったらこのお墓に入るんだから。うちの両親に今のうちから気に入ってもらっておかないと」


 キナコは私からお線香を受け取りながら、目をぱちくりさせた。

 そして、急に向こうを向いて、お線香を持っていないほうの手で、顔を隠してしまった。


 もしかして、泣いてる?


「わ、わわわ、キナコ、なんかごめん。わたし、変なこと言っちゃったね? 死ぬとかなんとか、嫌な話だったね? ごめんね?」


 まずい、キナコが泣くとこなんて、初めて見た。


「……違いますよ。へへ、なんか嬉しくて」


 キナコは、目を拭いながらこちらに向き直った。


「だって、今のプロポーズみたいじゃないですか。一緒のお墓に入ってくれ、みたいな。女同士なのに、わたしとずっと一緒にいることを、あたりまえみたいに言ってくれるから、嬉しくて……」


 キナコはふんわりと笑いながら、泣いている。

 ポロポロこぼれる涙がすごくきれいで、こっちまで泣きそうになる。


 なんだよう、ずっと一緒にいるなんて、当たり前に決まってるじゃんか。


「いつか、キナコのご両親にも挨拶に行くからね。ふふ、まさか自分が、娘さんを下さいって言う立場になるなんて、びっくりだよ」


 キナコはまた少し泣いて、また笑った。



 おはぎをタッパーのままお供えし、線香の煙がうっすらと漂う中で、キナコと並んでお墓に手を合わせる。


 ご先祖様、お父さんお母さん、私は子孫を残せそうにないので、たぶん三条一族はここでおしまいだけど、どうかお許し下さい。


 女同士だけど、私はこの子と生涯添い遂げるつもりです。

 許してくれなくても、そうします。

 いや、許してくれなかったら、もうお墓の掃除に来ませんからね。徹底抗戦を辞さない覚悟です。



 天国のキナコ、私の横にいるのが、新しいペットだよ。

 しかも最近、恋人同士にもなったんだ。

 見てくれてるかな?

 先輩として、天国から応援してね。

 長い間、私と一緒にいてくれてありがとう。

 大好きだよ。愛してるよ。



「……つばめちゃんまで泣いてるじゃないですか。また、先代キナコ様のこと思いだしてたんでしょ。なんか、嫉妬しちゃうな。同じペットだけにね」


 長い時間、手を合わせていた私を、キナコはじっと見つめていた。

 私の涙を手のひらでぐいぐい拭いてくれる。


 今日はお互い、涙もろいね。


「さ、キナコ。お供えのおはぎはここで食べちゃおう! まさに死人に口なしだからね! 私達で代わりに食べてあげなきゃ!」


「それはちょっと意味が違うし、なんか不謹慎ですけどね。でも、ちょうどお腹空いてたから、嬉しいな」




 帰り道、私達は手を繋いで、また田舎道を歩いていく。


「今日は、来れてよかったです。ちょっと色々びっくりしたけど、つばめちゃんのことを、またいっぱい好きになっちゃったかも」


 絡めた指をにぎにぎしていると、キナコのほうも同じように力を入れてくれる。

 キナコ大好き。


「こちらこそ、今日は来てくれてありがとう。両親に紹介できたみたいな気分だよ。先輩猫も、たぶん天国で喜んでると思うよ」


 歩きながらキナコに顔を近づけると、キョロキョロとあたりを見回して、キナコのほうから軽くキスをしてくれる。


「そういえば、実はうちの両親には、わたしが同性愛者だって何年も前からバレてるんですよ。最近は一応応援してくれてたし、つばめちゃんを連れて帰ったら喜んでくれるかもなあ」


「一緒に暮らしてるっていう、おばあちゃんは? さすがに驚くんじゃない?」


「いやあ、おばあちゃんはいつもわたしの味方になってくれますから。ていうか、わたしの性癖が親バレしたのは、実はおばあちゃんのせいなんですよ。高校生のとき、わたしがこっそり女の子同士のエッチな動画を見てたんですけど……」


 とりとめもなく、話は続く。


 わりと寂れた駅が近づいてきて、さっきおはぎを食べたばかりだけど、私達の話題は今日のお昼ごはんの話に変わっていった。

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