0081 一人の軍
二人は久しぶりに再会した旧友のように月の下で向かい合って座っている。壁に座っている盧安は、自分が所属する穿越システムのこの位面における穆塵飛への目的を全て打ち明けた。
例えば、文明社会を水の入ったたらいに例え、文明度を水温とするならば、文明というたらいの水は時間とともに正常に発展すれば徐々に温度が上がっていく。しかし、温度上昇の原動力は最終的にその文明を構成する人々に由来する。そして、君が今この世界にタイムスリップしてきたことは、高温の水(高度な文明の担い手)を一すくい、低温のたらい(遅れた文明時代)に注ぎ込んだようなものだ。一すくいの水がたらいの水全体を温め、たらいの水もまたその一すくいの水の温度を下げる。しかし、実体のある熱源がなければ、このたらいの水は結局冷めていくだろう。君がいた時代と比べて、君個人の文明度はこの低文明の陋習に感染している。この時代は君のおかげでいくらか進歩したが、君は進歩の源泉ではない。君は未来の限られた情報を詰め込んだ容器に過ぎないのだ。」 盧安は冷徹に事実を述べた。
穆塵飛は嘲笑うように言った。「では、君たちがこの世界で引き起こしているくだらないことについて、反省したことはないのか?」
「我々が作り出すのは小さな波しぶきに過ぎない。我々が去った後、せいぜい十年も経たないうちに、我々が残した黒社会のこの社会のしこりは自然に消滅する。歴史は社会の隅々まで注意を払わないから、影響はない。もし君が余計な力を持っていなくても問題はない、責任と権利は表裏一体だから。しかし今、君は世界を容易に変える力を持ち、君が活動する舞台は支配階級にある。」
盧安は穆塵飛にうなずいて言った。「そうだ、もし君が今の超能力を捨てることができるなら、この世界で他の人と同じように公平に努力して世界を変えるのなら、私のあのボスは認めるだろう。」
穆塵飛は尋ねた。「もし捨てたくなくて、それでいてこの世界で王になりたいとしたら?」
盧安は言った。「それでも構いません。しかし、あなたがこの時代にいる以上、自分が生まれ育った時代よりもさらに厳しく自分を律し、この世界の変化に全身全霊を捧げなければなりません。あなたが生まれた時代には超能力もなければ、責任もほとんどありませんでした。しかし、この時代では超能力を得たのですから、相応の責任を果たさねばなりません。」
盧安はドアの後ろから覗いている幽月をちらりと見て、それから穆塵飛に向かって言った。「もしあなたが工業文明の世界から来たのなら、一夫一妻制の責任を負うべきです。今のあなたはその責任を放棄し、超能力を使ってその権利を自分のものにしているのです。」
盧安の説得に対し、穆塵飛はずっと聞いてはいたものの、その顔には始終軽蔑の表情を浮かべていた。盧安は穆塵飛の視線にまったく影響されていないかのように、友達に対するように、元一から聞いた情報を淡々と述べた。
実のところ、元一が盧安にこの任務の理由を告げた時、盧安と元一の間の雰囲気は、穆塵飛との会話よりもはるかに深刻なものだった。
一ヶ月前、元一は厳かに盧安に警告した。「彼が今行っている世界への変化は、前世の知識と前世で培った自覚に由来するものに過ぎない。これらの思考の中にある定量的な情報は彼が持っているが、しかし彼はそれをさらに推し進めてはおらず、むしろ後退へと妥協している。歴史的に見れば、こうした未来の先進性で過去の遅れにあれこれ指図する行為は、この世界の歴史を未来へと推進する変数たちに不必要な足枷を早々に背負わせているのだ。」
「もし彼が代償を払い、自らの持つ他の副次的な欠点を捨て去り、下流の歴史区でより良い未来を渇望した初心を胸に抱き、上流の歴史区に到達するならば、それは自ら招いた足枷を背負ったことになり、まだ許容できるだろう。」
「世界に干渉しないか、さもなくばこの世界が支払える以上の先駆者となるかだ。高次元は、先見の明を持ちながらも己の欲望のままに行動する時代の操縦者を許容しない。歴史とは変数たちがもがいた軌跡であり、もし君が彼を説得して全てを捧げさせることができるなら、彼にはこの世界に留まる資格がある。さもなくば、彼は自らが属する歴史の試験場から離脱すべきではない。」
歴史に絶対的な正しさはなく、相対的な正しさがあるのみだ。より正しい道を探し求めることは、あらゆる時代の統治者たちに生まれながらにして課せられた責務であり、その責務を負わない時代の統治者は、いずれ自らの時代を終わらせることになる。
未来人の視点に立てば、現代の多くの事柄は未来の基準で判断すれば正しくない。しかし、どの道が正しくないのかを見極めようと努力することこそが、現代の統治者の責任なのだ。そして、現代が過去に対して持つ相対的な正しさは、すべて過去の人々が見出したものである。過去の人々がその義務を果たしたからこそ、現代人にとって当然の正しさが存在するのだ。
当時、盧安は元一の妥協を許さない説明を聞き終えた後、しみじみと元一に問い詰めた。「実は、君は私を牽制しているんだろう?」
しかし、元一は言った。「考えすぎだ。私の区分では、君が今いる世界と元の世界は同じ時代に属している。」
三戦は孟位がいる時代の境界線であり、孟位はその境界線を越えて生き延びることができなかった。それゆえ、盧安は依然として自分の歴史の中で藻掻いているのだ。
元一が盧安に対して真剣に説明したのとは対照的に、盧安と穆塵飛の会話ははるかに柔らかいものであった。もちろん、予想通り、穆塵飛は全く聞く耳を持たなかった。
盧安は光幕を見た。光幕には穆塵飛と同じ進行バーが表示されていた。元一の提示によると、穆塵飛のシステムは明日中に盧安の時間能力のコピーを完了するという。盧安が予演を集中的に使用したことで、穆塵飛の持つ穿越システムが時間能力のコピーを早めた可能性がある。
「よし、先に行くよ」と盧安は言った。「明日の朝8時、私と君の戦いが始まる。もし空間能力で逃げたら、任務を遂行するために、君のこの世界での撹乱の基盤、例えば領地や軍団を破壊するしかない。」
穆塵飛は大笑いして言った。「軍隊に対抗する?できると思っているのか?」
「この時代の戦争技術レベルなら、一人で軍隊になれるさ」と盧安は自信満々に言い終わり、壁の上から飛び降りた。
穆塵飛はまるで普通の人のように去っていく樓安を、茫然と見つめていた。
穆塵飛は眉をひそめ、樓安の持つその能力にますます疑問を抱いた。自分のシステムが能力をコピーできることを明らかに知っているのに、まったく気にしていない様子の樓安を見て、穆塵飛はその態度にもまた疑問を感じた。
翌朝八時、普通の人である樓安はリュックを背負って朔城へと歩いてきた。二十時間以上前、樓安はみじめな姿で朔城から逃げ出したが、今は自信を持って戻ってきた。
この時の盧安は群れを成している。第一類リハーサルの中の自分は、絶えず同じ動作を繰り返しているが、今繰り返している動作に存在する問題を探している。例えば、周りが見えていないようだとか、次の一歩の地面が凹んでいるか凸んでいるか、空の日差しが大体どの角度か……そしてそれらの重要な情報を記憶し、リハーサルが終わればそれらが送り返されてくる。一方、第二類リハーサルの中の自分は、絶えず問題を解決し、現実の自分に上記の問題を解決できる感覚(例えば視覚や聴覚など)を投げ与えている。例えば、ある第一類リハーサルの中の盧安は左側の地面をはっきり見ておらず、さらに空の日差しの角度もわからない。他の記憶を忘れ、それと同時にこれらの重要な情報だけを記憶している。現実の盧安は二つの第二類予演を発動する。前の予演の盧安はあの地面を何度か踏んで凹か凸かを確かめ、それから触覚を覚え、後の予演の盧安は太陽の高さを見て、それから視覚を覚える……つまり、第一類予演は効率的に盧安の現実の問題を探し、第二類予演は効率的に問題解決の感覚をフィードバックしている。
なぜ第二類予演は感覚だけを伝達するのか? なぜなら、脳が単位時間に処理できる情報には上限があるからだ。しかし、感覚だけを伝達しても、第一類予演における盧安の目的を達成できる。
例えば、40人以上の第一類予演の自分が一箇所に視線を向ける——同行する際、動作は同じでも考えていることが異なり、目的性も異なるため、返ってくる重要な情報が異なる。現実の盧安がこれらの目的を持って第二類予演を開始すると、ある盧安は飛び上がって見たり、ある盧安は走って見に行ったり、ある盧安は望遠鏡を手に取ったり、ある盧安は隣の木に登って見たり、それぞれ目的達成の感覚を返信してくる……これらの視覚の重ね合わせにより、盧安は物体を見て立体効果を認識できるようになる。
躯体の強度から見ると、盧安は依然として普通の人間だが、1秒間に40人以上のリアルタイムの自分が存在し、1秒間に600回以上の予演の行動を分担処理・統合する情報能力は非常に強力である。盧安の現在のこの外界情報の処理能力は、盧安の過去と比較すると、機械式コンピュータとソロバンの計算力の差のようなものである。
要するに、予演の運用方法の変更により、盧安の情報処理能力は大幅に向上した。
そして盧安の無阻超能に対する制御力も、それに伴い大幅に向上した。
無阻超能は制御に重点を置いた超能であり、エネルギー系の超能ではないため、超能総量にはそれほど依存しない。もちろん、超能総量は多ければ多いほど良いのは間違いない。
盧安自身の手では、これほど強大な情報感知に従って素早く問題を処理することはできない——身体の慣性や神経反応の速度ではマイクロ秒単位の精度での運動は不可能だが、無阻超能は身体を介して発動する必要はなく、無阻膜を張るのに必要な界面を現実に見る必要さえなく、事前演練の中で見てから感覚を盧安に伝えるだけで展開できる。そこで盧安は気づいた、というより、昨日うっかり馬車の車体を壊した時に、無阻超能は思考の中の情報にのみ従って発動することを発見した。だから今、高効率な情報処理能力に基づくクラスター状態の事前演練によって、盧安はマイクロ秒単位の精度で無阻超能を使えるのだ。
朝八時、盧安は約束通り朔城の下に到着した。
盧安から約五十メートル離れた城門の前で、四十人の騎兵隊がすでに長らく待機していた。盧安が到着するのを見ると、すぐに鞭を振るって馬を駆り、盧安に向かって突進してきた。しかし、この騎兵たちの馬は一歩も走り出さないうちに、次々と倒れてしまった。
過程を数千倍にスロー再生すると、馬の蹄が地面に接触するたびに、盧安はちょうど十マイクロ秒以内にそれぞれに無抵抗膜を一枚ずつ覆い、作用が完了した後、十マイクロ秒以内にその無抵抗膜を取り消しているのが見える。
以前は、盧安が発動した多くの予演は目的がなかった。厳格な目的がなければ、その予演は無駄であり、むしろ自分を苛立たせるだけだった。同様に、超能力で無阻場を作る際、目標が互いに接触していなければ、無阻場は作ってから多くの時間は無駄であり、むしろ元々少ない超能力の総量を占めてしまう。しかし今では、盧安が無阻超能力を発動する多くの場面は、まさに物体が接触する瞬間だ。この瞬間を捉えれば、無阻超能力の運用は効率的になる。
これが盧安が穆塵飛に対して自分が一人で軍隊になれると言った理由だ。大量の自分が連携することで、無阻超能力を効率的に操作でき、それは無阻超能力を標準装備した軍隊に相当する。
盧安の目の前のこの騎兵部隊は、かなり酷い転倒を喫した。馬蹄がつまずいた後、身体が地面に衝突し転がる刹那、どうしても地面の凹凸にぶつかってしまう。ところが、盧安はまさに衝突が起こる直前、これらの凹凸にある鋭い構造に無阻膜を覆いかぶせた。
もし皆が動かなければ、無阻超能はごく平凡に見えるが、動きが激しくなり運動エネルギーが制御不能になると、物体が衝突摩擦する過程で、無阻膜に包まれたあらゆる固体構造は、死や障害をもたらす刃物と化す。そして形状の鋭い物は、その破壊力を倍増させる。
馬と馬に乗った兵士が地面に倒れ込んだ。倒れた馬は即死した。一部の石に盧安が無阻膜をかぶせたからだ。これらの石は刀の刃が豆腐を切り裂くように馬の腹を切り裂き、数頭の馬から血が噴き出した。これは動脈が切断されたことによる効果だ。馬に乗っていた兵士に関しては、盧安がダメージをコントロールし、全員の皮膚をわずか3パーセント擦りむいただけだった。もし素早く包帯を巻き、破傷風にならなければ、命は助かるだろう。
盧安は大股で流星のように城内へ歩いていった。元々盧安を追い詰めようとしていた騎兵たちは、あわてて脇に寄り、盧安のために道を開けた。
盧安は頭を上げて、城壁の上を見る。予演の中で、盧安は穆塵飛が能力を使おうとしているのを見たが、穆塵飛は結局使わなかった。明らかに、穆塵飛は予演能力をコピーしていたのだ。
盧安は低い声で言う。“私があなたの前に来た以上、あなたは何かをする時間がなくなった。”




