0534 優しき一刀
ドックでは、クレーンが蒸気動力で鋼索を用いて特殊鋼材をゆっくりと吊り上げていた。金属骨格に力がかかると、鋼と鋼の隙間が擦れ合い、「ギシギシ」という音を立て、重金属の音楽を奏でていた。
北冥級装甲艦は、排水量一万四千トン、二基の三連装主砲を搭載し、副武装は機銃塔である。これはここ二百年で、斉国が建造した最大排水量の装甲艦である。
昔、斉国の公式装甲艦のトン数は一般的に約二千トンでした。長い歴史の中では、一万トンの装甲艦を建造した時期もありました。例えば二千年前、斉国の覇権時代に、自国の強大さを示して、南方の呉越両国を抑え込むために、七基の主砲塔を備えた一万トン級戦艦を建造しました。もちろん、一隻しか建造されませんでした。
ところが今、帝国は合計七隻の戦艦を発注し、全て五千トン以上の大型艦です。その理由は、今年路顓が帝国海軍に提示した見積もりでは、単艦のトン数が大きいほど、排水量当たりの価格が安くなるからです。千トン級戦艦を四隻建造すると、五千トン戦艦一隻の一・八倍の価格になり、さらに、造船所での後続の修理費用も大型艦には割引価格が適用されます。
数年前、帝国海軍の上層部は皇帝の好意に迎合するために、大型戦艦を発注した。皇帝は数年前、何の策略も見抜けなかったし、その当時の路顓はまだ従順だった。それで皇帝は功績を誇りたいという思いから、小型船多数を大型船1隻と交換する提案に同意した。
現在のこの戦艦は、7番目の戦艦で、つまり最後の戦艦だ。路顓はアセチレン酸素溶接トーチを持って、船体の鋼構造を溶接している。溶接の過程で、路顓はもう一人の自分——商衡から与えられた電磁制御の知識を使い、強力な磁力でプラズマを拘束する。そして、この手法を路顓は他の作業員にも教えた。
商衡のところの霊造師階級、路顓もここで育成している。路顓はこの世界の社会形態を商衡の方の社会形態へと躍遷させようとしている。ただし、この社会躍遷の過程で、路顓は速度を落とすことを許さず、多様な流派が多元化の旗印を掲げながら実は内部消耗している場面が現れるのを許さない。路顓は最初から控霊師と霊造師を徹底的に分業させ、霊造師は霊造工坊で霊具を製造し、控霊師は単に霊具を制御することを決定した。
現在、このドックの大型戦艦は、大艦で多くの小艦を代替する計画であり、かつて路顓が皇帝に提出した案でした。皇帝が壮年の頃、路顓は従順な甥としてそれほど警戒されることもなく、当時皇帝が警戒していたのは国内の実権を持つ一族でした。しかも、新海軍は経費が少なくて済み、軍備も強化され、悪いことなど何もないように思われました。しかし今では、路顓の艦隊への影響力はますます大きくなっています。大型艦隊の保守・維持は、路顓の管轄する工業都市の港でしか行えず、他の沿岸の港は民間船の港であり、艦隊に技術的保障を提供することなど到底できません。つまり、艦隊は路顓の海辺の工業都市付近の軍港に駐屯しなければならず、ついでに、沿岸の商業活動には武力による保障が与えられるのです。
もちろん、朝廷の人々は別の考え方かもしれない。彼らは、帝国のこの大艦隊が帝国軍にこの重要な工業都市を制圧させることを可能にすると考えている。しかし、朝廷の夫子たちは、帝国陸軍と帝国海軍が異なることを知らない。帝国陸軍は厳しい管理の下で、略奪によって士気を維持している。帝国海軍は厳しい管理をしながらも、時々略奪を行って士気を維持している。陸地は広大で、帝国陸軍は各地から来ており、別の場所へ行軍することは陸軍にとって見知らぬ場所である。したがって、陸軍は督戦隊の命令により、国内の鎮圧の役割を果たすことができる。海はもっと広いが、海軍の兵士たちは海に飛び込んで人魚を略奪しに行ったりはせず、船内にこもるか港に戻る。港町こそ、海軍の故郷だ。海軍に自らの港を鎮圧せよと命じるとは?海軍全体にとって、これはとても「不可解な」命令だ。ところで、宮殿に砲撃するほうがまだ現実的か(ロシア)、あるいはその場で反乱を起こせという命令のほうがずっと明確で理解しやすい(第一次世界大戦末期のドイツ)。
これらの大艦隊の水兵たちの大半は、路顓の都市で妻を娶り、家を買い、生まれた子供たちは学校に通っている。もし皇帝がこの水兵たちに鎮圧を命じ、海軍の艦砲を路顓のこれらの都市に向けさせたら、非常に興味深いことが起こるだろう。
特務集団を持つ宏泱帝も、自分の配下で強大な戦艦を有する艦長たちが今では皆、路顓と気脈を通じていることを知っている。理由は他でもない、帝国が海軍に支給する給与は何度も差し引かれ、北方の前線の主力戦闘部隊の4分の1に過ぎないのだ。これは帝国の朝廷で暗黙の了解となっている不文律であり、戦争をしていない部隊には給与を少なく抑えてもよいとされている。路顓の都市部では地方から海軍将校に支給される手当は前線主力戦闘部隊の4倍であり、さらに海軍将校証があれば一部のバーや商店で割引が受けられ、学校でも優遇措置がある。
海洋贸易の時代では、商売をしに出かけるには海軍を養う必要がある。大きな棍棒がなければ、誰がおとなしく商売をするだろうか。ここ数年、斉国の海上ビジネスでどこかうまくいかないところがあれば、電報一本で、海軍に万トン級の戦艦を出させ、その海域に引き連れて軍事演習を行い、二百四十ミリの重砲で、いたずら好きな国際友人たちの前で海上移動標的を撃つ軍事素養を見せつければ、その後のビジネス上の問題は解決される。だから、路顓と帝国海軍の関係は軍民の水魚の情である。
「君の艦は僕の艦だ……」 工事現場では、路顓と労働者たちは鼻歌を歌いながら働いていた。数時間後、路顓が手に持った溶接ガンを置くと、そばで二時間待っていた勅使がようやく路顓がドックを出てくるのを待っていた。
作業着姿の路顓を見て、この勅使は拱手して言った。「殿下。」
路顓は手をこすりながら、朴訥な口調で言った。「いらっしゃい、お待たせしてすみません。この服、どうですか?」路顓はわざと丁寧に言った。
その勅使はにこやかに笑いながら手を振って言った。「いえいえ、かまいませんよ。あなたは陛下の巨艦のためにご苦労なさっているので、私の方こそお邪魔しました。」
双方が型どおりの挨拶を交わした後、この内務勅使は皇帝からの手諭を取り出した。路顓はそれを見て、眉をひそめて言った。「多すぎます、私は出せません。」
この書簡では、路顓が毎年一千万銀元を差し出すよう求められていた。なるほど、総生産額で計算すれば、この金額はたいしたことではないが、路顓は、皇帝陛下の現在の欲求を決して助長してはならず、抑えなければならないことを知っていた。そこで、駆け引きが始まった。
その勅使は笑いながら言った。「では、いくらならよろしいでしょうか。」
路顓は指で示しながらも、この欽差は首を振って言った。「これは……上への報告が難しいですな。」
双方はああ言えばこう言うと交互に駆け引きを繰り返し、膠着状態に陥ったが、最終的にこの欽差は皇帝陛下の最低条件を提示した。
欽差は地図を広げ、北側の広大な土地を指し示した。この土地は帝国と北方の燕・趙両国との広大な係争地であった。双方がいくつかの城塞都市を占拠しており、うち斉国が四都市、燕国が七都市、趙国が二都市を占領している。しかし、土地の肥沃さという点では、斉国の地域は水源において優位に立っていた。
欽差は言った。「陛下はこう仰せだ、北方七省の総督権を担保としてそなたに差し出し、ここで自ら軍隊を組織し、帝国の北境を守護することを許す、と。」
路顓は鼻をほじりながら、不解な口調で尋ねた。「陛下、これはどういうおつもりですか?まるで私に領地を分割して封じようとしているみたいじゃないですか!それに、この北方七省は毎年帝国の莫大な財力を食い潰しているのに、今その厄介者を私に押し付けて、さらに金まで要求するとは、一体全体どうなってるんです?」
勅使は苦笑いしながら言った。「陛下は、あなたが経営手腕に優れているとおっしゃっております。」
路顓は手を振って言った。「私が経営を任されるのは構いませんが、もう金はありません。」
この勅使は苦笑いを一つ漏らして言った。「朝廷にはもはや北方防衛線を運営する資金を出す余裕はございません。もしここが陥落すれば、あなたの資産も安全ではなくなるでしょう。ですから、どうか国家の憂いを分かち合っていただきたい。」この勅使は指で北方のとある工業都市を指した。もし北方のあの土地が失陥すれば、帝国の防衛線には隙間ができ、趙国の騎兵部隊は歩兵砲を牽引して、この都市を脅かすことが可能になるのだ。
路顓は地図の位置を見て、皮肉っぽく言った。「どうやら、俺は誘拐されたようだ。」
「とんでもない、あなたは皇室の貴族ですよ。」この特使は微笑みながら言った。
路顓もにっこりと笑った。
そうだ、自分の経済力については、皇帝が少し調べればすぐに分かることだ。こちら側の各都市の年間経済黒字は、公開された数字から確認できるし、財務も公開されている。この皇帝陛下は明らかに、私にどれだけの金があるか計算した上で、一部を搾り取り、同時に金のかかる基盤を投げて私の金を消耗させようとしているのだ。
「年間700万、そして4000万の融資、それ以上は無理だ。北河套区を完全に私に任せてくれ。」この特使がさらに値段をつり上げようとするので、路顓はつぶやいた。「王將軍が最近言っていたが、軍服が破れてきているらしい。私は綿紡織工場へ急がねばならない。」
この勅使は一瞬言葉に詰まり、それから言った。「では……親王、ご苦労でございました。あなた様の仰せは、必ずや陛下にお伝えいたします。」
路顓の最後の言葉、一見すると的外れのようで、実は別の意味があった。「金は他の力を動かせるのです。どうかこれ以上の値切りはお控えください。」
勅使が去った後、路顓は手袋と溶接用作業服を脱ぎ、ため息をついた。「やはり出し過ぎたな。少しは取り戻さねば。」
路顓は車で中枢へ向かい、電話をかけ、各工場の経済管理担当者を招集して会議を開いた。会議の目的は経済危機の緩和と価格政策の実施だ。
市場価格のコントロール権、これは目に見えない富を徴収する手段であり、しかもその標的を制御できる手段なのだ。
以下、一つの例を用いて、この富を略奪する流れを簡単に説明しよう。
鋼鉄1つを精錬するコストが10元だと仮定して、この鋼鉄が原材料として市場に投入されたとします。道理から言えば、皆がこの材料を公平に購入する、これが絶対的に自由な市場経済です。しかし、行政の介入の下、政府がこの鋼鉄の自転車工場への投入に対して補助金を出したため、原材料の価格は5元になり、一方で火砲工場への原材料価格に対しては課税されたため、15元になりました。自転車は一般市民に販売され、一般市民は基本的に自分の労働力と交換して購入し、全体の物価は上昇しません。しかし火砲は軍隊に販売されるため、軍事費が振り向けられて調達されるのです。
会議で路顓が計画を策定した後、ある工場責任者(霊造師でもある)がややためらいながら路顓に疑問を呈する。『お頭、我々がこんなことをするのは、あまりにもやり過ぎで露骨すぎませんか?』
「何を怖がる、値上げしろ、わしに値上げさせろ、皇帝は今金があるんだ。」路顓は付け加えた。「それから、南のプランテーション地主たちも金余りだ。彼らから搾り取って、今の帝国で誰が好き勝手できるかを思い知らせてやれ。」
路顓のこういった手口は、地球の二十一世紀の各国もやっていることだ。地球の二十一世紀では、あまりにも正直すぎる国は生きていけない。路顓が今やっていることは、二十一世紀の各国よりも厚かましい。どのみち新旧政権の交代期で、誰も自分を管理しないから、路顓はこの機に乗じて南方プランテーションの利益集団を圧迫しているのだ。
皇帝老いぼれや南方のプランテーション貴族たちが買うもの、たとえば化学肥料や火薬など、すべてが一斉に値上がりしている。そして我々の側では、さまざまな経済レバレッジを用いて、原材料市場の中立派を我々の側に追い込む。我々のグループに原材料を供給している農場主や鉱山主たちは、供給量に応じて契約上の補助金を受けられ、工場から工業製品を原価で購入できる。「直接革命して生産手段を再分配しなかっただけでも、ずいぶん優しくしてるんだ。」




