0524 高みの見物
蒼劍門の大殿で、掌門は分厚い手のひらを石卓に激しく打ちつけた。石卓はたちまち手形がへこみ、大量の石屑が飛び散った。
掌門は賀明古を指差して言った。「彼はそんな伝言をお前に託したのか?お前はそのまま戻ってきて、しかも弟たちをあそこに置き去りにしたのか?!この師を欺き祖を裏切るものめ……」
そばにいた楊衍月が掌門をなだめて怒りを収めるよう言った。
掌門は言った。「お前は下がれ。戒律堂に行って罰を受けよ。」
賀明古は命令を受けて下がった。
楊衍月は言った。「師兄、若輩者が無分別で、お怒りにならないでください。明古が言ったように、趙明意は何か奇遇を得て、短期間で修为が大いに上がりました。若輩者たちが外で矛盾を起こしたなら、我々目上の者がその経緯を明らかにすべきです。」
掌门は思わず目を丸くして言った。「あなたと孫衍道の仲が良いのは知っているが、しかし彼の弟子は外道に走っている!どうしてそんなに庇うのか?」
もう一人の衍字輩の主事が言った。「すぐに戒律門の执法弟子を派遣し、この野郎を捕らえて山に連れ戻すべきだ。」
掌门はうなずいて、大殿にいる他の同門に向かって言った。「諸君の師弟たち、異論はあるか?なければ、これで決定としよう。」
この時、楊衍月は言った。「私も一度行ってみよう。」
趙明意は食材を処理している。今回の食材は、長さ4メートルの巨大な鯉で、色が真っ赤で、口には鋭い歯がある。趙明意は特製の長刀を手に、肉を一枚一枚切り落としている。
隣では、四人の弟子たち、正確には三人の弟子と一人の妹弟子の韓明雨が、金属の作業台で趙明意の手にした刀さばきを見つめている。獣の骨と肉を分離し、それぞれ別の圧力鍋に入れて蒸し煮している。
趙明意の技法は、もう一つの意識体に由来する。その意識体は、ある世家で料理人をしていた。しかし、その意識体にはこんな高級な食材はなかった。目の前のこの大きな鯉は、年数も体重も、あの世界の人工飼育された霊獣の格付けで言えば、上級品だ。
確かに、解体の仕方はまだ素人臭い。上等な餌で釣り上げるべきなのに、爆薬で爆破するなんて、どうかしている。
しかし、韓明雨たちから見れば、趙明意の手法はすでに非常に専門的だ。この四人の弟子たちはここ最近、趙明意に付き合って大いに飲み食いしていた。趙明意が世族だけが持つ食材と煮込み方で作った食宴は、世族の大宴会での珍味だ。このような珍味は、現在の世族の間でも非常に貴重な食材で、これらの大妖を捕まえるには、多くの人命を失ってようやく罠に誘い込む必要がある。一方、趙明意は、道具と手段において圧倒的な優位を占めている。
四人は趙明義を見る目が既に崇拝のものだった。趙明意の厨房で、この数人はまるで小学生が教師を待つように、趙明意がこの大妖を処理するのを待っている。ここ数日、基礎が最も良い韓明雨たちでさえ練体術を全力で運転しても、虚して補を受けずと感じていた。
魚の骨から肉を全て切り取り、大きな骨ときれいに洗った魚の鱗を熱油で金黄に揚げ、魚の腹はゼラチン質を煮込んでいる中に浸している。四百キロの金属、様々な圧力鍋があるこの厨房には、誘惑的な香りが漂っている。
全ての仕事を終えた後、趙明意は機械式時計を取り、後ろの韓明雨に言った、「時間に気をつけて。」
「はい、師兄、安心してください!」弟子の孫明空は胸を叩いて言った。
趙明意はうなずいて言った。「わかった、それじゃあ少し休むよ。そうだ、他の場所で妖の痕跡があったら、帳簿に記録しておいてくれ。」
その時、韓明雨がもじもじしながら叫んだ。「趙師兄。」
趙明意は尋ねた。「どうした、韓師妹?」
韓明雨は何か言いかけてやめ、ついに勇気を振り絞ったように言った。「師兄は、悪い人じゃありません。」彼女の頬に赤みがさした。
趙明意は呵々と笑った。「悪い人?もちろん違うさ。でも、多くの人にとっては、俺は悪人でいる方が都合がいい、殺人鬼でいる方がいいんだ。」
韓明雨は少し焦って言った。「師兄、どうして自分を汚すようなことを?何かあれば門派に戻ってはっきり説明すればいいじゃないですか?」
趙明意はこの四人の顔を順に見やると、彼らの顔には一様に戸惑いの色が浮かんでいた。趙明意は笑いながら言った。「お前たちはな、ただ正と邪しか見ていない。この世界には正邪のほかにも、貧しいか富んでいるかの区別、身分の高いか低いかの区別、損か得かの区別がある。世界は矛盾に満ちていて、正邪はその矛盾のひとつにすぎないのだ」
この四人の弟子たちは、どうやらまだ理解できていないようだった。趙明意は手を洗うと、上着のポケットから手帳を取り出し、いくつかの数字をはっきりと書き記した。これらの数字はそれぞれ、趙明意の地盤におけるここ数年の鉄鋼生産量、農業生産量、人口、そして近隣の世家の領地における農業生産量であった。
これらのデータを列挙すると、韓明雨たちは何かを理解したようだった。趙明意は紙を軽くはじき、物憂げに言った。「皆が妖を退治し魔を滅することをしているが、妖を退治し魔を滅した後には、利益の分配があるものだ。師兄の私はここで、十数万人を集め、上等の刀剣を生産してきた。これらの場所は数年前までは妖が横行し、税吏は数年経ってもなかなか来られない場所だった。今ではこの近辺の名家にとって、もし私が攻撃できる邪悪な外道であれば、これ以上ない好都合なことだ。ただ残念ながら、私はそうではない。」
「私たちは掌門師兄に、あなたが外道ではないと報告すべきです…」韓明雨は思わず口にしたが、すぐに自分の幼稚さに気づいた。数十日前を思い返すと、彼女は趙明意に対する態度は「裏切り者」を厳罰に処すことだったが、ここ数日で修為が急上昇したため、立場が思わず変わってしまった――本当に立場が考え方を決めるものだ。
趙明意は手を振って言った。「このことは、君たちが関与する必要はない。君たちは自分の判断をするだけでいい。それと、門派とあまり険悪にならないように。もし残りたいなら、門派側があまりに強く催促してきたら、臨機応変に対応しなさい。」
孫明空はその意味がわからずに尋ねた。「師兄、私たちに何をしろと?」
趙明意は言った。「俺はお前たちに何かをさせるつもりはない。残るのも去るのも自由だ。俺が山門にいた頃、師匠は水汲みや薪割りをさせたが、やりたくなければ腹痛のふりをしたり、物を寝床に忘れたふりをして朝にもう半時ほど余計に探す真似をしたものだ。お前たちも、腹を壊して歩けないと言えばいい。俺がお前たちの剣を取り上げて、行かせないことにする。要するに、そんなに堅苦しく考えるなということだ。」
少年少女たちは顔を見合わせた。そんなずる賢いやり方は、この四人の弟子たちには趙明意が何を言っているのかまったく理解できなかった。これらの少年少女たちは皆、名家の子弟であり、道門と世家が婚姻で結ばれた貴族の子女たちなのだ。一方の趙明意は、盧安の記憶の一部を受け継いだ、山育ちの子供だった。
見上げると、4つの茫然とした目に出会い、趙明意はため息をついて説明を放棄し、簡潔明瞭に言った。「つまり、君たちはここに立って、取るべきものは取り、食べるべきものは食べ、目の前の利益を得られればそれでいい。どうか我々の流派間の確執に無理に関わろうとしないでくれ。」
「そんなの嫌です!」4人は慌てて叫んだ。明らかに、この駆け出しの江湖人は非常に純粋だ。幼い頃から叩き込まれた道徳や正義がそのまま彼らの信念となっており、現実に適応させる形で軟化させたことはまだ一度もない。
「もう十分に話しただろう。一言で言えば、私が道門と儒門の利益の均衡を破ってしまい、そのせいでこんな面倒なことになった。もし君たちがこれに巻き込まれたら、私にとってはさらに厄介なことになる。」そう言い終えると、趙明意は大股で外へと歩き去った。
遠ざかる背中を見ながら、韓明雨は突然尋ねた。「趙先輩、何をなさるおつもりですか?」
趙明意は足を止め、それから再び歩き出し、一言残した。「誰かが刀を研いでいるなら、私は剣を抜かねばならない。」
韓明雨の目には、趙明意の背中は威風堂々としており、一人と一振りの剣で世のすべてを阻めるかのようだった。少女は常にそういう存在に惹かれやすい。
背中だけを見れば、趙明意の今の背筋はピンと伸び、足取りは悠々として、全身から英雄の気が溢れている。しかし正面を見ると、趙明意の顔に表れているのは単なる英雄だけではなく、双眸には未来が映っている。
趙明意は剣で天下を阻もうとしているのではない。今の気質は、むしろ杖で軽やかにすべてを自分の描いた枠の中へと導いているかのようだ。
英雄と指導者の違いは、英雄は献身であり、指導者は羨望や嫉妬の視線の中で、人々を導いていくことだ。
地球の二十世紀末期、こんな寓話がある。山間部の高校入試を突破した優秀な学生が、東部の高給を捨て、決然として自分が育った山間部でボランティア教育に赴き、自分の青春を捧げ、より多くの子供たちの将来の成功や明るい未来を願った。しかし彼が戻ると、山間部全体の人々は表面的には礼儀正しくしていたが、裏では学問無用論が流行り始め、その年の就学率は大幅に低下した。二ヶ月後、この優秀な学生は何も言わず、すぐに去り、東部で発展し、三年後に錦衣で故郷に帰り、富を誇示した。
これは実に現実的な社会問題である。地球が電子時代を迎える前、社会主義国家が突然色褪せ、再び資本主義へと回帰したことは、当時のすべての人々に責任があることを示している。このような社会において、発展の目標を導こうとするならば、物質的利益という模範がもたらす効果は、献身的な感動よりもはるかに効果的である。
今、この深く廃墟と化した区域に、軍人が変革を説き理想を語ろうと入ってきても、ことごとく失敗に終わっている。軍人が成し遂げられないのは、決して軍人が無能だからではなく、この場所があまりにも物質主義に染まりすぎているからだ。
これこそが、盧安の意識群がわずかに高慢になっている理由である。ここの人間社会はあまりにも物質主義的で、物質が法則に従って動く様を前に、人類は未来の過程を予見した後、自然と見下す心構えに陥ってしまうのだ。
蒼劍門派から下山した二百人以上は、すでにある繁華な都市に到着していた。この都市は孫家の地盤である。趙明意が推測した通り、自分を始末する前に、道門の老練な者たちと世家との間には、まだいくつかの利益について話し合う必要があった。
しかし、趙明意はまず自らの利益線を提示することにした。




