0507 商人
長槊を趙明意は左手で四十五度に持ち上げ、そして槊をまるで槍のように投擲した。穂先が後ろ、柄が前にあるため、重心が後ろに傾き、空中で数回転しながら三十メートル先の田んぼに落ち、草地に斜めに突き刺さった。
趙明意は手を引き、剣の柄に置いた。白く輝く刃が鞘から抜き放たれると、全員の頭が真っ白になった。隊列の後方でさして目利きでもない税吏でさえ、趙明意の手にする利刃が神器クラスだと感じ取った。趙明意が剣を掲げると、剣芒が空へと立ち昇る!五六十メートルの剣気が突如現れ、空の光を反射し、地上に五十メートルの長さの光の痕を映し出した。
この輝かしい剣光が収まり、趙明意も殺気を引っ込めたが、しかし彼は身を動かすと、再び剣を振るい始めた。剣先は空気中で瞬間的に伸び縮みし、耳が痒くなるような震え音を立てた。人々の目には、趙明意はまるで鋭い光芒を四方に放つハリネズミのように映った——剣芒は瞬時に何百回も飛び出し、ある者の足の裏が刺され、ある者の手のひらが刺され、ある者の頬が刺された——頬を刺された当人は扁桃腺で剣芒の鋭さを感じ取ることができ、もし剣芒がもう一寸伸びていたら、それは死である。
趙明意は一陣の風のように、三秒で四十メートルの距離を走り抜けた。彼は周嵩が反応する間もない速さで、その側をすり抜けた。周嵩の体は思わず微かに震え、その後首筋に微かな痛みを感じた。
周嵩は瞳孔が大きく開き、一瞬自分が少しでも動けば首が飛ぶと思い込み、息をすることも動くこともできなくなった。
一秒後、周嵩が自分の首を触ると、出血しているが首は繋がっており、どうやら浅く薄皮を切っただけのようだった。
背中に冷や汗がどっと流れたこの一秒間、周嵩の背後では悲鳴が爆竹のように響き渡ったが、自身の首元だけに気を取られ、しばらく聞こえなかった。周嵩が振り返った時には、四十人以上が既に武器を奪われ、武器を握っていた手のひらは全て貫かれ、他の者たちは慌てて脇へ飛び退いていた。
これらの兵隊崩れは人を殺す度胸があり、互角の相手には命がけで立ち向かう。強敵に遭遇しても、周りに味方が多く、上から厚い褒美が出れば、大声をあげて血眼になって突っ込んでいくこともできる。厚い褒美の下には必ず勇者がいるが、それは彼らが恐怖しないという意味ではない。これらのいわゆる戦を恐れぬ者たちの目には、抗いがたい力に直面すると、士気はすぐに崩れる。ただ現代の軍隊だけが、栄誉のために死を賭して抵抗するのだ。そして今、これらの兵隊崩れは数十メートル離れたところに逃げ、心も凍りつく思いで趙明意を取り囲んでいる。
まだ刃物が自分に向けられているのを感じ、趙明意の手にした剣はすぐに動いた。十数条の剣芒が手にした剣刃から放たれ、周囲二十三メートルの範囲を覆い、再び十六人の兵士の掌が貫かれた。これが最後の一押しとなり、兵士たちは次々と武器を手放した。
そう、上官の目の前で、彼らはまだこれほど大胆に武器を捨てることはできず、ただ趙明意に向けていた刀を下ろし、腕をだらりと下げて刀を地面に引きずる姿勢に変えただけだった。
趙明意は満足げに微かにうなずき、片手で剣を鞘に納めた。恐るべき鋭さが収まり、周囲の人々は極度の緊張から解放され、彼らはすぐに自分の「どきん、どきん、どきん」という心臓の鼓動を聞いた。
趙明意は振り返り、茫然自失の周嵩を見ると、顔の冷酷さが氷霜が溶けるように消え、笑顔を見せて言った。「将軍、剣舞は終わりました。」
周嵩は今や言葉を失っていた。これほど速い剣、これほど鋭い剣鋒は、彼の認識を超えていた。
後方で観戦していた韓濤は馬を下りて言った。「まさか、私の統治下に先生のような達人がおられるとは。」
これらの名門子弟たちの、その場で風向きに合わせて態度を変える様子は、市井の主婦たちに少しも劣らず、時にはそれ以上に柔軟であった。
市井の間で伝わる名門子弟の気位と節義なるものは、そもそも平頭の庶民がこれらの名門子弟の俗物的な一面を引き出す資格を持ったことがないからに過ぎない。だからこそ、無知な愚夫愚婦たちの推測のもとでは、かれらは矜持高く決して頭を下げない性格だとされているのである。
韓濤は簡単な言葉で、元々兵を連れて強盗に来た悪質な行為を、大勢で隠居高人を訪れる風雅な行いに変えた。韓濤のそのような態度について、趙明意は指摘しなかった。趙明意はもともと世家に期待していないので、当然、目の前のこの二人の世家子弟に高い基準を求めたりもしない。趙明意の目には、いわゆる士子の風流は、本質的に世家という階層の人々が普通の人付き合いを包装して、一般人を騙すためのものに過ぎない。趙明意はこれらの世家を全く重視しておらず、いわゆる世子たちにも何の期待も抱いていない。趙明意の目には、この二人は一喝して警告してやらなければ、素直に自分と商談できない連中だ。
双方が挨拶を交わした後、三人は大勢の兵士を置き去りにし、数十人の従者だけを連れて青崖山地域へと向かった。
そして今、韓濤と周嵩が青崖山の地域に到着したのは、もはや自らの意思ではなく、趙明意の招待によるものである。趙明意が主で、韓濤と周嵩は客である。客は主の都合に従う。
趙明意は率直に彼らを倉庫へ案内した。中には山積みの鉄器、鉄鍋、鎌、鍬などがあった。そして趙明意の意図は、すでに手短に明らかになった。「鉄器を買いますか?」
趙明意がこれらの人々に見せたのは農具だったが、意味深長に周嵩を見つめ、その言外の意味は「もし武器が必要なら、それも話しやすい」というものだった。
「朝廷は塩鉄を専売しており、勝手に鉄器を製造すれば重罪になる。」韓濤は戒めるような口調で交渉の第一声を発した。
これを聞いて趙明意は嘲笑を一つ漏らし、言った。「朝廷はなお明言している、みだりに百人以上の私的な集団を成した者は、枷をはめて京へ送ると。」趙明意は今や百人どころではないだろう?彼は笑いながら韓濤に言った。「もし朝廷の律法に従えば、この天下で罰せられる者は多いだろうな。」趙明意は田舎の小民のように、適当な言葉で脅されるような者ではない。
韓濤は乾いた笑みを数度こぼし、心の中で“无法無天な奴め”と思いながらも、趙明意の企図を危惧した。韓濤から見れば、もし趙明意の企図が謀反であるなら、自分がもし協力すれば、将来累が及ぶであろう…そう考えると、韓濤は乾いた笑みを浮かべて言った。「あえてお尋ねしますが、公子はどちらから?あなたの才をもってすれば、天下に往くべき場所は多々あるでしょうに、どうしてこの地に伏臥していらっしゃるのですか?」
趙明意は知っていた、韓濤が自分の素性を探ろうとしていることを。自分に不安を抱いているのだ。何しろこれは禁制品に関わることであり、双方が互いのことを知り尽くしていなければ、より大きな取引を進める勇気は持てない。それは官界と同様で、事情に精通していなければ、金を渡そうにも上の者に届けることができない。高官は、その賄賂が政敵から送られた毒の餌であることを恐れるのだ。
趙明意は韓濤の懸念を理解し、やむなく口にしづらい表情を浮かべ、ためらいの様子を演じてから、自分の玉牒を取り出した。
韓濤はその玉牒を見ると、目を輝かせたが、その後、困惑した様子で尋ねた。「お伺いしてもよろしいでしょうか、あなた様はどちら様で?」
趙明意は言った。「拙者は蒼劍派の弟子、趙明意でござる。何らかの理由により、今回師門を離れたのは、ある事を成し遂げるためでござったが、残念ながら事は失敗し、ここでしばらく身を潜め、何とか功を立てて過ちを償おうと思っておる。」
「趙明意……」韓濤は心の中でつぶやいた。その名に聞き覚えがあった。しかし、傍らの周嵩が突然尋ねた。「お主は趙明意か?蒼劍派の趙明意か?!」
趙明意はうなずいて言った。「それがしでござる。」
周嵩は続けて言った。「趙殿、孫府では機知に富んでおられましたな!」
趙明意は首を振った。「ああ、あのいざこざの場から逃れるために、面目を丸つぶれにしてしまった!お二人とも、笑わないでいただけるとありがたい。」
韓濤も趙明意が誰か分かった。何しろ世家の世界は狭いもので、何か新しい出来事があればすぐに知れ渡るのだ。
孫府のその後の件は大騒ぎになった。道門は趙明意が山門に戻っていないと言い、蒼劍派は名指しで京城の世家に趙明意を密かに害したのかと問い詰め、一方京城の世家は蒼劍派が言いがかりをつけていると言った。双方の言い争いは激しかった。実のところ、蒼劍派が守ろうとしているのは趙明意だけではなく、鍵となるのは賀明古だった。賀明古が無実の罪を着せられ、彼の師匠は激怒した。
自分の立ち去りがこれほど大きな波紋を呼んだと知り、趙明意の心は少々気まずく、顔には愛想笑いを浮かべて言った。「お二方にはどうか内密にしていただきたい。こんなに早く師門に戻って謹慎するのは御免だ。」
韓濤と周嵩は理解を示したが、商売の面では進展が難しかった。塩と鉄の取引は重大な関係があるからだ。趙明意の今回の行動は越権行為であり、道門が世俗に干渉するものだ。この二人の名家の子弟は会話中は穏やかな顔色だったが、鉄器商売の話になると、一様に首を振った。
数回のやり取りの後、趙明意はようやく理解した。彼らは自分が門派に戻らなければならないことを見越していたのだ。ひとたび門派に戻って反省のための閉関に入れば、必ずや趙明意がこの山間に残した産業をこの二人が手中に収めることができる。
この点を考えて、趙明意はため息をついて言った。「どうやら、私はひとり相撲を取っていたようだ。まあよい。ただ近頃、どうしても門派に戻れそうにない気がして、この山水の間で気ままな客として暮らすことにするよ。その時は、お二人ともよく会いに来てください。」
これを聞いた韓濤は乾いた笑いを浮かべて言った。「趙兄、何を言っているんだ。趙兄の修業をもってすれば、蒼劍門の先輩たちがそこまで君に無理を言うことはないだろう。」
趙明意は門内の状況に怒りを感じているふりをして言った。「お前たちは蒼劍門の事情など知るまい…」その後、趙明意は失言をしたふりをして、二人に乾いた笑いを見せながら言った。「お茶をどうぞ、お茶を。そんな煩わしい話はよそう。」




