0476 設計済みの任務
数十キロメートル先で、十数個の巨大な蘿拉ーがこまのように宇宙空間で回転している。
この理解不能な現象に直面して、この世界の多くの蘿拉ーに搭載された航法知能は、データベースの既存の知識に基づいて以下の二つの推測を行った。
推測1。何らかのブラックホールであり、このブラックホールの性質は以前地球で観測されたものとは異なる可能性が高い。地球上でブラックホールに与えられた性質はあまりに画一的だ——100太陽質量の糞と100太陽質量のケーキが崩壊してできたブラックホールは、性質が基本的に同じである。これが地球上での人間のブラックホールに対する認識であり、既知の理論と既存の観測に基づく、宇宙ブラックホールへの推測にすぎない。
しかし、人間の理論は不完全であり、人間の観測もまた一面的である。ブラックホールという質量の特異点は、必ずしも原子性質の物質の崩壊だけで形成されるとは限らない。この宇宙には、質量を持つものは原子類の顕在物質だけではない。地球上では、宇宙に関する最も重要な質量理論——暗黒物質は、答えを与えていない。
宇宙で説明できない質量は暗黒物質と呼ばれ、しかもその部分の質量は少なくない。だから、宇宙のブラックホールがすべて可視物質の崩壊によって形成されたとは絶対に言えない。しかし、人類はブラックホールを理解しようとするとき、設計するモデルは理想的な可視物質の崩壊モデルでしかありえない。
これは陸地にいる人が海を眺めて、海の水で灌漑できたらどんなにいいだろうと思うのに、知らないうちに、海水には水の他に塩もあるということだ。しかし、実際に一口味わってみることもなく、実践することもなく、河川の淡水という既存の理論を通じて、海が陸地の農地灌漑の需要を満たせると仮定した概念なのだ。
だから、目の前のこの物体が異常なブラックホールである可能性を排除できない。
二つ目の推測は渦です。宇宙において、大規模な重力場の相互作用により形成される時空間の渦、略してワームホール。もしワームホールであるならば、そのワームホールはどれほど持続し、どこへ通じるのか?これは謎です。それが何であるにせよ、資料が極度に不足しているため、人類の知恵を受け継ぐ人工知能はこれが何であるか判断できず、現在の危機に対処することもできません。
現在盧安が到達したこの次元で、人類が直面している問題は、すべての文明が宇宙に進出する際に遭遇するものです。『三体』で言う「文明が一つの小さな智子によって技術をロックされる」ことは、実は不可能です。なぜなら人類は基礎物理を推進する他の探求現象の方法を常に見つけることができるからです。
人類のすべての物理理論が探求する物理現象は、実際にはこの世界に広く存在している。人類は質能変換公式を発見する前から、すでに核融合の光の恵みを受けていた。人類が量子理論を認識する前から、実際にはすべての粒子に量子もつれ現象が常に存在していた。人類の物理理論で説明できない現象は、実際には私たちの身の回りで常に発生している。その現象は完全に隠されることはあり得ても、取り除くことは不可能だ。一旦取り除かれれば、必然的にマクロな世界全体に天地を揺るがすような変化をもたらす。つまり、たとえ異星文明が人類の宇宙観測の方法の一つを遮断したとしても、人類は完全に別の方法で宇宙を観測できる。なぜなら、宇宙現象は広範囲にわたるからだ。この広範囲な現象は、多角的に観測することができる。
『三体』の人類は地球上では、新しい現象を観測する手段がそれほど多くないため、人類の技術を一時的に封じ込めてしまう。しかし、人類が宇宙へと歩みを進めると、観測可能な現象や観測手段が格段に増える。
宇宙船にて、この人類文明の視点に立った盧安は、地球文明の科学技術発展史を突然振り返り、文明の星間航行は危険で不測の事態に満ちているように見えるが、実は安定した太陽系という島を離れることでこそ、人類文明はこの「技術の枷」をこじ開けられるのだと、はたと悟った。
盧安の超能力は、一種の暗黒物質構造であり、今その超能力が数百倍に増大したのも、おそらく現在の特殊な宇宙環境によるものだろう。
ただし、盧安は今理解した。これほど何倍にも増えた超能だが、現状ではほとんど役に立たない。なぜならここは宇宙であり、超能がどんなに強力でも、自分の炭素基体が乗るシャトルが壊れれば、それで終わりだ。広大な宇宙を渡るのは、アリが脚で海を渡ろうとするよりも、ずっと当てにならない行為なのだ。
いったい、これらの一つ一つの円筒世界にいる人類に何が起きたのか? この探索の機会を掴んだのか、それとも星空の中に完全に迷い込んでしまったのか? あるいは生命形態を変容させ、例えば盧安のような超能を生み出したりしたのか? すべては知る由もない。
しかし今、盧安はこの位面の人類文明の命運を気にかけている場合ではない。盧安は思う、自分は地球の中の「原始人」に過ぎず、この宇宙時代の人類たちを気遣うような福にはまだ恵まれていないのだ。
盧安はこの文明の壮大な瞬間に感嘆しながら、光の幕を開いた。
この時の光の幕は、もはや「演変の光幕」と呼ぶべきものだった。なぜなら、進化が命令を下していたからだ。進化が盧安に下した命令はただ一つ。時空混乱領域に入り、残留ノードを探せ。
進化が下した命令は一言だけだったが、盧安は推測を始めた。
他の小隊は命令を受けると仲間と議論するが、盧安の場合は一人で推測するしかなかった。
予測1。まず、自分が入る領域は時空混乱領域である。明らかに、ここの時空は乱されている。
予測2。ノード?ノードは時空を越える怪物が残したものだ。つまり、この壮大な宇宙現象には、時空超越者が絡んでいる可能性がある。
予行演習三。なぜすべての大変革の時期に、これらの自由に時空を超える存在はいつも邪魔しに来るのか?!
予行演習四。盧安は、自分が自分自身まで罵倒してしまったように感じた。
もう構わない。盧安は宇宙往還機のすべての運動エネルギーを制御し、速度の方向を調整して、目の前で絶えず回転する領域にゆっくりと近づいていった。目の前のブラックホールのような現象は、まるで水洗トイレのように、巨大な蘿拉ーが螺旋状に並んでいた。
近づく過程で、盧安はまた驚くべき事実を発見した。目の前のこれらの蘿拉ーの集まりは回転が遅くなり始め、外側の星の光は肉眼で見てわかるほど回転し始め、まるで星が東から昇り西に沈むかのようだった。
これは、自分のいるシャトルも今、回転に伴って回っていることを示している。まるで飛行体が自転する惑星の大地に降り立ち、大地の自転に従って空の回転を見るようだ。
だがこの時、盧安のいるシャトルは大地に接しているわけではない。眼前の空間には果てがなく、むしろますます広がっている。盧安は、目の前のこの空間領域が最初に見た数十個の蘿拉ーだけではなく、百個以上の蘿拉ーがあることに気づいた。それまでは見えなかったのは、これらの蘿拉ーが極めて小さく、しかも回転速度が極めて速く、レンズで縮小されたかのように目立たなかったからだ。正確に言えば、この奇妙な時空の渦の内部は大量の空間と時間を圧縮しているのだ。
「ピピピ」と、盧安が乗っているシャトル艇から激しい警報音が聞こえてきた。シャトル艇内の立体スクリーンが次々と現れ、一連のデータが表示される。データ欄の最初には「雍州」の接頭辞があり、例えば雍州774、雍州874など。そして後ろの方で警報を発しているこれらのデータが、問題の核心が時間であることを示している。これらの円筒型宇宙船での時間の流れる速さが、自分のシャトル艇のそれと一致していないのだ。
時間が一致しないということは、自動ドッキングを実行するのが難しいことを意味する。言うまでもなく、すべての自動化はコンピューターが正確に時間に従って実行される必要がある。そして今、各空間部分の時間の流れる速さがなんと一致していないのだ!
盧安は心の中で「ドキッ」とし、不吉な予感が胸に浮かんだ。
今では盧安もわかっている、自分の不吉な予感は毎回当たるということを(盧安は三階で、この種の予感はかなり正確だ)。
案の定、盧安を歯噛みさせる出来事が起きた。シャトル艇のシステムがピーピーガタガタと大量に話し始めた。
自動ドッキングができない、では次に何をすべきか?船のシステムはすぐに解決策を提示した。その解決策を提示する際には非常に礼儀正しく、盧安に選択の権利があるとし、選択しなくてもよいとした。それは意識伝送だった。それらの船内にある予備の身体を起動し、大脳の記憶チップを活性化させ、そしてシャトル艇にいる盧安に、思考情報をそれらの船へ送信させ、記憶チップを活性化させるのだ。
この意識伝送には、盧安はどうも違和感を覚えた。自分はつい最近、ようやくこの段階にたどり着いたばかりだった。例えば主世界での盧安の両生類状態は、意識が同時に星隕奇と盧安の中に存在しているということだ。これが意識穿梭なのだ。
それぞれの徴募兵が同時に行動する、つまり自分の意識が異なる記憶の中の徴募兵に移動する、とも言える。なぜなら徴募兵の仕事はそれぞれ違い、ある者は掘削機を運転し、ある者は測定をしており、同じ時間に考えている内容も異なるからだ。もし盧安の予行演習の使い方が未熟だと、掘削機の記憶を測定準備中の徴募兵の体内に持ち込んでしまい、そうなると混乱が生じ、すべての徴募兵に思考の混乱や注意散漫などの深刻な結果が現れる。
だから、一つの予行演習が終わり、盧安の意識が次の徴募兵の体内に入った後は、できるだけ前の徴募兵の記憶を持ち込まず、問題解決の理想と偉大な目標への憧れだけを伝達する。
大量の記憶を捨て、意識のみを伝送する、これは盧安が主世界で最近達成したことであり、今のこの任務でそれを実践できる。これにより盧安は、この任務が自分のために特別に作られたのか、それとも自分が「人格任務」をするために特別に作られたのかと疑わざるを得なくなった。
盧安は後者に傾いている。「つまり、自分は主世界の中で計略にはまっていて、相手は最初から自分に休暇を与えるつもりはなかった。名目上は休暇だが、実際にはこの任務を遂行させようとしているのだ。」
想像してみてほしい。上司は名目上あなたに休暇を与えるが、実際には休暇中にたくさんの「アクシデント」が発生し、あなたがそれらの「アクシデント」を処理し終えると、休暇がちょうど終了する。そして上司は、休暇前にあらかじめ作成された作業計画を持ち出し、それがちょうどあなたとそれらの「アクシデント」に関連しており、その時あなたは経験豊富にそれらの計画を処理できるというわけだ。
盧安は自分の状況を悟った。
その時、高次元の元一はぶつぶつと呟き続けていた。「クレームをつけろ、早くクレームをつけろ、怖気づくな…」すると、|演変《演変》に微笑を浮かべながらチラリと見られ、すぐに口を閉じた。




