0454 上海事件
広々とした空間で、|演変《演変》との対話が終わると、盧安は|演変《演変》によって主世界に戻された。時間は再び最初に戻った。
盧安の目には、再び天雲が都市密集地域に到着する場所が見えた。しかし今やそれが最後のものとなった。
盧安はまっすぐに虚空へと飛び立ち、何の抵抗も受けなかった。天雲の周りの彩雲は寸断されていく。透明な琉璃質の長剣が彼女の胸を突き刺したとき、すべては本当に終わった。
盧安の手にある剣は、実は普通のガラスを溶かした後、冷却速度を制御して、ルパートの涙の内部結晶構造に似せて形成したものである。
ルパートの涙は銃弾の衝撃を受けると、尾の先端部分に衝撃が加わった場合のみ、全体が粉砕される。これは、この物質の内部構造が一方向において非常に硬く、外部からの一方向の破壊は極めて困難だが、内部から破壊されると粉砕されるためだ——結晶の異方性がここで如実に現れている。
盧安が手にしているこの長剣とルパートの涙の違いは、マクロな構造にある。ルパートの涙は不規則だが、この長剣は凝固過程が超能力によって制御されているため、規則的である。
今、この瑠璃の剣は陽光の照射を受け、透き通った彩光を放っている。
盧安と天雲は今、高層ビルの上50メートルの場所で空中で向かい合っている。
画面で見ると、これは非常に美しいシーンだ。盧安は透き通った長剣を手に、仰ぎ見るような女神の胸に突き刺す。そして深く傷ついた女神の体は、柔らかな光の中で光の粒子を散らし始める。周囲の空気は水波のように、神女の体からきらめく七彩の光を帯びて、次々と外へ広がり、まるで神話に描かれる墜落のようだ。天雲の体から放たれる光が、盧安のやや毅然としながらも、かすかに茫然とした美しい顔を照らし出す。
この仙境のようなシーンでは、刺す者と刺される者は敵同士でありながら、どう見てもお似合いで、まるで世界全体がこの二人を中心にして、この場面のために震えているかのようだ。
神女が砕け散った後、高空で盧安を中心に、光線を歪めるリングが突然すべてを走り抜け、天の果てまで拡散していく。
この時、周囲数キロにわたって都市の中心を見上げる傍観者たちは、この美しくも悲しい幕引きを見届けた。
当事者に至っては、都会の人々には理解しがたい心情を示していた。この時、心の共鳴は壮大なダークマター構造の崩壊とともに徐々に薄れつつあった。盧安は都市の大部分の共鳴から伝わる痛惜の念をやや重苦しく感じ取り、物事は変わってしまったのだという孤独感が盧安の心情に浮かんでいた。過去数十万回の輪廻の中で、自分は数え切れない非難を浴びてきた。しかし今、現実では、全ての悲劇が起きず、人々の反応がこのような大団円の結末を保っていることに、盧安はさまざまな思いが胸に去来した。
これが変容の大きな手並みだ――位相上の一片の時間を消し去り、そしてそれらの時間線で起こった出来事が拡散する可能性を一切なくし、すべて盧安の身契の時空結晶内へと注ぎ込むのだ。
崩壊したのは天雲の炭素基盤の肉体だけではない。一秒後、天雲の暗黒物質の肉体が崩散し、広大な暗黒物質場が拡散した。
巨大な暗黒物質構造が崩壊し、真っ先に影響を受けたのは当然盧安だ。もちろん、盧安は最も影響が小さかった。時間結晶内での六十万回に及ぶ瀕死のあがきの中で、盧安の超能は驚くべき程度にまで変化していたからだ。今や、それを決して導力超能と呼ぶことはできない。なぜなら、その超能は今、より多くのことを成し遂げられるからだ。
荒れ狂う暗黒物質の潮流の中で、大量の暗黒物質が盧安の超能を洗い流し、一方で盧安の超能場もこの潮流を吸収していた。
しかし、街中の超能力者たちの知覚はそうではなかった。超能力者たちは一人また一人と苦労して空を見上げ、盧安のいる空の位置から巨大な圧力が伝わってきた。盧安を中心として、上海地区五十キロメートルの範囲内では、すべての超能力者が超能力を使えず、超能力を使おうとしてもすぐに消散した。
しかし、その影響範囲は実際にはさらに広く、三千キロメートル離れた日本の蛇部の超能力者たちも、上海で起きた出来事の中で、自分の超能力が安定して使えなくなる現象を感じ取った。
この感覚は、かつて潘陽が食堂で盧安に制圧された時のものだ。あの時、彼の超能力も盧安によって完全に抑え込まれていた。あれは盧安が自発的に潘陽の周囲のダークマター組織に干渉したものだが、今回は天雲のダークマターの身体の崩壊がもたらした衝撃だ。この広大な衝撃の下で、あらゆる超能力者の周囲のダークマターフィールドは、まるで風雨に揺れる浮き草のように揺れ動いている。
この衝撃の中心で、盧安は依然として天雲と共に高空に浮かび、この世界の審判の視線を受け止めている。
「お前はなかなか良い、だがまだ長い道のりがある。」天雲は微笑みながら盧安を見つめ、まるで彼女の胸に刺さっているのが剣ではなく、一本のバラであるかのようだ。
天雲は四階層の個体として、盧安のような低階層の存在に対して否定的な感情を示すことはない。まるで剣士が自分を刺した剣を見ても、その剣を恨まず、剣を持っていた者を恨むのと同じだ。その剣に対しては、恐らく「なんと速い剣だ」と称賛するかもしれない。
天雲が盧安に称賛を送るのは本心からだが、高次元で彼女に仕掛けをした存在への恨みも変わらず深い。
この長い間自分と関わってきた存在を見つめながら、盧安はしばらくどうすればいいかわからなかった。過去の予行演習では、盧安は天雲を滅ぼすことを目標としていたが、今、天雲の胸に突き刺さった瑠璃の剣はまだ自分の手に握られている。
この目標はここで終わった。天雲が去っていくのを見て、盧安は自分と対話してくれた高次智慧体に思わず尋ねた。「私もいつかあなたのように優秀になれるのだろうか?」
天雲の水のような声がぼんやりと響いた。「君が正面から向き合えるようになったとき。」
この言葉を言い終えると、天雲の体は完全に色とりどりの雲霞に変わった。それと同時に、都市全体の心の共鳴が途切れた。
そして、途切れたまさにそのとき、バーにいた西塞は轟音とともに地面に倒れ、潘陽も宋愉の腕の中でぐったりとした。上海中のすべての心霊能力者が、一斉に脳の過度の疲労によるショック状態に陥った。
低次元で見ればこの別れは非常に幻想的だが、高次元では、元一が面倒を起こした天雲を厳しく罰しているところだった。
天雲の最後の言葉は、地雷を埋めるようなものだった。天雲は盧安に何を正面から向き合わせようとしたのか?もちろん、自分に任務命令を下す存在――盧安の直属の上司である元一に反抗することを暗示していたのだ。
「私はもうダメだ、裸で刑務所にぶち込まれても、お前たちを安穏とさせはしない!」実は、天雲のこの一手は|演変《演変》を陥れようとしたのだ。
元一は非常に怒っているが、|演変《演変》は傍らで平然と戦利品の分配大会を取り仕切っている。
天雲が花火のように消え去り、空に消えたとき、盧安の手にあった透き通った剣がゆっくりと掌から滑り落ち、数十メートル下の地面に触れると、轟音とともに大量のガラス粉となって砕け散った。
この剣とともに粉々になったのは、盧安のこの世界での過去でもあった。
過去は、ついに過ぎ去った……
戦闘が終わると、多くのドローンが高空の戦艦に戻った。その後、これらの戦艦は太平洋方向へ飛び去り、自動的に深海に潜っていった。
輪廻者への全面的な打撃から、天雲を見送るまで、合計四十五分かかった。しかし、上海にとっては、すべてはまだ始まったばかりだ。
盧安が天雲を片付けた後、分体が一枚のリストを持って市政府の司馬仰のオフィスにやって来た。精神リンクから激しく息を切らしたばかりの司馬仰は、突然侵入してきたこの人物を呆然と見つめた。
戦闘は終わったが、あまりにも速く起こったため、司馬仰はさっきの出来事の主人公が誰なのかすら知らなかった!盧安の分体が自分のオフィスに来てリストを置いたのを見て、司馬仰はそのリストを手に取り、やや困惑しながら盧安を見た。
すると盧安のその分体は真剣な表情で言った。「これは私の初步調査です。御覧ください。ここに記録されている今回の事件による上海市の被害は、多少の誤差があるかもしれませんが、第一陣の損害補償はすぐに届きます。」
盧安の分体はノートパソコンを取り出した。画面には三人の資料、湯宏康、李星霽、盧九重が表示されている。この三人は司馬仰ももちろん知っているが、彼は盧安を知らない。
司馬仰は顔を上げて言った。「ゆっくり話してください。そうだ、水は必要ですか?」
司馬仰はまだこの時の状況を知らないが、彼はとても落ち着いている。
盧安の分体は首を振りながら言った。「いいえ、結構です。ありがとう。」盧安はパソコンの三人を指さして言った。「彼らの口座には相応の資金が振り込まれる予定で、今回の事件の損失を賠償できるはずです。」
この上海の戦いでは、この戦闘で死者は一人も出ず、主な破壊は二十数台の自動車、六万枚のガラス、六百脚の机と椅子だ。最も深刻な破壊は、おそらく「憤怒」のいる港湾埠頭と「怠惰」のいる研究所だろう。全体として、損失は五千万を超えず、さらに負傷者もいないため、盧安は自分でこの金を返済できると見積もっている。お金については、当然「貪食」という中東の富豪からゆすり取ったものだ(詳細は0445章参照)。天雲と戦う前に、盧安は既に事後処理と賠償を考えていた。
司馬仰は茫然と尋ねた。「すみません、あなたは?」
盧安の分身は笑いながら言った。「私のコードネーム?泥鰍だ。後会無期」。
「ドスン」という音とともに、司馬仰の手にあったペンが机に落ちた。先ほどの精神同調の中で、自らを泥鰍と名乗る存在は一人だけだった。
司馬仰は盧安を呼び止めようとしたが、オフィス内にバリアが現れた。バリアは四十秒間続き、バリアが解除された時には、このビル中どこにも盧安の姿はなかった。
司馬仰のところは、数多くの後始末の一幕に過ぎない。
事が終わってから五分以内に、盧安の各分身はそれぞれ各所へ走り、地下世界など、自分の残したものを処理した。精神同調の中でこの体系の存在を暴露してしまった以上、誰かが必ず探りに来るだろう。
だから、盧安はそれらの工業施設を停止させなければならない。さもなければ、彼らが掘削することで水素漏れや爆発が起きたら大変だ。さらに、いくつかの地下通路には二酸化炭素検知器が設置されており、誰かが誤って入って死ぬのを防いでいる。盧安は自宅に、これらの地下工業施設への入口や各種安全マニュアルまで残している。
二時間後、街中のスピーカーから放送が流れた。「皆さん、落ち着いてください。侵入警報は解除されました(実際には全く発令されていませんでした)。自宅で待機し、通りをうろつかないようにしてください。」その後、大量の軍用車両が街に入り、街の秩序を維持した。
市政府の司馬仰は机の上のリストを注意深く見ている。彼の机の上には、先ほど手書きされた書類が置かれている——
『上海事件報告書』




