0442 極めて弱い傲慢
量が全てを決めるわけではないが、誰もが質を高める忍耐を持たないとき、量が最も強いと考えられている。
輪廻者たちの目には、鄧雯は最強と映っているが、盧安に言わせれば、彼女の超能力は最も失敗している。
空中で、三分目に鄧雯の超能力総量は盧安の全盛期の二倍に達した。彼女はそれで盧安を半径五十メートルの球形空間から追い出そうとしたが、ついにできなかった。
盧安の甲分体が人造の身体であることは以前から理解していたものの、鄧雯にはその分体に非生命の気配がまったく感じられなかった——盧安の動きはあまりにも柔軟だった。攻撃を避ける際、四肢と胴体が空中に描く弧は、まるで舞踊のように洒脱で鄧雯をうっとりさせ、いかなる力の干渉も避けてしまう。甲分体の周囲を取り巻く光の点が、空中に長い光の帯を曳いていた。
光帯は主にエネルギーコアの反応粒子で構成されている。エネルギーコアはレーザー点火による核融合反応システムであり、反応粒子はエネルギーを導出する構造である。超エネルギー場の総量から見れば、鄧雯は優位に立っているかもしれないが、エネルギーから見ると、鄧雯が操れるエネルギーは盧安に遠く及ばない。
この5分間、盧安はほとんど攻撃を行わず、鄧雯は盧安が定めた範囲内で激流、爆発、電光、雷鳴を発生させたが、一つとして確実に命中せず、むしろ盧安の舞動に特殊効果を加えているかのようであった。盧安はまるで風雲の中で自在に舞う遊龍のようだ。
この回避は非常に美しく、空中体操のように人目を引くものの、盧安はこの一連の回避方法に「龍遊法」や「鳳舞功」といった派手な名前を付けることはなかった。もちろん心理的な理由から、盧安はこれらの動作の出典に基づいて名付けることもせず、単にこの一連の動作を駆動するコードで命名したに過ぎない。実際には、この一連の回避動作の標準的な源は、盧安のハエのバイオニクス研究にある。ハエが牛の尾や豚の尾の横振りを避ける飛行軌跡と、盧安の現在の分身の飛行軌跡は非常に似通っている。さて、理系学生の発想とはこうも無粋なものか。この考え方の祖は莊子の「道は屎尿にあり」である。
半径五十メートルの球形空間は、見た目には大きくないが、体積は五十万立方メートルに及ぶ。鄧雯は盧安の全盛期の二倍の超能場の体積量を持っていたが、彼女の能力の失敗は、単に超能の総量を複製しただけという点にある。この複製は他の相手には優位に立てるかもしれないが、時間の面で不利を被る。「傲慢」、これは輪廻者にとって七大主錨最強の一人だが、今や盧安の目には最も弱く映っている。なぜなら鄧雯が複製したのは相手の能力に過ぎないからだ。他人の能力を複製しても、結局は他人のものであり、経験や使い方まで一緒に複製することはできない。
まず、鄧雯には導力の脈絡がない。盧安は無数の予行演習の中で試行錯誤した結果、導力の脈絡体系を自分のあらゆる動きの構造に合わせて調整したのだ。そして、盧安が今見せているこの一見機敏な回避は、分身が本体の導力の脈絡体系をコピーしているからこそ可能なのだ。人造の身体でありながら、ほとんどの人よりも機敏に動ける。さらに、もし身体にこの導力体系が重ねられていなければ、分身はとっくにこの極限運動が生み出す巨大な過負荷でバラバラになっていただろう。そして、盧安の機敏さとはまったく異なるのが、鄧雯の非常に荒っぽいジグザグの軌跡だ。彼女はジグザグ飛行の中で、もともと白くて可愛らしかった顔が真っ赤になっている。これは巨大な過負荷が原因だ。
さらに、鄧雯は超能力場を正確に利用して機械力を盧安の位置に導くことが全くできなかった。そのため、半径50メートルの球形範囲内に次々と発生する爆発的な流れによる光と音の効果が地上の多くの超能力者の注目を集めたとき、盧安は悠然と安全な空間へ移動していた。この時盧安の分身体に一瞬輝く最大超能量は鄧雯の40分の1にも満たず、しかもその最大値は0.3秒しか現れなかったが、周辺数キロ範囲内で見上げていた観衆たちは、どちらが強くどちらが弱いかを理解していた。
これら見上げている人々は皆超能力者であり、外来の白銀超能力者もいれば、地元の学生もいた。一部の度胸のある者たちは高所に登り、カメラで録画までしていた。
この対決は非常に観賞価値が高く、一人は狂牛のように突進し、大量の超能力が空気を引き裂き圧縮し、波紋が目に見える形で空中に四方八方へ飛び散り、まるでヤマアラシが毛を逆立てているかのようだ。そしてもう一人(甲分体)は、このヤマアラシの毛が逆立つような隙間を余裕で泳ぎ切り、動きは淀みなく流れるように、しなやかで優雅さを失わず、まるで暴風雨の中の蜘蛛の巣のように揺れながらも崩れない。
まあ、地上で女子たちが甲分体が間一髪で爆発をかわすのを見て、アイドルを追いかける時のような悲鳴を上げた(崇民区では、神眷が持て囃されるのは正常で、しかもほとんどの人は見た目で判断するところがある)。いつも甲分体を捉えられない鄧雯は、この人たちに八つ当たりした。そのせいで盧安は、こうした巻き添え被害の対応に追われるしかなかった。
衝撃波が地上の群衆に轟音とともに襲いかかるその時、地上に残っていた甲分体が盧九重のそばを離れ、手を軽く上げて指をさした。六百メートル先で、怒りにまかせて打ち下ろした鄧雯の衝撃波が轟音とともに霧散した。
四十メートル先では、麻酔を打たれ身動きできない輪廻者たちが空を見つめ、あまりの展開に呆然としていた。彼らが設定上最強と認識していた存在が今、飛行器アレイの噴流で構成されたまばらな球殻の中にがっちりと閉じ込められているのだ。どうやら、最強という概念そのものが再定義されるだけでなく、世界全体のストリーも大幅に改変されることになりそうだ。
盧安限定の五分間(詳細は0440章参照)はあっという間に過ぎ去ったが、鄧雯は止まらず、むしろ攻撃がより頻繁になったようだ。傲慢とは傲慢さ、「傲慢」は自らそう簡単に負けを認めない。鄧雯はさらに超能を発動し、超能複製の持続時間を維持しようとした。これは彼女にとって可能なことだが、その後の沈静期が延びてしまう。しかし今の彼女はそれどころではなかった。
鄧雯を止めるため、盧安は次のリズムに入った。
分身の掌に、氷砂糖ほどの大きさの塊状のものが次々と現れる。これらの塊状物は盧安のポケットから指先へと弾き飛ばされた。それは指先の導力場の中で回転しながら粉砕され、繭のように透き通った回転体の塊へと変わる。
鄧雯は再び爆発を起こしたが、またもや盧安に当たらなかった。しかし、彼女は突然盧安が自分に向かって笑うのを見た。するとすぐに、盧安の指先の白い一筋のものが自分の顔に弾かれてきた。鄧雯は避ける間もなく、顔中に浴びてしまった。
「ハクション」鄧雯は何度もくしゃみをした。しかし、鄧雯は口を開けた瞬間、相手がその隙にまたたくさん弾き入れてきたのに気づいた。鄧雯の最初の感覚はひんやりと冷たく、すぐに特別な塩味が舌の上に広がった。塩の粉末が鄧雯の鼻腔、口腔、さらには眼窩にまで満ちた。彼女は呼吸もできず、目も開けられなかった。
鄧雯が受けている待遇は、今から14キロ離れた上海にいる一部のチンピラたちも経験している。大きな白い粉の霧が幽霊のように彼らの口と鼻を覆い、彼らが大きく息をするたびに、この塩の霧を吸い込んでしまう。このようなクズどもを、盧安は殺したくはないが、まずは0.25キログラムの塩を飲ませる。
非致死的な懲罰は、盧安が半年以上前から考えていたことだ。効果的に人の戦闘力を奪うにはどうすればいいか?塩霧を使うアイデアは、火山灰が人を窒息死させた事例からヒントを得ている。口と鼻は空気を吸わなければならないため、これらの不溶性の粉末粒子は人を窒息させる。ならば水溶性の粉末に変えればよい。盧安は最初にミルクティーの粉末を検討したが、結局塩のほうが安いと判断した。
戦闘が終わった。鄧雯は盧安に限られた時間内に圏外へ出るよう強要せず、自らも手を止めざるを得なくなった。
地上に降り立つと、盧安は適切なタイミングでミネラルウォーターを差し出し、鄧雯はそれを乱暴に奪い取った。飲み終えるとすぐに彼女は言った、「もう一本頂戴。」
甲分体はもう一本を取り出し、言った。「五分以内にできなければ、一つのことを承諾してほしい。」
鄧雯は伸ばしかけた手を引っ込め、口をとがらせて言った、「私の気分次第ね。」
盧安は水を鄧雯に渡し、言った。「お父さんがずっと待っているよ、『お父さん』と呼んであげなさい。」
「パシッ」という音とともに空のボトルが投げつけられたが、盧安の面前三十センチのところで無理やり止められた。鄧雯は横柄に言った、「なぜ余計なことに首を突っ込むの?!」
盧安は手を伸ばし、鄧雯の髪を撫でた。鄧雯は避けようとしたが逃れられない。なぜなら倍速時間が過ぎ去り、今は冷却時間であり、しかも全く勝てず、傲慢を効果的に維持できなかったからだ(天よ哀れんでくれ、あの輪廻者たちは様々な方案を設計して鄧雯を弱体化させ、どうにか一度勝とうとしているのだ)。
盧安の続く言葉は、さらに鄧雯を怒らせた。「君は年が若すぎて、何を大切にすべきか、何を笑ってやり過ごすべきかを全く知らない。」と盧安は言った。
鄧雯は盧安の手を振り解こうとしたが、今の彼女はただの女の子の力しかなく、全く反抗する力がなかった。
盧安は鄧雯の両肩を掴み、無理やり鄧大能の方へ向けさせた。鄧雯は顔を背けようとしたが、また片手で顎を掴まれ、顔を鄧大能に向けられた。盧安は、少し照れくさそうながらも期待を込めて、にこにこと手をこすり合わせている鄧大能を指さし、鄧雯の耳元でそっと言った。「父の愛は山の如し。意地を張るな。彼にはお前を叱る力はないが、それでもお前のためにできる限りのことを考え続けている。お前が一歩一歩過激になっていっても、彼は決して諦めなかったのだ。」
無理に社会的道徳を使ってこの反抗的な少女を変えようとするなんて、盧安自身もなぜそうするのか説明できなかった。しかし、盧安は自分のしたことは間違っていないと思っていた。もし本当に説明しなければならないなら、自分が白露に影響されたからだとしか言いようがなく、そしてついこの未成年者に影響を与えてしまったのだ。
しかし、七大メインアンカーの中で最も頑固な者を変えるのは、容易なことではない。鄧雯は抵抗する力はないものの、大きな悔しさを感じているようで、むせび泣きながら言った。「誰にも私を強制することはできない……誰にも!」
盧安は手を離し、一歩後退して、鄧雯が振り払おうとした平手打ちを避けた。彼は仕方なさそうに言った。「じゃあ、もう一度賭けをしよう。俺の第二の超能力をコピーしてみてくれ。」
盧安は四百メートル先の鐘楼を指さして言った。「もしコピーできたら、十五分だけ俺に付き合ってくれ。できたら、この要求は強制しない。それどころか、君の要求を一つ聞こう。もしできなければ、今の俺の要求を承諾してくれ。どうだ、もう一度賭けてみるか?」
その時、遠くの鐘楼の長針は五十二分を指していた。これは前世紀に残された古い建築物で、古びたローマ数字が百年の時の流れを物語っている。
鄧雯は冷笑して言った。「なるほど、君にはもう一つ別の能力があるのか。先ほどはあの双能力で私と対抗していたのか?それなら先ほどの賭けは無効だ、君はずるをしている、私は負けてはいない。」
甲分体はうなずいた。「では今、もう一度賭けてみるか?」
傍らの盧九重は、甲分体と鄧雯の対話を見ているうちに、何かに気付いたようだ。彼は、傍らにいる乙分体に、低い声で尋ねた。「時間か?」
乙分体は軽くうなずき、言った。「その通り、時間である。」




