0042 相殺
この時代は工業の時代であり、平和の時代でもある。人々が拳で喧嘩することしか許されず、せいぜい街中で刀を振り回して人を斬る程度の時、人々は力について全く知らない。
200キログラムの爆弾一つで、七、八十人が住む住宅棟を更地にすることができる。そしてこの時代の人々は、掩蔽壕に隠れてコンクリートの壁に背を向けると、「ここは安全だ」という錯覚をしばしば抱く。
精密誘導爆弾のタングステン鋼製外殻は、自身の作り出す運動エネルギーの助けにより、7メートルの厚さのコンクリート層を容易に貫通することができる。これは常人には想像もつかない厚さである。『岩のように固い』といった形容も、この金属製爆弾の前では豆腐と何ら変わらない。
もし高魔世界であれば、盾刃小隊はこのレベルの破壊力を阻止できたかもしれないが、この世界では、彼らはほぼ無抵抗のまま即死した。
12分後、白露はこの攻撃区域に到着した。
彼女の目の前には、直径20メートルの巨大な陥没穴がある。この陥没穴の位置には、もともと地上の建物の倒壊した残骸が存在していたが、地下駐車場全体が崩落した後、現在のこの陥没穴が形成された。
陥没穴の縁で、白露は黙って穴の中を見つめている。そして彼女の目の前では、光幕の数字が高速で跳ね回っている——元一がバーコード空間の輪廻者が死亡した後に残した空間ノードを収集しているのだ。ノードを収集した後、元一は盧安たち三人により良い戦略支援を提供できるようになる。
これまでに、元一は四種類の支援を展開している。
第一に、ロードの解除。四十メートル範囲内のすべての転移者にロードされた力を完全に解除する。
第二に、情報制圧。面全体のバーコード配下の輪廻者と所属する転移システムとの情報連絡を遮断する。
第三に、情報交流。転移者同士に超遠距離のコミュニケーションを発生させる。
第四に、全場の弱体化。面全体のすべての転移者にロードされた力を弱体化させる。
元一が以前に掌握したノードは、ループ者の個人強化を10パーセントまで弱めることを可能にした。もしこの落とし穴の中のノードを収集すれば、元一はさらに極限的なことができる。
「元一、今の状況を教えてくれ。」光幕にノードが一つずつ収集完了と表示され、そこで白露は元一に尋ねた。
「既に勝利へのカウントダウンに入っている。」元一は答えた。「16日後、任務は終了する。もし君たち三人のうち一人が死亡してノードを失い、それがバーコード空間に取得されたなら、カウントダウンは延長される。引き続き戦時警戒を維持してください。」
白露は眉をひそめ、この巨大な落とし穴を見て言った。「ここから一人逃げた。」
元一は答えた。「はい、盧安と通話していたあの穿越者は既に逃げました。4分前、バーコードは痕跡に基づいて一度捜索を実行し、盧安の大まかな方向を特定しました。」
白露は疑って言う。「四分前?最も弱っていた者が生き残るとは……元一、これは一体事故なのか、それとも巧妙に仕組まれた陰謀なのか?」
元一は言う。「バーコードは私の前で陰謀を弄する資格はない、これは事故だ。」
白露はすぐに大股で別の方向へ歩きながら言う。「こんな事故で、我々は失敗に終わるかもしれない。そんなに自信があるのか?」
元一は直接答えずに説明する。「運気、ある人には必然的な幸運が備わっている。」
これを聞いて、白露の歩みは緩まなかったが、驚いた口調で尋ねる。「盧安に何か特別なことがあるのか?」
元一は答える。「君の見方では、盧安に自殺願望はあると思うか?」
元一のその問いかけに、白露の脳裏にはさらに多くの疑問が浮かんだ。彼女は足を緩めて言った。「今のところ、私には見当もつかない。」
元一は言った。「ならば、その後のアクシデントは、彼にとって何の問題もない。」
白露は足を止め、光の幕に向かって問いただした。「本当に?計算済みなの?」
元一は言った。「特別に手配したわけじゃない。こうしたアクシデントは計画の範囲内だ。もし君がもう少し早く行っていたら、もっと君のチームメイトのことを理解できたかもしれないね。」
白露は動かなかった。数秒後、彼女の瞳孔は完全に見開かれ、真っ黒になった。同時に、彼女の毛穴が急激に開き、全身の筋肉が律動的に跳ね、血管による血液の運搬を助けた。彼女の神経細胞は極度に活性化した状態にあった。
この状態の白露は元一に尋ねた。「では、今の私の行動は、あなたの計算の範囲内なのかしら?」
元一。「それは私の計画だと理解してもらって構わない。気運者はもともと不均衡な存在であり、未来は必ず計画され、均衡を図る必要がある。今はその不均衡な発展を無視しても構わないが、将来ある日、その不均衡な存在が混乱に直面することになる。」
白露。「それが、私が完全態に到達した後に見せた、あなたからの挨拶代わりだったのでしょう。あなたの計画はあなたの計画であり、もし彼の気運が私を阻むなら、私が自らの手で終わらせます。」
言い終えると、白露は再び歩みを進めた。
土の山の上を走る盧安は、予演を極限まで発動させた。
現実では、盧安は純粋に走っているだけだが、予演の中では、走るのを止めて、絶えず元一に問いかけている。元一が異なる予演に対して異なる応答を返せるため、盧安は何度も予演を繰り返す際に、最初から対話の場面を繰り返す必要がなく、連続して元一と対話を続けることができる。
盧安。「元一、元一、これはどういうことだ、お前、俺をハメたのか?!」
元一。「これは事故だ。建物の隅にいると、もともと地震のイベントから生き残る確率がある。お前と対話している相手は、もともと生き残る可能性があったんだ。」
盧安。「それは詭弁だ!今、俺はどうすればいい?連絡を切れ、早く連絡を切ってくれ。」
元一。「私は今、バーコード空間のこの位面への投入チャネルを全力で解析している。お前が要求する高次元支援は解析のリ索斯を占有し、解析速度を低下させる。お前の現在の状況の危急度は基準を満たしていない、お前の申請は無効だ。本当の作戦の時に申請しろ。」
盧安が罵った。「元一、お前をぶっ壊してやりたい!」
「君の気持ちは理解できるが、支持はできない。僕に対する感情、怒りでも崇拝でも、好きにぶつければいい」元一の答えは無表情だったが、盧安は光幕に「だから何だ」という挑発的な雰囲気が満ちているのを感じた。
盧安は話題を変え始めた。「僕が死んだら、君に利益があるのか?」
「今のお前の生き方は、私にとって何の利益もない」元一は言った。「忠告だが、今のお前は感情の起伏が激しすぎる。この無意味な口論を続ければ、正常な生理活動に影響を及ぼし、これから直面するかもしれない不利な状況に悪影響を与えるぞ」
盧安は光幕を閉じ、徐々に走るのをやめた。何度か深呼吸をし、心拍が正常に戻ったのを感じると、盧安は自嘲気味につぶやいた。「この世界に救世主はいない。それに、何事も偶然に頼ってはいけない。何かをする前も後も、最悪の可能性を考えなければならない」
盧安は振り返って背後を見た。盧安の感覚では、前回自分と通信したリスポーナーがすぐそこにいて、しかもどんどん近づいてきており、Uターンもせずまっすぐ自分の方へ追ってきている。
盧安は周囲の環境を見渡し、近くの茂みに気づいた。盧安は太腿からナイフを抜き取り、その茂みに向かって歩き出した。盧安は今のうちに、自分の勝率を高めるための仕掛けを施そうとしている。
一方、傷だらけのマリアは、盧安のいる方向へと全速力で走っていた。
もはやマリアには以前の美しさは影を潜めていた。彼女の肌はしわしわになり、大量の失血と負傷の後、マリアの額の皺は非常に目立ち、元は輝くような金髪だった髪も枯れ草のようにパサついた黄色に変わってしまっていた。
体調が優れないにもかかわらず、彼女は急いで盧安を追いかけた。盧安は最初にミスを犯していたのだ——マリアが死んでいないことに気づいた後、盧安はマリアに近づくのではなく、距離を取ろうとしていた。
米軍の爆撃機による爆撃が終了した後、白露がノード収集に時間を要したため、盧安には何人の輪廻者が爆撃から生き延びたのかわからなかった。これまでの情報交換から得たお互いの位置と距離の大まかな感覚により、盧安はマリアが生存していることだけを知っていた。盧安はマリアが他の生存者を連れて報復に来ることを恐れ、三十六計逃げるに如かずとばかりに退却した。
爆撃の12分後、白露が陥没穴に走ってノードを収集し、それから元一が盧安に爆撃の成果を公表した。盧安はこれで12分前の情報を知り、向こうの高次の転移者がすでに死に絶えて、マリアだけが生き残ったことを知った。そこで、盧安は自分が過ちを犯したことを知ったが、それはもう遅かった。なぜなら、盧安の逃亡が、彼が弱者の立場にある事実を露呈したからだ。
逆に、マリアは最初、盧安を脅威と見なしていた。本来、マリアは迷っていて、彼女は盧安がそこにいることだけを知っていて、彼の周りに何人いるかは知らなかった。この血统がほぼゼロに抑えられる戦場では、双方は小兵であり、白露という二段階の遺伝子ロックの抑止力は非常に強く、もしこの時、盧安が自発的に近づいたら、マリアはかえって逃げるだろう。なぜなら、盧安が近づけば、盧安側が優位に立っていることを意味するからだ。マリアは、二つの戦闘が今の程度にまで進んだ時点で、双方の優劣が確実に逆転したこと、そして、元一時空の傭兵たちがバーコードの勢力を一掃するためにやってきた、力がクリアされた輪廻者たちであることを知っていた。
しかし、マリアは盧安が遠ざかるのを見て、盧安が劣勢にあると判断した。バーコード空間も同じ判断を下し、マリアに失敗すれば抹殺される任務を与えた。その任務とは、追いかけて盧安を倒せというものだ。
だから、今がマリアにとって唯一生き残れるチャンスだ。盧安とあの二階級者(白露)が合流し、盧安の導きのもとで、マリアに逃げ切る機会は絶対にない。
このような戦いでは、敵対する対話者同士が抜け出せない共感を形成してしまったら、どちらかが死ぬまで終わらない。マリアの両足は石や木の棘で血が滲んだが、血族の強力な回復能力で、足の裏はワニ革のように厚い皮膚になった。
二階がいつ追ってくるかわからないプレッシャーの中、マリアは自身の潜在能力のすべてを搾り出した。感情面では、マリアは詐欺師である盧安に罰を与えようとし、理性面では、自分の居場所を知っている監視者盧安を完全に排除しようとしていた。




