0416 “我”の容器
この位面において、輪廻者ほどこの世界の超能力の起源と、七主錨が他者に与える影響を熟知している者はいない。
盧安は輪廻者を監視していたが、輪廻者が言う『宇宙之影』の設定については、盧安もあまり理解していなかった。なぜなら監視中に、輪廻者たちが自分たちにとって常識と考えるこの知識を話し合うのを、盧安は発見しなかったからだ。その結果、今は盧安を含むすべての人が、上海に来た主錨の影響を受けており、気づいていない。
盧安が知らず無視していることは、まだたくさんある。
上海は前世紀初頭に魔都と評された。当時、様々な奇怪で奇妙な現象が繰り広げられていた。例えば、ある貧乏人が一夜にして大金持ちになり、翌日には斧で何度も斬られて路上に死体で横たわっていた、などだ。今、魔都の治安はますます悪化している。例えば、各屋台で発生する喧嘩・暴力事件が数カ月で2倍に増加した。また、屋台で酒を飲んだばかりの一団が、突然酒瓶を持って通りかかった乗用車に激しくたたきつけ、警察署で酔いが覚めた後、「高級車がそばを通ったのを見て、感情を抑えられなかった」と供述した。ネッ硝煙フェでは複数の突然死事件も発生している。死者の多くは学生で、ゲームに夢中になり、なんと十数日も家に帰らず、最後はネッ硝煙フェで死亡した。また、夜間に女性を狙って殺害する犯行グループが現れた例もある。これらは社会の縮図のごく一部だが、この数ヶ月で大幅に増加している。しかし、非正常死亡を専門に扱う部署でなければ、この時に社会に起きている変化には全く気づかない。資料を収集する部署は、最終的にこれらの現象を気象のせいにした――気温の急激な上昇と花粉の飛散により、都市の人々の感情が苛立ちやすくなり、悪性死亡事件の急増を招いたのだ。
こうした混乱ぶりについて、盧安は統計を取っていない。このような浮ついた社会現象も、数ヶ月前なら盧安は我慢できずに手を出していたかもしれないが、今の盧安の注意は新しい事柄に集中している。新たな発見が盧安の注意を引きつけ、盧安に周囲の環境の変化を見落とさせたのだ。
この時、盧安の某地下実験室に、「遏制者」実験室と同様の菱形の造物が現れた。
この温度を持ちながらも無重量の存在は、盧安によって「陽神」と名付けられた。
文字通り、これは盧安が作り出した、外界を感知し、外界を思考できる純粋な超能力の躯体である。
盧安が作り出したこの物体は、何孔が作り出したものと驚くほど共通した特徴を持っていた――いずれも無重量であり、同一の超能場を基盤として形成された演算体系である。ある程度、盧安は何孔の研究構想を模倣したと言える。
しかし、両者の目的はまったく異なる。何孔が製造した「巡查者」は武装部隊に随伴して超能力者を抑制するための武器であり、一方、盧安が作った「陽神」は、幽魂世界の電磁替身に対する執着から来ている。白露の本命世界においては、電磁替身が盧安の意識を担うことができ、その電磁替身の中で予演も発動できることを知っておくべきだ。そう、盧安はずっと、自分の意識を取り込んで保持できる物体を作ろうとしていたのだ。
自分の身体の導力脈絡という、筋肉に取って代わる構造を構築した後、盧安は今度は自分の思考を収容できる容器を作ろうと試みている。
このような目的に基づき、盧安が製造したこのものは超能力の放出面では、何孔の「巡查者」には遠く及ばない。しかし、脳科学を模倣した分野で応用された感知力と演算力においては、何孔が作ったものをはるかに上回っている。
「陽神」と名付けられた超能構造全体には、無数の点が密集しており、その数は脳の神経細胞に匹敵する量級である。
演算において、超能場の内部エネルギーと機械エネルギーの相互変換は停止状態と見なせるため、演算方法は内部エネルギーと機械エネルギーの変換過程を制御し、それを演算の信号とする。
知覚においては、機械エネルギー現象と光エネルギー現象がこの超能構造の各点の内部エネルギーと機械エネルギーに変化を引き起こすと、遠くの超能場の変化を感じ取れる盧安に複雑な情報が伝わる。
炭素ベースの身体でこの複雑な情報を感じ取ってもなかなか理解できず、それはまるで語学が苦手な人が外国人の話す早口を聞いているようなものだ。したがって、盧安はこの超能場構造に自律的な論理思考のハード条件を必要としたのだ。
「陽神」を最初に設計したとき、盧安は再び一つの身体を設計したような感覚を抱いていた。
設計が何度も修正されるにつれ、超能構造内のプログラムが盧安によって繰り返し書き込まれるたびに、「陽神」はますます盧安の思考に近づいていった。超能を通じて伝わる感覚によって、盧安はその構造とますます以心伝心するようになった。
炭素ベースの体の中の盧安は、長すぎる距離ではこの超能構造内の思考体と通常の情報伝送を効果的に行えない。しかし、炭素ベースの体の中の盧安は、超能の感覚を通じて、超能構造内の思考体に言葉にできない感覚から自分の意図を察させることができる。
盧安のこの設計は、深層の亜廃墟に存在するある種の産物と非常に似ている。元一空間のデータベースには、一部の仙侠世界に「元婴」という概念が存在する。仙侠世界において、元婴とは体内で炭素ベースの大脳のあらゆる思考と同期できる物質エネルギー体系である。大脳が思考した内容は、それに対応する思考情報が元婴に反映される。エネルギー体の思考速度は炭素ベースの大脳よりも速いため、仙侠と称される存在が元婴を獲得した後、徐々に思考の大部分をこの構造に委ねるようになり、炭素ベースの大脳は元婴の思考がフィードバックした情報を受け取るだけになる。もちろん、意識も次第に元婴の中へと移行していくのである。元婴が体外に出ると、炭素ベースの脳に映し出された論理的思考パターンは慣性で動作し続ける。そうなると、脳と元婴という二つの自己意識を宿す物質的基盤の間のつながりは、いわゆる心思の同期に頼るしかなくなる。
理論はそうだが、盧安のいるこの世界でそれが可能かどうかは、超能が果たして脳に匹敵する物質的基盤を構成し維持できるかどうかにかかっている。
元一空間の資料によれば、多くの科学技術側の世界でも、人間の意識を収容できる意識容器を様々な方法で製造する例がある。この超能世界で、21世紀の人類の想像を超える材料である超能がその使命を果たせるかどうか、盧安は試しているところだ。
かつて、高エネルギー物理実験は盧安の人手不足により停止を余儀なくされ、また事前シミュレーションの総量が多すぎて自身が崩壊しやすかったため、盧安は別の考えを抱き、意識容器の製造へと進もうとした。もし本当に複数の自分が同期して思考できるようになり、事前シミュレーションによる膨大な時間で思考するのではなくなれば、それは盧安にとって救いとなるのだ。
盧安はあまりにも長く孤独だったので、自分自身と共に歩む存在を作ろうとするこの荒唐無稽な計画を一歩ずつ実行し始めたが、今のところまだ完全には成功していない。現在の盧安は、自分の心を理解しているかのような人工知能を一つ作ったに過ぎない。
盧安はそれを地下に設置し、地下の工業生産を観察するために用いた。観察および測定されたデータについては、「陽神」が盧安の元に戻った際に、炭素ベースの身体が詳細にすべての情報を読み取る。
盧安が自身に専念しているとき、この世界は激しく発展し続けていた。
鐘鳴は崇明区で二十日間過ごした。この二十日間で、彼が乗った潜水艦は崇明区の超能力者四百人以上を密航させた。この期間中、崇明区は混乱状態にあり、北京の官僚たちはまだもめていて、夏星瑞などの情報部門は見て見ぬふりをしていた。鐘鳴が去った後、密航事件がやっと暴露された。これは虎部に大きな衝撃を与え、中国の超能力界全体にもかなり大きな衝撃を与えた。
この事は同様に北京の上層部の注目を集め、世論を無視することが超能力界全体に不利な影響を与えることを理解させた。
これらの権力者は、世論で言われるような極端な主張に従って超能者を絶滅させようとしているわけではない。彼らは、シルバーエイジ以来ますます膨れ上がる超能者集団を制御する手段をただ増やしたいだけなのだ。彼らにとって「遏制者」を掌握することは、超能者を制御し、自らの支配を固めることに他ならない。ところが今、超能者は偷天部に逃げ込んでしまった。これはまるで、ステルス戦闘機に対抗するレーダーを開発しようとして、自国の戦闘機部門の研究員全員を追い払ってしまうのと同じくらい滑稽な話である。
以前、超能者たちがまだ大きな動きを見せていなかった頃、北京の権力者たちは虎部に対して史上最も厳しい統制と弾圧を加えた(詳しくは。そして今、虎部から逃れた超能者たちが南極に現れ、しかも南極の偷天部はこの新たに加わった超能者たちに対し、非常に派手に身分証を手配し歓迎式典を行った。この公然たる超能者の密輸行為は東方の覇権国を怒らせた。中国は南極開発組織に対して直接経済制裁を発動し、六十数種の鉱物の輸入と八十数種の工業製品・農産品の輸出を禁止した。
国際的にこれほど断固たる手段を取ると同時に、中国政府は虎部への締め付けも緩和した。そして新聞では、中国もついに南京事件に関連する報道を停止するよう命令を下した。
西北の白銀大厦で、自らのオフィスビルに戻った盛儒星は「パッ」と音を立てて最新の命令書をゴミ箱に投げ捨てた。彼は苛立ちながら言った。「今さら人心を挽回しようったって、はは、遅すぎる!」
四百名以上の超能者の離脱は、虎部にとって大きな痛手である。盛儒星はそばにいる若者(輪回者)に尋ねた。「上層部から私に虎部への帯同を命じられたが、君はどう思う?」
盛儒星がこの輪回者に尋ねたのは、この輪回者が隊を率いて盛怡苒を救出したからだ。そのため今、彼には盛儒星に建言する機会がある。




