0409 追加エピソード
「うちに来ないか」と鐘鳴は歓迎のポーズを取り、劉宇たち二人を盜天部に招待した。
鐘鳴の今のこの態度は雰囲気をやや奇妙にさせた。多くの『宇宙の影』のストーリーでは、鐘鳴は常に競争心が強い存在として印象づけられているが、この時、鐘鳴は自分の陣営属性を際立たせている。
人は社会的な動物であり、誰であれ自分の周りの社会を支配したい欲望がある。平和な時期、社会のルールが揺るぎない時には、鐘鳴は当然我が物顔で個性を発揮できる。しかし今、この世界の超能力者と普通の人の間のルールは明らかに揺らぎつつある(輪廻者が鐘鳴に分析した内容だ)。自分の社会集団が不安定で、崩壊の兆しがある時には、誰でも無意識に自分の社会的立場を示す。過去に鐘鳴が偷天部で個性的に振る舞っていたが、偷天部が彼に与えた教育環境が、彼の中で超能力者を尊ぶ陣営理念を形成した。今、崇明区のこの超能力者集団の利益が深刻に侵害された時、本来部外者のはずの鐘鳴が、盧穹との商談を終えるとすぐに口出しに来て、誰が止めても聞かない。これが少年が政治事件に介入する独特な現象——一本気だ。
天雲空間のこれらの輪廻者が見た『宇宙の影』のストーリーでは、鐘鳴は非常に鮮明な人物である。すなわち、超能力者の利益に対して頑固なこだわりを持ち、そのために非常に高い代償を払うことも厭わない。また、自身の権力欲と盧穹の裏切りにより、盧穹の陰謀に遭い、まさに悲劇的な人物である。
もちろん、夏星瑞は鐘鳴の考えを認めていない。彼女が持つ理念は虎部によって植え付けられたものだ。ストーリーのこれまでのところ、彼女の立場はまだ虎部と一致している。
夏星瑞はすぐにこう返答した。「ここは崇明区、ここは虎部だ。我々のことに偷天部が口出しする筋合いはない!」
鐘鳴は嘲笑して言った。「みんな虎部の家畜だ……おっと、そうだ、今は虎部も命令に耐えきれない、ちっ、お前たち家畜はまだ屠られるのを待つ身だな。」鐘鳴はため息をつくように首を振った。
鐘鳴の嘲笑に、夏星瑞は一瞬呆然としたが、すぐに口を閉ざした。
五日目、上層部の態度は依然として不透明で、これには夏星瑞のような虎部の嫡系ですら状況がまずいと感じ始めた。いったん超能力者が本当に異類と定められたら、その結末は一体どうなるのか?
未来は知れないが、政府が過去に類似の事件を処理した際の、虎部の態度は身の毛もよだつものだった。この世界の二十世紀、聖人總理が率いる党派はほとんどの党派を受け入れたが、赤化分子に対しては残酷な弾圧を行い、非常に手際よく全員を殺害した。聖人總理のこの行為は、快刀乱麻を断つと称賛された。歴史的に、異類を屠る命令が官から出されたという政令こそが、今自分たちが異類超能者だと感じている者たちの恐慌と恐怖の根源なのである。
人類集団が異類を弾圧するのは常態であり、異類に対する手段が激烈であればあるほど、社会の異類分子に対する包容度は低くなる。弾圧の際に強硬な態度を示すのは一時の爽快感だが、自らの行為が後世の人々の判断に基準を定めてしまう。
中国社会は異端を抑圧する際に、首謀者を誅殺する習慣があり、残りの者は態度を変えれば追及されないため、中国社会では先頭に立つ者は少なく、高調する者も少ない。しかし、中国人の同調する勇気は西洋人よりはるかに大きい。中国の大蜂起の規模と激しさは、西洋とは全く次元が異なる。
中国社会に比べて、西洋社会はラベルを貼って一括りに殺すことを好む。ローマ時代のキリストーー教徒迫害でこの悪い習慣が形成された。中世の魔女狩りで、キリストーー教徒はこの悪い習慣を再現した——このラベルを貼れば殺せるのだ。そのため、西洋の異端な抵抗分子は常に地下組織風である。
そしてこの世界の歴史において、近代に異分子を処理する際、西洋の習慣を模倣したのか、それとも中国の習慣を模倣したのか?この世界の人々には同様の出来事との比較がなく、判断できない。
しかし、異時空の存在である盧安に判断させれば、異分子を批判するが殺さない原則を用いる方が、まだ柔らかいだろう。もし一部の人にレッテルを貼り続けなければ、プロレタリア革命分子は前世紀の七十年代になっても抵抗を続けることはなかったかもしれない。
夏星瑞が言い返せないのを見て、鐘鳴は勢いに乗じて追撃しなかった。彼は夏星瑞の苦衷を理解しているようで、一度に二人の四級超能力者を引き抜くつもりはなかった。
夏星瑞が反論しないのを見て、鐘鳴は真顔で言った。「今のところ、あなたたちが私の側につきたくないなら、せめて私たちの邪魔をしないでくれ。」
すると劉宇が真っ先に口を開いた。「君たちの行動は、見なかったことにできるが、我々の巡回時間内にはやらないでくれ。」
明らかに虎部を裏切るような劉宇の言葉を聞いて、夏星瑞は思わず「そんなことできるわけないでしょ」と口走った。
しかし劉宇は振り向いて叱責した。「男が話しているんだ、女は口を挟むな。」これまでの長い年月で、劉宇が夏星瑞にこんな強い口調で話すのは珍しいことだった。夏星瑞は劉宇の剣幕に驚いて、口を閉ざした。
鐘鳴は劉宇をちらりと見ると、かさついた笑いを浮かべて言った。「わかったよ、お前たち若夫婦に二人きりの時間を残してやろうと思ったんだ。」
鐘鳴は背を向けた後、ふと足を止め、振り返って二人に言った。「お前たち、将来身動きが取れなくなっても、心中なんかするなよ。南の方にはお前たちが巣を作る場所ぐらいまだあるからな、ははは……」
鐘鳴と夏星瑞は知らなかった。彼らが今接触しているプロットは、傍観する輪廻者の介入によって成立したものだということを。そして、ここで接触するすべての人々も、別の予演の時間線上で、複数のバイオニック鳥がすべての会話とシーンを時間観察者に送信していることを知らなかった。
鐘鳴が崇明区に来たことを、真っ先に発見したのは盧安だった。あれほど巨大な潜水艦が長江に停泊しているが、潜水艦の発生する音波はすべて隠蔽されていた。しかし盧安は水中環境を監視するのに、ソナーシステムだけに頼っているわけではない。長江流域には五メートルごとに、盧安は水底に線を張り、その線に取り付けた風向計のようなもので水流の方向を記録していた。そしてこれほど大きな物体が長江に入り込むと、鐘鳴のやつの制御によって音波は非常に小さくなっていたにもかかわらず、盧安の監視システムは依然として、江水中の異常な渦流を記録した。この渦流の発生は、長江に移動する「岩礁」が存在することを示している。
そのため、鐘鳴と彼のそばにいる四人の輪廻者が崇明区に到着したとき、盧安は予演の中で常に監視を続けていた。
彼らの会話を聞いた後、六キロ離れた場所で食用油の容器を二つ提げた盧安は顔を上げて遠くの長江を見つめ、何かを感じ取ったように言った。「司馬家は天下を統一したが、『熊を食べれば太り、蛙を食べれば痩せる』という言葉を残した。世家と庶民の境界がますますはっきりしてきた社会は、内部の混乱の後、外部の勢力が介入してくるリズムになる(歴史では八王の乱の後、五胡が華夏に侵入した)……歴史はどうしてこんなに見覚えがあるのだろう?」
「ガチャン」という音とともに、盧安はピーナッツオイルを自分のジープに置いた。
この時、盧安のもう一つの予演線上では、ガチョウの卵サイズのエネルギーコアがスイカ大に展開し、内部の強力な磁場が超エネルギー場内の粒子団を束縛している。超エネルギー場が内部エネルギーを完全に抑え込むため、このモジュールの粒子団は絶え間なく電磁エネルギーを放出し続ける。
この予演では、電力出力と4台のドローンの連携により、高出力の投影装置がジープの上方20メートルに上海市全体の地形図を映し出している。投影された地図の直径は40メートルである。これほど巨大な情報化地図が出現すれば、当然周囲の人々の注目を集めるが、この予演において盧安は周囲400メートル範囲内の携帯電話通信を停止させた。そのため、盧安は予演中に地図を効果的に展開できた。
上の地図には、盧安によってマークされた6つの赤い点がある。この6つの点はそれぞれ、『宇宙の影』の中で街を歩いている「傲慢」、ナイトクラブにいる「雙欲」、虎部実験室の「怠惰」、虎部本部を訪れている盧九重、何かを企てている鐘鳴、そして楚滄霞である。この6つの点の近くには、比較的多くの輪廻者が集まっている。もちろん、地図上にはさらに20以上の黄色い点と600以上の青い点がある。盧安はこの地図システムを通じて、輪廻者がいるストーリーキャラクターの周囲の状況を発見した。
盧安がこれらの予行演習で超能力を使っているまさにその時、盧安の超能力自体が奇妙な知覚をもたらした。
この感知の中で、「傲慢」は横暴なコンピューターウイルスのように、「雙欲」はインクのように、「怠惰」はカビのように感じられる。特に「雙欲」と「傲慢」などの人々の移動に伴い、盧安は自分がある種の存在の衝突の中にいるように感じた。この断続的な衝突の中で、盧安はいつも、別の世界が衝突の中で突然はっきりとし、そして衝突の消散とともに突然消え去るのを感じていた。
盧安は、冷たさ、熱さ、音、光、触感、味覚で構成される炭素ベースの感知のほかに、自分にもう一つの感覚が突然現れたように感じた。別の物質世界が自分の前に突然姿を現したのだ。
人類のあらゆる知覚の出現は、物質世界における対応する感覚器官の形成に由来する。つまり、超能構造が存在する暗黒物質の世界において、盧安の超能がもたらす奇妙な感覚は、主錨たちの衝突の中で形成される。盧安の暗黒物質場における何らかの感覚器官が形成されつつあるようだ。
高次元から見ると、つまり天雲がこの時間線に何度も輪廻者を投入してきたことで、他の時間線の盧安は数年経ってからでないとこの感覚を得られなかったのに、今は早まって現れた。これは、この時間線において、七大主錨のうち三つが上海という小さな空間に集まっているからである。
主錨の集合は、この世界の暗黒物質の集積を意味し、暗黒物質レベルでの衝突の始まりを予示している(地球上の初期アミノ酸の形成も、雷や火山環境下での衝突に由来する)。そしてこれらの衝突の中で、盧安の超能力は増大し、盧安の超能力に対応する暗黒物質構造はさらに複雑化し始めた。
陽子・中性子の物質世界では、タンパク質分子が様々な反応を起こしている。化学反応の電流に乗った量子情報は、暗黒物質レベルで波動を誘発する。これに対応して、今この地球を覆う暗黒物質レベルで物質に変化が生じると、タンパク質で構成される人間もそれを感じ取ることができる。特に、これらの人間が暗黒物質レベルで巨大な物質対応を持つ場合、その者たちは超能力者である。
もし人間の目には宇宙が一つの膜に見えるとすれば、神眷者たちの超能力が膨大であることは、別の膜に膨大な物質が集約していることを意味する。主アンカーを前にして、神眷者たちは皆この得も言われぬ感覚を抱く。そして盧安の超能総量は既に上限まで成長し、しかも毎秒何千もの自分自身が並存しているため、この得も言われぬ感覚が重なり合い、その感覚が非常に鮮明になるのだ。
この時間線上の輪廻者たちは、本来なら数幕に分かれて登場するはずの主アンカーたちが、今や上海に一堂に会し、盧安という劇中人物にどれほど激しい影響を与えているのか、気づいていない。




