0039 鋒出敵滅
一方、重傷を負ったエスは別の廃墟の通りへ走り去った。
逃げながら、彼は絶えず仲間に連絡して迎えに来るよう求め、同時に自分の隊長に後ろから三人が追ってくる緊急事態を説明していた。エスの土埃を巻き上げる走りと途切れ途切れの説明は、彼が直面する危険を予感させた。
メンフィスの別の地域では、ビーモントがエスに慰めの言葉をかけた。「頑張れ、もう少し頑張れ、援軍がすぐに来る。」同時に、ビーモントは地図を見ながら、最も近い者に連絡して支援に行かせようとしていた。
ビーモントの回答を聞いて、エスの心には思わず一抹の絶望が広がった。「俺はそんなに脆くはない、だが早く援護を頼む。」そう言い残すと、彼は断固として通信を切った。
エスはふらふらと数百メートル走り続けた。追手が間近に迫るのを見て、彼の掌には力が蓄えられ始め、最後の決死の覚悟を決めた。
半分以上が崩れ落ちた壁の角を曲がった時、エスは目を輝かせた。向かいの壁際に銃を構えたアジア系の女性がしゃがんでいるのを見つけたのだ。「暗闇から抜け出し、新たな村を見つける」ような思いが彼を包んだ。
エスはこのアジア系女性から魔力の気配も、血天使教に改造された痕跡も全く感じ取れなかった。エスの見立てでは、銃を持つこのアジア系女性が少しの間だけでも時間を稼ぐ助けになるだろう、と。
エスーーは微笑み、詠唱のように言った。「子よ、こちらへおいでなさい。」彼がそのアジア系の女性を手招きすると、その手から聖なる光が放たれた。
彼の望み通り、そのアジア系の女性が歩み寄ってきた。だが、エスーーの手がその女性の額に触れようとした瞬間、彼の瞳孔が急激に見開かれた。突然、その女性の素手に短剣が現れ、深々と彼の首に突き刺さったのだ。グサリという音とともに、エスーーは自分の首の中で何かが破裂したように感じた。高圧の空気が食道や鼻腔を通って胃へと流れ込み、口と鼻から噴出した。
エスーーが倒れ込みながら目にしたのは、そのアジア系の女性が素早く横を通り過ぎ、銃を構えて壁の陰から飛び出し、追手に向けて素早く引き金を引く姿だった。
エスは銃身の発砲による振動を見たが、音は聞こえなかった。なぜなら、彼の脳が過剰に出血し、聴覚が損傷したからだ。
これらすべては非常に速く進展したが、中に含まれる情報量は大きく、我々は一つ一つ解析する。
臨死前に、エスは白露に牧師のスキルを使用した。このスキルは人の感情を落ち着かせ、警戒心を解かせることができる。しかし、これは白露に侵犯と判断され、そのため数倍にしてこの牧師に返された。その結果、エス自身の警戒心が極めて低くなり、白露が腕の下に隠していた短剣すら気づかず、一撃で命を落とした。
白露がエスを殺した後、元一はすぐに一連のプロンプトを表示した。
「……侵入者が所在するシステムの時空ノードを取得しました。敵システムへの影響手段を取得し、戦略支援を実行可能です……」
次は一連の戦略支援オプションだ。白露は冷静に一つの戦略支援を選定する。範囲制圧、四十メートル範囲内のバーコード空間の輪回者がロードした異能をすべてゼロに弱体化させる。
エスを殺し終えた白露は銃を構え、猛然と壁の角から飛び出す。三人の追手は突然白露を見た時、体の力が突然消えたことに気づき、衰弱感が突然押し寄せてきた。今、彼らは真っ暗な銃口と向き合っている。
時間をスローモーションにして、この場面をじっくり観察しよう。
この時、三人の血愛のベテランと白露はわずか三メートルしか離れていない。
白露の瞳孔は限界まで開き、黒い瞳に狩人の獲物を見るような光が一瞬走った。そして白露の全身の毛穴はすべて限界まで開き、開閉を繰り返しながら激しく震え、まるで荒い呼吸のようだった。
瞳孔の変化は、無意識の防御反応によるものだ。普段暗闇に慣れた瞳孔の状態で、突然通常の光に遭遇すると、目にはまぶしさや違和感を覚える。しかし今、白露が瞳孔を限界まで開いているのは、網膜でより多くの光を受け取るためであり、毛穴を限界まで開いているのは、皮下神経を通して周囲のわずかな震動を敏感に感じ取るためだ。白露とこの三人の輪廻者との間にある3メートルの距離は、まさに白露がこの優れた感知能力によって、三人の追手が走ってくる際の震動情報から算出したものなのだ。
適切なタイミングで壁際から飛び出し、また適切なタイミングで元一に戦略的制圧を行わせ、三人の追撃者の吸血鬼の異能を空にした。それは一瞬の出来事のように見え、華やかな異象はなかったが、これこそ白露が自らの身体を制御し、この一連の動作を精密に行ったことを示している。
三人の輪廻者は、黒い銃口を見つめながら自分たちの力が消えていくのを同時に感じ、慌てて急停止しようとしたが、よろよろとさらに一、二メートル進んでしまった。
その時、白露が発砲した。無数の火花が銃口から噴き出した。撃ったのは散弾で、左に避けた二人は弾丸の衝撃で後方に一メートル押し出された。右の輪廻者はこの一撃をかわしたが、白露は引き金を引いた後すぐに銃を捨て、匕首を手に、この無傷で今しがた停止したばかりの輪廻者に直接向かっていった。
刃先がこの輪廻者の鼻腔に直接突き刺さり、その後引き下げられた。熱い血が噴水のように飛び散り、白露の匕首を握る素手を真っ赤に染めた。白露が匕首を抜くとき、匕首から滴る血が優美な曲線を描いた。
側の輪廻者をあっさりと片付けた後、白露は匕首を左上の空中に投げ捨て、左側の銃弾を受けて倒れた二人の輪廻者に向かって突進した。
二人の輪廻者は、自分たちに向かって歩いてくる殺気が溢れ出しそうな女を見て、慌てて体を転がして避けようとした。白露は腰に掛けた拳銃を抜き、この二人の輪廻者に一斉射撃を浴びせた。五発の弾丸のうち三発は外れ、残りの二発がちょうどこの二人の脊椎に命中した。脊椎を負傷し、半身不随となり、この二人は逃げられない。
五発の弾丸を打ち終えた後、白露が投げたダガーがちょうど落ちてきた。彼女は脚を上げて跳び蹴りし、ダガーは一人の輪廻者の腹腔に突き刺さった。同時に、二歩後退し、足でショットガンを引き寄せ、装填して追い打ちの準備をした。
白露は五秒で手際よく戦闘を解決し、そして瞳孔を通常の状態に収縮させた。五秒の激しい戦闘は、確かに白露の体に一定のダメージを与えた。例えば瞳孔の過度な拡張は、短期的な視覚障害を与え、筋肉の引きつり、一部の毛細血管の損傷……しかし、これらは体に一突き刺されるダメージには及ばない。
この短い時間内に、四人の輪廻者が戦死した。一人は一階基因錠後期、三人は一階基因錠初期である。元一は真っ先にチーム内通信で白露の戦闘結果を報告した。
盧安は白露の戦績に非常に驚いたが、驚きつつも意外ではなかった。なぜなら盧安は予行演習で白露の戦闘力を試していたからだ。特筆すべきは、盧安の毎回の予行演習での試しは、すべて自分が準備を整え、手に武器を持ち、かつ白露が丸腰の状態で予行演習を行っていたことだ。それでも、毎回二十一回以上の予行演習を発動しなければ、殺害確率を七十パーセント以上に保証できなかった。しかし、このような突撃のたびに、盧安は反動の痛みを感じることができた。これは、白露に依然として不可侵を発動する時間があり、つまり盧安が白露を瞬殺できないことを示している。
一方、李三祥は白露の活躍に驚愕し、この女性を初めて認識したかのようだった。わずか五秒で四つの戦果を挙げ、まさに電光石火の早業だ。初任務であるジュラシック・ワールドでは、白露はその片鱗すら見せていなかった。
李三祥の反応について、盧安は十六回の予行練習を経て初めて彼の考えを見抜いた。
最初の予行練習で、盧安は『白姨、すごすぎる!』とやや大げさに振る舞ったが、李三祥は逆に『君はどうだ』と返した。
二回目の予行練習では、盧安はさらりと『あっという間だったね』と言った。すると李三祥は低姿勢で『へえ、具体的にどんな感じで速いのかな?』と尋ねてきた。
三回目、四回目……盧安は徐々に、今の李三祥の内心の動きを完全に理解していった。
今の李三祥は白露に対して強い警戒心を抱き、すべてに疑いの目を向けている。それは盧安に対しても同様だ。だからこそ、現実では盧安は何も言わなかった。そして李三祥は光幕の上で、一見何の感慨もなさそうに白露に言った。「よくやった、すぐに撤退しろ」
高次元では、バーコードが投入した輪廻者が一気に四人もやられ、四つのノードが別の高次元存在の「手」に落ちた。しかも、これほどまでに見慣れた制圧手段だった。それにより、彼はすぐに自分がこの位面でどんな存在に遭遇したのかを悟った。彼は直ちに、この位面に投入したすべての輪廻者に対して臨時で任務を変更した。
「全輪廻者小隊に通達する。以下、互いに殺し合うことを厳禁する。第三者輪廻者の待ち伏せ参戦を確認。各員は迎撃準備を整えよ。本任務は強制任務とする。任務失敗の場合は抹殺、任務成功の場合は……」
一般的に、輪回者は空間の命令にかなり従順だが、今のところ、この数人の輪回者の状況は別に考える必要がある。
バーコードからのこのヒントは、双方の戦闘を中断させた。
黒い戦闘鎧を身にまとい、炎の剣を手にした女戦士キャロルは、マリアの前に立ちふさがった。前者の両足の鉄甲セットが、地面から砂が金属に押し砕かれるようなサラサラ音を立てた。
マリアは笑顔を見せて探りを入れた。「私たち、さしあたって一時的に手を組んで和解しませんか?」
「あなたは信頼に値しない。」キャロルは冷笑を漏らし、すぐにマリアに向かって巨剣を振り下ろした。巨剣から灼熱の赤い光が放たれた。光線が当たる場所では、小石が熱した鍋の塩粒のように爆ぜ、鉄筋がマグネシウムリボンが燃えるように大量の火花を散らした。
マリアはこの一撃を避けたが、身に着けていた黒いマントが大きく切り裂かれ、マントの下の白い肌が露わになった。服がはだけ、みすぼらしい姿のマリアが哀れっぽく言った。「私を殺せば、あなたたちは減点されることになるわよ。」
その時、三本の付魔矢が「品」の字の形で射てきた。矢を放った弓兵は声を張り上げて言った。「安心しろ、我々はお前を生かしておくからな。」
もしキャロルだけなら、マリアはまだ対処できたが、この弓使いがマリアの退路を完全に塞いでしまった。これが、血愛が新人チームメイトを搾取して古参チームメイトを強化するという発展戦略の欠点だ——戦力が一人に集中しているため、多人数による合理的な戦術で多方面から容易に抑えられてしまう。
すべての血統を一人に集中させても、各血統の戦力を発揮することはできない。なぜなら、これほど多くの血統を制御するには注意を分散させる必要があるからだ。このような装填は、せいぜいその人の自己防衛能力を高めるに過ぎない。一方で、輪廻者小隊が一人で一つの血統を使宇田けの担当制にし、戦闘中に別の血統を装填した仲間と連携すれば、複数の血統の戦力をより十分に引き出せる。
マリアはこの道理を理解していないわけではない。ただ他人を信用できないため、自分を優先的に武装させた。彼女の経験豊富な追随者は多いが、様々な任務で多くが殺されてしまった。これらの経験豊富な追随者の犠牲によって、彼女は毎回成功裏に脱出できた。しかし今、彼女は危険な状況に陥っている。
マリアには今、交渉の資格がない。盾刃小隊は重要なメンバーであるエスを失っただけだが、マリアのすべての羽翼は取り除かれた。だから、盾刃小隊はこの容易に手に入る戦果を諦めないだろう。たとえバーコードが制止しても、盾刃小隊はすでにマリアを不安定要素と見なしており、このまま逃がすことはしない。マリアを生活不能な状態にまで叩きのめし、盾刃小隊に完全にコントロールされることが、この二つの小隊の矛盾を解決する最善の手段だ。




