0405 噂が先行
地球の21世紀では、南京は繁華さにおいて上海にやや劣るが、行政レベルでは上海よりやや高い。しかしこの位相では、南京は両面において上海にやや劣っている。
これが中国の遠洋戦略が完全に展開された後、歴史にもたらした小さな変化の一つである。南方の軍事指揮中心はすべて上海にあり、世界最強の艦隊を指揮している。そしてGDPが最も高いのも上海である。
本位面の南京は、その地位が地球位面の済南に似ている。済南は山東省の省都であるが、その存在感は青島にすっかり奪われている。この位面では、中国が近代に建国した後、太平洋東岸のアメリカ合衆国という競争相手がまだ存在しなければ、首都は上海に遷都されていただろう。今では、全世界を指導するために首都を上海に移そうという声が上がっている。内河都市として、このより輝かしい都市の前では見劣りしてしまう。しかし、南京はこの世界の劇的な変革の始まりとなる運命にある。この時間軸において記憶される場所となるだろう。
都市の中、巨大なスクリーンが朝のニュースを流している。スクリーン周辺の通りには、出勤する人波がざわついている。
突然、スクリーンに砂嵐が現れた。「滴滴滴」という音とともに、不思議な映像が流れた。
数人の頭巾を被った人物がスクリーンに現れ、以下の発言をした。
“皆様、今は超能力の時代です。様々な超能力犯罪(主に白銀たちによるもの)が社会にはびこり、我々はその好き勝手に振る舞う者たちに長く苦しめられてきました。超能力者が百人覚醒するごとに、ほぼ一人の普通人が死亡し、十人が重傷を負います(白銀の超能力者たちは感情爆発型の覚醒です)。我々にとって時代はますます暗くなろうとしていますが、それも間もなく終わります。我々は大洋上で奇妙な生物を引き揚げました。その生物はあらゆる超能力を抑え込む不思議な抗体を持っているのです……”
この時、スクリーンには巨大なイルカが陸地へ運ばれる映像が映し出された。
「……しかし、必ず超能力者たちがそれを破壊しようと企てます。上層部は真実を隠そうとしていますが、こうしたことは皆さんにお知らせし、真実を知っていただかねばなりません……」
「サッ」と画面の電源が切れた。
人の流れはとうに止まっていた。誰もが顔を上げて画面を見つめ、スマートフォンを手に黒くなったスクリーンに向けている。明らかに、人々は記録すべきものをすべて記録し終えたのだ。
このエピソードは輪廻者が仕組んだものだ。彼らはこの世界のテレビ局に侵入し、この極めて扇動的なデマを流した。しかし、その破壊力は恐ろしいものだった。このデマはこの世界に蓄積された矛盾を一気に引き起こしてしまう。そう、この世界の人類社会はもともと膨大な矛盾を抱えており、各集団間の利害対立は非常に大きい。扇動的なデマが突然爆発すれば、それは恐ろしいことになる。
地球の21世紀、中国はこのようなデマの流布を厳しく取り締まっている。多くのデマは非常に愚かだが、いつも無知な者たちに信じられ、深刻な社会的信頼危機を引き起こしやすい。例えば、いわゆる軍隊による幼児への集団性的虐待。うーん、これはどこの陰惨なストーリー雑誌から掘り出された低知能プロットなのか分からない。合理性から見れば、軍隊が集団で売春宿に通うほうがまだ現実味があるが、それでも知性の低い人々は信じてしまう。
超限戦において、ネットメディアを利用したデマ攻撃を仕掛けることは有効な攻撃手段である。しかし、この種のデマ戦において、躊躇なく攻撃を仕掛ける側は強勢な側ではなく、弱勢な側なのである。
これは、長期にわたる攻勢の中で、優勢な勢力の政府はすでに対処法と流言の打ち消し方を心得ているからだ。そして流言が氾濫することで、民衆も信じかねない半信半疑の状態になる。優勢な側は、静かにこれらの勢力の社会的矛盾点を把握し、肝心な時に利用するのである。
例を挙げると、孟位がいる次元では、記憶に留めるべき二度の流言戦争があった。
第一の流言戦争。二十一世紀半ば、南アジア次大陸のある地域的な強国——インドは凄惨な流言の打撃を受けた。
インドの複数の深刻な矛盾が流言によって誘発された。
第一に、少数民族と主要民族との間の対立。
インドはイギリスによって作り上げられた国であり、その主要民族はヒンドゥスタン人ですが、総人口に占める割合は全国の半分にも満たず、12億人のうちわずか5億人です。中国とは異なり、中国の少数民族の多くは西部の辺境地域に集中しており、それらの地域は広大ですが、経済規模は大きくありません。
産業革命以来、工業力を掌握した者が決定的な発言権を握ってきました。工業力を持たずに分離独立を企てるのは、甘い考えです。自民族の食料や生活物資すら東部の繁栄地域の支援に頼っているのに、どうやって分裂できるというのでしょうか?『王者栄耀』を遊んでいる若者たちからAKを持った兵士をリクルートするのですか?
中国東部地域では、身分証の上で少数民族と登録されている人々の多くは、すでに少数民族としての基本的な特徴を失い、言語、文字、生活習慣まですべて同化されています。
南アジア亜大陸では状況が異なり、他の四大少数民族が存在する。四大「少数民族」の人口は1億人近くに達する。また、彼らが拠点を置く地域は辺境ではない。
ムンバイを例にとると、この都市はマハラシュトラ州にあり、主要民族はマラータ族で、21世紀初頭の人口は9000万人である。彼らが独立国家を樹立する意思があるかどうかにかかわらず、その力を持っている。
第二に宗教対立である。南アジア亜大陸の宗教はイスラム教徒とヒンドゥー教徒が中心で、地域にはさらに様々な分派が存在する。この対立について改めて説明する必要はないだろう。
孟位が存在する次元では、21世紀半ば、南アジア亜大陸に位置するこれらの国々はこのデマ合戦により全国的な暴動に陥り、その破壊力は驚異的だった。これが22世紀におけるインド分裂の伏線となった。
第二次谣言战。二十二世紀に第三次世界大戦が勃発した時、二十一世紀のネット谣言戦で攻勢にあったアメリカは、前例のない攻撃を受けた。
戦争中、アメリカの各ラジオ局がハッカーに侵入され、米国政府が人口浄化のために、黒人、ラテンアメリカ系、アジア系住民に対して遺伝子兵器で絶滅させる政策を行っていると放送された。遺伝子組み換え食品を通じて、黒人の精子の活性と受胎確率を低下させ、黒人人口が被害力が小さい段階まで減少したら、彼らをアメリカ先住民の保護区に追いやり、処分する。
このような明らかにデマと思える言論が戦時中に流されると、結果は大騒ぎになった。
心理学から分析すると。
一、デマに直面した時、真偽がわからないと、人々は常に広めてしまい、他人に自分を分析してもらおうとし、皆に真実を説明させようとする。
二、人々は噂を聞いたとき、しばしば自分の解釈を加えて修正し、それを広める傾向がある。
三、人は同調心理を持つ。噂が激しくなるにつれて、皆がそう言うようになると、半信半疑になり始める。
矛盾から見ると、社会の固有の矛盾は噂にとって最良の燃料である。矛盾が存在する限り、噂は消え難い。平和な時代に、政府が矛盾の処理を誤れば――例えば黒人が射殺された白人警官が無罪とされるような――一見大したことなさそうに見えるが、これは政府の公信力を損ない、噂が爆発したときに悪果が現れ、矛盾が集団的に爆発する。
例えば、ある国の軍隊が平和時に積極的かつ迅速に災害救助を行う軍隊であれば、戦時にはその軍隊に対する噂は全く広がらない。
これは主に社会の矛盾次第だ。平和な時期には、矛盾が一斉に爆発することはない。戦争の時期に皆が頭を隠して尻を隠さない時こそ、国家の安定性が試される時だ。
孟位の歴史線上では、この二つの十発の核兵器に匹敵する破壊力を持つデマ戦は一体誰が仕掛けたのか、いかなる組織も、いかなる国家も認めていない。孟位の所在する中国、その外交部の言い方では——「我々はxx国の社会状況を密接に注視しており、xx国がこの事件を適切に処理できると信じている。(外交部の隠語。処理にあたっては必ず人権を重視しなければならず、それが適切な処理方法だ。まずはおだてておく)」
うん、孟位も「自国と他国との矛盾衝突の勃発とは無関係だと信じている」。これは、平和な時代には、中国には他国に対してデマ戦を仕掛ける悪習がある兆候は全く見られないからだ。むしろ、平和な時代に世論戦やサイバー戦を最も受けているのは中国のように見える。
盧安がいるこの次元は、1920年代以降、一連の急成長が社会の多くの矛盾を覆い隠してきた。社会の矛盾は、もう一つの歴史の流れを見て、相互に比較して初めて発見できるものだ。そして超能力者の出現は、この世界に積もった矛盾を最も顕著にした。それが最大のものではないが、戦争の火種を誘発するには十分である。
愚かな民は統治されやすく、愚かな民はデマに最も駆り立てられやすい。そして情報化時代にあって、自分は民主制度下の愚かな民であるという傲慢さは、扇動的な言論によって憎悪を掻き立てられやすい。希特勒は権威主義社会で権力を握ったのではなく、民主社会で選ばれたのだ。希特勒が権力を握った時、ドイツのヴァイマル政府は最も民主的な時期だった。知っておくべきは、ヨーロッパ全体で哲学体系は二つしかなく、第一が古代ギリシャ哲学体系、第二がドイツの哲学体系だということだ。ドイツは馬克思、尼采、康德をはじめとする一連の思想家を生み出した。これほど理性的な民族が、希特勒を選んで権力を握らせたのだ。これは人種の優秀さなどではなく、「体制を問い、われ深く思う」というやつだ。
そのとき、宿泊先のホテルでスマホを片手にニュースをチェックしていた鄧雯が、このニュースを目にした。
鄧雯の美しい顔がたちまち怒りに染まった。彼女は立ち上がって服を着込み、タイトなジーンズを履いて長い脚とヒップの曲線を際立たせ、それからブーツの紐を結んだ。きちんと身支度を整えた彼女は、「ヒュッ」とベランダから飛び立ち、東の方角へ飛び去った。数秒後、鄧雯は空にマッハリングを描き出した。
ちょうどその頃、鄧雯を監視していた私服警察チームは、突然飛び去る彼女を見て即座に情報を上層部へ伝達した。そのため、謝彤と鄧雯の衝突はまさに「偶然」にもすれ違う形となった。しかし、このすれ違いの代償は、この世界が負うことになる。
一方、海上にいた盧安は——海上軍事演習中は誰も携帯電話を使用できない——自身の情報システムを通じて、この衝撃的なニュースをいち早く知ることとなった。
船の手すりにもたれて海を向いた盧安は、ある予行演習で言った。「くそったれ、どうしてこの社会はこんなにも脆いんだ!これで災難が始まったっていうのか?」
盧安は人間社会の戦争時代から来た者であり、彼の目に映る災難とは、津波や地震、隕石といった天災ではなく、人間同士の戦争なのだ。




