0402 怠惰
盧九重が感じ取ったものを、盧安も感じ取っていた。しかも盧安の感覚はさらに鋭く、よりはっきりとしていた。
その存在は、まるでカビの塊のようだった。饅頭であれパンであれ、カビは見境なく、すべてをカビが生えた状態に変えてしまうのだ。
超能力者の超能力は人それぞれで、あるものは香ばしいパンのように、あるものは白くてふわふわした饅頭のように、あるものは甘くてしっとりした蒸しパンのように、またあるものは辛いスナック菓子のようだ。しかし、あの船上にいる存在に直面すれば、すべては汚染され侵食されてしまう。
海面でテストーーをしていた盧九重は、明らかに船上の物に少し興味を持ったが、数百メートル飛んだ後、盧安のところへ引き返していった。
着地すると、盧九重は軽く咳払いをして感情を隠し、盧安の提供したアイデアに対して、「少々粗末だが、超能力の構想としてはなかなか新鮮だ。しかし、とても甘い考えでもある。俺のように超能力を極めて熟練した五級使用者にしか通用しない」と評価した。
盧九重の評価を聞いて、盧安はほっとしたふりをした。
盧九重は続けて言った。「今日のテストーーはここまでだ。先に戻ってくれ。まだ少し用事があるんだ。今夜は君の面倒を見ている時間はない。」
盧安はうなずき、さらに言った。「そうだ、あのシステムと水中での操作システムは、まだ試していないよね…」
盧九重は手を振って言った。「ごちゃごちゃ言うな。早く戻れ。」
十分後、盧安はバイクを駆って道路を疾走していた。
この道路は海に面しており、顔を左に向けるだけで、すぐに海の様子が目に入る。遠くの海面には、大きな船が海と空の境に現れていた。
表面上は、盧安はただ自転車に乗っているだけに見える。しかしこの時、盧安の頭頂から一本の導力脈絡が伸び、空の導力座標ネットワークに接続していた。この導力脈絡は機械波を通じて情報を伝送している。振動している信号は、盧安の上空四百メートルで中継増幅された後、毎秒七キロメートルの速度で都市のある高層建築物の尖塔へと伝わっていく。そして、この尖塔は盧安から五キロメートル離れている。
機械波は尖塔の先端から速やかに地下へと導かれ、機械信号は地下の気泡計算システムで解読された後、さらに電流信号に変換される。
盧安が都市の地下に配置したシステムは絶えず稼働しており、乾熱井に水を注入し、熱蒸気を導いて発電している。電力は水を電気分解して水素を生成し、それを液体水素に圧縮して都市全体の各電力パイプラインの動作を維持している。もちろん、電気信号の伝送も同様である。このシステムはまるで眠る巨大な獣のようで、ほんの少し触れるだけで目を覚ます。
盧安の命令が下されると、このシステムの一角が起動した。
盧安は上海市全体を七十二の区域に分けており、今彼は第十八号区域の沿海国道にいた。
現実では、盧安はバイクを飛ばしていたが、一秒間に六百回の予演算のうちの一つで、バイクの真正面にこの区域の立体地図が投影された。立ち並ぶ海沿いの高層ビル、別荘、椰子の木までもがはっきりとその上に映し出されていた。
この大投影上には、逆さになった尖った円錐があり、その尖端は大地図の公路上、つまり盧安の現在位置を指している。尖錐の底面は拡大された地図だ。バイクを駆る盧安を中心に、半径六百メートル範囲内の草や木の一本一本までもが投影されている。
この詳細な地図情報は、高度三万メートルの高空を飛ぶある飛行体による撮影と、大量のバイオニック鳥による周囲環境の補足撮影に由来している。
地球二十一世紀前半、軍事マニアは「火力不足恐怖症」に悩まされていたが、二十二世紀には第三次世界大戦時の軍隊は「情報不足恐怖症」に悩まされていた。第三次世界大戦では、艦隊攻撃を指揮する将校であれ、最も末端の兵士たる孟位であれ、目の前百メートルの範囲に何匹のハエがいるかさえ突き止めようと必死だった。そして初代から逃げ帰った後、盧安の「情報不足恐怖症」はさらに深刻化した。
そのシミュレーションでは、盧安は自分の周囲の環境を観察していた。別のシミュレーションでも、盧安の前には同じ地図表示モードがあった。異なるのは尖った先端の指し示す場所だった。このシミュレーションでの尖った先端の底面には、五キロ先のあの船の周囲の様子が表示されていた。
いかなる超能力も、その船の付近一帯では鈍化させられる。しかし、空で偵察を担当するバイオニックカモメであれ、水中の無人潜水機であれ、接近観測を行う際には各機構がすべて正常に作動している──盧安のこれらの造物には超能場が一切存在しないのだ。盧安が規格に適合した部品や材料を製作するのは、通常の工業体系よりもはるかに容易である。まず、切削用の刃物があらゆる硬度の材料を加工でき、さらに無抵抗膜による温度遮断と、精錬時の圧力制御が可能なのだ。これは材料の精錬においてはチート行為に等しい──盧安はやはり超能力を用いている。要するに、これは盧安が生産力によって超能力を解放し、超能力によって生産力の発展を促進しているということだ。
予演の中で、盧安は虎部のマークがついたこの船が何かを輸送しているのを発見した。盧安は楚滄霞も見つけた。この五級超能者は艦橋の四番目の部屋にいた。その時、彼女は独特の鎧の装備を身につけていた。盧安は予演の中で試し、楚滄霞がこの装備で空を飛べることを突き止めた。
盧安は思わず感嘆した。「どうやら、ほとんどの人が特殊な装備で移動や防御の不足を補おうと考えているらしい。ほとんどの超能組織も同じような考えのようだ。だから龍部が、俺が李星霽のために作った機甲を珍しがらないわけだ。」
盧安は反省する中で、実は二つの事実を見落としていた。
第一に、この世界で補助装備を持つ超能者はそれほど多くない。
今のこの時期は、所属組織と高度に連携し、任務出動率が極めて高い能力者だけが、各自のあらゆる環境下で必要な装備をオーダーメイドできる。なぜなら、いかなる装備も完成度を高めるには、使用者からのフィードバックが不可欠だからだ。組織と広く連携してこそ、大量のデータを提供し、適切な装備を開発できるのである。楚滄霞のジェットアーマーも、鄧大能のチタン合金カードも、組織を通じて特注されたものだ。
しかし、全ての超能者がカスタマイズの装備を持っているわけではない。これは、今が平和な時期で、装備のない超能者でさえ制御が難しいからだ。もし彼らが装備を持っていて命令に従わなければ、全世界が大騒ぎになる。例えば、盧安が今上海市の地下で建設している生産体系が政府に知られたら、政府は安心できないので毎日盧安を見張る人を派遣するだろう。この都市の金融は非常に刺激を受けやすい。彼らにしてみれば、強大な力を持つ超能者が万が一何か間違えたら、引き起こされる動揺は計り知れない。
この世界は超能者に工業生産を動かす権利を与えておらず、超能者に享受する権利だけを与えている。
もちろん、戦時中であれば話は別だ。例えば、清政府は戦争時に漢人に権限を委譲すれば自らの支配が揺らぐと分かっていたが、外部の脅威に直面した際、最終的には曾國藩、張之洞、李鴻章を登用した。戦争は政府に平時の限界を突破させ、非日常的な決断を下させる。
第二に、これらの装備は非常に低水準だ。
楚滄霞のあの鎧はまだ高水準と言えるが(詳細は0394章参照)、鄧大能のチタン合金カード(詳細は0347章参照)は単なる航空断熱材の板の束に過ぎない。
これは、超能者の装備の大部分の設計が一般のエンジニアによって行われているからだ。普通の人の視点は結局のところ普通の人の視点であり、空を飛ぶ感覚を持たない者が飛行可能なアーマーを設計する場合、常に超能者の説明に基づいて設計するしかない。そして、これらの超能者の知識量が不十分で、説明が不十分なために、多くの設計が非常に保守的になってしまうのである。
地球の二十一世紀において、科学技術の発展を促進するためには、生産者の資質も重要だが、市場の消費者の資質も同様に重要である。もし市場の消費者がある程度の科学的素養を持たず、正確に情報をフィードバックできなければ、そのような市場が科学技術促進に果たす役割は、単に生産メーカーに原材料の購入代金を支払宇田けにとどまってしまう。
直接的に言うと、超能力者は自然科学に精通していない。書道、茶道、琴、さらには馬術などのコースの試験も依然として厳しい。盧安が崇明区の超能力者学院のカリキュラムを見たところ、数学、物理、化学の3科目の試験難易度は、基本的に地球21世紀の新疆とチベットの2地域と同じレベルだ。要するに、彼らが学ぶことは決して楽ではない(ピアノだけでも人を疲れさせる)。しかし、彼らは単に特殊技術製品の使用者に過ぎず、適格なフィードバック者ではない。
以上の2点は、盧安の内省がやや過度に謙虚すぎたことを示している。この世界がさらに不安定化し続ければ、盧安の価値は自然に際立つだろう。
李星霽と盧九重のどちらのフィードバックにも問題があった。もし盧安が予演を通じて詳細に尋ねることができなければ、もし盧安が超能力で彼らの超能力や装備をシミュレートできなければ、彼ら二人が今のようにこうして手頃な科学技術補助装備を手に入れるには、おそらく長い遠回りをしなければならなかっただろう。
盧九重は決して臆病な人間ではなかったので、直接に船首へと飛んで行った。
この人物が船首に現れるのを見て、楚滄霞は船室を出ざるを得ず、金属の翼を展開して噴射し、盧九重と対峙した。
二人は結局戦いには至らず、何やら言葉を交わした後、楚滄霞は盧九重を船に招き入れ、何かを伝えたようだった。
一連の流れは盧安にとっては平凡なものだった。しかし、船上の輪廻者たちの目には、盧九重の出現は大きな想定外だった。
「なぜ彼がここに!今は謝彤と一緒にいるべきではないのか?」|鮮血之壁小隊の輪廻者たちは思わず緊張し始めた。
彼らの隊長である蘇傑も高度な警戒をしていた。ストーリーが変わったからだ。重要なストーリーキャラクターがここに現れたのだ。
神経質な蘇傑の最初の反応は、盧九重が他の輪廻者にここへおびき出されて自分を狙っているのだろう、というものだった。もしそうなら、自分の計画は実行したばかりで漏れてしまったことになる。
蘇傑は密かに自分の仲間たちを見回した。「もし計画が漏れたなら、内通者がいる可能性は否定できない。ならば、内通者は誰だ?」
その時、道路上の盧安は盧九重が無事なのを見ると、アクシェルを強く踏み込み、道路で車をとばし始めた。
盧安はある種怠惰な感情で感慨深げに言った。「今夜は彼のゲームに付き合わなくていいんだ。やっと楽になった。」




