0397 「偶然の出会い」
予演ができるようになってから、盧安にとってこの世界で偶然の出会いはほとんど存在しなくなった。例えば、輪廻者と偶然出会ったことは一度もない。
今、盧安は盧九重と会うべきだと思っている。盧九重の悪辣な性格は他人から非常に疎まれているが、それでも盧安は自分が盧九重に会いに行かねばならないと感じている。
盧安の感情状態は多種多様で、誰を見てもネガティブな感情を誘発する感情状態があり、嫌悪だったり、敬遠だったり、面倒くさがったりする。様々な感情状態には様々な視点があり、盧安は誰に対しても完全に満足することは決してない。しかし、もし盧安がこれらのネガティブな感情状態のままに行動すれば、孤立無援の天涯孤独になってしまう。
実際には、盧安の交友方法はとても積極的で、例えば李星霽の場合、盧安ともともと友情が終わりそうな関係だったのを、盧安が無理やり修復して友人関係に戻したのだ。
盧安の行動、例えば現在の交際は、自分で定めた原則に基づいている。
まず、双方に利害の衝突があるかどうかを見る。
もし利益相反があれば、友情は根無し草のようなものだ。自分の感性に任せて、利益相反のある友情を修復するために妥協しても、相手は必ずしもその妥協に感謝しない。なぜなら、相手には相手の利益があり、誰もが自分の利益の立場から物事を見るからだ。利益の衝突の下で、友情は最終的にすり減って消えてしまう。
盧安は、自分と盧九重の間には現在利益相反はないと確信している。
そして、次に善悪を見る。
悪とは何か?自分の利益のために他人の利益を無視できること、それが悪だ。誰もが自分の利益のために他人の利益を軽視する。本当に肉を切って鷹に与えるような純粋な献身的な愚か者は稀であり、だから誰もが悪を持っていると見なせる。
しかし、他人の利益を無視するには限界がある。誰にでも限界があり、基準がある。ひとたび自分の限界に触れると、盧安はそれを許しがたい悪とみなし、その悪が自分に害を及ぼすのを避けるために、遠ざけねばならない。たとえば淺空明子に対して、盧安は制裁を加えはしないが、ずっと距離を置き続けるだろう。
一方で、盧安の視点から見ると、盧九重は非常に冷淡に振る舞っているが、実に善良な人物である。予行演習の中で、盧安は鉄筋の落下や車両横転などの事故を起こしたが、そのたびに盧九重はそれらの事故を発見し、たとえ数百メートル離れた場所で起きたものであっても、できる限り人を救おうと超能力を発動させた。
盧九重の性格の悪い面は、人を助けた後、怪我人を見ても、他の人々が怪我人に気遣いを示すのに対し、彼自身は「お前らは自業自得だ」といった態度で人前に現れるところに現れている。
天よ、哀れなことだ。もしも予演のような超絶視点がなかったり、あるいはやむを得ず何年も彼と付き合わされたりしなければ、誰が彼の本質を知るだろうか。しかも、たとえ彼の本質が善良だと知っていても、この外見上の振る舞いでは、誰も彼の味方になろうとは思わないだろう。
盧安の推測は非常に正確だ。盧九重はあまりにも付き合いにくく、彼のあの愛想なしの態度のせいで、輪廻者たちは挨拶をした後で一言も話せなくなってしまう。天雲に所属する輪廻者たちがこのプロットの主人公を支持しようとしても、たいていは謝彤を通じて間接的に盧九重の派閥につくことになる。
そして今、盧安と盧九重が前もって顔を合わせることは、他のプロットラインでは決して起こらなかったことだ。もし周りに他の輪廻者がいれば、盧安もこの偶然の出会いを諦めるだろう。実際のところ、他の多くのタイムラインでは、輪廻者の関与によって盧安は参加を諦めている。
盧九重と利益相反がなく、盧九重は善良で危険もなく、盧九重の人脈は広く、今はかなりイライラしている状態のようだ……これらの要素が重なり、ある理性的な感情状態はちょうど人情投資をしようと考え、ある感情的な感情状態は人情を返せるかどうかと考えている。
「善人」、それは盧安が外界に見せる特性である。盧安が他人の目に映るある種の特性は、盧安の天性ではなく、例えば李兵強の目に映る従順さ、例えば輪廻者の目に映る弱さ、これらはすべて盧安が外部の者に見せたいと思っているものである。しかし今、多くの人がこれらを盧安の本性だと思い込んでいる。
ただし、善人はただ人に利用されるだけの馬鹿ではない。大部分の善人は、自分の利益を損なわない範囲でできるだけ人を助けるものである。
盧安が善人であろうとする理由は単純だ。彼は悪人の集まりの中で疲れすぎてしまい、善人が集まっている集団に紛れ込みたいと思ったのだ。盧安は平和が好きで、善人が集まっている場所が好きだ。そこで、盧安の一挙手一投足、さらには表情さえも、なるべく穏やかな感情状態で接するようにしている。
輪廻者のあのような、皮肉な笑みを浮かべていて表面上は穏やかそうに見えながら、内心では常に計算をしているロールプレイは、盧安から見ればあまりにも不自然だ。
ある感情的な思考様式の論理に従えば、盧九重は自分を助けてくれた。助けはただの金カード一枚(詳細は0054章参照)であり、今から見ればそれほど重要ではないが、助けてくれたという事実は変わらない。ルールに従えば、自分はその恩を返さなければならない。そして、盧九重のような人物に恩返しするためには、彼に会うべきなのだ。
街中で、盧九重は平然と街をあてどなくぶらついている。このぶらつきは、普通の人が気がめいるときに部屋でうつむいて歩き回るのと同じで、俗世を見下ろすような眼差しは直視しづらく、そのため彼の目に隠されたあてどない彷徨も気づきにくい。
交差点に差しかかると、盧九重は突然振り返り、六十メートル先を見て、軽く「あっ」と声をあげ、何か珍しいものを発見したように見えたが、足を止めた。
交差点の右側では、盧安が地面の物を拾っている。車が走行中に、たくさんの生活物資がトランクから散乱しているのが見える。
今日の退勤後、盧安はまず高級レストーーランに立ち寄り、セットメニューを注文した。その後、近くの商店で買い物をし、最後に帰り道で盧九重に偶然出会った。計画全体は順調に進み、今回の偶然の出会いを成功させた。
「食いしん坊」、これも盧安が外部に見せている一面だ。上海で地形を探り、自身の計画を進めていた際(詳細は0339章参照)、盧安はさまざまなレストーーランを回って料理を持ち帰っていた。これらのレストーーランはいずれも高級店で、情報は李星霽から引き出したものだった(詳細は0231章参照)。
一日働いた食いしん坊が、わざわざ某高級レストーーランに食事に行くのは、とても理にかなっている。ついでに近くで買い物をするのも、とても理にかなっている。そして、途中でトランクがきちんと閉まっておらず、荷物が地面に散乱したのは、まるで偶然の出来事のように見える。
辺りの暗物質場を収束させながら、盧安は物を拾っていたが、盧安の運転手(畢方材が派遣した者)はひどく不運そうな顔をしていた。この運転手は自分のトランクがきちんと閉まっていなかったせいだと思い込んでいたが、実際にはトランクはきちんと閉まっていたのだ。盧安が導力の脈絡でロックを開け、中身を外に散らばらせたのである。
盧安が物を整理していると、地面に落ちていた物がふわりと浮かび上がり、トランクの中へ飛び込んだ。盧安は「愕然」とした様子でその光景を見つめ、それから顔を上げて、盧九重の姿を認めた。
盧九重は両手をポケットに入れたまま、盧安に冷たく言い放った。「また会ったな、どうやって崇明区から出てきた?」
盧安は気まずそうな声で言った。「ええと……あそこはとっくに離れたんだけど。」
盧九重は眉をひそめ、横にいる運転手に手を上げた。「シュッ」という音とともに、この運転手の両足が地面を離れ、それから脇へ飛ばされた。
部外者がいないのを見て、盧九重は振り向いて盧安に言った。「さあ、話してくれ。どういうことだ。」
盧安は弱々しく運転手を指して言った。「まず彼を降ろしてください。彼はとても無実なんです。」
盧九重は横をちらりと見て、引力を解除し、それからこの運転手に冷淡に言った。「君は回避すべきという道理を理解しているはずだ。」
盧安はこの運転手に申し訳なさそうに言った。「家族の人だ。私は大丈夫だ。ちょっと待っていてくれ。」
ある予演の中で、盧安は思わず盧九重に不満を漏らした。「ああ、君のような性格は本当に扱いにくいね。」
盧安が崇明区で能力が消えたときのことを復唱すると、盧九重は軽蔑の目を向けて言った。「チッ、このバカが。引力系能力がお前の手に渡るとは、笑わせる。」
その後、盧九重は尋ねた。「家の者はどうした? 彼らはお前に何か指示を出さなかったのか? さっさと家に帰れ、ここで哀れっぽくしているな。虎部の者たちは慈善家じゃない、百回頭を下げても無駄だ。」
盧安は首を振って言った。「私は虎部に頼んでなどいません。それに、私と盧家との関係はもうとっくに断ち切れています。」
盧九重は目を細め、冷ややかに尋ねた。「何だって?」
盧九重の視線の先で、盧安は勇気を振り絞って言った。「私は盧家とはもう関係ありません。当然、虎部とも関係ありません。今は軍のために働いています。」
盧九重は歯を食いしばりながら言った。「よし、立派になったな。じゃあ、さようなら。」その後、盧九重は振り返り、立ち去ろうとした。
盧安は盧九重を呼び止めた。「兄貴、ここに一人で来たんですか。」
盧九重は頭をそらし、苛立ちながら言った。「そうだ、それがどうした。」
「泊まる場所はあるのか、この辺りは俺が詳しい。」
盧九重は盧安の肩に着いている階級章を見つめ、口元をほんのりと曲げて笑い、意味ありげに言った。「おや、俺をもてなすのか、自分が何をしているかわかっているのか?」
細かい観察と複数の感情状態の分析を通じて、盧九重のその言葉から、盧安は自分の軍属身分が盧九重に誤解を与えた可能性があると悟った。軍が自分を通じて彼を勧誘していると誤解したのだ。
これに対して、盧安は素早く言葉をまとめて言った。「つまり、もしあなたがこの街に長く滞在するなら、何かご用があれば私にお申し付けください。例えば、お使いやホテルの予約などです。もし何かご不便なことがあれば、いつでも私を呼んでください。」盧安はそう言いながら、携帯電話を取り出した。「あなたの電話番号は?」
盧九重は一瞬驚いた後、軽蔑して言った。「お前、余計なことに首を突っ込んでいるってわかってるのか!」
しかし四十分後、ホテルにいる盧安はカウンターで部屋を予約し、盧九重に言った。「あの、今夜はここにお泊まりください。他に何かありますか?」
盧九重は尋ねた。「お前はどこに泊まるんだ?」
盧安は言った。「軍隊には門限があるので、夜は必ず戻って報告しなければなりません。」
盧安は矛盾に対して非常に敏感であるため、軍と玄鳥部という二大グループの利益衝突に身を置くようなことは決してしない。もし盧安が軍の資源を利用すれば、当然盧九重にもっと良い手配ができるが、玄鳥部に所属する盧九重がその手配を受け入れるのは不適切だ。そのため、盧九重に宿泊先を手配する際、盧安は軍の名義ではなく個人の名義で行った。
盧安のこうした無難な対応は疑いを避けるためのものであり、盧九重にも盧安に他意がないことを理解させた。
盧安の返答を聞いて、盧九重はフンと鼻を鳴らして言った。「ふん、ただの兵隊風情が。」




