0395 ますます多くの乱線
完全な戦闘状態を展開した楚滄霞は、三百メートルの高空中を旋回している。
彼女が旋回するこの投影範囲内に、巨大な環状の氷のダムが海中に形成される。この氷のダムは成形後、約十分の一が海面に浮上し、この海面と外側の海水との対流を遮断する。そしてダム内の海水は濃いスープのように、大量の氷粒が混ざり合い、かなりどろどろとした状態になっている。
氷のダムの中で、醜い巨大なイルカが死んだ魚のように海面に漂っている。その周りには大量の氷柱がある。この塩漬けの魚は死んでいるように見えるが、周囲の微かな青い光が揺らめいており、まだ生きていることを示している。これにより、高空で翼を広げ飛ぶ楚滄霞は、超能力を鈍化させるこの死体に近づこうとしない。
三キロメートル先、虎部の科学調査船に立ち、道案内の漁民として紛れ込んだ蘇傑ら輪廻者たちはこの光景を見ていた。
『宇宙の影』のストーリー全体で実力上位に位置する五級超能者として、楚滄霞の実力は特筆に値する。天雲空間の評価基準によれば、NPCの実力は雑兵、普通、優秀、精鋭、叙事詩、伝説、神話の七段階に分けられる。各段階はさらに黒鉄、青銅、白銀、黄金の四つの小段階に分かれる。楚滄霞がもし中魔位面にいたなら、戦力は伝説黒鉄レベルであろう。
40分後、氷の塊と化したイルカが調査船の網で甲板に引き上げられた。寒さがその獰猛な姿を凍りつかせ、巨大な歯には金属の擦り傷があり、硬いものを噛み砕いた跡だろう。十数日前の戦いでは、水流の加護によって重傷は負わなかったものの、灰色の表皮には無数の傷跡が刻まれ、明らかに銃弾と爆発の破片によるものだった。
網で引き上げられた巨大なイルカを見て、輪廻者の一人が困惑顔で尋ねた。「確か『怠惰』は伝説の白銀級だったはず。楚滄霞は強いけど、こんなに簡単に捕らえられるものなのか?」
蘇傑は説明した。「設定上、それはまだ完全な形態に成長していないはずだ。次は、これが上海に運ばれるのを待って、その力はますます強くなるだろう。」
あの輪迴者は甲板上のもろい「怠惰」を見て、思わず興奮して言った。「それじゃあ、このボスを倒してしまおうか。もしかしたらレアな……」
言い終わらないうちに、あの輪迴者は肩を蘇傑の鉄の鉗のような手でぎゅっと掴まれて痛みを感じた。蘇傑は冷たくこの隊員を見下ろした。あの輪迴者は蘇傑の冷たい視線の中で大汗をかいた。
蘇傑は軽く鼻を鳴らして警告し、それから西の方を見て、全ての準備が整い後は東風を待つばかりだと言わんばかりに言った。「次は、上海で大騒ぎを起こしに行く。」
その時、海面にはまだ冷たい風が吹き荒れ、周囲の人々は思わず身震いした。
長江中下流域の中央部、広々とした野原に一本の線路があり、列車が疾走して通り過ぎる。
その時、二つの勢力の者たちが列車から飛び降り、この青々とした野原で衝突した。
その一方のグループは謝彤と湯宏康である。盧九重が目覚めた後突然一族を離れたため、鄧大能は一族に戻り(今回は非常に自発的だった)、鄧雯を探すチームは一時解散し、謝彤と湯宏康が引き続き手がかりを追うことになった。
もう一方のグループのリーダーは“雙欲”であり、北方から来たあでやかな嫌な奴だ。厚化粧の姿で現れたため、当然湯宏康の疑惑を招いた。
「雙欲」が謝彤に近づこうとしたその時、湯宏康が謝彤を引き留めた。だから、続いて戦闘が起こった。湯宏康は車外が広いことを理由に、「雙欲」を人の密集する列車から遠ざけた。
列車が完全に遠ざかると、湯宏康は沈黙を破った。「お前たちは誰だ?」
これは一見、三人の物語キャラクター間の戦闘に見えるが、実は輪廻者たちの関与である。これらの一見脇役に過ぎない人物たちが、今回の衝突を主導したのだ。
輪廻者たちの嗜好によって、この世界はすでに大量の変動を起こしている。謝彤と湯宏康は、少なくとも三組の輪廻者小隊の干渉を受け、関係がわずかに縮まった。もちろん、単に関係がわずかに縮まっただけだ。そして今回の戦闘を経て、関係はさらに近づくだろう。
「雙欲」は回帰者たちにそそのかされて南下した。そして今回の南下は、ちょうど湯謝党の回帰者たちに遭遇し、こうして元の筋書きにはない衝突が起こったのだ。
意思疎通ができないと、謝彤と湯宏康は並んで立ち、同時に標的に対して手を上げた。
引力と属性変更の共同作用により、半径20メートル範囲内の空気中の酸素が、遠心分離に似た作用で分離され、分離後の純酸素は環状の波紋となって急速に周囲へ拡散していった。
絶えず拡大する純酸素の環は、通過した地面の草木を白光の爆燃へと変えた。この季節の草木はまだ水分が多く、普通に燃えれば大量の白煙が発生するが、その環状の物質は酸化性を改変されていたのである。
この純酸素区は空気中の酸素を分離したかと思うと、ほとんどすぐに消耗し尽くされ、そして再び分離が行われ、灼熱の炎がさらに拡散していく。こうして、オレンジ色の燃え盛る火光は、爆発後の環状の火の波のように、白い光に沿って周囲を飲み込んでいった。
この火の波は半径四百メートルまで拡大し、その範囲は雲爆弾の絨毯爆撃に匹敵する。黄色い火の輪は外側へと広がり、まるで火薬ではなく草木が燃えているかのようだった。炎の及んだ場所は一面焼け焦げた赤色となり、息も詰まるような灼熱の空気を残した。
これが湯宏康と謝彤のコンビネーションスキルである。
他の位面における『宇宙の影』の映画や関連ゲームでは、謝彤と湯宏康の関係性が一定の段階まで近づくと、このコンビネーションスキルを使用できるようになるという設定が存在する。
これもまた、輪廻者たちが湯宏康と謝彤をくっつけようとした理由の一つだ。多くの輪廻者たちは、『宇宙の影』のストーリーの中で、二つの超能力を組み合わせることで生じる現象が、一足す一が二よりも大きな効果を生むことに気づいていた。この発見は盧安だけが観察していたものではなく、少し賢い者なら誰でも気づく現象だった。
ただ、この現象を捉え、それを目標として蓄積し続けられるかどうかが、差を生むのだ。文明が築き上げたピラミッドや万里の長城といった奇跡や偉観は、不可能に思えても一枚のレンガ、一石から始まる。奇観の建設こそが、文明の意志の力を最もよく示すのである。
この時、輪廻者たちは物語の主人公たちが技を組み合わせて生み出す破壊力を傍観しながら、この世界の他のさらに多くの超常現象の組み合わせについても思考を巡らせていた。しかし、彼らの浅薄な経験が想像力を制限していた。
戦闘終了。湯宏康と謝彤が連携して「雙欲」を退けた。「雙欲」の頭のプラスチック製のかつらは焼け落ち、元々の髪も焼け落ちて、灰色がかった頭に溶けたプラスチックと火傷が残った。
実力がまだ物語の最盛期に達していないそのボスはすぐに撤退し、「雙欲」を外の世界に引きずり出した輪廻者たちも、湯宏康たちの輪廻者との戦いから直ちに離脱した。
先ほどの大技に比べると、輪廻者たちの戦いはまるで雑兵同士の戦いのように見えるが、もし盧安が側で観察していて、予行演習の視点から見れば、輪廻者同士の戦いの方が変数が大きい。
盧安はここにはいない。しかし、自らを天下無雙と称するある物語の登場人物が偶然ここを通りかかり、戦闘終了後に湯宏康が謝彤の肩に手を置く様子をこれまた偶然目撃してしまった。謝彤の表情は非常に不自然だったが、戦闘に勝利した直後で断りづらかっただけであり、しかしそれは一方的な情報としてこの人物に伝わってしまったのだ。
四キロ離れた山の頂に立つ盧九重の前には、水でできた四枚の凹凸レンズが浮かんでいた。彼は炎が燃え広がった後の黒く焦げた一帯を見つめ、無造作に鼻を鳴らすと、すぐに高空へと昇り、「雙欲」の一行が逃げた方向へと追跡していった。
盧九重は知らなかった。自分がわざと余裕ぶってその場を離れたことが、逃げ出したように見えてしまっていることに。
先ほどの小さなエピソードで、盧九重はちょうど通りかかり、介入しようとしていた。しかし彼にはその機会がなく、さらに湯宏康の行動を目撃した。もし盧九重と謝彤が顔を合わせることができていれば、この誤解は生まれなかっただろう。しかし今や誤解はすでに起きてしまい、盧九重と謝彤の関係は友人へと向かい始めている。
こうして物語は逸れ、新たな小さなエピソードが発生した。そしてこれからも、このような新しく生まれる小さなエピソードは数多く現れるだろう。
盧安が海軍に入ってから、畢方材の行動により、龍部は一時的に盧安への制御を失った。さらに国内の案件が山積しているため、龍部の面々は盧安への関心を低下させた。結局のところ、今のこの白銀が輩出する時代を掴むことのほうがより重要に思えるのだ。
これまでに、龍部全体で盧安の身分の奇妙さを知っている者は十人以下であり、しかも現在のところ、盧安がこの世界で行動した資料を見たことがあるのは三人だけだ。もちろん、この姬流が自ら探り出した資料は非常に限られている。他の盧安が五級トップクラスだと知っている情報者、例えば盧安の監視を担当する段昊傑(詳細は0354章参照)などは、盧安の状況についてさらに少ないことしか知らない。
ほとんどの物語では、盧安のこの秘密は永遠に隠され続ける。なぜなら、複数の時間線において、盧安は決して退場しないという約束を貫いているからだ。もし輪廻者たちが、自分と李兵強、姬流、潘陽の三人との好感度を同時に100%に上げなければ、この秘密を得ることはまったくないだろう。
この三人の好感度を上げるのは難しい。特に潘陽の好感度は――潘陽は読心術を使う――心が不純な者が近づいても、彼は絶対に事実を打ち明けない。しかも、この三人は主人公ではない。今のところ、天雲空間内でこれを試みた者はいない。この三人の好感度を高めるよりも、直接主人公を取り込んだ方がましだ。
今、龍部の統帥李兵強は南方から届いた報告書を見ている。
この報告書には、李星霽が盧安を連れて業種の異なる多数の技術工場を出入りし、指示を仰いで、盧安が不審人物かどうかを確認していると書かれている。
李兵強は眉をひそめてしばらく考えた後、龍部の公印を取り出して押し、そばにいる者に言いつけた。「北方工業に伝えろ、我々はこの者の通行証を再発行中だと。」
李兵強は龍部の身分で盧安の行為を保証することに決めた。彼は太平洋艦隊の上海基地に電話をかけ、畢方材の電話に繋いだ。




