0383 独断専行
夜の帳が下りると、鄭州という街の一角に、欲に目がくらませる光が放たれていた。
チリンチリン、チリンチリンと、鈴の音のように聞こえる。
カタカタ、コトコトと、プラスチックの小さなブロックがぶつかる音だ。
パタンパタンと、厚手の紙片が跳ねるような音だ。
ここはカジノであり、人間の貪欲な欲望を完全に発散させるための場所です。ここにはスロットマシン、麻雀、トランプなどの賭博具が用意され、ギャンブラーたちが賭け事を行います。ここでは椅子を含む設備が風水師のアドバイスに基づいて配置されており、風水学によれば、風水的な要所にいる人は欲望に駆られて理性を失うとされています。カジノの壁紙には精美な貔貅の模様があしらわれており、これがギャンブラーたちの財運をより良く吸収すると言われています。そして、腕に獰猛な獣の刺青を入れた者たちがカジノの隅に立っており、彼らはカジノで発生したトラブルに対処するためにいます。
賭博場での予期せぬ事態は二種類に分けられる。一つ目は、ギャンブラーがあまりに負けすぎて正気を失い、ヒステリーを起こし、刃物を自分の体に向けて賭け金代わりに差し出す場合だ。こうした事態が発生すると、賭博場は用心棒を使ってその人物を外に放り出す。賭博場の最終目的は金儲けであり、ギャンブラーが完全に財産を失えば、賭博場経営者にとってはもはや価値がなくなるのだ。
一つ目の状況は最も一般的だ。なぜなら、どんな賭博場も純粋な賭博場ではなく、胴元たちが仕切る罠だからだ。ギャンブラーたちのこの罠の中での勝ち負けは、完全に賭博場によってコントロールされている。それは、賭博にはカラクリがあるからだ。スロットマシンの内部装置は完全にプログラムで調整されており、バックエンドで誰にどんな結果を出したいかで決められる。麻雀卓の下にある牌を混ぜる機械は自動的に牌を識別し、特定の玩家に好きな牌を引かせることができる。紙札には部品が仕込まれており、カジノ提供の指輪をつけた者が札を触ると、指輪が隠語を含む振動を発する……これらの手段でカジノは利益を得る。つまり、カジノは全体の賭博客に勝つより負けるほうが多くさせ、個々の賭博客を望むように負けさせられる。そのため、この都市のナイトクラブに設けられたカジノでは、毎月のように、一文無しになり高利の借金を背負った間抜けを数人放り出す。
二つ目のケースは稀で、カジノが荒らしに遭う場合だ。機械より巧みに勝ち負けを操れる「イカーサマ師」が来れば、カジノは損をし、その「イカーサマ師」の手口を見抜けなければ、カジノはこうした不正行為者を追い払わざるを得ない。
カジノが人を追い出す方法は様々だが、一般的には次の種類に分けられる。
一つ目は、個人情報を記録し、再入場を禁止する。
第二に、「イカーサマ」をしていると決めつけて、暴行を加えてから放り出す。
第三に、勝ち金を差し出し、礼儀正しく送り出す。
今、この賭場のオーナーは、この「イカーサマ王」の背景や実力を見極められず、第三の方法を取ろうとしたが、この「イカーサマ王」は顔を立てなかった。
「ゲームはまだ終わっていない、あっちへ行け。」鄧雯は背後にいる5人の大男を無視し、賭卓の前に座り続け、少しも動こうとしなかった。一方、賭卓のそばにいる賭博者たちは負けて目が血走り、鄧雯が賭けるのを待っていた。
賭場のオーナーは眉をひそめた。鄧雯のこのお嬢様ぶりは、彼に違和感を覚えさせた。賭場をここまで経営してきただけあって、このオーナーもそれなりに人を見る目がある。最近社会で超能力に目覚める人が頻発していることに加え、鄧雯の不気味な勝ち方を考え合わせ、オーナーはこの女が普通の人には想像もつかない能力を持っているのではないかと推測した。
そう考えると、この賭場のオーナーは思わず心の中で「チッ」と舌打ちをした。「忌々しい超能力者め」。彼は右側の大男に目配せをし、倉庫へ毒針銃を取りに行かせた。
子分が倉庫へ行った後、この賭場のオーナーは再び賭けをしている鄧雯に視線を据えた。彼は鄧雯の凹凸のある魅惑的な体つきを見つめ、心の内に欲情が燃え上がるのを感じた。
この店主が邪な考えを抱いたその瞬間、突然、眼窩に激痛が走り、両方の眼球が何者かの力によってえぐり出された。賭場内は瞬く間に大混乱に陥った。
しかし、鄧雯は震え上がるディーラーを冷ややかに見つめ、淡々と言った。「続けてカードを配りなさい。」
数時間後、鄧雯の傍らには大量のチップが山と積まれ、床には負けた者たちから切り落とした指が一列に並べられていた。
賭場の壁に残る弾痕は、賭場側が抵抗を試みたことを物語っていた。しかし、その抵抗は無駄であり、銃を手にした者たちは皆、重度の火傷を負っていた。銃器は鄧雯に向けられた瞬間、金属部分が摂氏千度近い赤熱状態になり、まるで粘り気のある餅のように、使い手の手へとドロリと垂れ落ちたのだ。
この時点で、賭場には他の賭博者はもういなかった。他の者たちは雲行きが怪しいと見て、ここを去っていた。
静かで広々とした賭場の中で、鄧雯はトランプの山から赤い星のKを一枚引き抜き、その場にいる胴元たちを見つめながら、興味津々に言った。「続けましょう。さあ、次は何を賭けますか?」
そばの壁には、敗者の血液でこう書かれていた。「指一本千、手のひら一枚二万、腎臓一つ二十万、目一つ五十万、両目一度に賭けて四百万……」
ある意味、鄧雯の提示した価格は闇カジノの相場でも公正と言えたが、鄧雯は相手に一勝たりともさせる気はなかった。鄧雯が新たな賭けを始めようとするのを見て、カジノ内で血まみれになった敗者は泣きながら許しを請う。「もう賭けない、この人生で二度と賭けない……」そして隅へ這って逃げ、この地獄のような賭けから逃れようとした。
しかし結局、直前の敗者の一人が何らかの力で賭け台に引きずり戻された。そして賭け台のルーレットが回り始め、新たな拷問が始まった。
その頃、カジノが潜伏するナイトクラブは、武装警察によって包囲されていた。内部のカジノ施設は強力な力場で覆われ、すべての警察官はこの区域に入ると、弾力のあるマットレスに跳ね返されるようにして弾き飛ばされ、突入することが全くできなかった。
一人の警察官が拡声器を持ち、息を切らせて叫んだ。“中の犯人たち、聞いてください。人質を解放しなさい。一時の衝動で、他人を壊し、自分を壊してはいけません。政府は寛大な処理をするでしょう。”
最終的に、賭局は6時間続き、賭場内の全員、サービス員を含めて、鄧雯に障害を負わされ、透明になった鄧雯は去った。
鄧雯が去ってから数分後、警察が突入すると、指、切断された手足、眼球、内臓が床中に散乱しており、賭場はまるで屠殺場のようだった。しかし、被害者の傷口はすべて針と糸で縫合されていた。これらの縫合が場面をさらに不気味なものにしていた。例えば、賭場のオーナーのまぶたは縫い合わされていたが、まぶたはくぼんでおり、中の眼球がくり抜かれたことを示していた。ある人の腰にも縫合糸があって、皮膚はくぼんでおり、明らかにこれらの人の腎臓が取り出されたのだった。
一人も死亡しなかったが、これらの人々は目が虚ろで、表情は狂気に満ち、大小便を失禁し、口から絶えず恐怖に駆られて「賭けない、賭けない」と繰り返していた。明らかに、この賭博が彼らを狂わせたのだ。
事件後、鄧雯を逮捕できなかった警察はニュースで、6時間にわたって犯人と粘り強く交渉した結果、ついに犯人から全ての人質を救出し、犯人は最終的に罪を恐れて自殺したと発表した。
鄭州の惨事は一段落した。
この都市の龍部本部ビルに来た時、湯宏康はその建物の迫力に少し呆然とした。高さ6メートルの石獅子が一対、ビルの正面入口の左右に置かれ、非常に威風堂々としていた。
湯宏康は数周回り、さらに超能力場で探りを入れてみて、これが中実の花崗岩の獅子であること、そして石の獅子全体が渾然一体となっており、一枚の巨大な花崗岩から直接彫り出されたものであることを確認した。石獅子は高さ六メートルで、誰がそばに立っても、まるで小ウサギが水牛のそばにしゃがんでいるかのようだ。
高さから見ると、この高さ6メートルの石獅子は一般的な石獅子のわずか4倍に過ぎないが、質量では前者は後者の50倍以上ある。このような一尊の石獅子は、単体で重さ300トンに達する。これは小型艦艇1隻分の質量に相当する。人がこの石彫刻のそばに立つと、圧倒されるような重厚感を感じることができる。この一対の石獅子は、龍部の実力を反映している。この巨石は、決して通常の機械で運べるものではない。大陸間弾道ミサイルを輸送する大型トラックさえも運搬不可能だ。この輸送過程には、超能力者の関与が必ずあり、さらに彫刻にも超能力者が関わっている可能性がある。
この二尊の石獅子は龍部本部ビルの正門の両側に立ち、このビル全体にたちまち龍が天下を制覇するかのような気迫を漂わせている。このような本部は世界に二つとない。
湯宏康はそのビルを見渡しながら、行き交う通行人の視線を受けた。彼らは湯宏康を指さし、この田舎者を批評しようとしているようだった。しかし、玄関に一人の人物が現れると、湯宏康の周囲にいた人々はすぐに口を閉ざし、何事もなかったかのように立ち去った。
玄関に立つ潘陽を見つめ、続けて周囲の通行人を指さしながら、湯宏康は言った。「お前のオーラは恐ろしいな。」
潘陽は両手を広げて言った。「それは彼らが君に不慣れだからさ。もし彼らが君のことを理解すれば、きっと君の前でも慎重になるだろう。これが人間社会の階級制度というもので、皆この階級に慣れ、互いの上下関係に慣れているんだ。」
湯宏康は潘陽に続いてビルに入りながら言った。「その言い方、なんだか天盗部の者みたいだな。」
潘陽は身分証明書を取り出し、エレベーターのドアを開け、同時に答えた。「偷天部はただ人々の心の中で考えていることを露骨な形で叫ぶだけだ。そして、人々の心の考えは私の前では隠れる場所がない。」
潘陽は上を指差し、やや皮肉を込めて言った。「例えば、この国の上層部は、一見誰もが平等な態度を取っているように見えるが、実際には彼らを脅かす可能性のある存在に対して恐怖で満ちている。」
湯宏康は少し呆然とした後、笑って言った。「これは一部の普通の人々の考えに過ぎないだろう。大部分の普通の人はそうではないはずだ。」
潘陽の顔に笑みが浮かび、言った。「あなたが言う大部分の普通の人々とは、具体的にどれですか?それとも、どなたですか?」
湯宏康が答えようとしたところ、「叮咚」という音と共に、エレベーターが到着した。
エレベーターのドアがゆっくり開き、潘陽は先ほどの話題を遮って言った。「着いたぞ、行こう。」




