0376 七主錨
鄧雯は廃墟から立ち去り、遠くで観察している一団に気づかなかった。このグループはこの次元の地元勢力「獨角社」に所属している。
鄧雯が引き起こした陥没現場からそう遠くない場所で、獨角社の観察を担当する班長が衛星電話を手に取り、西ヨーロッパに位置する本部に向かって言った。「捕獲失敗、『傲慢』は依然として制御不能。彼女は西塞(風と化して逃げたあのロシア人)に大怪我を負わせた。」
鄧雯が実験室を脱出して以来、獨角社の者たちは遠隔心理暗示の手段を用いて彼女に影響を与え続けていた。そのためここ数日、鄧雯は頭の中に現れる映像の導きに従ってここに来たのだ。
イタリアにある一角獣社の某別邸――もちろん、某実験室と言ってもいいが、そこでは非の打ち所のない欧州人の男が、巨大なドミノ倒しのシステムを組み立てている。彼はこの部屋の中のものに集中しているように見えるが、その注意力は基地全体に行き渡っており、すべての状況を把握している。この世界での彼のコードネームは「ポ晟ドン」である。
観察チームからの報告を聞くと、彼は顔を上げ、もう一つの存在に向けて思念を送った。「赫拉、これらはもともと制御不能なものだ。たとえ君が彼女を導こうとしても、望む効果は得られない。それに、『強欲』は今弱体化している。」
数百キロ離れたスペインで、鏡のような装置の前に座り、地球全体を観察していた赫拉は、イタリアからの超長距離通信を聞き、笑いながら言った。「『強欲』が弱まったのは問題ない。彼を南に行かせよう、彼は南に行くだろう。断続的なアンカー(白銀の超能力者)が現れ、初めて力を得た者は多くの考えを抱く。『強欲』にとって、そこは彼が回復するのに良い場所だ。」
「しかし、『嫉妬』があそこにいる。」
「ならば、『嫉妬』と『強欲』を衝突させてみよう。『嫉妬』もそろそろいいだろう。我々がまいた七つのアンカーは、今なら衝突に耐えられるはずだ。」と赫拉は言った。
「わかった、君の言う通りだ。次の議論に進もう。今、七つのアンカーのうち、『怒り』と『怠惰』のアンカーは人間ではない。動物をアンカーに使うと効果が低い。」
「ここは比較的高度に発展した社会と言える。知的生命体において、怒りや怠惰は社会制度によって抑制され、大規模に発生することは確かに難しい。」
ポ晟ドンは強調する。「この二つのアンカーは必ずこの世界の主流である知性種の個体が保持しなければならない。あの二匹の動物はこの世界の主流の知性種ではない。たとえあの二匹の動物が崩壊状態にあっても、その崩壊の特徴はアンカーとして使えない。知的生命体の崩壊だけがアンカーとして機能する。」
赫拉は言う。「それなら大都市で災害を起こし、この二種類の崩壊形態の知性体が集まる場所で発生させよう。まずは『怠惰』から始めよう。私の情報によると、サンフランシスコ地区では新たな戦乱が勃発している。」
まさにこの世界の人間に神霊と呼ばれる存在が、世界のどの都市を二つの智慧崩壊態に適合させるかを話し合っていた時、別の時間線から来た別の輪廻者たちも、自分たちの知っているストーリーに基づいて行動していた。彼らの目的はストーリーを改変することだ。
サンフランシスコ(San Francisco)に、一つの輪廻者小隊が降臨した。この小隊の投入は魂の憑依形式で行われ、身体の持ち主は全員がアメリカ大陸地域の出身である。この小隊の隊長はスペイン系アメリカ人の傑森の身体に投入された。この小隊は|鮮血之壁小隊と接触し、その後一連の協定を結んだ。
あるホテルの部屋で、傑森は葉巻を手に取り、ソファーの向かいに座っている蘇傑に言った。「蘇傑、聞くところによると、君たちは大胆な計画を持っているらしいな。」
傑森と蘇傑の背後にはそれぞれのチームメンバーが控えており、両者の話し合いの雰囲気はまるで二つのヤクザ組織が商談をしているかのようだった。
蘇傑は灰を弾いて言った。「この後のストーリーによると、カリフォルニア地区の政治家たちの間で争いが起こる。そのうち、民主党は西のバークリー軍閥と結託する。カリフォルニア地区全域で軍事クーデターが勃発する」
傑森は唾を吐き捨てて言った。「クソみたいなストーリーだ、気に入らねえ」
蘇傑は傑森の口出しを無視して続けた。「元のプロットでは、現地に駐屯していた檮杌部隊が伯克利將軍配下の超能力者に攻撃され、そのイルカ(「怠惰」)をやむなく処刑した。そして安蒂克絲がイルカの中の神秘の結晶を手に入れ、第二部(『宇宙の影2』)の敵役として、麻薬が蔓延するカリフォルニア地域で地盤を固め始めたんだ。」
傑森が尋ねた。「どうした、もうこの麻薬王を殺すつもりか?」
蘇傑は首を振って言った。「いや、混乱が起こる前にあのイルカを救い出し、第一部(『宇宙の影1』)のプロットに導入するつもりだ。」蘇傑はホログラムマップを開き、地図上の中国上海エリアを指さした。
「お前たちは、この超能を鈍化させる存在を東方に引き込むことで、檮杌組も第一部のシナリオに引きずり込もうとしているんだな。」傑森は考えを巡らせ、檮杌組が自身の発見を虎部の手に渡るのを黙って見過ごすはずがないと気づき、うなずくと自信ありげに推測した。「わかったぞ、お前たちは『傲慢』(鄧雯)を狙って、彼女のコアを奪おうとしているんだ。」
蘇傑は黙したまま、肯定も否定もしなかった。
『宇宙の影』シリーズに登場する七体のBOSSには、それぞれコアクリスタルが存在する。その七体のBOSSとは以下の通りである。
傲慢——鄧雯
嫉妬——盧穹
憤怒——犼部が発見した巨猿
怠惰——檮杌組が発見したイルカ
強欲——西塞
暴食——薩迦
二重の欲望——青い目のあの変態
ボスを倒すと、それに対応する超能力コアクリスタルを入手できる。コアクリスタルは所有者に強力な超能力を与えるが、多かれ少なかれ副作用がある。
例えば「貪欲」。西塞は与える過程で、受け取る者に際限なく求めさせ、受け取る者が貪欲に溺れて抜け出せなくなると、西塞の持つ超能力はますます強くなる。彼はいわゆる「運」をある者に与え、カジノで操られながら何十回も連勝させることができる。受け取る者が勝ちに目がくらみ、西塞から運を授かるために他の代償を気にしなくなる。また西塞はある者に金銭を与え、きらびやかな生活への憧れが強まった者を、用心棒として身売りさせることもできる。もしこれらの者が超能力者なら、その超能力は徐々に低下する。彼はまた権利や美女を与える……要するに、与えるごとに相手をしっかりと縛りつける。彼の超能力は精神干渉と念動力の組み合わせだ。特筆すべきは、盧九重を植物状態にしたのがこの男である。そして様々な人間を支配する過程で、彼はこの上なく楽しみ、他人を支配することに没頭していった。ゆえに、貪欲のコアを手に入れた副作用は、抑えがたい支配欲を生じさせることだ。
例えば『傲慢』だ。他のコアに比べ、傲慢のコアを獲得できるということは、最も直接的な戦闘力を得られることを意味する。鄧雯はもともとそれら四級の強者に劣らぬ超能力を持つだけでなく、戦闘時には身体に相手と同じ種類の超能力が現れ、戦闘の過程で一定の速度で増加し、最低でも相手の二倍に達する。
増加の速度は鄧雯の主観で決められる。もし鄧雯がシ晟と戦えば、鄧雯は五分以内に自身に現れる超能力を二倍に増加させ、同時に強力な精神干渉力を発動して、シ晟を戦慄させる。これがシ晟が鄧雯との一戦で直接逃走した理由だ。そして五分後、鄧雯のこの急増したエネルギーは消え、もし十分間以内に別の戦闘に遭遇した場合、急増させることはできない。
そして間隔時間や戦闘時間は、戦闘中に増加する倍数と関連している。例えば、もし鄧雯が五秒以内に超能力をシ晟の二倍に増加させることを選べば、戦闘終了十秒後に、彼女は再びシ晟の超能力を発動できるようになる。
さらに、この超能力は相手が逆襲してくる心配がないという状況だ。鄧雯の相手が敗走した後、相手の超能力は惨敗の度合いに応じて三割から八割まで低下し、それに応じてこれらの超能力が鄧雯の身に現れる。物語後半では、鄧雯の超能力は五級の壁を越えられず、そのため鄧雯は自分が無価値と判断した超能力を大量に放棄する。つまり、鄧雯は超能力破砕機のような存在である。
鄧雯の超能力は「強敵にはより強く、戦いの中で力を養う」という八字にまとめられる。傲慢結晶の副作用は、他人の生命に対する冷淡さである。これはほとんどの輪廻者にとっては副作用とは言えないほどだ。そのため、鄧雯の超能力核心は多くの超能力者に狙われている。
輪廻者にとって最も争う価値があるのは傲慢核心で、次いで貪欲核心だ。雙欲核心については、男女問わず通吃するのを気にしない変態たちが狙宇田ろう。
残りの超能核心は、副作用が多かれ少なかれ大きすぎるため、輪廻者たちはあまり争おうとしない。
嫉妬晶体は他人と超能を共有できるが、他人の能力が自分のものより優れているのを見ると、心が非常に辛くなる。最も厄介なのは、相手が生きていなければ能力を取得できないことだ。そのため、輪廻者の中で盧穹の超能を狙う者はいない。
怠惰と憤怒、この二つの核心は副作用が大きすぎるため、欲しがる輪廻者はいない。
一方、貪食核心の効果は他人の超能を吞噬できることだが、薩迦の超能はストーリー上深刻な結果を招くため、最終的に貪食核心を争う輪廻者はいなかった。
血之壁小隊とこの輪廻者小隊は協力チームを結成し、彼らの目にはこの世界でもうすぐプロットが発生すると映っている。そして活発に動いているのは、この二つの小隊だけではない。
シ貝利亞の鉄道線路で、青い目の青年「雙欲」は一団の人間にそそのかされて自分の村を離れ、東方の大都市に見聞を広めに行きたいと思った。実のところ、雙欲は以前から見聞を広めたかったが、小さな村には金がなかった。しかし、別の時間線から来た輪廻者たちが十分な資金を提供し、雙欲を預言者と崇めて、本来プロット後半で活躍するはずのこの人物を早期に活動させたのだ。
一方、中東では、4つのチームがとある宮殿に到着し、事前に会う約束をしていた人物と対面した。そのうちの一人は卓越した人皮マスク製作技術を披露し、別の一人は容姿を変える能力を披露した。これらの技に宮殿の主は大笑いした。主は椅子から立ち上がると、その体の脂肪が波のように揺れたが、器用に客人たちのそばに歩み寄り、自分も体験したいと申し出た。
上海東方明珠塔の影の中で、天雲がこの任務で投入した最後のチームがついにここに姿を現した。
三女六男が昏睡状態から目覚めると、手首の時計を見た。学生らしき男の青年がぶつぶつとつぶやく。「七か月後、第三回超能大会が始まる、そしてこの時期、まさに起ころうとしているのは……」青年は現在の時刻を確認し、やはりそうかという表情を浮かべた。
彼は一呼吸置いて言った。「我々が入って来た途端に、重要なストーリーにぶち当たったんだ。」




