↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無窮重阻  作者: 核动力战列舰
PR
377/546

0375 過ぎたる望み

 畢方材(ビー・ファンカイ)は手元の資料に目を通し、全くもって言うべき言葉が見つからないといった様子だった。


 彼が手にしているのは、盧安(ルー・アン)の実験報告書だ。報告書によれば、大型宝石の生産コストーーと生産量は、いずれも大幅に進歩したという。


 畢方材(ビー・ファンカイ)は再び盧安(ルー・アン)の腕に装着された六角形の網目状の金属リングを見た。このアームリングは赤い腕章と同じ位置に付けられており、色は衣服と同じで、中には低温超伝導材料がいくらか収められている。


 畢方材(ビー・ファンカイ)は尋ねた。「君の超能力とは一体何なんだ?」


 盧安(ルー・アン)は笑って言った。「あなたはおそらく私の過去の檔案を調べたでしょう。そこには私が無能力者であると記載されています。」


 畢方材(ビー・ファンカイ)は盧安(ルー・アン)の目をじっと見つめ、それから机の上の資料に視線を移した。「言いたくないならそれでいい。軍の中で勝手なことをしなければな。今回の君の成果は非常に素晴らしい。君の科学技術の成果を上申しておく。」


「報告書にはもっと人を追加して、私の名前は後ろの方にしておいてください。」盧安(ルー・アン)は要求した。


 畢方材(ビー・ファンカイ)は意外そうに言った。「ずいぶん謙虚なんだな。」


「この手柄は私がもらうべきではない」と盧安(ルー・アン)は首を振り、続けて「私の行動は一部の人々の反感を買ってしまった」と付け加えた。


 この世界の密に張り巡らされた利益の網を見抜いているため、盧安(ルー・アン)は技術研究をする際にもかなりの慎重さを見せていた。だが利益を理解しない傍観者の目には、その慎重さは単なる臆病に映る。


 わずか一、二ヶ月の間に、盧安(ルー・アン)は新しい宝石の生産技術を研究し出した。業界に疎い部外者から見れば、これはある天才科学者の傑作だ。しかし、この技術は盧安(ルー・アン)が無から生み出したものではなく、体系的に統合して生み出したものなのだ。


 この時代では、確かに突然多くのハイテクが現れるが、技術ツリー全体では、多くの技術は依然として数十年前の設計のままであり、根本的な変化は起きておらず、単に登場した新材料に置き換え、既存の新しい制御システムに交換しただけである。ほとんどの生産設備は、最初から最後までのすべての部品とシステムを、現在購入可能な最新の部品とシステムに更新するだけで、生産設備全体の効率が向上し、生産コストーーも低下する。


 古い技術体系では、当時の技術水準が低かったため、一部の高性能なサブシステムが不安定で、そのため性能は劣るが安定性の高い技術を採用していた。そして現在、新しい技術が成熟し、盧安(ルー・アン)はすぐに市場から関連する新しい部品や新しいシステムを購入し、既存の技術の上で古い部品や古いシステムを大量に置き換え、それらを統合することで、この新しい宝石生産システムが完成した。


 しかし、盧安(ルー・アン)の行為が民間企業で行われた場合、それは他社の特許権を侵害することになる。一定周期ごとに、市場のさまざまな部品の品質が向上し、単価が下がる。もともと未成熟だが高性能なシステムは、新世代の部品を使えば成熟する。一般的な民間企業は5年ごとに設備を更新する予定だが、もしあなたがこれらの民間企業の設備を先に更新して、それを堂々と自分の独自の知的財産権だと主張したら、それは腹が立たないか?


 携帯電話業界を例に取ります。スマートフォンは最初から西洋の数社が生産していました。もし中国が知的財産権保護法を厳格に遵守して発展していたら、中国のスマートフォン生産業界は立ち上がれなかったでしょう。世界中の企業のスマートフォンの全体的な構造は同じで、空中に浮かび上がる光のスクリーンを備えた携帯電話を生産できない限り、知的財産権を侵害していないとは言えません。地球の次元では、西洋が常に東洋が技術を盗んでいると言うのは、まさにこの理由からです。大量の知的財産権が中国のメーカーによって無視されており、しかも部品の供給ルートで中国メーカーを脅すこともできません。なぜなら、ほとんどの主要部品は中国で自社生産されているからです。したがって、西洋は中国市場に対して反ダンピング税を課すしかありません。そして、反ダンピング税はむやみに課すことができず、課しすぎると、中国の関連部門が選択的に貿易報復を行うでしょう。


 法律で裁かれる境界が非常に曖昧な場合、そこに人為的な操作の余地が生まれる。仮に国内の携帯電話メーカーが、外国の携帯電話メーカーから知的財産権侵害の罪で訴えられたとする。これらの法律の基準に照らせば、外国企業の一部の技術は確かに他国のシステムを模倣したものだが、弁護士はダブルスタンダードを利用して、裁判官に同じ事件でまったく異なる判決を下させることが可能になる。


 現在、軍に製品を供給しているのは利益団体であり、盧安(ルー・アン)は一個人に過ぎない。盧安(ルー・アン)がこれらの利益団体の製品をみずから統合し、人工サファイアの生産技術を開発したとはいえ、もし盧安(ルー・アン)がこのプロジェクトの前面に自分の名を出すようなことがあれば、多くの利益団体の関係者から必ずさまざまな手段で妨害を受けるだろう。それには彼らの知的財産権を侵害したという罪で盧安(ルー・アン)を告訴するケースも含まれている。したがって盧安(ルー・アン)は、自分が開発したこの新技術では、自身の知的財産権を守ることは絶対にできないと痛感している。


 しかし盧安(ルー・アン)はこの技術の知的財産権をまったく望んでおらず、ただ単に技術を入手して、自分の地下生産体系で応用したいだけだった。盧安(ルー・アン)にとって、上海のその生産工程の技術を更新することは、社会のリ索斯(ソス)を借りて生み出した副産物にすぎない。もし盧安(ルー・アン)がより高い目標を達成しようとするなら、名声を拒むことはなく、それを利用して目的を達成するだろう。しかし、この種の名声は明らかに、より高い目標を達成する妨げになるため、捨て去っても構わないものだった。


 盧安(ルー・アン)が繰り返し主張した結果、彼の名前はそのプロジェクトの末尾に記載された。


 畢方材(ビー・ファンカイ)はそう固執する盧安(ルー・アン)を見つめ、突然首を振りながら言った。「明らかに君が二ヶ月間も精力を注いで成し遂げたことなのに、手柄を他人に押し付けるなんて…君が一体何を考えているのか、私にはさっぱりわからないよ。」


 盧安(ルー・アン)は笑いながら言った。「遊びでやってるんだと言ったら、信じるか?」


 畢方材(ビー・ファンカイ)はうなずきながら言った。「少しは信じるようになったが、やはり理解できない。」


「いつも私を急かしていたやつは消え、危険に怯える必要もなくなった。時間は十分にあり、やる能力もあり、興味もある。」盧安(ルー・アン)は伸びをし、気怠げな口調で言った。「こ——れ——が——あ——な——た——に——は——わ——か——ら——な——い——の——か——」


 盧安(ルー・アン)の十六歳の顔にはあどけない笑みが浮かんだ。しかし、そのあどけない笑みの裏で、盧安(ルー・アン)は悲しげな感情を込めて幽幽と言った。「君たちが気にかけるものを、私はそれほど気にしていない。譲ってもいい。私が求めているのは安寧と夢だ。君たちは権勢を喜んで追い求めるが、私の求めには理解できないとだけ返す。権勢に執着する君たちの目には、それは確かに無視できるものなのだ。今、私が求めているのは、贅沢な願いなのだろうか。」


 盧安(ルー・アン)のその感情状態は中国古代の農民を連想させた。農民が求めるのは農耕であり、生活していけることであって、権利などはそれほど望まず、そのため権利を支配階級に委ねてしまった。上層部は、これこそが人生で追求すべきものだと考えた。しかし次第に、上層部の世代は農民の追求を理解しなくなり、農民の重荷を無視するようになった。そうして、農民のささやかな要求は、贅沢な望みへと変わっていった。


 東欧地域、寒風の中、鄧雯(ドン・ウェン)は正教会様式の街並みを歩いていた。


 第二次世界大戦後、東欧地域の経済発展レベルは西欧地域に遠く及ばなかった。これは主に気候によって決定づけられ、副次的には戦局によって決定づけられた。東欧地域では、すべての外洋への出口は勝利した勢力に掌握され、さらに東欧各地域の政府もEUの強権に支配されていた。


 全体的に言えば、東欧は安定している。強力な集団は周辺に動乱が起きることを許さない。現在のヨーロッパは共同体であり、東欧地域は貧困であることや様々な社会問題を抱えることはあっても、このヨーロッパ共同体は100年以上前のアヴ蘿拉(ローラ)巡洋艦による冬宮砲撃のような事件の再発を許さない。


 しかしながら、この安定の裏側には惨憺たる雰囲気が漂っている。希望が見えないため、男性たちは飲酒にふけり、アルコールで自分を麻痺させている。一方、化石エネルギーを掌握する寡頭たちは、贅沢三昧の生活を送っている。


 豪華なナイトクラブでは、長い脚の金髪のロシア娘たちが富豪たちに仕え、一方で門の外には酒気が消えぬまま凍死した死体が横たわっている。


 鄧雯(ドン・ウェン)は足を止め、ある大広間の前に立った。入り口の二人の黒服の大男は彼女を見ると、色気を起こした。そのうちの一人が鄧雯(ドン・ウェン)に近づき、黒い手袋を片方外し、毛むくじゃらの手を鄧雯(ドン・ウェン)に伸ばした。この無謀なロシア男は、目の前の彼女を遅れてきたダンサーと勘違いし、ちょっとしたいたずらをしようとしたのだ。次の瞬間、数条の光のプリズムが交錯し、このにやにや顔のボディガードの表情が凍りついた。彼の手はまだ鄧雯(ドン・ウェン)に触れてもいないうちに、豆腐のように切り落とされた。


 もう一人のロシア人が拳銃を取り出し、同時に呼び鈴を押そうとした。しかし行動に移す間もなく、彼の手もまた切り落とされた。


 鄧雯(ドン・ウェン)はゆっくりとナイトクラブのドアを押し開け、受付カウンターの後ろで震えながら電話をかけているクラブマネージャーを無視し、まっすぐに階段を上がっていった。


 上の階のダンスフロアは、眩惑的で不条理な光景が広がっていた。様々な男女の奇妙な叫び声が絶え間なく聞こえてくる。


 防寒着を着たまま入ってきた鄧雯(ドン・ウェン)を見て、スタッフが制止しようと前に出た——ロシアの習慣では、室内に入る際に防寒着を脱がないのは無礼な行為とされている。


 鄧雯(ドン・ウェン)は冷ややかに場内を見渡した。カシャッという音と共に、回転していた全てのカラーライトが停止し、音楽もぱったりと止んだ。場の空気は一瞬で凍りつき、それまで狂騒に耽っていた人々は、まるで冷水を浴びせられたかのようだった。


 鄧雯(ドン・ウェン)が前方を指さすと、轟音とともに向かいの壁に大きな穴が開き、中から口髭を生やしたロシア人男性が姿を現した。彼は手を上げて光の壁を発生させ、飛び散る瓦礫を遮った。


 スーツを着たロシア人の男が鄧雯(ドン・ウェン)を見て、顔には一瞬貪婪の色が浮かんだが、すぐに恐怖に打ち消された。鄧雯(ドン・ウェン)の手に光の剣が現れたからだ。鄧雯(ドン・ウェン)は爪先で床を軽く蹴り、瞬間的に広間を飛び越え、あのロシア人に斬りかかった。


 6秒後、このナイトクラブは轟音とともに崩れ落ちた。ロシア人の男は白い風となって3つに分かれ、通りを慌てて逃げ去った。


 鄧雯(ドン・ウェン)は廃墟から歩み出て、服の埃をはたき、それから両手をポケットに突っ込み、通りすがりの人のように立ち去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。