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無窮重阻  作者: 核动力战列舰
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375/546

0373 境界線上

 謝彤(シェ・トン)は注射器を手に取り、左腕の静脈に薬剤を注射した後、顔を上げて周囲のカメラを見回した。


 十秒後、謝彤(シェ・トン)の表情が変わった。周囲の監視装置は、謝彤(シェ・トン)の周辺で急激に変化する赤外線放射と磁場を検知した。様々な警告音が制御室に響き、監視員に状況を注意するよう促した。すると、監視室内の職員たちは直ちに慌ただしく動き始めた。


 この時、謝彤(シェ・トン)の雰囲気が一変した。もともと控えめな美女であった彼女の顔に、すべては自分中心であるかのような表情が浮かんだ。制御室のスクリーンで謝彤(シェ・トン)をずっと見つめていた盧穹(ルー・チョン)は、この光景を目にして、思わず呆然とした。


 彼は瞬間、謝彤(シェ・トン)の中に盧九重(ルー・ジウチョン)の影を見た。すぐに管制室の実験室用通話マイクを手に取り、叫んだ。「謝彤(シェ・トン)、謝彤、大丈夫か?」


 謝彤(シェ・トン)は通話の声を聞き、かつて自分からは出したことのない傲慢(アオ・マン)な声で言った。「大丈夫よ、私を試験場に連れて行って。」


「大丈夫なのか?」盧穹(ルー・チョン)は疑いの声を上げた。


 謝彤(シェ・トン)はイライラしながら言った。「大丈夫だと言ってるでしょ!何度も聞かないで。」


「ガチャッ」という音とともに、謝彤(シェ・トン)の前にある厚さ半メートルの金属製の扉が開き、広々とした試験場が現れた。謝彤(シェ・トン)は中に入った。


 十分後、試験場から「ギシギシ」という金属が歪む音が響いた。小型トラックが五秒で金属の球に圧縮され、まるで紙を丸めたように、球の表面全体にシワシワの凸痕ができた。


 この瞬間にビルを崩壊させる力、謝彤(シェ・トン)は16回も解放し、超能力は徐々に弱まっていった。そして、ジャンプの際にもたらした感情も、彼女の顔から徐々に消えていった。


「いいね、いいね。」盧穹(ルー・チョン)は謝彤(シェ・トン)の後ろに歩み寄った。盧穹(ルー・チョン)が指を軽くはじくと、24メートル先に謝彤(シェ・トン)が超能力で丸めた金属球が、ガチャッと音を立てて真っ二つに切られた。この超能力は見た目は恐ろしいが、人を切ることはできず、物体だけを切る。それでも、この超能力は非常に恐ろしいものだった。


 共有プロジェクトの中核として、盧穹(ルー・チョン)の超能力は常人には想像もつかない速度で向上している。超能力の七大系列六十五種類を、今ではすべて備えている。最も希少な空間系の超能力さえも手に入れたのだ。


 今、盧穹(ルー・チョン)は丸められた鋼鉄の球を何気なく切り裂いたが、実は謝彤(シェ・トン)の反応を観察しながら、何かを強調しているようだった。切り開かれた金属球の切断面には、無数の金属の棘が照明の下で冷たい光を放っていた。


 金属球の切断面が圧縮されて一塊になった内部を一瞥し、盧穹(ルー・チョン)は評価を下した。「どうやら、君はこの力に非常に適合しているようだ。」


「少し休ませて。」謝彤(シェ・トン)の口調には、人を寄せ付けない冷たさがあった。


 盧穹(ルー・チョン)は笑いながら言った。「ご自由に。」


 太平洋艦隊の上海基地で、琉球基地から帰国したばかりの|畢方材少將《ビー・フォンツァイ少将》は、メールボックス内の一連のファイルを眺めながら、冷淡な表情を浮かべていた。


 この少将は独り言を漏らした。「盧安(ルー・アン)よ、盧安、このいたずらっ子め、一体全体何をやらかしたんだ? まさか本当に俺のところへ避難しに来たってのか?!」


 メールボックスには、虎部(フー・ブー)研究部門が盧安(ルー・アン)にある共同実験に参加させる申請、盧家(ルー・ジア)が盧安(ルー・アン)の帰省を要求するもの、ミーカンから送られてきた共同通信、さらには軍事情報部(太平洋艦隊所属の情報部門)が提出した北方IPが盧安(ルー・アン)の家庭用ネットワークにハッキングしようとした記録が含まれている。


 これほど多くの勢力や集団が自分のところに手を伸ばし、平然を装って盧安(ルー・アン)を要求してくるのを見て、畢方材(ビー・ファンカイ)は盧安(ルー・アン)の様子がおかしいと感じ始めた。


 まず、盧安(ルー・アン)は工場に入り浸るのが好きで、よく廃紙に何かを計算しているのを見かける。畢方材(ビー・ファンカイ)の推測では、盧安(ルー・アン)はあちこち見て回り、自分の配下の者たちの間の不正をすべて見抜き、すべての不正を詳細に資料にまとめたのだ。


 もし盧安(ルー・アン)の家族系図を明確に知っていなければ、もし盧安(ルー・アン)に複雑な人間関係が全くないことを明確に知っていなければ、畢方材(ビー・ファンカイ)はきっと盧安(ルー・アン)が何らかの外国勢力のために情報を収集していると考えるだろう。そして今、畢方材(ビー・ファンカイ)から見ると、盧安(ルー・アン)の興味は常人とは異なるので、いくつかの問題を起こしてしまったのだ。


 世界は広く、驚くべきことがたくさんある。多くの人は数字を見ると頭を悩ませるが、中には数字を見ると非常に興奮し、思わず計算を始めてしまう人もいる。囲碁を学ぶ多くの子供たちは、ノートのマス目を見ると、自分の書いた文字が何マスを占めているかを思わず計算してしまう。これは、囲碁を打つ際に、自分の一手で盤面の何マスを制御できるかを常に把握しておく必要があるからだ。これは条件反射的な計算習慣である。少年が若い頃に囲碁盤上で勝負に興じていれば、暗算能力は自然と向上する。数学者の中にも同様の人がおり、長時間の計算によって習慣的な計算が生まれる。部外者には退屈に思える数字に、興味を持つ人もいるのだ。


 畢方材(ビー・ファンカイ)は今、盧安(ルー・アン)がまさにそういう子供かもしれないと気づいた。畢方材(ビー・ファンカイ)ははっと悟った。盧安(ルー・アン)はまだ十六歳で、知能指数は極めて高いかもしれないが、趣味嗜好は大人ほど雑多ではないのかもしれない、と。


 この部分はまさに畢方材(ビー・ファンカイ)の推測通りだった。今の盧安(ルー・アン)には金や権力への欲望はなく、少年期によくある破壊欲もすっかり擦り切れ、残っているのは純真無垢な心だけだ。十六歳の体、権力の変遷を見尽くした経験、そして時間によって磨き抜かれた心が合わさって、この位面の盧安(ルー・アン)は個人の経歴と性格においても唯一無二であり、この位面で再現することは不可能で、高次元でも極めて再現が難しい。初代(ショダイ)の試練場をくぐり抜けたこと自体、盧安(ルー・アン)が必死に生き延びることさえ困難だったのに、その後永遠方向が下りてきて盧安(ルー・アン)を引き抜いたのは、さらに稀なケースだ。


 畢方材(ビー・ファンカイ)はこれらのメールすべてに「いいえ」と返信し、「軍隊には軍隊の規則がある」という理由を画一的に用いてそれらの勢力に返答した。


 人を操る者が誰かを完全に見抜いたと思うと、大胆になり始める。


 畢方材(ビー・ファンカイ)が盧安(ルー・アン)を守るのは、一方では盧安(ルー・アン)が多くの情報を知っていることを理解しているためで、盧安(ルー・アン)を引き渡せば自分のところの何かが漏洩する可能性があるからだ。また、畢方材(ビー・ファンカイ)が盧安(ルー・アン)を守るもう一方の理由は、盧安(ルー・アン)という部下が非常に使いやすく、しかも制御しやすいと感じているからだ。盧安(ルー・アン)が来てから、畢方材(ビー・ファンカイ)は企業内の裏事情をより明確に把握できるようになり、さらに他人が欲しがるようなものにも関わるようになった。


 つまり、畢方材(ビー・ファンカイ)は利害を考えれば、盧安(ルー・アン)を引き渡すことはない。


 年が明けてからの数ヶ月間、盧安(ルー・アン)のこの時空における各種技術の進歩は驚異的だった。しかし、超能力の面では、盧安(ルー・アン)の超能力の向上は年が明けたその時期に一時停止したかのようで、それ以前の急成長期間とは鮮明な対照をなしている。無阻超能が作り出せる無阻場の体積は九千立方メートルで止まったかのようで、それ以上増加することはなかった。


 実は、盧安(ルー・アン)の超能力は五級の境界線で止まっていた。当時の盧安(ルー・アン)は全く気にしておらず、超能力が止まったことに対して焦りは全くなかったが、もし他の超能力者が突然このような壁にぶつかったら、高い士気は大きく挫かれ、他人に差をつけられる不安に陥るだろう。この超能力世界では、黄金区にいる多くの超能力者たちは称号を争うため、その心情も順位に大きく影響されている。


 しかし、ある意味で、盧安(ルー・アン)の考えや行動は無阻超能と理想的な対応関係にある。無阻超能は形式的に、機械エネルギーを摩擦のような散逸力による仕事の損失を受けさせず、必要な場所に完全に作用させることである。そして盧安(ルー・アン)は、他人が自分に追いつくかどうかを気にする感情を一切持たず、自分が集中したい場所だけに集中している。これはまさに「無阻」とは何かを完璧に体現している。


 この世界の超能の本質から見ると、アンカーとしての自己特徴が顕著であればあるほど、対応する超能力は強くなる。盧安(ルー・アン)はこの世界の力の体系の本質を知らず、盧安(ルー・アン)の超能も元一(ユエン・イー)によって引き起こされたものだが、超能の成長はやはりこの世界の物理法則に従っている。


 そのため、盧安(ルー・アン)がこのように自分の性格を演じることで、超能は引き続き飛躍的に進歩するはずだ。しかし今止まっている理由はただ一つ、盧安(ルー・アン)の超能が現在の地球環境の上限に達したからだ。宇宙で輝く恒星の質量に上限があるように、盧安(ルー・アン)の周りに集まる暗黒物質にも上限がある。そのため、盧安(ルー・アン)の超能は作用体積の面で成長が止まったのだ。


 もし他の次元の『宇宙の影』の視聴者たちがこの世界の力の体系に対して抱いている推測に従えば、彼らが盧安(ルー・アン)の現在の状況を知ったならば、おそらく盧安(ルー・アン)の超能力の成長はすでに終わったと考えてしま宇田(ウダ)ろう。この世界では、どれほどの超能力の天才たちが五級でとどまっていることか。視聴者たちの目には、これがまさにこの世界の力の体系の設定であり、ある超能力者がこの超能力者の圈層内で最高レベルに達したのなら、他の超能力の天才たちにその輝きを演じさせるべきで、盧安(ルー・アン)に他人の出番を全部取られてはならないだろう。


 確かに、盧安(ルー・アン)もこの世界の超能力者たちと争うつもりはなかった。盧安(ルー・アン)は、この世界はこれほど広く、自分を演じるには十分であり、他人の舞台を奪う必要はないと考えている。盧安(ルー・アン)のある感情状態での豪語をもって言えば。「私は牛頓(ニュートン)の世界から愛因斯坦(アインシュタイン)の世界へと踏み出す!道のりは長いが、私のすべてはまだ始まったばかりだ!」


 この三ヶ月間、盧安(ルー・アン)はこの世界の工業技術ツリーを探るため、毎日超能を使っており、他の超能力者よりも頻繁に使っていた。大量の予行演習が朝から晩まで続き、超能は都市の下、海洋の下で安定して維持された。超能をこれほどの使用頻度で維持し続けることは極めて恐ろしいことだ。量の変化が質の変化を引き起こし始めた。


 この世界での盧安(ルー・アン)の姿勢は、ゲームをプレイするような所謂フルレベルを目指すものではなく、生きるためだ。生きる姿勢とは、今の超能が素晴らしいので、まだ多くのことができるということだ。もう一つ、盧安(ルー・アン)は三階である。同じ条件でも、三階は一般人とは異なる。猿と人間の手を例にとると、猿と人間にはどちらも手があるが、人間の手の神経はより複雑で、多くの複雑な動作を行うことができる。


 高次元から見ると、普通の炭素ベースの身体は三階変数の発揮には向かなくなっており、一方で盧安(ルー・アン)は炭素ベースの身体に加えて、暗黒物質の「身体」を持っていて、新たな知覚が生まれている。もし新たな知覚があるならば、三階の生命は盆栽の鉢をはちきれた古木のように、より複雑な生命状態を展開するだろう。

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