0333 浅空の遊
寒澈が大勢の注目を浴びながら自陣に戻ると、偷天部の列は既に会場の焦点となっていた。
夏星瑞は寒澈を見つめ、また列の中の鐘鳴を見て眉をひそめた。突然、彼女は劉宇が望遠鏡で偷天部を見つめているのに気づいた。
劉宇の顔は望遠鏡に遮られ、彼の表情を完全に見ることはできなかったが、夏星瑞は彼のわずかに開いた口から「こいつは美女を覗き見している」という結論を引き出した。
夏星瑞がそっと手を動かすと、劉宇の目に映る光の道は歪んだ。劉宇は望遠鏡を下ろし、気まずそうに周囲の空気を見つめ、言い訳と照れくさい口調で言った。「瑞瑞、やめてくれよ。俺は相手の強さを判断してるんだ……」
夏星瑞は劉宇の耳元に近づき、優しく言った。「そうなのか?まさか、レベル5に挑戦するつもりか?」そう言うと、劉宇の脇腹をぎゅっとつねった。「勇気あるな。」
劉宇は痛がり、慌てて応じた。「離して離して、星瑞、話を聞いてくれ。ついでに、俺の周りの光の擾乱を解除してくれないか。何も見えないんだ。」
同じくレベル4ならば、劉宇は確かに自力で周りの光の擾乱を解除できる。しかし、劉宇はあえてそうしなかった。劉宇にとって、これはレベル4同士の対決ではなく、男女の付き合いだったからだ。
夏星瑞はふんと鼻を鳴らし、劉宇の周りの光の擾乱を解除したが、顔をそらして、「キョロキョロしないで、機嫌取って」と言いたげな表情を浮かべた。
二人の間では何度もこんな風にじゃれ合ってきた。劉宇の甘い言葉は春風のように顔を撫で、口を尖らせた夏星瑞の強張った顔も次第に幸せを隠しきれなくなっている。
突然、夏星瑞は見慣れた人影を見つけ、顔色が急変し、まるで驚いた鳥のようだった。
劉宇は一瞬呆け、夏星瑞が見つめる方向に振り向いた。すると夏星瑞が劉宇の手を引いて、彼を連れてある方向へ歩き出した。
夏星瑞は道すがら、自分の警備員のマークを取り出して周囲の人々に道を空けさせた。さもなければ、光幻双子の名を背負うこの二人は、事情を知らない野次馬で人だかりができて身動きが取れなくなっていただろう――今や強力な超能力者はまさにスターのような存在なのだ。会場には大勢の一般人がおり、中には追っかけ気分でこの超能力交流会を見学に来ている者も少なくなかった。
夏星瑞が劉宇を引っ張って向かっている標的は、彼女が一生忘れることのない人物だった。ずっと昔、コンテナが立ち並ぶ埠頭で、夏星瑞はかつて本当に死の淵に追いやられたことがある。
人ごみの中、一見ぼんやりと何かを探しているようだった淺空明子は、未来視の眼を通して夏星瑞が近づいてくるのを見た。彼女は夏星瑞に向かって淡い微笑みを浮かべた。
寒澈が天候を操る超能力パフォーマンスは多くの人を驚嘆させたが、淺空にとっては未来の眼で一瞥したに過ぎない。時空双系を持つ淺空は、寒澈のような五級初期など全く怖じない。実力から見れば、淺空は現在一種の五級空間系能力者である。淺空の作り出す空間門は十分に大きくはないが、位置特定精度は極めて高く、定位速度は極めて速い。
交流会に到着すると、淺空は蛇部の隊列から離れて単独行動をとり、一見するとあてもなく何かを探しているように見える。無論、この地において彼女は、かつてのあの警告に怯え、軽率な行動は一切とれずにいた(詳細は第0111章参照)。一方、盧安の予演能力を提供する高次元構造は、各任務世界で膨大な時空エネルギーを得る際、不可避的にその一部を淺空へと漏洩させてしまい、それにより淺空の《時間の眼》はここ数年さらに強化され続けている。それゆえ、盧安のこの警告が持つ抑止力は当時より一層強いものとなっている。
淺空はひっきりなしに未来の眼を開き、会場の中から一年前のあの強大な存在を見つけ出そうとする。いまや淺空は、この人物が自分を見つめていると、疑いようもなく確信していた。
実は、淺空は全く真相を察していなかった。遠く離れた大学の閑散とした教室で、盧安は黒縁眼鏡をかけ、教授の講義を聞いていた。教室が閑散としているのは、もちろん多くの学生が超能力交流大会を見学するために休暇を取ったからだ。これこそ授業をサボる絶好の理由だった。そして淺空が大きな騒ぎを起こさない限り、盧安はわざわざ時間を無駄にして彼女を見張ったりしない。
超能力界最大の祭典が開催されているというのに、盧安は教室で数学と戯れ、それを飽きずに楽しんでいた。先生から自分の理解力が抜群だと褒められつつも、膨大な事前演習に取り組む盧安は、頭をかきむしり、自分の残念な理解力に頭を悩ませていた。盧安にとっては、教授の走り書きですぐに消されてしまう板書のほうが、ずっと挑戦しがいがあるのだ。超能力交流大会に行ってあの原始人どもを捻り潰すことなど、あまりに浅はかすぎる。
ある感情態において、盧安は四重のプレビューを連続して発動させて再帰的に記憶を理解し、ようやく教授が板書した十秒の思考の流れに追いついた。これは大学の授業で最も辛いことだ――板書が早すぎて、教授は学生が理解したかどうかに関わらず先へ進んでしまう。だから大学の授業では、落ちこぼれと優等生の差が非常にはっきりと分かれる。自習や予習をしていなければ、教師の授業の思考の流れについていくのは難しい。
そして今の盧安は、脱落しなかった自分に対して興奮の感情態を一つ分け与えた。この感情態は思わず叫んだ。「頭の回転が鈍くても何の関係がある?どうせ俺には時間がたっぷりある!いつか必ず、書の山を踏みしめ、学の海に面し、物差しを掲げて天を測り、天地を測量する博識の賢者になってみせる!」
盧安は大規模に予演能力を運用して学習する一方で、別の場所では、盧安が必ず超能会場にいると思い込んだ淺空が、絶えず未来之眼を発動させて盧安を探していた。彼女は少しばてたと感じた。淺空は美しい目で茫然と周囲を見つめ、顔には降参したような表情を浮かべていた。
淺空は盧安を見つけられなかったが、夏星瑞が淺空を見つけた。
夏星瑞は淺空の前方二十メートルの地点で立ち止まり、周囲の人々は異様な雰囲気に気づいたようだった。後者は淺空を知らなかったが、夏星瑞は知っていた——夏星瑞と劉宇はつい先ほど公の場に姿を現したばかりの人物だ。人々は次々と大きな空き地を空けたが、外側で輪になって見物し始め、果ては携帯電話を取り出して撮影する者もいた。
劉宇は淺空を見た。彼は夏星瑞に声を潜めて言った。「これは……何か誤解があるんじゃないか?」
しかし、夏星瑞は冷たく応じた。「私に死の手を下すのも誤解か?早く周囲の群衆を解散させなさい!」
周囲の見物人を見て、淺空はピースサインを挙げ、自分の右目の位置に当て、可愛いポーズをした[1]。ツインテールが彼女の動作に合わせて活発に揺れ、周囲の熱狂的な観客が携帯やカメラを取り出し一斉に撮影した。
淺空は夏星瑞に仕方なく手を広げ、不自然な中国語で言った。「今回来たのは、ただあなたたちと平和的な交流をしたいだけだ。」
夏星瑞は動じなかった。淺空の純情な美少女の扮装を見ると、彼女の目に嫌悪の色が閃いた。彼女は淺空に警告した。「お前は軽々しい行動を取らないほうがいい。」
「わからないけど、君はどのくらい進歩したの?」淺空は笑いながら、折りたたみ傘を取り出し、そして軽く前を突いた。傘の先端は一瞬のうちに空中に没入した。正確に言えば、突然、空中に現れた球状の空間ゲートに入り込んだのだ。その直前の瞬間、夏星瑞の左側二メートルの場所に空間ゲートが現れた。折りたたみ傘が空間ゲートの一部に没入した傘先は、ここから直接突き出し、前を突き刺した。もともと透明だった空気の中から、突然人影が退き出された――夏星瑞の本体であり、彼女がもともと立っていた場所は幻影だったのだ。
周囲の人々はどよめき、夏星瑞の目には驚愕の色が浮かんだ。
「どうやら君はあまり進歩していないようだね」と淺空は少し残念そうに両手を広げ、笑いながら言った。「私は急成長しているんだよ。」
淺空はゆっくりと夏星瑞に向かって歩いてきた。その時、劉宇が夏星瑞の前に立ちはだかった。劉宇の手のひらは上向きで、金色の陽光がその中に集束している。劉宇の顔には、まるで強敵に直面したかのような表情が浮かんだ。
劉宇を見て、淺空は足を止め、数歩後退して説明した。「かつて起きたことは私の本意ではなく、私はただ強いられていただけ。そして今、私を強いた者はいない。ここで戦うつもりはない。劉宇、この前のことは、ありがとう。」
劉宇の顔から緊張が和らいだ。しかし突然、苦痛の表情を浮かべた。夏星瑞は劉宇のその様子を見て、歯がゆそうに靴の先で劉宇を蹴った。夏星瑞は耳元でささやいた。「彼女は生来残忍だ、彼女を信じるな!」
その時、淺空が振り返って群衆に向かい、少し哀しげな口調で言った。「この世界では、超能力者はいつも他の人や他の理由で何かを強いられる。また始まろうとしているの?」悲しげな表情と可憐な顔立ちは、野次馬たちの価値観を歪めるに十分だった。
野次馬たちは全く知らなかった。目の前で萌えを振りまくこの少女が、どれほど恐ろしい存在なのかを。
淺空の周りでは、幻影のような光点が高速で点滅している。これらの光点は実際には、急速に現れてはすぐに消える微小な空間の扉である。これらの空間の扉は淺空の周りだけでなく、会場の十六本の巨大な鉄柱の周りでも点滅していた。これが幻想的で奇妙な光景を織り成していた。
これは実は腕前の誇示だ。まるで床屋がナイフを投げ上げ、それが頭の上に落ちそうになったところでナイフを跳ね上げ、曲芸のように散髪するようなものだ。淺空の空間門は少しでも開く位置を誤れば、自分の体を引き裂き、柱にひびを生じさせる。そして周囲で見物している人々は気づいていないが、淺空の周りで瞬く光点は鋼鉄をも粉砕する力を持っている。
この時、一人の人が淺空の前の人混みをかき分けて、淺空の前に来て言った。「蛇部の友よ、落ち着いてください。」
この人は虎部のもう一人の五級超能者、崔驀然(詳細は0088章を参照)だ。
淺空は自分の空間超能力を収めて、傍らの夏星瑞を見て言った。「帰ってもいいですか?」
崔驀然は言った。「友よ、可能であれば、私たちのガイドの同行のもとで行動していただけると幸いです。現在のガイドにご不満があれば、交代することも可能です。」
淺空は首を傾げ、夏星瑞と劉宇を指さして言った。「この二人でいいですよ」と、手を叩いて尋ねた。「いいですか?」
「……わかりました、このお客様はあなたたちに任せます。」崔驀然は夏星瑞と劉宇に言い、それから淺空に言った。「もしご不満があれば、いつでも私にお知らせください。」
注[1]。姿勢。




