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無窮重阻  作者: 核动力战列舰
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0031 誤算の後の決断

「うわっ!」


 高さ三千メートル、しかもなお拡大し続ける雲の壁が、ゆっくりと盧安(ルー・アン)に向かって押し寄せてきた——いや、四方八方に押し寄せてきたのだ!気循環の過程で雷鳴がとどろき、雲の壁には幾条もの電気アークが絡みついている。


 この光景は核攻撃よりも壮観だ。盧安(ルー・アン)は1キロトン級の戦術核攻撃を見たことがある。閃光が数十キロメートル範囲で確認でき、その後黒い雲柱が立ち上る。しかし、この空を覆い隠すような雲の壁と比べたら、まったく比べ物にならない。盧安(ルー・アン)は、あの霧に包まれた軍事基地はとんでもない目に遭っただろうと疑った。


 軍事基地が時空の扉を開けた時、盧安(ルー・アン)と李三祥(リー・サンシャン)の通信は途絶えたが、今、盧安(ルー・アン)の携帯電話の着信音がすぐに鳴り響いた。


 李三祥(リー・サンシャン)が叫んだ。「早く戻れ!街はもう大混乱だ、みんな城外へ逃げ出している!」


 盧安(ルー・アン)は応答した。「了解、今戻っているところだ。」


 盧安(ルー・アン)は予行演習中に振り返り、後ろの雲の壁をもう一度見て、その理由を理解した。今回の霧のイベントはあまりにも大規模で、すでに災害映画のレベルに達していた。60キロ離れたメンフィスの市民もここで何が起きているかを確実に目撃でき、人心が恐慌に陥るのは必然だった。


 盧安(ルー・アン)はバイクを猛スピードで疾走させ、その後ろでは雲の壁が驚異的な速度で拡大していた。


 李三祥(リー・サンシャン)が言った通り、一台一台の車が道を塞ぎ、クラクションの音が絶え間なく響き渡った。群衆は慌てて携帯電話で、50キロ先で絶えず広がり続ける雲の壁の画像を拡散し、様々なデマが爆発的に広まった。その中で最も広く流れたデマの一つは、ロシアがアメリカに核攻撃を仕掛け、東海岸の安全な県やニューヨーク、フィラデルフィアはすでにロシアの熱核攻撃で壊滅し、次はメンフィスのような内陸都市だというものだった。


 噂はどこの国にもあるもので、人間は危険な状況では状況をいい加減に推測しがちで、さらに偏った情報を聞きかじって信じ込む。


 道路上の渋滞は長くは続かず、一台の大型トラックが前方を塞いでいた乗用車を直接押しのけ、ガラスと金属の破片が散乱し、クラクションの音が次々と鳴り響き、多くの小型車が大型トラックが開けた道に沿ってその後を追い始め、さらに多くの事故を誘発した……この時、誰も警察に通報せず、皆が示し合わせたように法律を守る道徳をはるか彼方へ放り投げてしまった。


 “……ただいま、本市で発生した重大事件についてお伝えしています……”


 “……珍しい雲の壁が本市の郊外に現れています、博士、どのようにご覧になりますか?”


 カメラが切り替わる。「これは特殊な気象状況だと思いますので、皆さん過度に心配なさらないでください。」この博士は一見淡々と語った。


 校車に乗って渋滞に巻き込まれたストー教授は、スマホの画面に流れるニュースを見て、画面に向かって中指を立てた。彼は窓の外の混乱した光景に目を向けた。前方では警察官が、腕にタトゥーのあるスキンヘッドの男に必死に何か叫んでいるが、男も負けじと言い返している。


 ストーーが車を降りて仲裁に入ろうとしたその時、スキンヘッドの男は突然腰から銃を抜き、警察官の頭を一発撃った。すべての口論が終わり、ストーーが車を降りようとする考えも打ち消された。男は警官のバイクにまたがりそのまま走り去り、校車内は静まり返った。


 ストーーは突然、この街が無政府状態に陥っていることに気づいた。


「先生、どうしたらいいですか?」太った生徒が途方に暮れて尋ねた。


 その時、もう一人の学生の身分を持つカーサが眼鏡を押し上げながら言った。「教授、頑丈な場所に避難して、軍の救助を待つべきです。」


 ストーリーに精通した輪廻者として、血愛(ケツアイ・ショウタイ)のベテランメンバーであるカーサは、ピラミッド型の建物が物語の初期段階では安全であることを明確に知っていた。そのため、カーサは教授にこの街で唯一のピラミッド型の建物へ向かうよう暗示し、彼の所属する小隊はそこで待機していた。


 ストーーはカーサの提案を受け入れ、一行はピラミッド体育館へと向かった。


 血愛(ケツアイ・ショウタイ)の介入により、この世界のストーリーは逸脱し始めた。


 霧域の上方——成層圏では、米軍の戦闘機12機が軍事基地へ急行していた。パイロットたちは眼下の雲海を見つめ、大量の水霧が沸騰する湯のように湧き上がっていた。


「なんてこった!」機内のパイロットは思わず感嘆の声を上げた。彼は通信機で基地に伝えた。「低空はすでに霧に覆われ、高度3000メートル以下の視界はゼロで、メイフラワー(時空門を開く基地のコードネーム)の状況は確認できません。」


 後方基地は命令を下した。「目標区域に照明弾を投下せよ。」


 次々とミサイルが雲霧の中へ投げ込まれたが、まるで石が海に沈むかのようだった。


 パイロットは下方の濃密な雲霧を見つめ、後方基地に応答しようとしたその時、突然雲海から一頭の飛竜が飛び出してきた。


 この飛竜は半機械生物で、翼は完全に機械化されており、機械式のパックパックのようなものを背負い、ジェットエンジンに似たエンジンを二基搭載していた。エンジンの強力な推進力により、この飛竜は雲海を飛び出した。その巨大な両眼は空の戦闘機を見据え、頭部の水晶の角からレーザービームを放った。飛竜が数秒間見つめると、空の戦闘機はレーザーで機首を焼き貫かれ、雲海へと墜落していった。数分後、霧に覆われた地上から耳をつんざくような轟音が響いてきた。


 他の数機は短い驚愕の後、火器管制レーダーでこの飛竜をロックオンした。翼幅40メートルのこの巨大な飛竜は雲海へと潜り込み、羽ばたく翼が大きく霧の波を巻き起こした。


 遠くホワイトハウスにいる大統領と高官たちが部屋の中でこの光景を目にすると、その場の空気はにわかに異様なものとなった。


 大統領は無言のまま、机の下から一つのケースを取り出した。これは核兵器発射用の核のブリーフケースである。


 しかし、彼は少しためらった。


 彼が決心を固めようとしたまさにその時、緊急通信が大統領の次の動作を遮った。


 通信終了後、映像は即座に軍の全球衛星画像に切り替えられた。


 全球衛星の情報によると、地球上の各大洋や陸地に霧の発生点が現れた。これらの霧は地球上の各所で拡大し、一つの禁域を形成している。太平洋、大西洋、北米ガーナーダ、南米の熱帯雨林、アジアのモンゴル高原、アフリカ中部のコンゴ地域など、これらの地点に霧域が出現した。これらの霧域は猛烈に拡散しており、霧の中には未知の生物が存在する。


 未知の生物は重点ではなく、重点は未知の文明勢力の侵略である。


 盧安(ルー・アン)は秒単位で争いながら後退しており、バイクの速度は時速260キロに達していた。エンジンは激しい轟音を発し、盧安(ルー・アン)は霧に包まれたくなかった。


『ミストーーI』のストーリーによれば、霧の中には多くの巨大化した生物がいる。例えば半メートルもの超巨大蚊。人を刺せば毒で半身が腫れ上がり、最後は醜く死んでしまう。椅子サイズのクモは人間を捕らえ、人体に産卵するのを好む。象ほどの四足獣はカマキリのような前腕を持ち、人間を一撃で真っ二つにする。


 盧安(ルー・アン)や李三祥(リー・サンシャン)、白露(バイルー)らは、この『ミストーーI』の状況を基に家屋を改造しようとしたが、全員が思い違いをしていた。巨大な「シガー」が盧安(ルー・アン)の左一キロの距離から飛び出し、紺碧の炎の尾を引きながら低空をかすめ、予行演習中の盧安(ルー・アン)は驚きのあまり注意を失い、もろに転倒してしまった。


 この細長い物体は、盧安(ルー・アン)にはよく見覚えがある。巡航ミサイルだ。しかし盧安(ルー・アン)は確信している、これは地球上のどの国の巡航ミサイルでもない。なぜならこの巡航ミサイルはあまりにも巨大で、そのサイズは弾道ミサイルに迫るほどだからだ。


 続いて、また何発かのミサイルが盧安(ルー・アン)の背後にある霧の中から飛び出してきた。これらのミサイルは全長7メートル、幅1.5メートルで、胴体は扁平、高度400メートルを超音速で飛行している。ミサイルは盧安(ルー・アン)の背後から飛来し、わずか3、4秒で盧安(ルー・アン)を追い越し、前方の都市へと飛び去っていった。


「これは一体何なんだ?」盧安(ルー・アン)は心の中で疑問に思い、慌ててブレーキをかけ、携帯電話で写真を撮り、すぐに李三祥(リー・サンシャン)へ送信した。


 これらの巡航ミサイルが遠ざかり、十数秒後、盧安(ルー・アン)の視界の果てで、遠方の都市の建物群の中に次々と爆発の雲が立ち上った。


 盧安(ルー・アン)は車を降り、火の光の中で都市の建物が崩れ落ちるのをぼんやりと見ていた。


 その時、盧安(ルー・アン)の電話がつながった。李三祥(リー・サンシャン)の声が電話から聞こえた。「どうしたの、何かあったのか?」


 盧安(ルー・アン)は言った。「李叔、これは異種の侵入じゃない、戦争だ。必ずすべてのランドマーク的な建物から離れてくれ。」


 李三祥(リー・サンシャン)は言った。「わかっている、今どうしているのかを聞いているんだ。」


 盧安(ルー・アン)はバイクの向きを変えて言った。「大丈夫だ。」


「それならなぜ、俺の画面では君が動いていない表示なんだ。」


「敵はとても特殊だ、今回の相手が誰なのか見てみる。」


 李三祥(リー・サンシャン)はコンピュータの画面で盧安(ルー・アン)の位置が逆方向に動いているのを見て、慌てて言った。「お前、頭がおかしくなったのか?!」


 盧安(ルー・アン)は言った。「私は正気だ。今、これがどういうことなのかを理解しなければならない。生物の侵入と文明の侵入は別の概念だ。必要な情報を知らずにひたすら避けるだけなら、子羊のように死を待つことになる。」


 李三祥(リー・サンシャン)は罵った。「たとえ敵の姿がわかったところで、何が変えられるっていうんだ?」


 盧安(ルー・アン)は前方の障害物を見て、車のバランスを制御して弧を描くように迂回した後、電話に向かって言った。「しかし、我々も逃げられない。他の人たちはメンフィスから逃れられるが、元一(ユエン・イー)が我々に指定した活動範囲は依然として変わっていない。だから退く道はない。霧はいつか我々のところまで広がってくる。これまでの計画はすべて無意味になり、我々の家は今回の危機を絶対に防ぎきれない。これからの時間、我々が直面する危険は一定だ。戦場になることが決まっている地域で待つよりは、むしろ敵占領地域へ積極的に偵察に行ったほうがいい。」


 李三祥(リー・サンシャン)は問い詰めた。「その自信はどこから来るんだ?」


 盧安(ルー・アン)はますます近づく霧の壁を見て、バイクを道路から外し、李三祥(リー・サンシャン)に答えた。「俺には自信なんてない。でも、相手が鋭気を養い準備万端で、隙のない先制攻撃を仕掛けるのを待てば、どんな自信も傲慢(アオ・マン)になるだけだ。その時、軍隊のシステムは誰にも一切のチャンスを与えない。」


「軍隊の隙が最も多いのは、戦区に到着した直後だ。軍隊が戦区に着いたばかりで、艦隊のような大型統合プラットフォームが指揮センターとしてない場合、軍の指揮系統は確立されるまでに一定の時間を要し、未知の戦場を制御できるようになる。」


 李三祥(リー・サンシャン)はしばらく沈黙した後、尋ねた。「俺たちが直面しているのは、軍隊なのか?」


「そうだ。俺の読みが正しければ、この先の展開は戦争映画になるはずだ。」

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