0327 必ず受け入れる世界
夜の九時という時間は、上海の人々にとっては夜の生活の始まりである。様々な灯りが街に映え、屋台からは様々な軽食の香りが漂ってくる。人々は明るく穏やかな表情で各所へと出入りしている。
もちろん、一部の店舗は消費が非常に高く、出入りする人々もまた裕福で地位のある人々だ。例えば今、盧安がバツ印をつけたこのナイトクラブは、美女が雲のように集まると称される金を浪費する場所だ。
この店のバックに誰がいるのか、盧安は知らないし、知りたいとも思わない。上海でナイトクラブを開ける者は、間違いなく表と裏の両方に顔が利くのだろう。このナイトクラブが盧安に目をつけられた理由は?わいせつや麻薬に関与し、しかも盧安の学校の学生まで巻き込んでいるからだ。これには盧安は非常に不快に感じている。
今、貧乏学生である盧安はここを嫌っているが、自分から立ち上がって彼らに立ち向かうつもりはまったくない。「英雄」という万人が注目する称号を、盧安は全く望んでいない。英雄が現れると、確かに崇拝の視線を浴びるが、その視線の下には、あらゆる面での束縛が存在する。例えば、ある教師が市の最優秀教師に選ばれたとする。この名声の下で、彼女は教えるすべての生徒に注意を払わざるを得なくなる。もしある生徒が十分にケアされなければ、この教師に高い栄誉を与えたと自負する世論は、その教師をネット上で攻撃し、なぜ市の最優秀教師になれるのかと激しく罵倒するだろう。
しかし、人間の精力は有限である。盧安の前世でこんな話を聞いたことがある。ある良き教師が補習授業のために、出かける際に自分の子どもが発熱していたにもかかわらず構ってやれず、結局その子は両目を失明してしまった。そのときネット上の世論は「良い教師である前に、まず良い母親であれ」というもので、それまでこの教師が生徒たちのためにしてきたすべての努力を無視していた。もしこの教師の生徒の一人が自暴自棄になってゲームに溺れ、この教師に見放されたなら、これらの無為の傍観者はまた傍観者の立場から、この教師が適格な教師であるという身分を剥奪するだろう。
このニュースを聞いたばかりの頃、孟位も大衆の考えに同調して、母親としての役割すら果たせないこの先生に腹を立てていた。しかし孟位は成長し、自身の仕事を持つようになり、この出来事を振り返ってみると、どうしても何かがおかしいと感じるようになった。なぜこの先生はこれほど常軌を逸した行動をとったのか。孟位は隣家のいたずらっ子が、クラスで名誉を表す小さな赤い花のために非常に良い子になったのを見て初めて、その先生が母親の本性に背き、自分の子供を顧みなかった原因を理解した。
ある感情状態。「私は凡人だ、つまるところ凡人だ。私にできることは限られている。まず自分自身をかえりみなければならない。自分自身をしっかりとケアしてからこそ、力の及ぶ範囲で善行を行うことができるのだ。」
もう一つの感情状態。「大多数の人の視野は狭く、容易に狭いところへと導かれやすい。大多数の人は常に他人に過度な期待を抱き、自分が与えた期待を他人の労働への報酬と見なしがちだ。しかし、スーパーヒーローは永遠に映画の中だけの存在であり、誰もが責任感を持たねばならない。」
さらにもう一つの感情状態。「俺はこんなに考えすぎてどうする?俺の大学の周りにナイトクラブなんて許されない。俺の学問に励む心に影響を与える奴がいたら、そいつを不幸にしてやる!そいつを居心地悪くさせてやる!お前らがここで汚い商売をしているからだ、頭上三尺に神はいない、悪行は際限なく、ついには嫉妬の報いを受ける!」
主世界の膨大な超エネルギーの総量を利用して、盧安は予演で導力ネットワークをナイトクラブ全体に重ね合わせ、その建物の構造を詳細に探り回った。そして、このナイトクラブの各所の電気回路や電気機器の分布を明らかにするために、盧安は予演で直接この建物を取り壊した。
盧安が悪巧みをする時は、誰にも疑われる隙を与えない。
一機のバイオニック鳥型ドローンが翼を羽ばたかせ、二十メートルの高空中から黒ずんだロボットを投下した。それは誰が見てもゴキブリと思宇田ろう。これら二つの物体はいずれも導力構造に基づいて動作を維持している。そして、その黒ずんだロボットには最新世代のマイクロバブル計算システムが搭載されており、自身の動作を制御するプログラムが組み込まれている。
この茶黒いロボットは窓に投げ込まれた後、天井に這い上がり、盧安が入力したプログラムに従って自動で這い進み、最終的にある雑物置き場の廃棄された布団の上に這い寄り、火のついたタバコを排出する。甲羅内の導力構造は順番に解除され、そしてこの甲虫型ロボット内部のマッチの頭とマッチ紙が摩擦を起こし、最終的にタバコに火をつけ、布団に火をつけ、次にカーテンに火をつけ、木製の天井に火をつける。
最終的に、火が消し止められた後、消防士が出火原因を調べると、出火現場のタバコの吸い殻を見つけ、喫煙による出火だと結論づける。
もちろん、ここに盧安が多くのリハーサルを費やし繰り返し検討した小さなディテールがある。それは出火させる階層だ。
盧安が選んだのは六階で、このビルの最上階だから、火事が起きればすぐに各方面の注目を集める。それに、煙と炎は上に広がるから、大火で上の階が閉じ込められることはない。
盧安はやっぱり人を殺したくないし、心の中で一線を越えるのも嫌だ。でも、この汚い商売をしているオーナーに損させるのは、盧安には何の呵責もない。
娯楽施設が火事を起こせば、たとえ些細な部屋が燃えただけでも、消防の安全審査を受けなきゃいけなくなる。再開するとなれば、来店するお客さんは、その店の広まった黒歴史を考えなきゃいけないんだ。
予行演習で、盧安はビルの屋上に跳躍した。望遠鏡を通して、盧安は500メートル先のナイトクラブの賑やかなホールを見た。ホールには弥勒仏と財神が祀られており、等身大の神像がにこやかに四方からの客を迎えていた。
盧安は冷笑しながら財神の持つ横断幕を見て、陰険に言った。「招財進宝?俺に目をつけられたら、風水をどんなに立派に整えても何の役にも立たねえ!」
夜の9時、人が最も多い時間に、炎が時間通りに上がった。しかし翌朝、盧安はニュースを見ながらつぶやいた。「俺はこの世界に求めすぎなんだろうか?」
火事はニュースになったが、盧安が考えているように単なる財産の損失ではなかった。盧安の想定では、煙で死ぬ者も焼け死ぬ者もいないはずだったが、一つの点が抜け落ちていた。その火事で、一人の女性が重傷を負った。原因は群衆雪崩だった。
前世でも今生でも、盧安はアイドルを追いかけたこともなければ、ナイトクラブのような人混みの公共の場に行ったこともない。孟位(モウイ)が働いていた工場も、明るく清潔な自動化工場で、人が押し合うような状況はなかった。当然、群衆雪崩が起きる可能性もなかった。つまり、盧安は二度の人生で群衆雪崩事故を一度も見たことがなかったため、常識的にこの仮定を見落としていたのだ。
ナイトクラブは学校とは違う。学校や工場のような場所の人々は組織化されており、組織の指示の下で避難できるが、ナイトクラブでは組織も規律もなく楽しみを求めている人々ばかりだ。小さな火の粉や煙の匂いが人々を刺激し、パニックを引き起こす。一人が走り出せば、他の人々も走り出す。このような娯楽施設、特に野性的な欲望を解放する場所で、ここにいる人々が自発的に組織や規律に従って整列して避難することを期待できるだろうか?
盧安は一目で、この重傷を負った女性がそのナイトクラブの性サービス従事者であることがわかった。彼女は盧安の報復対象ではないが、彼女の負傷は盧安と因果関係にある。これは盧安が自分に課した道徳基準に深刻に抵触する。
しかし、もし盧安に道徳基準がなく、自分の独りよがりの考えのために過程で他の人が受ける害を無視するなら、盧安は自分が嫌悪する魔王になってしま宇田ろう。
ベッドに横たわる盧安はまとめて言った。「この世界には、確かに私が気に入らないことがたくさんある。そしてこれらのことはほとんどの人が慣れてしまっていることだ。だから私は耐えなければならない。」
盧安は再び自分の衝動を抑えた。服を着て度の入っていない眼鏡をかけ、書籍や資料を抱え、贈り物を持って家を出て、ある教授のオフィスに向かった。
自分はやはり自分がすべきことをするべきだ。少なくとも数学の公式は間違って見えることはないのだから。
盧安がこの時代との自分の不適合に悩んでいるとき、北の香山の紅葉は鮮やかに咲き誇っていたが、より鮮やかだったのは少女の笑顔だった。
盛怡苒が一枚の紅葉を切り取り、ページに挟み、それから後ろの李星霽に言った。「ありがとう、これは私が初めて見る北方の秋の紅葉よ。」
李星霽が言った。「気に入ってくれたなら、それでいい。」
二人は見つめ合い、やがて盛怡苒の顔がほんのり赤らんだ。
実は、この二人は、今回の出会いが両家の黙認によるものだと知っている。
天數プロジェクトが引き起こした大事(詳細は第0228章を参照)のため、虎部は現在軍の徹底調査を受けており、龍部の高抬貴手が必要で、それで盛儒星が盛怡苒の北への訪問を同意した。そして李星霽が盛怡苒に同行するのも、同じく上司の黙認を得ていた。
一方その頃、龍部では高レベルの会議が開かれていた。
龍部のある秘密基地で、天數プロジェクトが再編成された。白い研究服を着た専門家たちと、軍服を着た特殊超能力行動グループのメンバーたちが次々と着席した。
会議室の中央で、姬流は原子時計の変動図を指さしながら言った。「現在、これが我々の観測している天數現象、すなわち全地球的な時間変動を引き起こしているデータです。この現象を引き起こす存在が一体何なのか、どのような姿で現れるのか、我々には分かっていません。」
「今のところ唯一の手がかりは彼です」と姬流は盧安の写真を示した。「彼は元々、天數プロジェクトの重要な研究対象であり、その身分は特殊で、西北地方の盧家から外に流れた私生児です。彼の実力は非凡で、一年前にはすでに四級超能力者であり、二カ月前、私が自ら彼の実力を確認したところ、すでに五級に達していて、そして現在は……」
姬流は皆を見渡し、極めて厳粛な口調で言った。「少なくとも五級の頂点だ!」
会議に参加した人々の顔には思わず口が大きく開いたが、規律正しく音を立てなかった。
「さらに頭を悩ませるのは彼の性格だ。彼は友人に対して口が固く、口が固く、口が固い!これは重要だ」と姬流は皆のまだ驚きの消えない表情を見て、続けて言った。「どのように穏やかな手段で彼の口から情報を引き出し、同時に南の病猫(不運な虎部)に気づかれないようにするか……」
姬流は振り返り、潘陽に言った。「彼に対する行動は、君に全権を委任する。」




