0240 道中
盧安が改札を通らないことに決めた後、盧安は列車より20分早く走り出した。
走っている最中、盧安は自身の運動エネルギーがゆっくりと失われていることに気づいた。損失率は低いものの、筋肉を動かせば補える。この「動き」は、実は自転車をゆっくり漕ぐくらいの出力に相当し、実際には時速60キロの速さで走っていた。これは自動車の速度である。
盧安の後方二十キロのところで、列車がゆっくりと駅を出発し、最終的に時速八十キロに加速した。
一時間以上後、すでに駅から六十キロも離れた盧安は、疾走してくる列車を見て、「スッ」という音とともに、まるでバッタのように列車の屋根に飛び乗ろうとした。
今、盧安がこのように列車の先頭に向かってジャンプすることで生じる衝撃力は非常に強い。通常の物理状況では、車両の上で十数回転がらなければ衝撃力を和らげることはできない。しかし、盧安には無阻超能力がある。盧安は列車上に迅速に密集した導力ネットワークを展開し、列車に飛び乗った後、体内の導力ネットワークと連携し、衝撃力を完璧に吸収し、体の各方向から体内の導力ネットワークに取り込んだ——可能な限り広い面積を使って、全導力脈絡が負担する機械力を希釈し、負荷上限を超えるのを防いだ。こうして、盧安は列車の屋根にぴたりと「張り付く」ようにして安定して立っていた。
盧安が今示している戦闘力は、数十万年前の剣と魔法の時代に置き換えれば、完全に上級の正式な能術師に匹敵する。
この世界の能術師は、見習いと正式な能術師に分けられる。
見習いは三つの等級に分けられる。初級、中級、上級。
初級学徒、かろうじて能石の中のエネルギー波動を引き起こす。
中級学徒、前述の基礎の上で、能石の中のエネルギーをエネルギー団に凝集でき、このエネルギー団は一般にデシメートルレベルの精度を持つ。
高級学徒、前述の基礎の上で、エネルギー団をセンチメートルレベルの精度まで制御できる。
正式な能術師も三つの等級に分かれる。晨星、輝月、曦日。これは、この世界の能術革命後の能術師たちが古典魔法書をめくる時に発見した、魔法使いの実力を記述する等級の用語である。
実は、これらの等級の判定基準は上古時代とは全く異なる。前時代の魔法使いが体外で魔法回路を構築したのと異なり、この時代の能術師は直接体内にエネルギー回路を形成し、エネルギー装置の掌握を達成する。
晨星級のエネルギー回路はミリメートル単位のエネルギー回路で、全身の64の主要点と875の副次点を貫通し、さらに全身の神経細胞に接続する必要がある。
輝月級は上記の基礎に加え、マイクロメートル単位のエネルギー回路が必要で、両手には少なくとも1000以上のマイクロメートル単位のエネルギー回路インターフェースがなければならず、エネルギー術器具と接続することで操作が可能になる。
そして曦日級は、上記の基礎に加えて、手や頭部のこめかみなどの主要な位置に、ナノメートル単位のエネルギー回路インターフェースが必要となる。
もし盧安の予知と遡行能力を除外して、盧安の導力経絡をエネルギー回路と見なした場合、盧安体内の導力経絡のマイクロメートル単位の精度に基づいて上記のエネルギー術等級の評価を当てはめると、盧安は見たところ輝月級に相当する。
盧安が車の屋根に立っているちょうどその時、車内で英洛卡が突然立ち上がった。傍らの菲蜜娜が尋ねた。「どうしたの?」
英洛卡は指で車の天井を指さしながら言った。「ここに強い奴がいるんだ。」
菲蜜娜はやや不安そうに尋ねた。「敵なの?」
「おそらくそうだ。」 英洛卡は菲蜜娜が乗務員を呼ぼうとするのを制止した。「あの奴は強くて、一般人では相手にならない。」
菲蜜娜は尋ねた。「晨星級か?」
菲蜜娜が敵の等級を尋ねたのは、能術師が攻撃を仕掛けてくるのを心配してのことだ。実は、菲蜜娜は英洛卡の等級を知らず、彼女から見れば、晨星級の能術師でさえも非常に強いと思っている。
英洛卡は首を振って言った。「能術師ではない。」
英洛卡は心の中で感嘆した。「なんてこった、信じられない。この時代に、誰かがまだ体術をここまで鍛え上げているなんて。」
体術の栄華は冷兵器時代にあり、等級は見習い騎士、騎士、大騎士、大地騎士、天空騎士に分けられる。
上古時代、種族の血脈はまだ融合しておらず、ある種族は敏捷性に偏った体術を修練し、最終的に遊侠職階へと進化した。例えばエルフ。また、ドワーフや獣人のような種族は力に偏っていた。人類は極めて中庸である。そして火薬時代が興ってからは、世界には体術を頂点まで修練した存在はいなくなった。
地球の21世紀の中国における、いわゆる武道の達人のように、ムエタイのプロ格闘家にあっけなく負けてしまうことがある。これは国辱と捉える必要はない。なぜなら、これこそが盛世の表れだからだ。盛世では、誰もこのような個人の格闘術を厳しく修行しようとは思わない。そして盛世の軍隊が訓練する徒手格闘の技はわずか数手で、格闘は通常、銃剣や匕首を伴う。乱世においてのみ、人と人とが組織化しにくく、このような個人の格闘術が重視されるのだ。
この世界で体術が淘汰されたのも同じ理由だ。中口径以上の弾薬なら、どのようなものでも、万人に一人の体術の才能を持ち十数年厳しく修行した体術師を簡単に殺すことができる。
天空騎士はすでに神話となり、大地騎士も伝説となった。大騎士の数もわずかで、軍隊にのみ騎士級の体術師が残るのみだ。しかし英洛卡は今、何を目にしたのか?盧安が見せた跳躍力と力の制御は、まさに大地騎士級のものだった。
このレベルの存在が目的も不明なまま頭上に現れたため、英洛卡は密かに備えるしかなかった。彼の袖の内側から、ビー玉ほどの金色の小球が手のひらに転がり落ちる。指で上部の通気口に向かって軽く弾くと、金色の小球は金色の甲虫に変わり、通気口の中へと這い入っていった。
その時、列車の屋根に座る盧安は両腕を広げ、周囲を流れる風を感じていた。今の盧安にとって、これは無制限の運動エネルギーを手に入れたも同然であり、導力ネットワークを周囲に展開しさえすれば、周囲の風から大量の運動エネルギーを吸収できるのだ。
四十メートル先で、金色の甲虫が近づいてきた。予行演習の中の盧安は十分に警戒していたが、現実の盧安は狼がうたた寝するかのようだ。大量の予行演習の中の盧安が様々な手段でこの小さなものをいじくり回し、ようやくこの甲虫の構造を理解した。
この目立たない甲虫は、外側は薄いセラミックの層で、内部はマグネシウムナトリウム合金だ。内蔵されたエネルギー紋路の制御により、マグネシウムナトリウム合金の主構造を起爆させ、粒子流となって盧安を狙うことができる。
「能術」という言葉が盧安の頭に浮かんだ。盧安は、自分がこの世界の珍しい人々に遭遇したことを知った。しかし、盧安の他の予行演習により、相手が攻撃しているのではなく監視していることが分かったので、盧安は現実で過激な反応をせず、ただ静かに列車の中にとどまっていた。
この世界に来たばかりの盧安は敵を作りたくはなかった。同じく、英洛卡も「体術の達人」を怒らせたくなかった。特に列車の狭い空間では、能術師はその場に留まるしかなく、この環境での戦闘は非常に不利だ。ましてや英洛卡は十分な能術器具を持っていなかった。
両者は無事だったが、やがてこの旅がまさに苦痛であることに気づいた。
列車はゆっくりと進み、太陽は西の山に沈み、巨大な月が昇る。屋根に座る盧安は体の大半を無阻膜で覆われて保温は十分だったが、屋根にしっかりと座っているせいで尻の熱が列車の鉄板からどんどん逃げていく。そのせいで盧安は寒さに震えが止まらなかった。
盧安は眠ることができない。自分をじっと見つめる金の甲虫はさておき、普通の状況で屋根の上にうつぶせになっていても、盧安は転がり落ちるのを恐れている。もし盧安の性格がもう少し悪ければ、とっくに飛び出して英洛卡を引っ張り出して列車の外に放り投げ、背中に刺さるような脅威を取り除いただろう。
一方、英洛卡もなかなか楽ではない。車両の中に座っているが、彼の注意は常に車両の外に集中していた。数時間にわたる極度の緊張した警戒の後、彼の両目は血走っている。しかし、彼は目を閉じることができない。大地の騎士がひとたび動けば、それはほとんど刹那だと知っているからだ。二人とも互いを信頼していない。
こうして、一日一夜、列車は山脈地域を通り抜け、ついにディ藍菲スの最初の内陸都市に到着した。
この時、盧安は車を降りて切符を買い直そうと考えたが、事前演算で盧安は困ったことに気づいた。持ってきた4万元は帝然菲斯では使えず、銀行で両替しないと内陸部では使えない。艾克达スの紙幣には硬貨としての効果がなく、金瑞と贝帆の二国の紙幣なら帝然菲斯で使用できる。しかし今、帝然菲スの経済はすでに崩壊しており、決済銀行は一部の大都市にしかない。つまり、そうした大都市に行かない限り、盧安が手元に持つお金は使えないのだ。
盧安はほとんど頭を地面に打ちつけて後悔を表現したいほどだった。ある葛藤した情緒状態の盧安は自己に対して厳しく批判した。「事前演算があると未来に自信を持ちすぎたのか?自信がありすぎて、頭を使わずに物事を考え始めたのか。」
盧安は仕方なく、列車にしがみつき続けるしかなかった。
数時間後、列車はホクダ駅に到着。ここは河川平野に位置する大都市だ。この都市の規模から見て、盧安はここに貨幣決済センターがあると判断し、車両の屋根から飛び降りた。
盧安の行動は駅の鉄道警察を驚かせたが、その警察たちは盧安を止めるつもりはなかった。
一方、車両内の英洛卡は、盧安がさっと去るのを見て、血走った目に困惑が広がり、思わず自問した。「これで終わりか?昼も夜も二晩にわたって俺の後をつけてきたのに、あっさり行ってしまった?それとも、お前は俺を訪ねてきたのではなかったのか?」
食欲のない英洛卡は、菲蜜娜が差し出す食べ物を断ったが、菲蜜娜の顔の失望に気づかず、後者は怒ってケーキと卵をまとめてゴミ袋に押し込んだ。
二十分後、英洛卡は菲蜜娜を連れて駅のホームを出た。彼は少し立ち止まり、左側を見ると、あの小柄な少年が歩いてくるのが見えた。英洛卡は腰にある唯一の能術器具を握りしめた。
彼が手を出すべきかどうか迷っていると、その小柄な少年が菲蜜娜に手を差し出し、少し照れくさそうな口調で言うのが見えた。「お嬢さん、…何か食べ物を分けていただけませんか?」
盧安の視線を追って、英洛卡はその小柄な少年の視線が、菲蜜娜が捨てようとしていた、まだ中身の残った食べ物でいっぱいの袋に集中していることに気づいた。
盧安は列車に1日2夜乗り続け、ホクダ駅に着いた時には深夜で、どの店も開いていなかった。盧安が持っているお金は現在両替できないため、何か食べ物を手に入れてこの夜を過ごしたいと考えた。列車の屋根の上で1日半過ごした盧安は空腹で少し辛かった。




