0203 誇りのために
発展、発展、そしてまた発展…自分にはまだ多くの進歩が未完であると感じているとき、世界に挑戦しようなどという無謀な考えは起こらないものだ。自己予行演習の効率をさらに向上させる必要があると感じている盧安は、今、旺盛な意欲をもって自己の情報化発展に取り組んでいる。
この世界に不当に抑圧されていると感じ、熱血で世界を変えなければならないと思う感情は、今の盧安にはない。矛盾が山積みの国こそが、すぐに国運を賭けて矛盾から脱却しようと考える。人も同じで、目の前の問題を解決する自信がないから、賭けに出るのだ。
盧安は賭けが好きではない。運に賭けて以前の不注意による「歴史的遺留問題」を補うよりも、未来に目を向け、一歩ずつ着実に進む方が良いと考えている。
盧安の現在の戦略は、大量の凡我を使って、一国でしか創造できない奇跡を起こすことだ。奇跡が生まれた後、盧安は特別な姿勢でこの世界に立ち向かう。
「誇りは、知恵の頭脳と勤勉な両手で築かれた驚異によって支えられる必要がある。」最初の感情状態が自らに宣言した。
二つ目の感情状態が再び宣誓の姿勢で自らの誓いに応えた。「私の掌中にある力は、幸運にも奇跡を開花させるでしょう。」
海軍記念日が終わった後、盧安の頭上には大量の導力線が存在していた。これらの導力線は緻密に張り巡らされた立体的なネットワークを構成している。大量の機械エネルギーが脉络の中で分岐し交錯し、衝突し、停滞し、各ノードで永続的に運動するか、または損耗している。
これは導力コンピュータであり、自分が大規模に超能力を発動した結果をより正確に演算できる。盧安が予演を一つ再開すれば確かにより明確に効果を確認できるが、これは中国の帝王時代に相当する。多くの場合、人的資源の優位性ゆえに技術革新への動機がなかったのだ。
盧安は、些細な目標のためにわざわざ単独のシミュレーションを立ち上げる必要はないと考えている。シミュレーションを並行して多く実行すると、制御が難しくなるからだ。補助計算システムを使うことで、盧安は周囲の可能性をより正確に把握できる。
盧安が可能性を正確に把握できる時、周囲の物事の時間的な配置がよりクリアになる。例えば、鳥の糞一団を制御して車の窓ガラスに落とすと、運転手に影響を与え、その車をわずかに停滞させ、それによって数キロメートル先の交通渋滞を引き起こす。これが今、盧安のできることだ。
盧安は、この人為的な渋滞の発生を、現実で一度だけ行った。遅刻で焦っている人々の姿を見て、盧安はとても申し訳なく感じた。集団の時には、盧安はこんなに優しくはない。
オフィスに座って窓の外のひっきりなしの車の流れを感じながら、盧安は椅子の上で伸びをした。「みんな可哀想なサラリーマンだね。」
"バン!" と、書類の束が盧安の机の上に置かれた。同僚が言った。「盛儒星があなたに、日数爆発のデータを処理して、四号演算モデルを検証するのを手伝ってほしいって。」
「もうすぐ辞めるのに、まだこんなにたくさんの仕事を押し付けるんだ。」 盧安はぶつぶつ言いながら、忙しなく作業を始めた。
長江上流の武漢にある某基地で、湯宏康はこの非常によく知った培養槽を見つめていた。
盧安から初期データを受け取った後、軍は湯宏康の関連培養実験をすでに開始していた。今回は初めての実験なので、元のデータには一切変更を加えておらず、そのため湯宏康は多くの見慣れたものを目にすることができ、培養槽の目盛りでさえ同じ様式だった。
湯宏康が養成カプシェルに入ると、新たな実験が始まった。湯宏康の超能力フィールドが展開されると、六十三組のメンバーは実験室の異なるエリアで忙しくなった。各部門は、湯宏康が変更できる一つの属性項目を分析する。
盧安の泥鰍プロジェクトと比べて、湯宏康のこのプロジェクトには輸血管がない。この点は、湯宏康の育成プロジェクトの最終目的が強大な戦力を育成することであり、経済的利益を得ることではないことを示している。
ホールでは、米振が各部門の管理するデータを見ながら、マイクを手に取りカプシェル内の湯宏康に尋ねた。「湯宏康、今の感覚はどうですか?」
「今のところ良好です。熱伝導率変更テストーーを実施中です。」
「もし感覚に異常があれば、すぐに報告してください。では、第十四測定グループが提供するデータに注目してください。自分の変更しようとしている能力をしっかり把握するようにしてください。」
米振の言葉が終わるとすぐに、湯宏康のシリンダー内にホールの光スクリーンの投影が現れた。投影は彼が属性を変更した物体内部の各部分の物理状況を示しており、例えば熱伝導率の変化の効果図などだ。このグループの126人の専門家たちが湯宏康のためにサービスを提供している。
6時間後、自分の力のパラメーターを理解した湯宏康は、ぴったりとした動力服を着て試験場を駆け回り、さまざまな武器装備を自在に切り替えている。
機甲のターボファンでブーストーーして一躍16メートルも跳んだ湯宏康を見ながら、米振は傍らの専門家に尋ねる。「彼の身に着けている機甲の残りエネルギーはどれくらいですか?」
傍らの専門家はスクリーンのシステムデータをちらりと見て言った。「現在、彼の身に着けている装備は既に427度の電力を消費しています。」
米振は言う。「さらに出力を上げられますか?問題は彼に装備させた武装にあるのか、それとも彼自身の超能力が不足しているのか?」
そばにいる専門家が言った。「将軍、これは超能力が周囲の物質環境の属性を変更してエネルギーを収集する現象ですが、これまで遭遇したことはありません。もっと実験が必要です。」
その時、米振の視線は遠くの湯宏康の位置に留まった。湯宏康は銃器を手に取り、周囲四十メートルの地面の地下への熱伝導率が突然ゼロになり、中心への熱伝導率が最高に引き上げられた。熱は彼の金属製の靴にあるいくつかの熱伝導パイプを通って、素早く湯宏康の背中の発電機に流れ込み、電気エネルギーに変換された。
充電が完了すると、湯宏康は引き金を引いた。一筋のレーザーが遠くの標的に向けて放たれ、標的全体がレーザーで貫通した。
「かなりいいが、まだ足りない。圧倒的な武力が必要だ。」米振は後ろの女性将校に言った。「『|改竄者《カ伊莎ンシャ》』の思想工作は君に任せる。」
数日後、上海港で観艦式に参加していた大艦隊が帰港し、姬流は緊急招集された。
姬流を召見したのは龍部統帥だった。統帥は姬流に一束の紙の資料を手渡した。姬流は急いで目を通し、要点を掴むと言った。「潘陽はあの湯宏康に会ったのか?」
統帥は言った。「南方軍区は良い原石を捕まえてからというもの、全力で取り組んでいて、我々に技術的な協力も要請している。」
姬流はこのコードネーム「|改竄者《カ伊莎ンシャ》」の資料を見て、眉をひそめた。姬流の表情を見て、統帥は尋ねた。「競争を受けることを心配しているのか?」
姬流はうなずいて言った。「|改竄者《カ伊莎ンシャ》の超能力がどれほどの速さで増大しているのかは正確にはわからないが、数ヶ月前には、今のような効果を生み出すことは絶対にできなかった。周囲四十メートルの物質属性を柔軟に調整し、五百メートル先の点状目標を適切に調整するなど、もし三ヶ月前に彼がこのような能力を持っていたなら、虎部の損失はさらに甚大なものになっていただろう」
「つまり、彼がレベル5に達する可能性があると言うのか?それは確かに脅威だな」
「その心配よりも、私には少し疑問がある」
「君が疑問に思っているのは、このような超能力者がどのようにして生まれたのか、ということか?」
「そうだ。潘陽の言うところによると、湯宏康を再覚醒させたあの超能力者は、いったいどのようにして自分のレベル4……実験場ではレベル5の威力にまで達した超能力を無駄にしてしまったのか、まさか……」
「何が言いたい?思い切って言ってみろ」
「超能力を他人に移すことは可能なのだろうか?例えば、レベル3とレベル4を使って、レベル5を手に入れるとか?」
場の空気が突然、静まり返った。しばらくして、統帥は笑いながら言った。「姬流、君の奇抜な発想には感心するよ。しかし、この世界にそんな献身的な人間が本当にいると思うか?誰がそんなことをする?虎部がそれだけの手間をかけたのなら、なぜそんな被験体を逃がしたりするんだ?」
「あるいは、虎部はこの実験の成功に気づかず、『改變者』を『失敗作』と見なして、もう一人の失敗作をそのまま逃がしてしまったのかもしれない。」
「虎部の超能力者が能力を失うのを見て、そんな妙な結論に至ったのか?」
姬流は苦笑しながら言った。「私の考えすぎだったのかもしれない。」
「君の考えも、少しは参考になる点がある。潘陽を呼び戻してきなさい。」
「彼を呼び戻すのか?虎部の方は…」
「私は、問題は虎部にあるのではないと思います。これらの日々、我々の目は上海にばかり向けられていて、他の方向を疎かにしていました。もしこれらの怪しいことが何かを隠しているのなら、我々が疎かにしている場所を振り返って見なおしてみましょう。」統帥は姬流にこう言った。「潘陽を西北に派遣して情報を整理させ、盧家がこれらの日々にどのような行動をとっているかを調べなさい。」
姬流はうなずき、立ち去ろうとしたが、統帥は姬流を呼び止めて尋ねた。「天數のプロジェクトのことを、君はどう思うか?潘陽があの日出くわした様々な偶然は、どれほど疑わしいと思うか?」
「私はこれは潘陽が少し過敏になっていると思います。あれほど多くの偶然がどうしてあり得るでしょうか…」姬流は何かに気づき、すぐに信じがたい様子で尋ねた。「もしかして…」
「関係資料を調べたが、今のところ明らかな疑点は見当たらない……」統帥は言った。「まあいい!盧家を調べるついでに、ついでにこの人物の状況も調べておけ。」
統帥の言う「この人物」とは、実は盧安のことだ。盧安は今あまりにも取るに足らない存在で、統帥は大げさに動くのは不適切だと考えている。もし手を出して盧安に価値がないと分かれば、龍部全体が笑いものになるだろう。




