0152 神意
意識が元一空間から再び主世界に戻ると、盧安は自分の身体を感じ取り、周囲の環境を見渡して、思わず感慨にふけった。「どうやら、この世界の社会において、俺の全身で最も価値があるのはやはり超能力だな。超能力がなければ、俺はこの世界で何者でもなくなってしまう。」
盧安がこのように感慨を抱いたのは、現在彼が特殊な密室にいるからだ。この密室は球形で、球壁は高複合有機材料でできており、簡単に言えば、これは大きな風船である。この風船は水槽の中にあり、盧安は風船の中にいる。
盧安の無阻超能は剛性材料への破壊力が強すぎるため、虎部は流体を用いて盧安の超能力を緩衝しようと考えた。剛性物体が滑り動いて激しく衝突すれば、建材を粉砕してしまう。水のような流体なら、彼らには破壊力がはるかに小さいと映ったのだ。
彼らがそう判断したのは、明らかに盧安が自身の超能力の実際の運用レベルをうまく隠しているからだ。彼らの盧安の超能力に対する推測はすべて紙面上の数値に基づくものであり、もし盧安の本当の破壊力を見たら、安全のためにおそらく盧安を直接強制休眠させてしま宇田ろう。
盧安が必要と判断すれば、水流を利用するだけでも周囲のプールの壁を直接引き裂くことができる。しかし、盧安は今そうしておらず、風船の中にいる盧安は静かになった。
盧安は紙の束を手に取り、ゆっくりと紙飛行機を折り始め、それからこの直径六メートルの気球の中で紙飛行機を上に投げ、無阻超能を発動してこの狭い空間内で旋回させた。
一機、二機、三機、四機……紙飛行機の数が増えるにつれ、それらは浮かぶ環を形成した。すべて投げ終えると、盧安は紙の扇子で絶えず風を送り、上方に浮かぶ飛行機に気流のエネルギーを与えた。
蛙視において、盧安が扇子を振るうと、エネルギーを帯びた気流が大きな手のようにこれらの紙飛行機を操り、狭い空間内で様々な動きをさせた。ひらひらと舞う紙飛行機は空気中を滑空し、独特の流暢さを見せ、旋回時には生物のようなしなやかさをも見せた。
盧安の注意力は、次々と漂う紙飛行機に集中しており、時折湧き上がる苛立ちがこれらの紙飛行機を紙片へと砕き散らせるか、あるいは紙飛行機が空中で別の紙飛行機を切り裂くのだった。
紙飛行機がひらひらと漂う様子を30分ほど見つめた後、盧安は少し退屈を感じた。破壊された紙飛行機の数と、球壁に刻まれた切り口の数を数え、彼はため息をついた。
盧安は自らの予演を紡いでおり、通常は七つの予演で一つの完全な思考の区切りとなる。しかし、盧安からすれば、自分は依然として制御できず、予演の中の無碍の超能が現実において破壊的に顕現してしまうのだった。これこそが紡ぎの状態における、自らの破壊衝動が爆発した結果なのである。
「どうやら、自分の無碍の超能を空っぽにすることだけが、現実を静寂に導く方法らしい。」盧安はため息をついた。
その時、透明な球の壁の外に一台の自動潜航器が近づいてきた。この自動潜航器にはプロジェクターが搭載されており、盧安のいる透明な球の壁に接近した後、一筋の光が投影され、球内に3D映像を作り出した。
盛儒星の投影が盧安の前に現れた。盛儒星は盧安を見て言った。「最近どう?」
盧安はうなずいて言った。「元気だよ。」
盛儒星はうなずいて言った。「心の負担を持たないで。君の状況に対して、私たちは最大限の努力をしている。」
「うん、慰めなくていい。超能力が完全に衰えて、どんな脅威もなくなったら、離れるべき時は自分で離れるから、君たちを困らせたりしないよ。」
「そんなに悲観しなくていいよ。」
「それじゃあ、あなたの幸運をいただくね。」
「衰退の原因について、心当たりはありますか?その前に、誰と接触しましたか?この衰退は非常に異常です。」
盧安は首を振って言った。「誰もいません……」
その時、カシャッと音がして、カメラに水が入り、投影が不安定になった。これはある予行演習で盧安が引き起こしたものだ。
これを見て、盧安はこの話題を終わらせたくなった。「休みたい。」
盛儒星はそれ以上盧安を邪魔せず、潜水機はプロジェクターを連れて素早く去った。しかし、去った瞬間、潜水機全体が粉々になり、水中に沈んだ。
盧安はため息をついた。「やはり我慢できなかったな。……」
盧安の知らせが西北に届くと、玄鳥部の関係研究者たちはあらゆる努力をしていると宣伝し続けたが、ある人々は心の重荷をゆっくりと下ろし、気分がずっと快適になった。
虚華明の夫人はその一人である。盧安はとっくに知っていた、このような夫人が自分を目障りに思っているかもしれないことを。しかし盧安は彼女をさほど恨んでおらず、むしろ少し共感している。彼女の行動は母親の普遍的な本能だ。地球の二十二世紀の道徳観を持つ盧安は、この女性に憎しみを向けることはない。彼女が自分を敵視する根本的な原因は、彼女自身にあるわけではないのだ。
多重の時間線は物事をより多くの角度から見る視点を与え、盧安が物事をより深く理解することを可能にする。普通の人には偶然や運命に見えることも、盧安ははっきりと見通し、それが一連の因果によって引き起こされた必然であることを知っている。ある意味で、盧安は他人の目に映る運命の采配を作り出すこともできるのだ。
盧安の考えでは、この女性の母性愛は確かに良いものだが、宗族の環境では必然的に自分と敵対しなければならない。彼女が自分を憎みたいわけではなく、生まれつき彼女から嫌われる立場にあるのだ。彼女の置かれた環境を変えれば、もしかするとこの夫人と一緒にお茶を飲みながら、人生を語り合い、趣味を話し合うこともできるかもしれない。
盧安は固定観念にとらわれず人を見ることができるが、この夫人にはできない。盧安の超能力が急速に衰えていると知った時、彼女は盧華明と一緒にいる間は非常に残念そうに振る舞った。しかし盧華明が去った後、彼女は恭しく家の菩薩像に線香をあげ、「菩薩が顕現された、菩薩が顕現された」と口の中で呟いた。
そしてこの光景を、ちょうど帰宅した盧穹が偶然目にした。彼は心が震え、少しやるせなく、また少し自責の念にかられた。
「母上。」盧穹が言った。
夫人は息子の帰宅に驚きつつも、大変喜んだ。彼女は慌てて家の侍女や召使いたちに指示を出した。
盧穹はそれを制止して言った。「母上、私はヨーロッパへ出張に行かねばなりません。」
「どうしてまたお前に出張が…」
「一族の重要な用件を任されたのです。」
夫人はやや不満げに言った。「まったく、あの人たちは無能なんだから。」
家でしばらく過ごした後、夫人の注意を受けながら、盧穹は車に乗り込み、空港へと向かった。
空港に着くと、盧穹はタブレットを抱えて相手と戦っている盧九重を見つけた。盧九重の後ろには四人の家僕がおり、彼と一緒にパソコンを操作し、仮想空間で戦いを繰り広げている。盧九重の号令のもと、この四人の家僕はそれぞれトップレーンの援護、ボトムレーンの遊走、ジャングルへのワード設置などを行っている。盧九重はまるで戦場の指揮官のようだ。
この光景を見て、盧穹はやるせなくため息をついた。
そのとき、航空便のスタッフが言った。「お客様、あと十分で離陸できます。」
盧穹は息を吸って言った。「空港の管制にお願いして、私たちの飛行機を三十分遅らせてください。」
盧穹は、盧九重が今まさに殺しを楽しんでいるのを知っている。急にそれを中断したら、道中きっと不満に思宇田ろう。この旅を少しでも快適にするために、盧穹はまず盧九重のこのゲームを終わらせることにした。
窓辺に座り、盧穹は玄鳥の意匠が施された自家用機が駐機場に停まっているのを見ていると、故郷を離れようとする郷愁がこみ上げてくる。
この度のヨーロッパ行きは、金羊社と獨角社との利益に関する商談のためだ。最近、ヨーロッパの力はますます大きくなり、中国の制御からますます離れつつある。七十数年前、中国は盛唐のような覇権の盛世に入ったが、その盛世の中に、盛唐と同じような隠れた危険も埋め込まれていた。
ヨーロッパの獨角社、華麗な宮殿の中、大理石の椅子に座る赫拉は白い素足を露わにし、その白い足は新鮮な花びらに支えられている。
一人の男が宮殿に入り、赤い絨毯に沿って神座の前に進み、彼女の前で片膝をついて敬礼した。礼を終えると、彼は立ち上がって言った、「我が神、東方からの新しい視察団が間もなく到着します。」
赫拉は横の机の上にある一束のカードを手に取り、「誰が来ているの?」と尋ねた。
男は言った、「玄鳥部で最も若い神眷者(五級超能力者)の坤です。ただし、我々と話し合うのは玄鳥部の中核人物である盧穹です。」
「盧穹?」赫拉は指を上げて、自分のこめかみを軽く叩いた。潔白な指先にびっしりと光の符が飛び跳ね、彼女のこめかみに消えていった。データを照会した後、赫拉は軽蔑して言った。「神の賜物すら持たない人間だわ、ふん、あまり気にする必要はないわ。坤のことを話しなさい。」
男は盧九重の能力と好みを全て報告してきた。
赫拉は聞き終えると、評価した。「とても気性の荒い男の子だわ ——」と、その後赫拉の顔色が突然曇った。「こういうタイプは嫌いだ、殺せ。」
男は非常に困って言った。「我が神、彼に対して行動を起こすと、戦争を早めて誘発する可能性があり、我々の力はまだ準備が整っていません。」
赫拉は示唆した。「金羊社の縄張りで動け。」
男は困惑して言った。「それは我々の同盟者ではないのですか?」
赫拉は怠惰に椅子にもたれかかった。玉座の前に力場が現れ、彼女は柔らかい力場に両足を預け、白い足を高く上げ、スカートの裾からのぞく太ももの付け根の色気が誘惑を放つ。
「同盟?まだ神を理解していない。神に同盟者はいない。」
ホールを出た後、その男は東の方を見て言った。「すべてが、破られようとしている。」




