0149 ハスキー
(0124章に続く)
泥鰍プロジェクトの実験場では、盧安の要請により、現在周囲に重力場の振動を発生させる装置が起動状態にある。
制御室内の雰囲気は非常にリラックスしていた。この実験場の機器のパラメータは何度も試されており、しかも自動化システムで制御されているため、問題が起きる可能性は低い。実験を主管する張天闕は制御室を出て、ガムを噛んでさえいた。
背後から足音が聞こえた。張天闕が振り向くと、盛怡苒だった。張天闕は口の中のガムをゴミ箱に捨て、軽く咳払いを一つ。制御室内の全員がその咳払いを聞いて姿勢を正し、「真面目に働く」モードに入った。
「盧安を探しに来たの」と盛怡苒が言った。
「お嬢様、泥鰍は実験エリアにいます」と張天闕は言った。「こちらへの入構証をご提示ください。」
盛怡苒は左右を見回して尋ねた。「泥鰍?泥鰌って誰?」
「実験者のコードです。お嬢様、同行証をご提示ください」
盛怡苒は目を大きく見開いて言った。「何て言ったの?私を知らないの?」
張天闕は少し嘆息した。彼はこの女性がどうやって入ってきたのか、すでに理解していた。基地全体がカードとロボットによる認証方式を採用している。つまり、盛怡苒は間違いなく盛儒星のカードを使って入ってきたのだ。瞳孔認証や指紋認証については、盛怡苒の超能力は状態保存である。盛儒星が入る際に、盛怡苒が機械の状態を保存し、カードを通す時に機械に表示された同行状態を門禁システムに解放することで、彼女はこうして入ってきたのだ。
一般人を制限するシステムは、超能力者にとっては往々にして容易に回避されてしまう。幸い、現在の四級超能力者は監視下に置かれており、例えば目の前のこの盛怡苒の場合、彼女の保護者は盛儒星なのである。
張天闕はため息をついた。「泥鰍は気性が荒いから、君が現れたらセキュリティシステムにケチをつけるに決まってる。どうか私の仕事を理解してほしい」
「彼の能力の詳細を教えてくれたら、すぐに立ち去るわ」盛怡苒は、盧安の超能力がレベル3ではないと確信していた。
盛怡苒の来意を察した張天闕は、実験室の方を見て苦笑いを浮かべた。「試験場と実際の状況は違う。彼が発動した超能力はごくわずかだ。我々の研究では、彼の超能力のごく一部の指標しか測定できていない。彼の能力の全容については、我々も把握していないんだ」
盧安は泥鰍プロジェクトの意思決定に参加し、すべての実験は無阻膜の持続時間や維持強度といったいくつかのハード指標だけを測定している。総合的な応用、例えば導力脈絡のような応用や、ビル解体時の無阻膜の柔軟な運用については、盧安は全くこれらの研究課題を設定していない。
張天闕から見ると、盧安は超能力の応用方法に全く興味がないように見える。あるいは、強力な超能者になることに関心がないのだ。
超能力研究全体で単一指標だけを見るのは、重量挙げや短距離走、長距離走といった単一データを測定するようなものだ。そして総合運用の評価は、自由格闘技に相当する。単一指標だけでは、盧安の超能力運用の真のレベルを知ることは不可能だ。
虎部はわずかな手がかりから、盧安の超能力の使い方が非常に熟練していることを見抜いていた。そして実際、盧安が自分の超能力の使い方を明らかにすれば、彼らは熟練の定義を再び書き換えるかもしれない。もちろん盧安は、自分が天運であるという秘密をしっかりと守り続けている。
今、盧安は一見、自分を三大超能部門に預けているように見える。しかし実際は、盧安がこの三部に安心感を与えたのだ。これらの勢力は盧安がどう超能力を使うかについての理解が非常に乏しく、むしろ盧安に内部に食い込まれてしまった。
張天闕がどうやって盛怡苒を退かせようかと考えているとき、盧安はすでに実験場で目を開いていた。
“やっと戻ってきた。”周囲の真っ白な実験室の内壁を見つめながら、盧安はほっと息をついた。あの混沌とした世界を一回りした後、盧安はやはりこの平穏な世界がいいと感じた。
周りを見回して、盧安は笑った。「これは、僕の世界だ。」
ここに対して、旭星は元一の世界と言える。盧安はそこであらゆる制限を受け、その世界での少しでも不適切な行動は、すべて元一にメモ帳に記録されているようで、盧安は大きなプレッシャーを感じていた。皮肉なことに、旭星に着いたばかりの頃、盧安は主世界があまりにも息苦しく、自分のものではない世界で少し解放されたいと思っていた。
「まずは出よう。」盧安は心の中で思い、習慣的に予行演習で壁に破壊を加え、透視の効果を得ようとした。
しかし、現実にはもともと頑丈だった壁が、盧安の呆然とした目の前で砕け散った。
「これは一体どういうことだ?!」盧安が呆然としながら、周りを見回した。布が引き裂かれるように、周囲の耐力壁も「轟」と音を立てて裂けていった。
そして、耐力壁が引き裂かれるにつれて、盧安は突然何が起こっているのかを理解した。盧安のこの突然の気づきは、まるで猿が初めて鏡を見るように、同じアクションを取る存在を見て、驚いた後に、鏡の中のそれが自分自身であることに気づくようだった。
なぜなら、プレ演習が現実に与える影響の程度が変わったからだ。元々、盧安はプレ演習中に自分の考えや記憶を感じ取るだけで、それらの無阻場は残留物に過ぎなかったが、今では、盧安がプレ演習中に使用した超能力が、そのまま完全に現実に作用している。まるで左手で茶碗と箸を取ろうとしたときに、右足が無意識に一歩踏み出してしまうかのようだ。
盧安が元一に尋ねようとしたちょうどその時、元一の光幕が飛び出し、盧安に一連の公式と説明を与えた。しかし、この一連の公式と説明は盧安には皮肉に満ちているように見えた。元一が自分を罰する理由は、前回の任務での自分の様々な行動ではなく、盧安が前回の任務でずっと無視していたこと――超能力の面でずるをしたことだ。穿越の過程で許可されていない能力を持ち込むと、懲戒を受けるのだ。
ロードされた力体系は、置かれた環境に対応している。盧安の無雙チョウノウのレベル5状態は、特殊な重力環境下に入ったものである。元一はこの状態の盧安をミッションワールドに転送し、それを維持した。ミッションワールドの成長に伴い、盧安は成長過程でこの能力に合致した。そしてミッション終了後、元一はこの状態の盧安を標定し、盧安を送り返した。しかしこの時、盧安の周囲の環境は変わり、通常の地球の重力環境になったため、超能力は暴走した。
元一の説明は理にかなっている。生命は環境に基づいて誕生し、その環境に適した方向へ発展する。特殊な重力環境で生まれた強力な超能力は、任務世界でしばらく成長した後、環境が急変して元の場所に戻ると、レベル5の超能力が崩壊してしまう。まるで小さな恐竜がジュラ紀の高酸素環境下で生命維持カプシェルに入り、ケンタウルス座への旅の途中、ジュラ紀の環境要素に合わせてパラメータ設定された生命維持カプシェルの中で成長し、大きな恐竜になる間に、地球は第四紀に突入してしまうようなものだ。地球に戻ると、環境が低酸素で気温の低い紀へと急変していたため、成長した恐竜の体はもはや地球上での生存に適さなくなっていた。
説明としては筋が通るが、盧安が元一に言いたかったのは、「なぜもっと早く警告してくれなかったんだ? 早く教えてくれていたら、旭星であそこまで自由奔放にはしなかったのに」ということだった。
盧安の問いかけに、元一は相変わらず何も答えない。
盧安はすぐに、もし自分が自由奔放に振る舞わなければ、元一は後で白露と対決させるよう自分を脅すこともできなかったと気づいた。最初から、盧安がこうした小賢しい真似をした時点で、元一は任務を選び、策略を定め、罰を用意していたのだ(詳細は0145章を参照)。
今はまず、目前の状況を片付けなければならない。
「ガチャガチャ……」周囲の物が次々と砕けていく。盧安は壊したくないが、自分が壊さずにはいられないことに気づく。
この感覚は、まるで一日中立たされた後に、突然手にインスタントラーメンの袋が現れ、それを思わず揉み砕いてしまうようなものだ。
もっと分かりやすい例えを挙げてみよう。授業中、先生の話がまるで天書のように難解で、ただ机の前に座っているしかない退屈な状態の中で、誰が自分の手が小動作をしないと保証できるだろうか?
次々と画面が割れ、壁に掛けられたコンピューターが応力でバキバキと音を立てる。千回近くの予行演習の中で、これらのものはまるで手にしたインスタントラーメンが次々に砕けるかのようだった。以前はこれらの動作は予行演習の中だけで起こっていたが、今では盧安の超能力の不安定さによって、現実に作用しているのだ。この時の盧安は抑えがたいものがある。
この時、盧安はとてもやるせなかった。凡人と偉人の差は、最も直感的に言うことと行うことに現れる。言うのは簡単だが、実際にやってみると、諦めたくなるような様々な理由が見つかる。口を慎んで余計なことを言わないのは簡単だが、頭の中で考えを巡らせないようにするのは不可能だ。手を押さえてスマホをいじらないのは簡単だが、頭を一切怠りなく集中させるのは不可能だ。以前の予行演習の現実への影響は非常に限られており、超能力はせいぜい数秒残るだけだったが、今では予行演習が現実に及ぼす影響の度合いが増し、予行演習中に超能力を使うとはっきりと現実に影響を与えるようになった。
第二類予演中の盧安はしばらくの間、様々な破壊衝動を抑えきれない。しかし不幸中の幸いとして、盧安は殺人を嫌悪している。血肉の場面を見ると、虫が顔を這うように気持ち悪く感じるのだ。だから今のところ、壊れているのは建物だけで、怪我人は出ていない。もし盧安が殺人に無頓着だったら、今ごろ誰一人として逃げられなかっただろう。
張天闕は動力甲冑を着けずに、直接急ぎ足で実験室に入った。彼は壁越しに叫んだ。「盧安、大丈夫か!」
すると、張天闕の前の壁が崩れた。盧安は困った顔で両手を広げて言った。「今、俺の方は暴走状態だ。」
張天闕は猛然と崩れ落ちた壁を見て、突然盧安と直に向かい合っていることに気づいた。彼は声を震わせ、額から汗を流しながら言った。「抑えて……抑えろ、自分を信じるんだ。」
この時、盛怡苒が入ってきた。盛怡苒は周りの残骸を見て驚いた。振り返って、少し信じられない様子で言った。「あなたが壊したの?」
盧安は張天闕を見て、それから盛怡苒を見た。そしてこの時、横の盛怡苒が手を上げて制止の仕草をしながら言った。「分かった、壁が先に手を出したんだ、ハスキー犬もそう言うわ。」
盛怡苒の出現を見て、盧安は少し泣き笑いするような気分だった。このお嬢様がこの時に現れるなんて、完全に厄介事を持ち込むだけだ。
しかし、盧安がどうやって彼女を帰らせるか、あるいは自分が離れるかを考えていると、盧安は自分の超能力が制御され、自由に発動できた超能力が吸収されていることに気づいた。
盛怡苒は相態保存の超能力を展開した。盧安が展開した動能破壊は、盛怡苒によって一時的に保存され、破壊は停止した。




