0132 失敗の降臨
6時間電車に乗り、慕斯は数十キロ離れた都市へやって来た。いくつもの検問所を抜け、地下600メートルの地下基地に到着した。慕斯はここの基地の配置を不思議そうに見つめながら、先ほど受けた面接のことを思い返していた。
一方、この基地の中央では、車椅子に座った中年男性ガーナーーが、これまでの面接資料に目を通していた。
少し考えた後、ガーナーーは手を伸ばし、画面に手形を押した。すると、慕斯の目の前に突然投影が現れた。
慕斯はガーナーーの階級章を見ると、すぐに立ち上がって敬礼した。
“君は忠誠心があり勇敢で、悪を憎むこと仇の如しだと聞いているが、そうなのか?”
慕斯は答えた。「上官に報告します、私の使命を肝に銘じています。」
ガーナーはうなずいて言った。「では、私について来なさい。」
ガーナーの投影が消え、矢印の指示に変わった。慕斯は矢印に従って前に進み、7メートルごとに矢印の投影が現れた。
電磁パルスを掃射するゲートを何度も通り抜け、慕斯は巨大な試験場に到着した。100メートルのガラスケースの中には多くの幽霊がいた。ケースの中には男性5人と女性2人がおり、彼らはガラスケースをじっと見つめていた。そしてガラスケースの中では、7体の特殊な幽霊が他の幽霊を追いかけていた。
その時、そばの金属ドアが開き、自動システムの車椅子に座ったガーナーが実験室に入ってきた。
「噬魂組へようこそ。」その後、ガーナーは慕斯に紹介をした。
多くの発明と同様に、幽霊で幽霊を解読する技術も、善き目的のもとに発明されました。たとえばヘロインは当初鎮痛剤として開発されましたが、人間が過剰摂取を遊びで繰り返すのを止められませんでした。また重機関銃は、もともと戦場に送る兵士の数を減らすためのものでしたが、工業国の生産により殺傷効率が高まりすぎました。そして幽霊で幽霊を解読する技術は、当初、犯罪者の幽霊から直接犯罪情報を取得し、幽霊を破壊して証拠が得られなくなるという窮地を回避するために用いられました。しかし未来において、これは人間の意志が互いに食い合う基盤となります。
ガーナーの解説を聞き、慕斯はためらいがちに尋ねた。「そんなことをしたら、世論が…」
「世論が我々の実験を知れば、必ずや激しい非難を浴びせるでしょう。しかし、このことは我々が必ず行わなければならず、電磁分身を使った犯罪が将来どのような代償を伴うのかを人々に知らしめなければなりません」とガーナーーはうなずきながら言った。「我々が今すべきことは、この技術を完成させることです」
説明を聞いて、慕斯はガーナーーの要求を受け入れた。
慕斯の噬魂基地での伝説的な経験が始まった。
盧安は沿岸の堤防の上を散策していた。激しい海風が盧安の傍らを急速に駆け抜けていくが、盧安はまるで千斤の巨石のように強風の影響を受けず、一歩一歩と堤防の上を歩いていく。
堤防の電子掲示板には台風接近の警告が繰り返し流れている。「堤防にとどまらないでください」といった内容だ。しかし、盧安はその掲示板を越えていく。無阻超能力が展開する半球状の無阻シェルが、気流や堤防に打ち寄せる波を自らの周囲で迂回させる。これが大風大浪が盧安に影響を与えない理由だ。
海風が巻き上げる大波が岸に打ちつけ、飛び散った水滴が無阻シェルに当たり、美しい水の花を咲かせる。盧安の半メートル以内に一滴たりとも水は浸透できない。
遠方の嵐はネオンサインのように、さまざまな色の稲妻をきらめかせている。しかし、この世界の奇妙な海藻や、何の禁忌もなく振る舞う幽魂を目の当たりにして以来、盧安は天辺における特異な嵐に対し、すっかり慣れて驚かなくなっている。
盧安は一人で堤防の上を歩き、堤防の下で荒波が岸に打ちつける様子を間近に感じ取ることができた。普段は掌の中で蒸発してしまうような水が、ここでは海の規模にまで膨れ上がっている。その澎湃たる力に、盧安は自身の小ささを深く実感し、数ヶ月間心の奥にくすぶっていた焦燥も次第に静まっていった。
一つの大波が打ち寄せ、海水が盧安の周囲半メートルの位置を滑り去っていく。大波の勢いが弱まるにつれ、一滴も濡れていない盧安が水没した堤防の上に姿を現した。すると、大海原を眺めていた盧安は慌てて横に飛び退いた。体内の導力経絡システムが盧安を一瞬で八メートル先の斜面へ跳ばせ、水流に乗って転がり落ちていった。慌てて逃げたのは、水流からではなく、数秒後に迫る危機から逃れるためだった。
大きな稲妻が高空から落ち、周囲に散らばる電光がその到来を告げると、すぐに圧力鍋が破裂したような大音響がとどろいた。盧安は湿った地面から伝わる強い痺れを感じた。それは雷の余波だった。
三秒後、盧安は立ち上がって空の雲を見上げ、眉をひそめて言った。「まさか雷に打たれたのか?」
盧安は堤防に上がり、深い穴の中に、溶けてから海水で急速に冷やされたガラス質の領域を見つけた。この金属とガラス質が混ざったものは、堤防の材料が高温で変質した産物には見えず、どちらかというと隕石に似ていた。しかし、盧安はこれが隕石ではないと確信した。隕石は長い火柱を引きずるが、これは一筋の電光と共に打ち下ろされたものなのだ。
盧安はこの着地点と、空に電光が現れた状況を遡り、冷厳な表情になった。
「ここに到達したのは、偶然かもしれない。しかし、到達した後に、これが私に向かって落ちてきたのは、決して偶然ではない。」盧安はそう結論付けた。先ほどの雷は、盧安が直前に数秒で予見したものだ。
これを考えて、盧安は少し落ち込んだ——また何か面倒ごとに巻き込まれたのか?
盧安は坑底を触った。しかし、触れた瞬間、盧安は一瞬呆けた。
現実には変化は見られない。盧安はただ坑底の物質に触れただけのように思えるが、盧安の感覚の中では、触れたその瞬間に一つの点が形成された。触れた瞬間、盧安の過去の感覚には明確な点があり、淺空明子を抑制し、その複数の未来時間線を断ち切った際にも、過去のその点を感じ取り、容易にそこへ遡ることができ、影拓の一瞬の静止空間を感じ取っていた。
「これは時空物だ……」坑底の残渣を見つめながら、盧安は結論を下した。
これはただの時空物ではなく、盧安はこの過去の点に遡り、広大無辺な静止空間を見た。この静止空間には、盧安が坑底に触れた一瞬が影拓されており、盧安はその空間で自在に視点を引き延ばし、この空間が極めて広大であることを発見した。数百キロメートル外まで視点を引いても、境界の暗障層が見えないばかりか、この星を見下ろすことさえできた。
静止した空間について言えば、淺空明子が盧安に残した空間は最大でも半径700メートルしかなく、その半径内では遠く数キロ先の高層ビルを見ることができるが、その半径の外に出ると何も見えなくなる。その半径内に入って初めて、自分がその時その領域で周囲を見ていた視点を見ることができる。
淺空が盧安に残したあの空間は、まさにホログラムの小さな家のようなもので、自分がその小さな家の中に立っていれば周囲を見回すことができるが、その家の外に出ると見えなくなる。しかし今この生成された空間は、非常に大きく、自由に隅々まで移動して観察できる空間だ。盧安は都市に移動して、李三祥や白露たちが今都市で何をしているかを見つけることさえできる。
あの穴の底にあるものは一体何なのか?破壊される前はどのような存在だったのか?盧安にはわからないが、自分との時空上の接触の結果から見ると、これはとんでもないものだ。
こんなとんでもないものを拾った盧安は、最初は新しいチートを手に入れたと喜ぶどころか、むしろ戦々恐々としていた。盧安はある予行演習で独り言ちた。「こんなものを拾って、本当に問題ないのだろうか?」
盧安が心配する理由はこ宇田。道端で10元を拾うのは「お金を拾った」と言えるが、もし金の入った箱を拾い、その箱の中に撃った痕跡のある拳銃まで入っていたら、その時は「金と銃を手に入れた」と喜んでいる場合ではなく、自分の身の安全を心配しなければならない。
盧安はすぐに元一に連絡した。元一からの返答に、盧安はほっと胸をなで下ろした。
「異時空の降臨痕跡を検出。降臨失敗、生命の生存兆候なし。鑑定により、降臨は下流178333万年後からのもの。探索者は引き続き注視されたし。」
盧安は追及した。「降臨に失敗した?じゃあ、さっき俺を狙って攻撃したのは、意図的に俺を消そうとしたのか?」
「君は露呈していない。相手は完全に降臨できず、この時空領域の正確な情報を取得できない。君を狙ったのは、君が降臨地点に最も近い変数だからだ」
盧安は遠くの台風の雲を見つめてぼんやり言った。「まさか、さっきは俺の体を乗っ取ろうとしたのか?」
「君は思惟侵入を試みることができる。相手の思惟侵入が失敗し、君の意識を破壊できなければ、君は相手の全情報を入手し、任務を百パーセント達成したと見なす。報酬として五百年間の仙侠任務世界をあげよう」
「へっ、すべての前提は俺の意識が破壊されないことだ。俺の意識が破壊されたら、泣く資格さえないよ」と盧安は愚痴った。
元一というこの腹黒いボスは、利益のために時空傭兵を徹底的に搾り取ることができる。元一のやり口はテレビの通販広告のやり口よりも多い。
“この時空の痕跡が多すぎる。三十二日以内に、私は今回お前の身に付着した時空の欠片を消し去る。”
“これ、没収するのか?”
“そうだ、どれだけ残しておきたいんだ?”
元一が自ら売り込んでくるのを見て、盧安はぽかんとした。盧安から見れば、元一が人が変わることはありえず、絶対に自分から利益を渡してくるはずがない。しかし盧安はまた、自分のすべての反応が元一の予想の中にあることも知っていた。元一の前で小賢しいことをするのは、ただ愚かさをさらけ出すだけだと。
盧安はしばらく考え、何かを思いついて、笑いながら言った。「元一、法律の手続きに従おう。」
元一は何らかの規則を遵守する必要がある。これが盧安が戎星世界で得た重要な情報だ。元一に対して絶対的弱者の立場の盧安は、もっと元一を制約できる規則に頼って、自分が騙されないようにするしかなかった。
「法律に従い、私はお前がこのたび染みつけた時空の痕跡をできるかぎり抹消する。わずかながら残留する恐れがあるから、みずから注意せよ」と元一は光幕に表示した。




