0011 偽装者
第四紀の食物連鎖の頂点に立つ生物としての人類の最大の特徴は、他の動物よりも脳が発達していることだ。そのため、人類は他の動物よりも効率的に動物を狩ることができる。
肉食恐竜の狩りを例に挙げる。一人がまず肉食恐竜をおびき寄せ、恐竜が突進してきたところで、他の者が足絡めの縄を張り、周囲の者が恐竜の重心が不安定な隙に、長槍を掲げて一斉に襲いかかる。この時、恐竜は四方八方からの長槍に直面するため、恐慌に陥り、左右に気を配ることが難しくなる。背後にいる者が肛門を狙って前進すれば、恐竜は急に首を振り向かせ、反対側の首が露出する。首の側に直面している者は、その機会を掴んで突き刺せばよい。ハイエナの群れもこの戦術を用い、肛門を狙う。すると野牛は振り返り、頭を左に向ければ右側が、頭を右に向ければ左側が無防備となり、ハイエナはどのようにでも直接首に噛みつける。そして人間の長槍はさらに長く、連携さえうまくいけば、失敗するはずがない。
地球の進化史上、ある生物の習性は肉食恐竜にとても似ていて、同じく二足歩行だが、首を伸ばして獲物をつつき殺す——恐鳥。身長は3メートルで、かつてはアメリカ大陸の肉食界のボスだったが、その後絶滅した。ある仮説では、オオカミや他の小型生物が移り住んで絶滅させたとされ、また別の仮説では、人類の移動によって絶滅したとされるが、両者が原因であった可能性がより高い。
第四紀の捕食性哺乳動物は、ジュラ紀の恐竜よりも優れていたのは脳だが、ジュラ紀時代の哺乳類はあまり大きな脳を持っていなかった。もし予期せぬことがなければ、哺乳類は約1億年にわたって抑圧されていただろう。三畳紀に誕生した哺乳類は、ほぼ全てが絶滅したと推定され、ジュラ紀時代に誕生した哺乳類は、白亜紀には絶滅危惧に瀕していたと推定される。白亜紀末の天災がなければ、哺乳類は断固として何のチャンスもなかっただろう。
そして第四紀の哺乳類の大脳が発達した最大の要因は、氷期と間氷期である。このような交互の環境下では、すべての動物が頭を使わなければならず、渡りをするものは渡りを覚え、巣を作るものは巣作りを覚え、冬眠するものは冬眠を覚え、生き残れないものは死ぬしかなかった。
盧安は突然気づいた、たとえ人間でなくとも、オオカミの群れがジュラ紀前期に到達すれば、おそらく覇権を握ることができるだろうと。これが進化の優位性だ。
しかし、知能は高ければ高いほど良いのだろうか?今、盧安のいるチームが直面している危機は、人々の知能が発達しすぎて、考えが複雑になりすぎたことが原因だ。そして、このますます孤独になっていく環境の中で、皆の考え方はどんどん極端になっている。
盧安は予演による探りの方法で、一人ひとりの考えをすべて把握した。
司軒は工業時代社会の固有の道徳を守ろうとし、男性優位主義で全てを引き受け、弱者を保護しようとしている。しかし、環境はとっくに変化しており、適切に調整して各人の責任と義務を公平に分配しなければ、工業時代の道徳は原始社会の生産力の下では全く維持できない。たとえ司軒が耐えられても、他の男性は耐えられない。恐竜に直面する際は非常に傷つきやすく、集団内の一部の者が貢献が極めて少ないのに良いものを食べ、安逸を享受しているのを見れば、これらの男性は心の中で絶対に不満が溜まる。
司軒の堅持する道徳ルールの下で享受しているあの女性ホワイ硝煙ラーに対して、とっくに不満を持つ者がいた。ただ、ほとんどの人は最初は口に出さず、態度表明の機会を待っていた。実際、趙成功と司軒が喧嘩した時、これらの人々は仲裁に入る過程ですでに態度を表明していたのだ。
一方、趙成功は一切の道徳を完全に破壊し、狼の群れのルールを打ち立てようと考えている。そうなれば、異性は完全に物品に成り下がる。このルールは原始社会ではまったく妥当なものだ。「経済基盤が上部構造を決定する」のだから、原始社会の生産力ではそのような社会制度しか維持できない。
しかし、趙成功の考えを広めるのは難しい。元一が言っていたように、任務の後、皆は自分の世界に戻れるのだから、道徳を完全に捨て、このような原始的で野蛮な社会ルールに従う者はいないだろう。
残りの者たちは中立派だ。その中でも、自己生存派と寄生派に分かれる。李三祥、盧安、白露は前者だが、盧安には李三祥が一体何を考えているのか判断できない。盧安が唯一断定できるのは、李三祥が最も腹黒いということだけだ。
李三祥は誰に対しても気を配り、一人ひとりを取り込もうとしていた。盧安が単独で外出しようと決めた時(詳細は第0010章参照)、李三祥は盧安を制止した。なぜなら李三祥は盧安を使える人手として計算に入れており、彼に万一のことがあってその人的資源を失うのを避けたかったからだ。
盧安はまた、李三祥が女性教師の白露に対して説得工作を行っているのを目にした。彼は白露の肩を軽く叩き、安心させるように示し、事態は制御不能にはならないと伝え、同時に他の数人の女性に対しても彼女たちの身の安全が確保されていることを強調した。李三祥はまるで指導者が農村を視察し農民を慰めるかのようだった。
しかし、李三祥がただの好人物だと思うのは大きな間違いだ。役人という言葉は無能を意味するのではなく、無能に見えるだけのことであり、人々は往々にしてその人たちの表面上の無能しか見ることができない。
司軒と趙成功が喧嘩してから、隊はその場に二日間留まり、非常に重苦しい雰囲気に包まれていた。結局、一人の死がその重苦しい雰囲気を打ち破った。
劉蘭が死んだ。具体的にどう死んだのか、誰も知らない。朝、言藝と劉蘭おばさんは一緒に水を汲みに行ったが、一時間後、言藝が慌てふためいて叢林から戻ってきて、涙をこぼし、非常に怯えた様子で、劉おばさんが水中の怪獣に引きずり込まれたとみんなに伝えた。
盧安は言藝のこの様子を見たとき、じっと言藝を見つめ、それから何度か予演を行った。すると言藝の怯えは水の怪獣に遭遇したからではなく、彼女の初めての殺人から来ていることに気づいた。ある予演で、盧安は直接言藝が殺したのだと指摘すると、言藝の表情はまるで幽霊でも見たかのようになり、しどろもどろになってボロを出した。
当然、盧安は暴かなかった。暴いたところで、自分に何の得がある?劉蘭の死には、李三祥が間違いなく関与している。彼を怒らせるのは賢明ではない。
死者が出たと聞いて、正義感の強い司軒はその場に行って確認したそうな表情を見せた。しかし彼が口を開く前に、李三祥が悲痛な口調で遮った。「状況は危険で、これ以上人手を失うわけにはいかない!これからは、全員で集団行動を取るべきだ。」
二言三言で、李三祥は皆が川辺を調査に行くのを阻止した。盧安は予演と回溯を通じて、一人ひとりの表情を観察し、特に言藝の表情に注目した。他の者は皆李三祥に賛同を示したが、ただ彼女だけは、緊張が突然消えた安堵の表情を浮かべていた。
言藝がこんな様子なのを見て、盧安は心の中で思った。「『恋する女は知能が急落する』とは、本当にその通りだ。」昨夜、盧安は遡行を通じて、李三祥が言藝に砂の上に書いた内容を見て、言藝が司軒の指導権を安定させるために、手を血で染めたことを惜しまないほどだったと推測した。
李三祥は司軒を見て言った。「それでは、今すぐ行こうか?」
司軒はうなずいた。しかし、皆が意見を一致させようとした時、趙成功は口をへの字に曲げて言った。「ちょっと待って。」
司軒は趙成功をにらみ、趙成功も一歩も引かずに司軒を見つめた。二人がまた言い争いになりそうなのを見て、李三祥が前に出て言った。「皆さん落ち着いて、落ち着いて。成功、君のチームにおける役割は疑いの余地がありません。君の意見を話してみてください。私達は必ず注意深く聞きます。」
趙成功は司軒をちらりと見た。司軒が怒り出そうとしたところ、言藝が彼の腕を掴んで軽く首を振った。
趙成功は言った。「今は人手が少なく、皆が持っていく荷物が多くなった。非戦闘員は荷物を持ち、戦闘員は武器を持って外部を警戒し、特別な状況に備えることで少し楽ができる。」
李三祥は手を叩いて言った。「よし、成功の言う通りだ。」李三祥は振り返り、謙虚な態度で尋ねた。「大男、君はどう思う?」
司軒は眉をひそめ、それから隊の中の女性たちを見やったが、彼女たちは皆黙っていた。司軒は仕方なくうなずき、趙成功の意見に同意を示した。
しかし、趙成功の顔に得意げな表情が浮かんでいるのを見て、司軒は強調した。「私は一昨日の夜のようなことを二度と起こさせない。」
これらすべてを見て、盧安はまた一つ学んだと感じた。
もし劉蘭というあのおばさんがまだいたら、男性から一方的に仕事を押し付けられた時、きっと口を出して嫌味を言っただろう。このような年配の女性は、裸で走り回り太鼓を叩いて曹操を罵った三国志の禰衡のように、直接的な強硬手段で対処するわけにはいかない。そうすれば自分の格を下げることになるからだ。女性の権益を積極的に主張する代表者である劉蘭がいなくなると、女性たちは比較的遠慮がちになり、反対を示さなかったため、その割り当てを黙認したのだ。反対勢力を一掃した後、隊内の任務割り当て規則はついに順調に改革された。
ふと盧安は数ヶ月前、劉蘭が李三祥を血祭りにあげた場面を思い出し、次に何の感情の兆しも読み取れない李三祥の顔を見て、心の中で思わず嘆いた。「天災は避け難く、人災は防ぎ難し。」
隊は再び出発し、皆はそのまま東へと進み続けた。
地面で枝が踏まれてカーサカーサと音を立て、いつの間にか叢林はとても静かになっていた。全員が警戒し、手にした木の槍を強く握りしめた。
盧安は弓矢を持ちパックパックを背負って隊列の中央を歩いていた。自分のパックパックの両側には水筒を入れるポケットがあり、矢がびっしりと差し込まれていた。盧安は息を潜め、頭の中で次々と予行演習を再生していた。
突然、盧安はパックパックの左側から一本の矢を引き抜き、素早く弓に番えて弦を限界まで引き絞り、矢を番えた親指で微妙に調整した。この0.3秒の間に、盧安は十二回の予行演習を行い、その中で合計十二本の矢を放った。十二回、機関銃のような予行演習は、ただの一矢で命中させるためだった!すべての風向きと力加減は計算不要で、軌道はすべて予行演習済みだった。
現実世界で、矢は弦を離れ、二十六メートル前方の茂みから悲鳴が上がった。体高二・五メートル、頭上に鶏冠を持つ肉食恐竜が猛然と飛び出してきた。
この肉食恐竜の体色は周囲の茂みと同化しており、しかも草むらに潜んでいたため、突き出した頭部は隣の裸子植物の枝とそっくりで、極めて発見しづらかった。盧安の予行演習では、それが飛び出すことになっていたため、盧安は「先手を打って恐竜を倒した」のだ。
鋭い木の矢が恐竜の眼窩に命中し、一行が投げ槍を手に反撃の構えを取った瞬間、盧安の手からもう一本の矢が放たれた。わずか〇・五秒も経たない間隔で、この矢は肉食恐竜のもう片方の目をも射抜いた。
恐竜が口を開けて悲鳴を上げているとき、盧安は三本目の矢を取り出した。三本目の矢は盧安が特注したもので、矢尻は粘土を焼いて作られ、矢柄の後部には植物性の接着剤で羽が尾翼として付けられていた。三本目の矢は肉食竜の口に命中し、喉管に二センチほど突き刺さり、この恐竜の動脈から大量出血させた。
十秒後、この肉食竜は倒れた。
司軒と李三祥は矢を引き抜くと、不思議そうに盧安をちらりと見た。羽を接着した三本目の矢を除けば、最初の二本の木の矢は空気抵抗の偏向作用により弧を描いて飛行していた。しかし、そんな曲線の軌道でも恐竜の眼窩に正確に命中したのだ。この技術はまさに神業と言える。
盧安は皆が自分を見ているのに気づき、すぐに説明した。「たった今気づいたんだが、草むらの中の目がみんなのすぐ近くにあって、警告を出すのが間に合わなかったんだ…」盧安は事前にシミュレーションして、大声で知らせようとするとこの肉食恐竜が先に飛び出してしまうとわかったため、弓を引くことにした。
自分の能力の一部を示してしまったが、盧安は今それをするべきだと考えた。盧安は、ある程度の威嚇を形成すべきだと思った。この混乱した隊の中で自衛するには、時には他の者に少し恐れを抱かせるべきだ。何しろ自分の年齢はあまりにも若いからだ。以前は皆の発言権は平等だったが、今では隊の権力は次第に集中し始め、数人の成人男性の発言権がどんどん大きくなっている。もしこのまま隊の中で無視され続けることを許せば、戦力として最も弱い男として、皆の暗黙の了解の下で、時には犠牲にされることもあり得るのだ。
安全とは言えない!盧安は、自分の置かれた状況が徐々に危険なものになりつつあることに気づいた。
その時、趙成功は矢じりに染み込んだ赤い血痕を見て、矢じりが眼窩に入った深さを推測し、思わず息を呑んだ。
李三祥は非常に親切に歩み寄り、その三本の矢を盧安に返すと、やや弾んだ声で言った。「なぜもっと早く言わなかったんだ?」
「以前はパチンコを遊んだことがありますが、弓矢に関しては最近になって慣れたばかりです。」実のところ、盧安はパチンコよりも銃の扱いのほうが慣れている。三戦の時、孟位は銃を携えてパトロールしていた。今これほど正確に射撃できることについて、盧安自身これはずるだと認めている。狙撃手の風速が弾道に与える影響を予測する能力でさえ、今の盧安の予演能力には到底及ばないのだ。
李三祥はうなずいて言った。「今は把握すればいい。夜、どんな矢じりが欲しいか、私達が作ってあげる。」
盧安もうなずいた。盧安は認めざるを得ない、司軒は正義感に満ちているが、陣営を選ぶなら、李三祥の側に立つのが実は最も適切な選択だ。
半時間後、皆はこの肉食竜の筋腱を引き抜き、四肢を外した後、前進を続けた。
この鶏冠を頭に戴いた肉食恐竜を狩ることで、盧安は再び自分に何かが加わったのを感じた。予演の時間がまたわずかに延び、受動発動の単一予演は1.1秒に増加し、主動発動の単一最長予演時間は3.3秒に増加した。受動発動状態を保つと、この加算は数ヶ月続く。
これまでも盧安は様々な小動物を殺してきたが、特に変化を感じたことはなかった。しかし今、食物連鎖の頂点に立つ生物を殺したことで、初めてこれほど顕著な増加を感じたのだ。
「食物連鎖の頂点の生物?」盧安は突然突っ込んだ。「まさか、この奇妙な能力は経験値まで要求するのか?」
盧安は自分が殺したのが一隻の三畳紀中国竜だとは知らなかった。食物連鎖から見ると、食物連鎖の頂点に立つ生物が死ぬと、その生物の縄張りでは、生物界の物質エネルギーの流れの終端が断ち切られる。この肉食竜の縄張りの匂いが消えないうちは、他の肉食竜がこの物質エネルギーの流れの空白を埋めることはない。一方、高次元から見ると、この時間線では本来予定されていた軌道の大量の粒子が短時間で激しく偏向している――アリ一匹を殺すことは自然界の物質エネルギー循環にとって大したことではないが、猛獣を殺せば、激しい偏向が生じるのだ。実際、自己進化の意志に従うすべての生命はバタフライ効果を引き起こし、すべての生物の生存は粒子の世界に対して絶えず過程を起こすのだ。
突然、短時間で手を下して生命をひとつ抹殺する、それが大改竄だ。誰が最も主要で最後の|改竄者《カ伊莎ンシャ》なのかは、盧安にとって非常に重要である。もし今、盧安が小惑星を引き寄せて数億の恐竜を滅ぼしたなら、盧安が間違いなくこの出来事の最後の|改竄者《カ伊莎ンシャ》となる。もし盧安が小惑星を引き寄せて二十一世紀の地球に衝突させようとしたが、結果として地球の核ミサイルによって軌道を逸らされたなら、主要で最後の|改竄者《カ伊莎ンシャ》は地球上で核ミサイルを発射した人間たちである。わかりやすく言うと、短期間(一分から二分以内、あるいは五分以内でも)、自分が主要因となって、広範囲のエネルギーと物質の変化に関わる食物連鎖の頂点に立つ生物を一匹殺すと、盧安の現在の時間能力は明らかに増幅される。この増幅は時間の経過とともに弱まり、二、三か月後に最終的に基底状態──一秒先の未来を見通し、十秒前の過去を見通す状態──に戻る。
殺戮の発動過程が長ければ長いほど、時間能力の増幅は小さくなる。殺戮の過程で、他の知的生命体の関与が多ければ多いほど、時間能力は小さくなる。例えば、歴史の流れを変える場合、発動時間が長く、何億人もの人々が関与するため、大きな増幅は期待できない。一方、個人の殺戮が多ければ多いほど、増幅は大きくなる。例えば、村の飲料水に毒を入れた場合、発動時間は数時間に及ぶが、その影響は毒を入れた者に由来するため、時間能力は大幅に増幅される。
今のところ、盧安は自分の時間能力についてほとんど知らず、まだ初歩的な模索段階にある。そして今、新たに生まれ変わった後の能力に直面して、盧安の態度は喜びではなく、憂慮である。




