0121 揺れ動く世界
盧華明は、盧穹が今回提出した報告書にざっと目を通した。
この最も自分に似た息子に対し、盧華明は愛情を顔に出すことはほとんどなく、厳格な父親という態度をとっている。実は、彼が最も気にかけているのはこの息子なのだ。
盧華明は報告書を脇に投げやり、「よくできている」と言った。
盧穹は非を認める態度で、「私……彼を呼び戻せませんでした」と言った。
盧華明は笑いながら、「お前は私の言っていることがわかっていない。弟として認めろと言ったわけじゃない、ただ彼の兄貴分になれと言ったんだ。どちらでも構わない」と言った。
盧穹は少し呆然とした後、盧華明を見た。意味を確認すると、盧穹はうなずいた。
盧華明が言いたいのは、血縁関係の面からすれば、盧安をさほど気にしなくてよいということだ。盧安は彼にとって利用できる駒、非常に重要な駒に過ぎない。名目上、盧安がこの血のつながりを認めさえすれば、盧華明は権力者争いの最中に非難される心配はない。
21世紀の人は宗族を理解していない。多くの場合、表向きの謙遜や孝行の下に、むき出しの利益共同体が存在する。互いに利用し合える時は表面だけは非常に親しいが、利用し合えなくなれば、族内の利益を盾に、大義名分で恥知らずなことを平気でやる。例えば、夫を亡くした寡婦の家から「物を借りる」と言って、「どうせお前に息子はいないのだから」と、物を甥っ子――つまり私の息子に使わせ、「族の中で必要な者に物を与えている」などと美名を掲げるのだ。
亲情がないわけではない。卢華明の盧穹に対する愛情は普通の家庭と同じ父愛だが、この父愛は簡単にコピー&ペーストーーで盧安に適用できるものではない。
宗族内の亲情には本当と偽物がある。本当のものは普通の家庭と同じで、偽物は年長者の名の下に他人の運命を決めることだ。田園宗族文化を鼓吹する行為の多くは、一割にも満たない本物の亲情で、九割以上の偽の亲情を代弁している。この行為は、毒薬に砂糖をまぶすようなものだ。この一見甘美に見えるものに、二十一世紀の地球人は騙されるかもしれないが、二十二世紀には宗族の本質がより鮮明になる。例えば南洋や、日本、韓国といったアジア文化の「伝(糟)統(粕)」を守る者たちが、宗族の実態を見事に演じきっている。これこそ、盧安が宗族に極端に反発する理由だ――家族の情もないのに、なぜ親戚のふりをするのか。
盧華明と盧穹が会っているちょうどその時、机の上の電話が着信音を鳴らした。盧華明は発信者表示を見て、眉をひそめた。
発信者は陳非だった。現在、この天數プロジェクトを始動させた老教授はグループ内で隅に追いやられている。それ以前、彼は多額の資金と設備を申請したが、肝心な時間系超能力者をずっと見つけられなかった。今では、龍、虎、玄鳥の三組織が密かにこのプロジェクトに疑問を抱き、既存の投入を留保し、これ以上追加する準備をしていない。
このような苦境に対して、陳非は当然たくさん電話をかけてコミュニケーションをとっている。これが盧華明が眉をひそめる理由だ――陳非からの電話があまりに多くて、少しうんざりするほどだ。
盧華明は陳非の電話をとり、穏やかな口調で尋ねた。「陳博士、今回はどうしたんですか。」
陳非は言った。「全球の検出システムが、たった今一度の明らかな時空震動を検出しました。」
盧華明は淡々と言った。「うん、成功に近づいたおめでとう、良い知らせを待ってるよ。」
陳非は急いで言った。「いや、今回検出されたのは、私のデータ統計によると、天數的なものではなく、持続時間が非常に短く一瞬だけでした。」
盧華明は何も言わなかった。陳非は盧華明が突然電話を切るのを恐れて、早口で続けた。「具体的な位置はアジアではなく、計算システムの推測によると、ヨーロッパのはずです。この現象はとても奇妙で、あなたに報告すべきだと思います。」
盧華明は少し考えたようで、言った。「わかった、仕事を続けてくれ。」
ヨーロッパのスペイン南部に、古代ギリシャ様式の神殿が建っている。空から見下ろすと、この建物はまるで童話の世界の聖地のように、周囲にはさまざまな貴重な花々が咲き乱れている。
三年前に建てられたため、この神殿には歳月の痕跡はない。神殿の中には、さまざまな最新の電子機器が設置されている。額にオリーブの葉の模様を刺青した人々が、ここで神殿の自動化システムを操作している。
神殿の高塔の中で、白い姿が、まるで白い睡蓮のように、数多くの書物の山の中に座っている。彼女は純粋な金髪の女性で、十六歳ほどの美しい顔立ちながら、非常に成熟しており、完璧なプロポーションを誇り、蓮根のようなふくらはぎが白いロングドレスから覗いている。その姿全体は、まるでアニメの中の完璧な存在のようであり、しかし現実にそのような存在がいるとは信じがたい。
この女性は赫拉と呼ばれている。完璧な女性の外見と、赫拉という呼び名は、この一角獣社の暗黒物質場から降臨した存在が全部で十二体であることを示している。
人間社会に存在する神々は、この世界への降誕を自ら名付けることで、神としての姿でよりよく人類と向き合うことができる。
皇帝という言葉は、秦の始皇帝が発明したものである。これは彼が天下を打ち立て、天下を所有し、全国を統一した後、自ら君主として新たに名付けたものである。そして後世の君王は皆この称号を用い、自らが天下を所有することの正当性を示した。
地球の原子物理世界に対して、暗黒物質世界の物理法則は全く異なり、生命の形態も異なる。そのため、暗黒物質生命は原子分子物質体系の形態で地球上に現れることができない。この世界によりよく存在するために、彼らは人間が神と考えるイメージに従って出現した。
もちろん、これらのいわゆる神々がギリシャの神々と実際に関連しているのかどうかは、人間には知る由もない。神の名において行動しながら、自らが偽りの神であることを認めるはずがないだろう。
赫拉は大量の書籍を調べ終えると、本を脇に置き、華麗なロングドレスをひらりと持ち上げて優雅に立ち上がった。床に散乱していた本はすぐに自動的に両側の本棚へと飛んでいき、あっという間に整然とした状態に戻った。
「この世界の質量はこんなに安定していて、ほとんどエネルギーに変換できないとは……」赫拉は空を見て、突然笑顔を浮かべた。「つまり、ここで物質で構成された大陸は空間に漂う塊ではなく、光の波が陸地を打ち砕いて粉々にし、虚無にする心配もない。光と熱を放つエネルギー源は、恒星と呼ばれる球形の巨大な質量体を形成し、大陸の集合体(惑星)を周期的に回転させ、周期的に広大な光の雲に変形させるのではなく引き寄せているのだ……」
赫拉は顔を上げ、空の太陽を見つめた。「これは価値のある世界だ。」
赫拉は振り返り、真っ白な長いスカートが揺れた。彼女は黄金比の長い脚で階段を下りていった。獨角社の皆の敬礼に直面しながら、魅惑的な笑顔を見せた。
赫拉は言った。「他の神が降臨したのを感じる。」
眼鏡をかけた神官が電子機器を持って赫拉の前にやって来た。彼は機器を起動して言った。「我が神に報告します。金羊社から連絡があり、奧丁が既に降臨したとのことです。」(ギリシャ神話体系と北欧神話体系は別系統です)
「ほう?では東方の無信者たちはどう反応している?」
この信徒は言った。「彼らは引き続き神眷者をヨーロッパに派遣し巡察を行わせるでしょう。彼らはすでにあなたの存在に気づいているようです。」
「神眷?ふむ、わかった。それから、無信者たちは神眷を受ける資格などない。あの者たちは火を盗んだ者たちであり、神の許しなく勝手に力を得た者たちだ。いずれ後悔するだろう。」
この世界は、すでに不安定な兆候を見せている。超能力者というここ数十年で現れた集団は、この世界で何千年もかけて人類が平和的な発展と戦争の代償を通じて築き上げてきた社会秩序に非常に適合しない。超能力者が引き続き出現するにつれて、超能力者と社会制度の不適合は、最終的には全人類社会への挑戦へと発展するだろう。
八月はあっという間に過ぎ、秋になった。
蛇部本部内で、島田博士は地面にへたり込んでいた。彼の背中はすでに赤く染まっており、必死に立ち上がろうとしていた。
突然、彼の前に閃光が走り、淺空明子が現れた。島田の顔に恐慌が浮かび、指がこっそりと実験室の鍵を握りしめる。しかし、彼は淺空の顔に皮肉な笑みを見た。直後、激しい痛みが伝わり、鍵を持っていた手が消えたのを感じ、切断面から激痛が走った。
島田が悲鳴を上げる直前、淺空は下着で彼の口を塞いだ。淺空は手のひらを差し伸べ、島田の頬からあごまでそっと撫でながら、幽かに言った。「私の能力を忘れたのか?まさか、まだ私の前で何かを隠そうというのか?」
島田の恐怖の目を見つめながら、淺空は突然、まるで桜が満開のキャンパスでそれを見る少女のように笑い出した。彼女は誕生日プレゼントをもらった嬉しそうな少女のように言った。「知ってる?このチャンスをずっと待ってたんだよ。ここには監視カメラが一台もないし、外部のカメラは、君が自分で入ってきたことを示している。少ししたら、この装置の三つの回路はショートと老朽化で制御を失い、焼け落ちるわ。」
淺空は血の海の中の切断された手から鍵を拾い上げ、島田の前で揺らしながら言った。「あんたの唯一の鍵、うっかり手を滑らせて、取れない隅っこに落ちちゃうんだよ。」そう言い終えると、明子はそっとそれを放り投げ、鍵はこの密室の壊れた床の中へと落ちていった。
その床下には大量の配線があった。鍵が落ちると、激しい電気火花が散り、明らかに鍵がショートを起こした。刺激臭のある焦げた煙が床の裂け目から噴き出し、密室全体に充満した。
ドンドンドン……その時、密室の外から鉄の棒で叩く音と、外の研究者の叫び声が聞こえた。「博士!博士、中にいるんですか?!
淺空は島田の顔に浮かんだ希望を見つめ、笑いながら言った。「彼らは入れないよ……」明子の笑顔は簡単に島田の希望を打ち消した。
淺空明子の超能力は時空の二重系統に属する。以前の日々、淺空は非常におとなしく振る舞っていたが、誰も思いがけないことに、この油断した瞬間に、淺空は自分のアリバイを証明でき、かつ島田を殺せるチャンスを掴んだ。
淺空は島田の耳元でささやいた。「これは事故だ……」彼女は空間跳躍を使い、ここから姿を消した。
密室の中では、大量の配線がショートし、噴き出した火花が積み重なった雑多な物に燃え移り、密室の煙はたちまち濃くなった。島田は激しく咳き込みながら、苦しみながら永く死んでいった。大火は燃え広がり、島田の遺体は炭化した。




