0112 生物法則
遠慮のない悪が爆発した後、今度は溢れる善がもたらす影響が出ている。言うまでもなく、盧安の性格はこの世界での一つ一つの言動によって築かれた習慣とともに変わり始め、さまざまな好みもわずかに変わってきている。
最も顕著なのは血腥に対する態度だ。長い間、殺戮を自戒してきた結果、今の盧安は血腥に対する拒否感が次第に大きくなっている。肉が裂け血が外に飛び出す様子は、第三次世界大戦で仲間が次々と自分から離れていった記憶を盧安に思い起こさせやすい。それを思えば、盧安がジュラシック・ワールドに着いたばかりの頃は、予行演習で自分の敵になりうる者すべてをためらわずに一度は殺していた。あの頃の盧安は戦争から抜け出したばかりで、極度に安全感を欠いていたからこそ、そのような行動をとったのだ。そして今、この平和な世界が盧安を安心させ、血腥に対して心からの嫌悪を抱くようになっている。もし自分が必ずしもやらなければならないのでなければ、盧安の予演ではもはや数年前のように血腥いことを生み出してはいなかった。
だから盧安のある予演では、盧安自身は淺空を帰らせることで、巨大な殺傷の結果を引き起こす可能性があることに少し違和感を覚えていた。もちろん、その違和感は盧安の理性判断には影響を与えず、それはさまざまな葛藤する感情の中の一つに過ぎなかった。そして今、盧安が予演に投じている感情はもっと多くが占有欲であり、何しろ大胆な考えを実行する対象をちょうど逃がしたばかりで、多くの予演の中の自分はかなり悔やんでいる。
空を見上げながら、盧安は首を振って言った。「力は手に入れやすいが、しかし、どの方向が正しいのだろうか?」
庶民が無知で無力な時、大部分の人々は汚職官僚を痛烈に罵り、自らの正義を示そうとする。しかし、誰もが権力と美色の前にあって初心を保てるならば、これほど多くの汚職官僚が存在するはずもなく、監督や制度はそもそも必要ないだろう。
盧安の成り立ちは、このような人間の弱さを何千倍にも拡大したものだ。結局、一秒間に何千も存在する予演には自己制約がない。何の機会もない時は、自分の理性がのんびりと自己を律することができるが、いざ実行可能な選択肢を目の前に突きつけられると、理性は潮のように押し寄せる衝動に襲われるのだ。
突然、盧安ははっとした。何か予期せぬ激変が始まったのだ。
それと同時に、数キロメートル離れた場所で、落ち着き先を探していた淺空はその足を止め、まるで彫像のように街の中に立ち尽くしていた。彼女の未来の眼に映るのは、ただの空白だった。
盧安の時間能力は予演と遡行に分かれており、これは一つの能力の二つの部分であり、生命の新陳代謝のようなものです。生命活動はエネルギーを消費し、またエネルギーを吸収して獲得し、生命がエネルギーを得るのは、時には狩猟によるものです。
盧安の能力の成長は人を殺すことによって成り立っており、正確には、人間が作り出せる可能性を排除することで、時間の軌跡を見るための未知のエネルギーを獲得し、それによってこの能力の総量を向上させます。つい先ほど、この惑星の空間と時間において、盧安と淺空は一度の接触を完了しました。この過程は、盧安が淺空の複数回の未来を見る目の考えを完全に扼殺し、可能性を終結させたものです。
普通の人は一つのタイムラインしかなく、一つのタイムライン上の可能性しか扼殺できません。しかし、淺空のような存在は複数のタイムライン上で、自分のやりたい可能性を持っていますが、すべて盧安の予演の中で死によって彼女に何もさせないように強制されました。彼女のすべての行動可能性はなくなり、盧安の選択を待つのみです。
今、自分自身を物質の中心とした遡行の中で、盧安ははっきりと百八十六の点を感じ取っていた。それは時間の点であり、盧安はそれらが遠ざかっていくのを明瞭に感じることができた。時間は少しずつ失われていくが、それらの点はまるで骨身に刻まれた記憶の結節点のように、時間の経過によってぼやけることはなかった。
盧安は跳躍するように一つの点を選び、時間が静止したかのような光景を目にした。その光景は、ある予行演習で淺空が殺された後の場面だった。盧安は、その時の自分が猿のお面をつけて高台に立っているのを見た。一方、淺空の周囲では致命的な陥没が起こり、舞い上がった瓦礫が空中に浮遊し、鉄筋が折れる瞬間の火花が静止して瞬いていた。この静止した光景は、まるで永遠の灯火のように輝いて見えた。
この空間の観察状態にある盧安は、自分に形体がなく、視点だけがあることに気づいた。視点は空間のあらゆる隅々にまで大きく引き伸ばすことができる。コンテナの角、拳ひとつ分の大きさしかない下水道、歯ぎしりするネズミ……この空間のすべてがはっきりと見える。
しかしすぐに、盧安はこの空間が無限ではないことに気づく。半径はわずか七百メートルだ。七百メートルの外は果てしない闇で、しかもゆっくりと収縮している。盧安はこの空間に二十分間滞在し、縁のあたりの一粒の小さな砂がすでに消え、光の壁のような縁に飲み込まれたのを見つけた。空間全体の中心は淺空で、この空間は彼女の最後の瞬間の世界のようだ。
遡ると、百八十六個の点をはっきりと感じ取ることができる。それは、淺空の感覚の中で、盧安が淺空に百八十六個の最後の瞬間を作り出したことを意味している。
他の人とは違って、盧安が他の人を殺した場合、現実の時間軸から消えてしまう。しかし、盧安が彼女を殺したのは、ただ彼女の現実時間軸上の186回の可能性を消したにすぎない。そして彼女はまだ現実に存在しており、その結果を背負うしかない。
現実では、盧安は車を止め、自分の携帯電話を手に取り時間を確認し、「瞬時のものだ」と独り言を言った。
瞬時とは、盧安があの静止した空間で何を考えていても、現実に戻っても時間が一切経過しないことを指す。その空間は、現実を完璧に逃避できる避難所のようなものだ。
「逃避は良いことではない」と、その後、盧安は再び遡行を発動し、ある時点に見当をつけたが、そこに入ることなく、むしろ忘れ去ることを選んだ。
そして盧安がその刹那の瞬間を完全に忘れ去る中、数キロ離れた淺空は急に瞳孔が開いた。彼女の未来を見る力は、まるで根底から力が抜かれたかのようだった。それまでは三秒に一度未来視を発動できていたが、つい先ほどからは数十秒に一度しか発動できなくなってしまった——盧安に能力の総量の一部を吸い取られたのだ。
変化の刹那、淺空は自分の魂から大量の記憶が抜き取られたように感じ、そこに込められた感情も含まれていた。その感情とは、時間実験で繰り返し積み重ねた憎しみであり、時空能力を得た後の発散的な殺戮の快感であり、さらには家族が脅かされた怒りでもあった……それらの感情は一瞬で遠くに感じられ、ずいぶん長い時間が経ったかのように、すべてが薄れていった。
感情が薄れるにつれて、記憶が崩れ始め、一寸一寸の記憶が朽ちた木材のように崩れ、虚無に変わる。
通常の人間にもこの過程がある。幼い頃の喜び、悲しみ、傲慢さ……これらが思い出に変わった後、まとわりつく感情が強いほど忘れがたくなる。通常の人ではこの忘れる過程に数年、十数年かかることが多いが、淺空では今は刹那だ。これが魂が吸い取られる感覚だ。過去の情報は遮断され、未来の情報は隠される。
断ち切ることは、過去が恣意的に改変され、未来が覆い隠されることを表しており、未来を見通す力がなくなることを意味している。本質的には、時間次元を横断するある種のエネルギーが抜き取られたのだ。高次元においてのみ未来と過去を見ることができ、位相面では粒子の生成消滅の震えからその痕跡を察知できるに過ぎない。光が金箔を透過するように、エネルギーの大部分は金箔を抜け去り、金箔にはレーザーのごく一部が通過した痕跡しか認められないのだ。
淺空の未来の眼は非常に弱まった。過去の記憶は保持する力を失い、熱湯の中の氷のように急速に融解し、無秩序な力へと変わった。
一方、盧安は、能動的な予演の持続時間が十二秒増加し、三十二秒に達した。
これはただ、遡行の中の一点を消し去っただけだ。盧安の遡行にはまだ185の点が存在している。それらの点々は盧安にある事実を暗示しているかのようだ。
「弱肉強食……」十人の同行異思の盧安が呟いた。
淺空は実験に参加する前の二年前は、陽気で明るかった。実験に参加した後、彼女は血なまぐさく暴虐的になった。蛇部に脅迫されたり甘言で誘われたりして服従させられた時、彼女は陰鬱になった。そして今、さっきの激変を経て、彼女はどこか三無になり、自分がどこへ行くのかも、自分が何をしたいのかもわからなくなった。長い黒髪が両肩に垂れ、細い両足が無意識に歩を進める。周りの通りすがりの人々は多かれ少なかれ違和感を覚え、一目見てから慌てて避け、彼女に道を開けた。
突然、誰かが彼女の手を引いて連れて行った。彼女はぼんやりとどれだけ歩いたか分からず、喧嘩が起きていた。
「まだやるか?」劉宇は口元を歪め、目の前で目を擦っている数人の刺青男を見た。このチンピラたちは幽霊でも見たような目で劉宇を見ている。四級超能力者の劉宇は街灯の光を捻じ曲げ、この不良青年たちを一時的に失明させ、その後に拳での挨拶をした。
この数人のろくでなしを追い払った後、劉宇は傍らで虚ろな目をした少女を見て、少し困ったように頭を掻きながら尋ねた。「そこの学生、どこの学校?夜の街はとても危険だ。幸運にも私に出会ったから良かったものの、さもなければ大変なことになっていたよ。」
淺空が顔を上げ、同時に指を持ち上げた。彼女の指先からシュッと音がし、鋭い棘が現れた。淺空は無表情に言った。「危険はない。」シュッと、金属の棘が彼女の指先から消えた。「でも、やはりありがとう。」
「これは空間系?」劉宇は目を見開き、驚いて尋ねた。「どうしたんだ、何か嫌なことでもあったのか?」
「ピピピ」……その時、劉宇の腰の通信機が鳴り、劉宇は慌てて通信を繋いだ。通信機から夏星瑞の叱責が聞こえた。「劉宇、お前どこにいる?二十分以内に這って来い!」
「こちらで少し状況があって……」
夏星瑞が遮って言った。「お前の言うトラブルとは、道に迷った後輩の女子学生を家まで送ることか?そんな下手な言い訳は聞きたくない!」
“すぐ行く、ここは電波が悪い。”彼はすぐに電話を切り、ほっと一息つくと、淺空に言った。“まだ用事があるんだ。もう遅いから、道端をぶらついちゃだめだ。”劉宇はポケットから財布を取り出し、札束を取り出して淺空の手に握らせて言った。“車で帰れ。”




