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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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航路へ11-個紋

 前回まで:アカは、くノ一達にも剣を作りました。


 夜明け前――


夢現(ゆめうつつ)の中、アオは声を聞いた。


【無理に開けてはいけない……】


【まだ……その時ではないんだ】


【時が来れば、力も、記憶も、戻すから】


【待っていて欲しい……】


【アオ……心配要らないから……】


 ……ヒスイ?


アオは目を開けた。


淡い緑の光が消えようとしていた。


(待って! ヒスイ!)バッと、上体を起こす。


アオは、自分の体が淡い緑の光で包まれている事に気付いた。


【すまない……今は……】


【いずれ、全て話すから……】


(ヒスイ!!)光に向かって手を伸ばす。


光は消えた……




 フジは気配を感じて、目を覚まし、アオの様子を窺っていたが、光は見えていなかった。


 また、ヒスイ様でしょうか……?


アオに聞いてみるべきか、眠っている振りを続けるか、悩んでいたが、薄明かりでも、はっきり判る、アオの苦悩の表情に耐えきれなくなり、フジは意を決し、ゆっくり上体を起こした。


「兄様……」


「あ……起こしてしまって、すまない」


「いえ……ヒスイ様……ですか?」


アオがハッとする。

「……フジも……ヒスイを知っているのかい?」


「私は……お話した事は ありませんが……」


「皆、知っているのかい?」


「…………わかりません……」


「そうか……

ヒスイとは、一体 誰なんだろう?」


「それは――」


【ダメ!】


 えっ!?


【言わ……な、いでっ! ぉ願、い……フ、ジ……】


 !? 私の名を……


(もしかして……ヒスイ様ですか?)


【そぅ……だ、よ。

私は……い……つも、皆……共……に……ぃる】


途切れ途切れの必死な声が続いている。


【ま……だ……ァオに、は……話……なぃ……で】


 ヒスイ様は私達と共にいらっしゃる……

 では、卵の時から、今もずっと……


 でも、アオ兄様には、まだ、

 伝えてはならないのですね……


【……お、願ぃ……】


(……解りました)


【す、ま……なぃ……】


 あ……私が知っているという事、それが

 伝えられない事なのでしょうか……

 ともかく、言ってはならないのですね。


【時……来る、ま……で……待って……】


 いずれ、話せる時が来るのですね。


(はい。ヒスイ様)


【ぁりが、とぅ……フジ……】


「――誰なのか、私も知りません」


「そう……

俺の記憶が無いせいでは、ないんだね?」


「ええ」


 翁亀様から伺うまでは、

 私も知りませんでした。


 ただ……気配だけは、ずっと……

 そう、卵の中に居た時から、ずっと、

 傍で見守ってくださっていた。


 ――そう、先程の気配で確信しました。


「兄様、ヒスイ様は何と?」


「時が来れば、力も、記憶も、戻す。

そして、全て話す、と……」


「……待つしかないのですね……」



「これまで……

力や記憶が、封印を破って出ようとする度、何者かに依って、その蓋を押さえつけられているような気がしていたんだ。

それは……ヒスイが『まだ待て!』と、塞いでいたんだろうな……

『時』は……いつ来るんだろう……」


「兄様……」アオの背を抱きしめた。



 窓の外が、ゆっくり明るくなっていく――



「待つしかないのなら……

自分の力が使えないのなら……

今の俺に出来るのは、剣の力を借りて戦う事だけだよな」


アオが顔を上げた。

三眼と蒼牙が、やわらかく光る。


「ありがとう、三眼、蒼牙」


肩の上のフジの手に手を重ねる。

「ありがとう、フジ」




♯♯ 天界 ♯♯


 長老の山の書庫では――


「四眼らしき情報、そこそこ有ったのに、最近、また途絶えているな……」


「そうだな……

五千年程前から、急にらしき情報が増えたと思ったら、ここ六百年程、パッタリだな」


「六百年前に何が有ったのか……だな」


「もう一度、その辺りを読み直すとするか……」


「そうだな」


シロとムラサキは再び読み始めた。




「モモ様、この言葉は――名詞ですが、何を意味しているのでしょう?」

ウェイミンが本を見ながら書き出す。


「こちらの言葉は……このように変遷しているようです。もうひとつは、こう……」

次第に新しいものへと、単語を書いていく。


「あ、やっと判りました」にっこり


「ひとつは『個紋』と表現されていますが、これの事ね」

左腕、肩の辺りを指す。


そこには、ウェイミンが初めて見る、古代の装飾文字のような紋様が有った。

「これは……?」


「『個紋』『竜紋』『王紋』などと呼ばれているけれど……

初代天竜王シルバコバルトの血を継ぐ者だけに、生まれた時から、ここにあるの。

一人一人、形が異なるから『個紋』」


ウェイミンは、シロとムラサキの左腕を見た。

「なるほど」


「もうひとつは『守護珠』。

竜が卵から生まれる時に、その手に持って出てくる珠なの。

王族は、各自の笏杖に付けているわ」


「ありがとうございます。

良かった……入手困難な物でなくて」


「それが必要なの?」


「まだ、詳しくは解っていませんが、不可欠である事だけは確かです」


「シロさん、聞こえましたか?

やはり、亀さんの言う通り、守護珠が必要そうですよ」


「わかったわぃ」ため息「城に行ってくる」


「もう少し、読み解いてからの方が、よろしくありませんか?」


「今なら、コハクもギンも玉座には居らんからの。

とりあえず、持ち出せるかどうか、やってみるわぃ」


そう言って、シロは出掛けた。


「……入手困難……なのですか?」


「ある場所は判っているのですよ。

ただ……今は……ね」困り顔で微笑んだ。





凜「アオと話しても大丈夫なの?」


翡【抉じ開けられるよりは……】


凜「でも、アオは無意識なんでしょ?

  戦いたい、竜に戻りたい、飛びたい

  そんな事を思う度に、なんでしょ?」


翡【そうですが、まだ開いてはいけないと

  知るだけで抑制されると思うから】


凜「ふぅん。サクラは?」


翡【眠ってるよ。知ってるよね?】


凜「ふわふわしたトコって?」


翡【異空間。サクラの回復には良い所】


凜「私の肩凝りも治るかなぁ……」


翡【それは知らない】


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