航路へ10-アカ
姫、アオ、それは人命救助だからね。
それと、三眼には酸素ボンベの機能は有りません。
深夜、人知れず、アカは船を訪れた。
物見をしていた睦月に、
「くノ一を集めろ」
とだけ言い、甲板に降り立った。
睦月はカラクリ竜に物見をさせ、皆を部屋に集めた。
アカは、持って来た箱の蓋を開けた。
そこには、十二本の剣が並んでいた。
「各々に合わせた剣を作った。
忍として、姫に付き従っておりながら、戦えぬ歯痒さが辛そうだったからな。
だが、これは、あくまで護身用だ。
この戦は、天界と魔界の戦。
これ以上、人を巻き込みたくは無い。
決して、自ら望んで戦場に赴かないと誓うことが出来ねば、渡す事は出来ん。
どうだ?」
低い静かな声で淡々と語った。
「有り難うございまする。
私共の力では、到底、太刀打ち出来ぬ事は、重々承知致しておりまする。
決して、皆様の邪魔にならぬよう、心得ます故」
睦月が答え、頭を下げた。
続いて、皆、平伏する。
アカは立ち上がり、扉に向かった。
くノ一達に背を向けたまま、
「命は大事にしろ」
低い声に優しさを含ませて言い、出て行った。
♯♯♯
アカが甲板に出ると、姫が立っていた。
「アカ殿、くノ一達にまで、誠に忝ない」
丁寧に礼をする。
アカは片手を上げ、どうという事は無い、と示し、去ろうとした。
「お待ちくだされ!」
立ち止まる。
「先日、頂いた剣、ワラワでも、あのような事が出来るのであれば、もっと術に長けた者ならば、より強大な力を発揮出来るのではないのじゃろぅか?
ワラワには、過ぎた剣では――」
背を向けたまま、姫の言葉を手で制した。
「見立て違いだと?」振り向き、睨む。
「い、いや……そぅでは無く……」
「解っている」フッと笑う。
「あれは、姫の力を見、姫の為に作った物だ」
「ワラワのため……?
ワラワの力で、あのような事が出来たと……?」
「そうだ」竜になる。
「ワラワが鍛練すれば、もっと強くなるのか?」
「当然だ。だが、無茶はするな」宙に浮く。
浮いたまま思案し、「……朱鳳」呟いた。
「アケミトリ……剣の名か?」
アカは頷き、飛んで行った。
♯♯♯
姫は、くノ一達の部屋に行った。
皆、手に手に己が剣を持ち、嬉しそうに見せ合っていた。
「自分の剣が、どれなのか判るのか?」
「はい。名が刻まれております故」
氷月が剣を抱きしめ、涙を流している。
「如何したのじゃ!?」
「感激致しまして……申し訳ございません」
氷月は剣を少し抜き出し、姫に見せた。
「ちゃんと『氷月』と……」また涙する。
「それが如何したのじゃ?」ぱちくり
「『師走』でない事が嬉しかったのでしょう」
代わりに睦月が答え、微笑んだ。
「あ……然様か……」アカ殿、いつの間に……
剣の鞘と柄には、一本一本、色の違う輝石が埋め込まれ、一度 覚えてしまえば、誰の物なのか直ぐに判るようになっていた。
いずれの剣も、忍の剣という事で、朱鳳のような煌びやかさは無いものの、
落ち着いた色合いの繊細な装飾が施されており、輝石との調和も取れた美しい逸品であった。
「ワラワも頂いた剣に負けぬよう鍛練する!
皆、ついて来てくれるか?」
「はいっ!」
剣達が喜んでいるかのように、温かく光ったような気がした。
♯♯♯♯♯♯
工房からアカが出掛けた後、窓の無い暗い部屋で眠っているサクラに、淡く優しい緑の光が寄り添った。
(ヒスイ、大丈夫だよ。俺、頑張るから)
【私の力が及ばないばかりに……】
(アオ兄が強すぎるだけだよ)
【ありがとう。サクラ】
(アオ兄、落ち着いたね)
【うん。眠ったからね。
サクラは、回復に集中してね】
(ふわふわしたトコに連れてかないんだね)
【うん。ここは居心地が良いからね。
それに、あの鏡が有るから、回復には最適だよ】
(ふぅん……
恍恒鏡って、そんな力も有るんだ)
【そうみたい。だから、ここでいいんだ】
(うん♪
でも俺、ふわふわしたトコも好きだよ♪
いつでも連れてってね♪)
【わかったよ。次は、そっちに行こうね】
(うんっ♪)
淡い緑の光がサクラの頭を撫でる。
【アオは、竜宝の力を使う事を覚えたね。
まだ、制御しきれていないけど、すぐに慣れそうだよ。
抉じ開けずに、それで戦ってくれれば、時間を稼ぐ事が出来るかもしれない。
サクラも少しは楽になるよ】
(アオ兄を護れるなら何でもいいんだ♪
俺が苦しくっても、どーでも♪)
【サクラ……】
(あ、でも、ヒスイいないと、なんにもできないけどねっ)
【元々は私の為なのに……】
(でも、俺、とっても幸せ♪
兄貴達も、みんな、幸せ♪
みんな一緒だから♪
みんな、七人兄弟で良かったって思ってる)
(んと~
ヒスイに、どんな理由があっても、理由なんてなくても、ホントに 、どーでも♪
俺達は、今、幸せなんだ♪)
【そう……ありがとう、サクラ】
(ありがと♪ ヒスイ♪)
(あ! 俺、また、あの光の球、出せるかなぁ?)
【出せるようにしておこうか?
そのくらいなら、今の私なら出来るよ】
(うん♪ お願い♪
ちゃんと使えるの、わかったから~♪
ヒスイいない時も出せるよぉにねっ♪)
【あれはサクラの天性と属性だから、アオには影響しないんだ。
まさか、本当に魔人を救えるなんて、驚いたよ】
(ヒスイが読んだ古い本、俺も読みた~い)
【神界からは出せないんだ】
(そっか~ ザンネンッ)
ヒスイの光がサクラを包み込んだ。
【出す度に、眠らずにすむようにしたよ】
(ありがと♪ ヒスイ♪
少しくらいは役に立たないと、
また、洞窟から出るな、って言われちゃう~♪)
【サクラも苦労するね】ヒスイが笑う。
(だね~♪)きゃははっ♪
(あ♪ キン兄とハク兄、帰ってきた♪)
【久しぶりに、キンとハクの中の欠片を確かめておこうかな】
(アカ兄の欠片は見なくていいの?)
【ここには、よく来ているから……】
(来てるの!?)
【ここは居心地が良いんだ】
(アカ兄、いいな~
俺も、ヒスイに そぉ言ってもらえるよぉに、
がんばらなきゃね。
アカ兄の気って、落ち着くよね~
おっきくて~、優しくて~
とっても、あったかで、包んでくれるよね~)
【うん。だから、ここが好きなんだ】
(ヒスイ、アカ兄とも話すの?)
【話さないけど……アカは私に気付いているよ】
(そぉなんだ~♪
あ、キン兄とハク兄の見たら戻って来る?)
【いや……アオの中に戻らないと……】
(あ……そぉだね~)
【サクラは、ゆっくり寝て……】
(うん♪ ヒスイ、また後でねっ♪)
【うん、後でね】
ヒスイは壁に掛けてある恍恒鏡を見た。
そこには翡翠色に光る竜が映っていた。
凜「あの、朱鳳って――」
赤「朱牙と鳳雅の欠片から作った」
凜「二つのガ剣からかぁ。
じゃあ、凄い剣なのね?」
赤「どうだかな。作ったのが俺だからな」
凜「だったら、確かでしょ」
赤「ふん……」
凜「顔、赤いよ?」
アカはチラッと睨んで、暗室に籠った。




