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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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航路へ10-アカ

 姫、アオ、それは人命救助だからね。

それと、三眼には酸素ボンベの機能は有りません。


 深夜、人知れず、アカは船を訪れた。


物見をしていた睦月に、

「くノ一を集めろ」

とだけ言い、甲板に降り立った。


睦月はカラクリ竜に物見をさせ、皆を部屋に集めた。


アカは、持って来た箱の蓋を開けた。

そこには、十二本の剣が並んでいた。


「各々に合わせた剣を作った。

忍として、姫に付き従っておりながら、戦えぬ歯痒さが辛そうだったからな。


だが、これは、あくまで護身用だ。


この戦は、天界と魔界の戦。

これ以上、人を巻き込みたくは無い。

決して、自ら望んで戦場に赴かないと誓うことが出来ねば、渡す事は出来ん。

どうだ?」

低い静かな声で淡々と語った。


「有り難うございまする。

私共の力では、到底、太刀打ち出来ぬ事は、重々承知致しておりまする。

決して、皆様の邪魔にならぬよう、心得ます故」


睦月が答え、頭を下げた。

続いて、皆、平伏する。


アカは立ち上がり、扉に向かった。

くノ一達に背を向けたまま、

「命は大事にしろ」

低い声に優しさを含ませて言い、出て行った。



♯♯♯



 アカが甲板に出ると、姫が立っていた。


「アカ殿、くノ一達にまで、誠に忝ない」

丁寧に礼をする。


アカは片手を上げ、どうという事は無い、と示し、去ろうとした。


「お待ちくだされ!」


立ち止まる。


「先日、頂いた剣、ワラワでも、あのような事が出来るのであれば、もっと術に長けた者ならば、より強大な力を発揮出来るのではないのじゃろぅか?

ワラワには、過ぎた剣では――」


背を向けたまま、姫の言葉を手で制した。


「見立て違いだと?」振り向き、睨む。


「い、いや……そぅでは無く……」


「解っている」フッと笑う。

「あれは、姫の力を見、姫の為に作った物だ」


「ワラワのため……?

ワラワの力で、あのような事が出来たと……?」


「そうだ」竜になる。


「ワラワが鍛練すれば、もっと強くなるのか?」


「当然だ。だが、無茶はするな」宙に浮く。


浮いたまま思案し、「……朱鳳」呟いた。


「アケミトリ……剣の名か?」


アカは頷き、飛んで行った。



♯♯♯



 姫は、くノ一達の部屋に行った。

皆、手に手に己が剣を持ち、嬉しそうに見せ合っていた。


「自分の剣が、どれなのか判るのか?」


「はい。名が刻まれております故」


氷月が剣を抱きしめ、涙を流している。


「如何したのじゃ!?」


「感激致しまして……申し訳ございません」


氷月は剣を少し抜き出し、姫に見せた。

「ちゃんと『氷月』と……」また涙する。


「それが如何したのじゃ?」ぱちくり


「『師走』でない事が嬉しかったのでしょう」

代わりに睦月が答え、微笑んだ。


「あ……然様か……」アカ殿、いつの間に……


 剣の鞘と柄には、一本一本、色の違う輝石が埋め込まれ、一度 覚えてしまえば、誰の物なのか直ぐに判るようになっていた。

いずれの剣も、忍の剣という事で、朱鳳(アケミトリ)のような煌びやかさは無いものの、

落ち着いた色合いの繊細な装飾が施されており、輝石との調和も取れた美しい逸品であった。


「ワラワも頂いた剣に負けぬよう鍛練する!

皆、ついて来てくれるか?」


「はいっ!」


剣達が喜んでいるかのように、温かく光ったような気がした。



♯♯♯♯♯♯



 工房からアカが出掛けた後、窓の無い暗い部屋で眠っているサクラに、淡く優しい緑の光が寄り添った。


(ヒスイ、大丈夫だよ。俺、頑張るから)


【私の力が及ばないばかりに……】


(アオ兄が強すぎるだけだよ)


【ありがとう。サクラ】


(アオ兄、落ち着いたね)


【うん。眠ったからね。

サクラは、回復に集中してね】


(ふわふわしたトコに連れてかないんだね)


【うん。ここは居心地が良いからね。

それに、あの鏡が有るから、回復には最適だよ】


(ふぅん……

恍恒鏡(コウゴウキョウ)って、そんな力も有るんだ)


【そうみたい。だから、ここでいいんだ】


(うん♪

でも俺、ふわふわしたトコも好きだよ♪

いつでも連れてってね♪)


【わかったよ。次は、そっちに行こうね】


(うんっ♪)


淡い緑の光がサクラの頭を撫でる。


【アオは、竜宝の力を使う事を覚えたね。

まだ、制御しきれていないけど、すぐに慣れそうだよ。

抉じ開けずに、それで戦ってくれれば、時間を稼ぐ事が出来るかもしれない。

サクラも少しは楽になるよ】


(アオ兄を護れるなら何でもいいんだ♪

俺が苦しくっても、どーでも♪)


【サクラ……】


(あ、でも、ヒスイいないと、なんにもできないけどねっ)


【元々は私の為なのに……】


(でも、俺、とっても幸せ♪

兄貴達も、みんな、幸せ♪

みんな一緒だから♪

みんな、七人兄弟で良かったって思ってる)


(んと~

ヒスイに、どんな理由があっても、理由なんてなくても、ホントに 、どーでも♪

俺達は、今、幸せなんだ♪)


【そう……ありがとう、サクラ】


(ありがと♪ ヒスイ♪)


(あ! 俺、また、あの光の球、出せるかなぁ?)


【出せるようにしておこうか?

そのくらいなら、今の私なら出来るよ】


(うん♪ お願い♪

ちゃんと使えるの、わかったから~♪

ヒスイいない時も出せるよぉにねっ♪)


【あれはサクラの天性と属性だから、アオには影響しないんだ。

まさか、本当に魔人を救えるなんて、驚いたよ】


(ヒスイが読んだ古い本、俺も読みた~い)


【神界からは出せないんだ】


(そっか~ ザンネンッ)


ヒスイの光がサクラを包み込んだ。


【出す度に、眠らずにすむようにしたよ】


(ありがと♪ ヒスイ♪

少しくらいは役に立たないと、

また、洞窟から出るな、って言われちゃう~♪)


【サクラも苦労するね】ヒスイが笑う。


(だね~♪)きゃははっ♪


(あ♪ キン兄とハク兄、帰ってきた♪)


【久しぶりに、キンとハクの中の欠片を確かめておこうかな】


(アカ兄の欠片は見なくていいの?)


【ここには、よく来ているから……】


(来てるの!?)


【ここは居心地が良いんだ】


(アカ兄、いいな~

俺も、ヒスイに そぉ言ってもらえるよぉに、

がんばらなきゃね。


アカ兄の気って、落ち着くよね~

おっきくて~、優しくて~

とっても、あったかで、包んでくれるよね~)


【うん。だから、ここが好きなんだ】


(ヒスイ、アカ兄とも話すの?)


【話さないけど……アカは私に気付いているよ】


(そぉなんだ~♪

あ、キン兄とハク兄の見たら戻って来る?)


【いや……アオの中に戻らないと……】


(あ……そぉだね~)


【サクラは、ゆっくり寝て……】


(うん♪ ヒスイ、また後でねっ♪)


【うん、後でね】


ヒスイは壁に掛けてある恍恒鏡を見た。

そこには翡翠色に光る竜が映っていた。





凜「あの、朱鳳(アケミトリ)って――」


赤「朱牙(シュガ)と鳳雅(ホウガ)の欠片から作った」


凜「二つのガ剣からかぁ。

  じゃあ、凄い剣なのね?」


赤「どうだかな。作ったのが俺だからな」


凜「だったら、確かでしょ」


赤「ふん……」


凜「顔、赤いよ?」


 アカはチラッと睨んで、暗室に籠った。


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