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哭島ーなきしまー  作者: 如月あやめ


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7/10

七話 ー手記ー 夏夜

夏休みが始まって数日後——

 夕食のあと、私は自分の部屋で寝転びながら、天井を眺めていた。

 

「ごめんくださーい」

「涼子ちゃんと桜ちゃんか。 いらっしゃい」

玄関で話す涼子と祖父の声が聞こえてきた。

 

「おーい、裕司。 涼子ちゃんが来てるぞ」

慌てて起き上がると、ボサボサの髪を手で整えてから部屋を出て玄関に向かった。


「ゆう兄ー、浜辺で花火やろー」

私を見るなり、桜が嬉しそうに言った。

「えっ、花火?」

「そう、裕司くんも一緒に来ない?今、お父さんがバケツを探してるから、先に誘いに来たの」

「浜辺か。暗いから、気をつけて行っておいで」

後ろから祖父の声がした。


 外に出ると、晃さんがバケツと懐中電灯を持って走ってきた。

「お待たせ。裕司くん久しぶりだね」

晃さんが笑顔で言った。

 

 懐中電灯を片手に、薄暗い道を四人で歩いた。

いつも通っている道のはずなのに、夜の闇に包まれると、どこか不気味に感じられた。昼間には気にも留めなかった木々の影が、懐中電灯の明かりに照らされて浮かんでいた。

ようやく浜辺に着くと、そこには波の音だけが静かに響いていた。


 ここで待っているから楽しんでおいでと、晃さんは防波堤に腰を下ろしながら言った。

そう言ったあと、晃さんは一瞬、山の方へ目を向けた。

「……今日は静かだな」

小さく呟いたのが聞こえてきた。

 

「花火、花火ー」

涼子と二人で準備をしている間、桜が周りではしゃいでいた。


 懐中電灯を消すと、ろうそくの火だけが浜辺に揺れていた。辺りは思った以上に暗く、海の方は真っ黒に見えた。

その瞬間、どこからともなく、生温かい風が吹き、肌にまとわりついた。

 

「わー、きれーい」

花火に火をつけると、桜と涼子が喜んだ。

 楽しい時間はあっという間に過ぎてしまった。

この島へ来てから、こんなに楽しいと思えたのは初めてだった。

 

「ねぇ、最後は三人で線香花火やろうよ」

嬉しそうに涼子が線香花火を渡した。


「……また来年も、一緒に花火やりたいな」

涼子は線香花火を見つめたまま、小さく微笑んだ。

どこか儚げな涼子の横顔から、私は目が離せなかった。


涼子と桜と過ごすこの時間が、いつまでも続けばいいのに。

この時私は、そう思った。


 

 帰り道、涼子からK神社で行われる夏祭りに誘われた。

私は、嬉しさを隠しながら、その誘いに応じた。

「じゃあ、八月十五日の夕方迎えに行くね」

そう言うと、涼子たちは帰って行った。


 この日の夜、部屋で眠っていると、またあの音が聞こえた気がして目が覚めた。

起き上がって窓を開けると、外には静かな暗闇が広がっていた。

(……気のせいか。……それとも夢だったのか)


 

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