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成果の確認

 空中に赤い花が咲く。

 そんな、比喩が良く使われるが、現実は赤黒い血しぶきだ。

 綺麗かどうかは微妙で個人的には、好きではない。


 現在、攻撃を放った体勢のまま落下に等しい状態だ。

 僕は、風魔法で減速しようとする。

 しかし、勢いは衰えない。


 あ、着地まで考えていなかった。

 僕は、そのまま地面へ衝突する。

 一応、痛いだけで怪我は、ないようにした。

 遅れて、血の雨と共にドラゴンの残骸が落ちてくる。


〈EXスキル【落下耐性】を獲得しました〉


 スキルが獲得できたが、今はそれよりも死骸を見る。

 もう、動いていない。

 大量出血で失血死したのだろう。

 深々と切り裂いた傷が見える。

 中へ侵入できそうなほど深い。


 そして、実感する。

 僕は勝利した。

 下剋上を完遂したのだ。

 ゲームでボスを倒したように気分がいい。


 さて、一回食べてみるか。

 生は、抵抗感があるし、美味しくないが、試しておこう。

 もしかしたら何かのスキル獲得やアチーブメントに関わることかもしれない。


 僕は、近づいて鱗を削ぐ。

 そして、その部分からかじりつく。

 肉を嚙みちぎって、咀嚼し飲み込む。

 味は、一切反応しない。

 したら、そこでおしまいだ。

 歯で肉の繊維を切断する。

 喉を通して飲み込み、胃袋に収める。

 その瞬間からだった。


〈条件を達成しました。種族の進化を行います〉


 は?

 突然の聞きなれないタイプのアナウンスに僕は、戸惑う。

 次に眠気が襲ってくる。

 人生最後の朝より、強制的に引き込むような眠気だ。

 抗うことも叶わず、僕は眠りに落ちた。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 肉体へエネルギーが与えられる。

 世界からの支給品。

 それらは、肉体を作り変えていく。

 本来、時間をかけておこなわれる成長を圧力プレスで経過を圧縮したように眠っている間に全てが終わる。

 少しだけ違う種族に、個を現す種族に成っていく。

 当の本人は、眠り惚けて………………


 ◆ ◆ ◆ ◆


 目が覚める。

 気分のいい目覚めだ。

 太陽を見る限り、朝だろう。

 眠る前は、確か何をしていたのだろうか?

 記憶を辿る。


 ………………。


 ………………?


 記憶が正しければ、僕はドラゴンと死闘を終え、その肉を食べて、アナウンスを聞いた。

 そして、眠った。

 こんな時は、ステータスを確認してみよう。

 何か解るかもしれない。


 ・ステータス・

 名前「なし」

 種族「小竜(スモールドラゴン)

 EXスキル・【飛行補助】【考察】【解析】【空流感知】【落下加速】

      【衝撃耐性】【恐怖耐性】【落下耐性】

 固有能力(ユニークスキル)・【風使い】【回避】【(ドラゴン)

 達成・〔風の申し子〕〔紙一重〕

 状態・良好



 うむ、種族が変わっている。

 そして、かのドラゴンと同じ固有能力(ユニークスキル)も獲得できている。

 その他には、直前に達成したアチーブメントや獲得したスキルくらいであまり変化はない。

 一つ一つ確認していこう。


 固有能力(ユニークスキル)(ドラゴン)

 機能

 『竜砲(ドラゴンブラスター)』:エネルギーを放出し、破壊力を生む熱線を放つ。

 『竜の意思』:ドラゴンの精神をその身に宿す。決して、怯まない。


 固有能力(ユニークスキル)【回避】

 機能

 『緊急回避』:魔力を大量に消費し、緊急回避を行う。

 『攻撃予測』:考えうる一部の攻撃を表示する。


 説明文を読んで僕は、歓喜する。

 『竜砲(ドラゴンブラスター)』についてだ。

 これは、あのドラゴンも使っていたあのレーザーだ。

 あれが使えるのだ。

 それに比べれば、他の便利なスキルもどうでもいい。


 早く、試したい。

 適当な的でもないだろうか?

 あたりを見回す。

 的になりそうなものはない。

 木々は、倒されている。

 少し離れれば、生えているが、それでは迫力に欠ける。

 しかし、特徴的な物などない。

 倒れた木々以外には、何もない地面。


 ………………?


 ドラゴンの死骸が消えている。

 血痕も何もかも。

 自然分解のようなものなのか?

 僕は、そんなことを考えて的を探しにいった。




 岩を発見した。

 ただ、地面から露出している灰色の岩だ。

 そこまで大きいわけではない。


 僕は少し距離を取り、構え機能を発動する。

 口の中に何かの力が集まっていく。

 ほんのり暖かい。

 しかし、僕だとどれくらいの威力になるのだろうか?

 やはり、射程などが落ちるのだろうか?

 そして、ここぞという時に口を開く。


 そこから放たれたのは、熱線。

 直径は、ドラゴンのものより小さい。

 しかし、出力に差はない。

 岩に命中し、溶ける。

 溶岩のようなものへと変わって、流れ出す。


 僕は、撃ち終わって口を閉じ、唖然とする。

 岩に綺麗な穴が開いている。

 威力は、ダントツで僕の扱う技の中では、圧倒的だ。

 溜めが長いのが難点だろう。


 これは、もしや火として使えるのでは?

 鉄板のように使えるのでは?

 僕は、考える。

 うん、無理だな。

 そこまで器用には扱えない。


 僕は、そう考え、いつもの川へ魚を捕りに向かった。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 僕は、食事を終える。

 ステータスの状態も満腹になった。

 さて、ステータスで後回しにしていたスキルを確認する。

 まぁ、確認する必要のないような名称だが。

 特に耐性系は、解りやすい。

 一応確認はする。


 EXスキル【衝撃耐性】

 効果・物理的衝撃に対して耐性を得る。

 熟練度・2



 確認してよかった。

 熟練度なる項目がある。

 前にスキルを確認した時には、無かったはずだ。

 僕は検証のため全てのスキルについて確認する。



 解ったことがある。

 熟練度というものが厳密に何なのかはわからないが、一つ判明した。

 まず表示されるスキルは、【空流感知】【落下加速】【衝撃耐性】【恐怖耐性】【落下耐性】の5つのみだ。

 他のものには、表示されない。

 表示されているものでは、【空流感知】と【衝撃耐性】が2と表示され、他は1だ。

 もしもこの熟練度というものが、呼称の通りならば、スキルのレベルや強さを示すのではないだろうか?

 数字が高くなれば、効果の度合いが大きくなるのだ。

 確かめるには、検証だ。


 僕は、高度を上げ木より高い位置までくる。

 この高さなら【落下耐性】で大怪我はしないだろう。

 僕は、覚悟を決めて、翼を止める。

 これはもしかしたら【恐怖耐性】のおかげかもしれない。

 僕は、地面へ直撃する。

 痛みに襲われる。

 僕は、少し安静にして痛みが治まってからEXスキルを確認する。


 予想は的中していた。

 【落下耐性】の熟練度が2に変わっていた。

 つまり、こうすることで熟練度があがる。

 使えば使うほどいい。

 続けて同じ高さから落下するが、痛みも衝撃も少ない。


 これは、かなり重要な要素だ。

 しかし、上げづらい。

 同じ高さでは、上がっていない。

 【衝撃耐性】も同じだ。


 つまり、ある程度は、上げることができても、時間はかかるし、限界がある。

 しかし、上げておきたい。

 今日は、それに専念するとしよう。



 僕は、高い場所へ行き、【落下加速】で加速しながら落ちる。

 そのまま地面へ激突する。

 頭を打ちすぎたのかと疑われる光景かもしれない。

 しかし、続ける。

 単純作業を繰り返すのだ。

 ゲームでは、嫌いだったが、思えば現実でも似たようなことをやっていた。

 僕は、続けた。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 一日が終わった。

 本当にあの狂ったような作業を一日中やったのだ。

 自分でもどうかしていると思う。

 しかし、新しいスキルも獲得できた。

 【痛覚耐性】だ。


 それでは、今日の成果を確認しよう。


 EXスキル【落下加速】

 効果・落下中、加速する。

 熟練度・3


 EXスキル【衝撃耐性】

 効果・物理的衝撃に対して耐性を得る。

 熟練度・4


 EXスキル【恐怖耐性】

 効果・恐怖に対して余裕ができる。

 熟練度・2


 EXスキル【落下耐性】

 効果・落下による衝撃への耐性を得る。

 熟練度・4


 EXスキル【痛覚耐性】

 効果・痛覚を和らげる。

 熟練度・3



 かなり頑張った。

 何なら、着地地点は、少しくぼんだ。

 しかし、もう簡単には、上げることができないレベルまで到達した。

 これが今の限界だ。

 とても満足のいく日だ。


 僕は、捕獲した魚とヒコの実で小さな宴を開いた。

 一人だけで喜ぶためだけの宴だ。

 それでも楽しかった。

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