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スキル

 僕は、灰色の岩場から緑色に囲まれた地面へ降り立つ。

 この体では、少し遠く感じる。

 苦労して、やっとここまできた。

 周囲には、緑色の葉を茂らせた木が生えている。

 上を見ると、木には、木の実のような物が生っている。

 草や葉よりは、マシに見える。


 丁度いい。

 あれを取って食べよう。

 そう考え、取ろうとする。




 ………………僕は、少し間抜けなのかもしれない。

 手が届かない。

 この体なら当たり前だ。

 高さが圧倒的に足りない。

 どうやって、取ればいいんだ?


 木登り――――――は、どうやらできないようだ。

 こんな翼がついているというのに機動性がない。

 この翼が使えれば、飛んであの木の実だった取れるというのに………………

 そこまで考えて、思いついた。



 飛べばいいじゃん。



 そうだ。

 せっかく、ドラゴンになったのならば、翼で自由に飛べばいいじゃないか!

 やはり、前世の先入観は、邪魔になる。

 僕は、今や鳥のように羽ばたける。

 そうと決まれば、まずは、木の実を取らなければ!


 僕は、翼を上下に動かす。

 風が起こる。

 少し涼しい。


 ………………


 ………………


 ………………


 あぁ、涼しい。

 少し考えれば、思い至ることだった。

 生まれて間もなく、すぐに飛べるのなら生物は、苦労しない。

 何の経験もなしにいきなりできるわけではない。

 ゲームのような世界だからと言っても、そういうところは現実だ。


 仕方がない。

 経験がないのなら試行すればいい。

 僕が生まれて最初にすることは、飛ぶ練習だ。

 本気でやらないと本当に餓死してしまう。

 急がなければ。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 生後、数時間が経過した。

 日が遠くの山へ隠れ始めて、空が橙色に染まっている。

 未だ、僕は、飛び立てずにいる。


 想像以上に難しい。

 バランス感覚も大雑把だからだろうか?

 だからこそ、ここ数時間でかなり成長できたと思う。


 そして、比例して空腹感が限界に近い。

 一時は、空腹感が一周回って、消えたこともあったが、今はもう限界が近い。


 僕は、飢餓の恐怖に駆られて、翼を動かす。

 風を地面へ叩きつける。

 僕の試行錯誤の集大成。

 体が浮く。


 ガッツポーズでもしたいが、今は空腹でそれどころではない。

 僕は、木の実までたどり着く。

 木の実にぶら下がるようにして、掴み、そのまま落とす。

 落下の最中、着地の瞬間に大きく風を起こして、衝撃を和らげる。

 これで僕は、少しだが飛べるようになった。


 僕が木の実を食べようとした瞬間、声が響いた。

 突然のことに硬直する。

 声が脳内に響く。


〈EXスキル【飛行補助】を獲得しました〉


 本格的にゲームらしくなってきた。

 意図せずにスキルを獲得できた。

 どうやらこの世界では、僕のやっていたゲームと似たように行動などによってスキルが獲得可能な世界だ。

 僕は、念じてステータスを確認する。


 ・ステータス・

 名前「なし」

 種族「子竜(ベイビードラゴン)

 EXスキル・【飛行補助】

 達成・なし

 状態・空腹



 これが僕の初めて獲得したスキルだ。

 【飛行補助】というらしい。

 もし、名が体をそのまま表すのならこのスキルは、飛ぶ苦労を緩和してくれるスキルなのだろう。


 僕は、木の実を食べながらそう考える。

 胃袋が満たされた時、また例の脳内アナウンスが聞こえてくる。


〈EXスキル【考察】を獲得しました〉


 また別のスキルだ。

 【考察】、何で獲得できたのかは分かりやすいが、どういった効果だ?


 そう考えた瞬間、ステータスに重なって画面が増える。

 パソコンのウィンドウみたいだ。

 そこには、【考察】について表示されている。


 EXスキル【考察】

 効果・ステータスを探求し、説明文を表示できる。



 つまり、この説明こそが、【考察】の効果ということだ。

 ついでに【飛行補助】も見る。


 EXスキル【飛行補助】

 効果・体重の軽減。微弱な斥力を発生させ、飛行を補助する。



 予想通りの効果だった。

 補助する内容が詳細に書かれている。


 腹ごしらえを終えた僕は、試しに飛行する。

 簡単に離陸できる。

 自転車に乗れるようになったような爽快感がある。

 木の実だって、もう幾つも採集できる。

 地面に落として、食べる。

 この木の実がこの世界で僕を初めて成長させた物体だ。

 名前を知らないが判明するまでセンセイの実とでも呼ぼう。

 僕は、センセイの実に噛り付く。



 苦い!



 初めて食べた時は、味を気にせず食べたが、苦い。

 僕は、苦味が好きではない。

 コーヒーだって、諦めた。

 まぁ、こんな状況だ。

 僕は、我慢して食べた。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 食事が終わり、腹が満たされた。

 十分に補給が完了した。

 見たところ、センセイの実は、かなり群生している。

 最悪、食料の心配はない。


 ここからは、情報収集などのための探索だ。

 ………………と言いたかったが、日が沈む。

 夜にもできる限り、探索はするが、安全な場所で睡眠をとらなければいけない。

 安全な場所――――――あの岩場は、安全とは限らないだろう。

 他に安全そうな場所は、木の上だろうか?

 木登りされなければ、襲われることはないし、遭遇確率は、圧倒的に低くなるし、飛んで逃げることもできる。


 僕は、暗くなる前に木の枝の上へ飛ぶ。

 地上を見下ろしやすい。

 夜行性の動物がいるのだろうか?

 そもそも、未だ動物を見かけていない。

 いないなんてことは、ないだろうが、運があるのやらないのやら。


 少し待っていると、周囲が暗くなる。

 視界は、月明かりに照らされて、意外に確保できている。

 観察がしやすい。

 僕は、枝から枝へと移って、生き物を探す。

 目標は、すぐに発見できた。


 白いウサギだ。

 正確には、ウサギのような白い何か、ファンタジー風に言うと魔物になるだろう。

 それにしても謎だ。

 雪もないのに白色。

 何か事情があるのだろうか?


 僕は、その探求も含めて、観察を続ける。

 動きは、移動が素早い。

 横方向へジャンプしているような動きだ。

 時折、周囲を警戒するような仕草を見せる。

 おそらく、被捕食者側の生物だろう。

 今日は、別に仕留めようだなんて考えていない。

 情報だけ、手に入ればいい。

 後日、有利に狩れるようにそれだけ集められればかまわない。


〈EXスキル【解析】を獲得しました〉


 例の声。

 脳内アナウンスだ。

 これだけでも十分なほどの成果だ。

 僕は、効果を確認する。


 EXスキル【解析】

 効果・視界で見た物の情報を表示する。


 最高のスキルだ。

 これほど有用なスキルはない。


 試しにウサギへ使用する。

 使い方は、念じればいいのか?

 僕は、使おうとするとスキルが発動する。


 ・ステータス・

 名前「なし」

 種族「跳兎(ジャンプラビット)

 EXスキル・【持久力】【危機感知】

 達成・なし

 状態・警戒



 なるほど。

 ジャンプラビットというのか。

 スキルは、まぁ見れば解るな。

 【危機感知】は、厄介そうだ。

 奇襲やらが通用するかどうか。


 そこまで考えたところで眠気に襲われる。

 そろそろ眠るとするか。

 初睡眠だ。

 僕は、新年みたいなことを考えて眠りについた。

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