転生
僕は、目を覚ます。
そして、記憶を辿る。
僕は確か、学校で授業を受けていた。
真面目とは、言えないかもしれないが、全力は尽くした。
しかし、いくら居眠りしたからと言って、この状況はいかがなものだろうか?
視界は、真っ暗闇。
何も視認できない。
体を動かしてみる。
動きづらい。
どうやら何か箱? というより硬い何かに閉じ込められているようだ。
形は、角のない球形だろうか? バランスが悪く、形が完全な球ではない。
………………何、これ?
ドッキリか?
にしては、硬い。
こんなしっかりとしたドッキリを掛けられる覚えはない。
メディア出演だってしていない。
心当たりは――――――やっているゲームくらいか?
頑張って、ランキング8位になれたのだ。
それぐらいしかないが、絶対ないと言い切れる。
では、この状況はなんだ?
今の状況――――――閉じ込められて外部の情報を遮断され、自由を奪われている。
そこで一つ、辞書を引くように単語が浮かんで来る。
監禁。
僕は、焦った。
眠っている間に誘拐されたりしたのだろうか?
だとしたら、学校規模で被害にあっているはずだ。
定番の妄想、学校がテロリストに占拠される、が現実であったということになる。
僕は、そんな中、眠りこけていたことになる。
僕は、今世界で最も間抜けな奴だということになる。
一生の恥だ。
しかし、現状何故か一番可能性がある。
ほとんどの予想が自分へマイナスな状況だ。
最悪だ。
もうどにでもなればいい。
僕は、そう考えて、全力を込めて壁を叩く。
窮屈だからか、上手く力が出せない。
何か変な感じだ。
諦めず、何度も叩き続ける。
感触が変なような?
根気よく叩き続けていると亀裂が入り、僅かな光が差し込む。
まさに希望の光だ。
強く叩く。
亀裂は、広がっていく。
光が増えるたびに叩く力は、強まっていく。
そして、ついに破壊する。
僕は、内心ガッツポーズをする。
してやったぞ。
そう思った。
それを突き破って、外へ出た。
外へ出た時、開放感に歓喜したが、同時に景色に啞然とする。
眼前には、壮大な自然が広がっている。
目に優しそうな緑色の草木が地を埋め尽くしている。
開放感というのもそれのせいだろう。
出てくる感想は、ただ一つ。
訳が解らない。
ここは、何処だ?
何故、ここにいる?
下を向く。
地面は、岩場だ。
やけに視界が低い。
姿勢も這うような感じがするが、違うような感覚もある。
振り返って、自分を閉じ込めていた物を見る。
そこには、巨大な卵の殻があった。
意味が解らない。
自分の手を見る。
爬虫類のような体表、皮膜、爪。
顔に触れる。
これは………………あれだな。
僕は、驚くほど冷静にその事実を理解した。
僕は、ドラゴンに転生したようだ。
◆ ◆ ◆ ◆
最悪?
最高?
どちらでもない気分だ。
ただ、文句は言ってやろう。
異世界転生できたのに人じゃなくドラゴン!
確かに僕は、ゲームでも漫画でもドラゴンが好きだった。
小学校あたりで購入した裁縫道具もドラゴンが描かれているやつを選んだ。
それでも自分がとなると抵抗感がある。
何だ?
ゲームでドラゴンばっかり狩り続けていた僕への当てつけなのか?
一通り文句を心の中でぶちまけた後、冷静さを取り戻す。
よし、少しだけ、微々たる量だが、すっきりした。
まず、僕はドラゴンに転生している。
それは明らかだ。
しかし、死因が解らない。
病気とかだろうか?
健康には、自信があったのだが………………
それとも外部からの――――――例えば、鈍器で殴られたり、銃で撃たれたり、窒息したりで死んだのか?
眠っていたので気が付かなかったのにも頷ける。
何にせよ、僕は十中八九死んだのだろう。
そして、異世界でドラゴンとしての生を受けた。
ドラゴン。
大抵の作品で強く描かれるモンスター。
前世でいうところの百獣の王のライオンや恐竜の代名詞ティラノサウルスなどにあたる存在だ。
最強でなかったとしても上位には、位置している印象だ。
しかし、今の僕は、どうだろうか?
この世界の動物の大きさが解らないが、仮に予想と同じくらいならば、僕はとても小さいことになる。
自分でいうのも変だが、チビだ。
産まれたばかりの生き物に大きさを求めるのもおかしいかもしれないが、小さい。
今や僕は、翼の生えたか弱いトカゲだ。
そしてここからが生存で重要なのだが、親らしい奴が見当たらない。
それどころか、僕の入っていた卵があった場所は、巣の片りんなど微塵の欠片もないただの岩場だ。
兄弟らしき別の卵もない。
僕は、どうやら一人のようだ。
覚悟を決める。
僕は、頑張ってこの異世界を生き抜いてやる!
張りきったは、いいが親切にガイドがあるわけではない。
そもそも、この世界は、どういうタイプの異世界なのだろうか?
ドラゴンはいるとして、魔法の有無、言語は?
ゲームみたいか?
常識の差異は?
倫理感は?
確認できる分から確かめることにしよう。
そして、その一歩目として、単語を思い浮かべ、念じる。
本当は、唱えてみたいが、少なくとも今の僕は、喋ることができないらしい。
ステータス!
できる限り、それっぽく念じてみた。
するとまさにビンゴ。
それらしい画面のようなものが表示された。
………………
………………
………………?
ちょっと本当にできるとは、思っていなかった。
さすがにそんなゲームみたいなシステムが当たり前のようにあるなんて夢にも思えない。
しかし、どうやらこの世界には、そんなバカげたシステムがあるらしい。
もしもこの世界を創世した神がいるのならそいつは、親しみを覚えられるほどのゲーム好きだろう。
僕は、ステータス画面へ目を向ける。
空中にディスプレイが表示されている感じだ。
内容を読む。
・ステータス・
名前「なし」
種族「子竜」
スキル・なし
達成・なし
状態・良好
なるほど。
見る限り、HPや攻撃力のような数値はないらしい。
そしてステータスを見る限り、スキルと達成する何かの存在は確認できた。
スキルというとゲームなんかでクリティカルUPだとか、ピンチの時に能力値が上昇したりするやつのことだろう。
そうと決まったわけではないが、それに近いもののはずだ。
達成する何かは、チャレンジみたいなものだろうか?
アチーブメントだったり、ミッションだ。
後者は置いておくとして、スキルの獲得条件を早い段階でしらなければならない。
あとは、状態の項目だ。
気にしておいた方がいいだろう。
そんな確認作業の最中、僕は空腹感を覚える。
そういえば、何も食べていない。
あれ?
もしかして、餓死する?
笑えない想像をするが、それはあまりにも恰好が悪い。
しかし、周囲に食料などない。
食料だろうか、有機物が見当たらない。
………………よし。最悪の場合、草でも葉でも根でも食べよう。
そう考え、僕は、緑へ向けて進みだした。




