僕の力
「お主、何か特殊な事情を持って生まれておるな?」
神様レクチャーを受けていた僕にハザデスさんがそう投げかける。
「どうしてです?」
「まず、その知能じゃな。普通のドラゴンや龍は、ここまで賢くないわい。それに『至王』じゃ、生まれつき権能持ちなんぞ。特異すぎる」
ごもっともな根拠だ。
ハザデスさんは、続けて本命の質問をする。
「お主、何かあるじゃろ? 話してみぃ」
僕は、素直に話すことにした。
転生の事と前世の事だ。
別に隠しているわけではないし、包み隠さず話す。
「なるほど、お主は、転生者じゃったか………………」
説明を聞き終えるとハザデスさんは、納得したように頷いた。
どうやら転生者は、珍しいが、神様からすれば、結構知られているらしい。
何でも他の神との情報共有でもあるらしい。
最近は、面倒でサボっているらしいが………………
「それと、お主が死んだ原因は十中八九、世界の魂さらいに遭ったんじゃの」
どうやら死因についても心当たりがあるようだ。
詳しく聞く。
「魂さらいというのは、世界が別の世界の魂を強奪することじゃ。まぁ、世界同士のじゃれあいじゃな」
そんなもので殺されたのか、僕は。
たまったものではない。
「それと、お主の話を聞く限り、その時、他にも人がいたらしいが………………多分、お主と同じく巻き込まれとるぞ?」
ここに来て、魂が同郷の者がいると判明した。
不可侵領域から出たら探しているとしよう。
かなり無謀だが。
そこで問題を思い出す。
とても重要な問題だ。
龍でどうやって、コミュニケーションを取ればいいんだ?
同族でも殺意マシマシで殺しあうんだぞ?
他種族や人間など以ての外だ。
僕は、ハザデスさんに相談した。
かなりの死活問題だ。
「………………それよりも、言語とかどうするんじゃ?」
「へ?」
「ここでは、お主が魂の状態じゃから問題ないが、現実の次元では、そうはいかんぞ?」
盲点だった。
日本語だと思っていたが、思念を伝えられる特殊な次元だっただけか。
「まぁ、言語は、神業でどうにかできるがのぉ」
神業。
ハザデスさんに教えてもらった神様の共通技術などの総称だ。
あれでどうにかできるのなら心配は、しなくていいか。
言葉があるのなら、最低でも大丈夫だ。
姿とかは、権能でどうにかできないか、工夫するとしよう。
「さて、もうそろそろ、伝えるべき知識は、伝え終えた」
ハザデスさんが言う。
「じゃあ、もう戻っていいんですか?」
「あぁ、大丈夫………………いや、一つあったの最後の引継ぎ」
ハザデスさんが直前で思い出す。
「不可侵領域のどこかに木の小屋があるはずじゃ。その内部には、懐中時計がある。それを回収し、小屋を燃やすのじゃ」
何とも不思議な内容だ。
行う事は、明確に示されているというのに意味が解らない。
「懐中時計は、絶対に失くすな。失くすくらいなら完全に破壊するんじゃ。マジで重要だから最優先でやってくれ」
ハザデスさんが真剣に言う。
「解りました」
僕は返事をしたが、その後も何回も念を押された。
「それじゃあ、また………………いや、やはりまだあった」
今度は、何だろうか?
「何ですか?」
「お主は、神になったからの。名前が無ければな」
確かに僕は、ずっと生まれてから名無しだったな。
「わしが名付けてやろう。そうじゃな………………」
ハザデスさんは、考えこむ。
そして、告げる。
「よし、お主の名は、カケラじゃ。二代目龍神カケラ」
僕は、その名を持って、帰還した。
◆ ◆ ◆ ◆
僕は、目覚めた。
山の頂上の池の畔にて。
水龍を倒した場所だ。
景色に変化はない。
ハザデスさんは、外では時間はあまり経っていないそうだ。
おおよそ、一日とからしい。
にしても、我ながら見違えた巨体だ。
前まであんなに小さかったというのに今や成体にも負けないほどの大きさだ。
最初に戦ったドラゴンより大きい。
さて、まずは自分の権能の確認だ。
ハザデスさんの神様レクチャー講座で使う感覚は教わった。
早速、実行した。
何だろう、これは?
光っている。
光っているものが動かせる。
自由に。
現実へ意識を向ける。
変化があれば、それが僕の神権だ。
光景に変化はない。
ハザデスさんのような龍を生み出す力ではないようだ。
では、何だ?
僕は、探すように自分の前足を見る。
こんな感じだったか?
龍になった時は、変化など気にできなかったし、どうだろうか?
確認のために権能をもう一度使ってみる。
そして確認する。
前足の爪には、変化がない。
しかし、胴の鱗が肥大化し、一枚の装甲。
それが左右についている。
どうやら、これが僕の『龍神』の能力のようだ。
龍やドラゴンの形を変える能力。
うん、順当に強いな。
しかし、変え方には、実験が必要だな。
取説もないし。
それにこれならあれもできるかもしれない。
僕は、しばし、扱いに慣れるため実験を開始した。
◆ ◆ ◆ ◆
慣れてきた。
防御特化の装甲集中形態。
空中機動力特化の翼形態。
陸上機動力特化の地龍のような形態。
バランス重視の形態。
部分的なものの制御も可能になった。
小さくなることもできる。
そして、あれもできる。
やりたかったんだ。
特に外に出るにあたって、必要なことだった。
僕は、とても慎重にかつ、権能で姿を変え、細部まで整える。
ここまでやっても死なないのは、本当にスパーパワーだ。
さて、これでいいだろう。
僕は、キャラメイクのような作業を終える。
そして、確認する。
水を鏡のようにして、姿を見る。
うん、理想通りだな。
やはり、この権能は、とても便利だ。
僕は、久々に歩く。
二本の足で地面を踏みしめる。
人間の姿で。
そういえば、衣類もどうにかしないといけない。
髪やら鱗やらで作り出すとしよう。
僕は、手早く作る。
素材の性質だって、自由自在だ。
さて、準備が整ったし、外の世界へ………………
僕は、浮足立って行こうとするが、思い出す。
そういえば、託された仕事があるんだった。
まずは、それを終えなければ、いけない。
僕は、180度方向を転換し、翼を生やして飛び立ち、不可侵領域へ戻っていった。
それにしても小屋は、どこにあるんだ?
結構広いのに小屋なんて見つけられない。
場所くらい聞けばよかった。
目印もないが、せめて中心から見た方角は知りたかった。
それとも解らなかったのだろうか?
探すことも含めて僕の初仕事ということか?
どっちにしろ、虱潰しに探すしかなさそうだ。
◆ ◆ ◆ ◆
うん、全く見つからない。
そろそろ精神的に苦しくなってきた。
気分転換でもしよう。
僕は、地上へ下り立つ。
ハザデスさんによれば、僕は食事の必要がないそうだ。
しかし、娯楽のような感じで神様も食事を食べるらしい。
僕もそれに習うとしよう。
でも、ヒコの実は嫌だな。
せめて、肉。
僕は、周囲を探す。
【空流感知】で生物がいないかを感じる。
この動きは、多分ドンボアだな。
猪の肉は、食えるらしいし、豚の仲間だし、美味しいんじゃないだろうか?
僕は、獲物の元へ向かう。
そこには、確かにドンボアがいた。
人型で見ると、その大きさが解る。
大きさに関しては、驚かない程度だ。
確かに大きいのだが、猪ならこのぐらいは大きいというサイズだ。
ドンボアは、警戒している。
人間が危険だと理解しているだろうか?
いや、そうだったら逃げるだろうし、見たことないのだろうか?
まぁ、ハザデスさん曰く、不可侵領域に到達した人間は、一人もいないらしい。
そのための守護龍だろうし、不思議ではない。
あの強さだしね。
僕がそんな考察をしていると、ドンボアが突進してくる。
未知への挑戦は結構だが、万全に準備しろ、とアドバイスしたい。
僕は、闘牛士のように避ける。
ちなみに当たったとしても大したダメージには、ならない。
【衝撃耐性】があるのだ。
なめてもらっちゃ困る。
これでも今の龍神だぞ?
しかし、考えてみると龍神が猪で闘牛士の真似事をするというのは、シュールだ。
僕は、拳を握る。
この体で初めての相手だ。
君は、誇ってもいいと思う。
神話だったら、凄い猪だ。
星座に成れるかもしれない。
僕は、ドンボアにパンチを当てる。
格闘技の経験は、無いので素人パンチだ。
ドンボアは、吹き飛んで木に叩きつけられる。
拳の後がくっきりと残っている。
動かない。
死んだ。
我ながら、引く。
気を付けよう。
何はともあれ、肉が手に入った。
これを焼けば………………
僕は、美味しそうな焼肉を想像するが、そこで気が付いてしまう。
火、どうしよう?
すっかり忘れていた。
『竜砲』では、制御が利かない。
火を扱うスキルも持ち合わせていない。
道具もない。
これは、仕方がない。
あの有名かつ、古典的な方法を使うとしよう。
僕は、木の枝と木の皮を用意する。
そして、枝を両手で挟んで、回し始めた。
この体なら行けるはず!
僕は、そんな気持ちで火起こしを始めた。




