アースドラゴンズ
僕は、観察する。
眼前には、何体もの成体のドラゴンがいる。
どのステータスも似通ったものだ。
僕がこれから喧嘩を売る相手だ。
思えば、前世は平穏で、喧嘩を売るなんて野蛮なことには縁がなかった。
しかし、やってやろうではないか!
喧嘩と言えるほど大層なものではないが、粗悪品でも販売しよう。
そのためにも情報収集だ。
戦いというのは、情報が八割を占めるなんて言葉を誰かから聞いた気がする。
ゲームのフレンドだったか?
残り二割は、何と言っていたのか覚えていないが、感謝しておこう。
重要なのは、ドラゴンたちのスキル構成だ。
見る限り、耐性系が多い。
【衝撃耐性】【損傷耐性】【痛覚耐性】【地属性耐性】。
関係がありそうなものは、これぐらいだろうか?
他の耐性は、あまり影響がなさそうだ。
そして、熟練度が高い。
どれも少なくとも僕より熟練度が高い。
他に気になるEXスキルは、【加速】【加速度】【持久力】だろう。
【加速】は、任意で瞬時で加速するスキルのようだ。
【加速度】は、似ているが、単純な動きの速度を徐々に上げるスキルのようだ。
【持久力】は、名前のままで体力が多くなると考えればいい。
僕は、ステータスを確認する。
そこから種族の説明を表示する。
種族「地従竜」
説明・ドラゴンの内、地属性へ進化した種族。
翼は、退化し飛行能力を失っている。
地龍の眷属。
一つ違和感が解けた。
やけに飛行に関するスキルが少ないと思ったのだ。
飛べないのなら納得だ。
しかし、【飛行補助】があるのは、親近感が沸く。
そして、見逃してはいけない記述がある。
地龍の眷属。
つまり、こいつらは地龍とやらの部下にあたるのだ。
では、地龍とは何だ?
さらに『解析』を行使する。
地龍
説明・ドラゴンスパイラルの東の頂を守護する地属性の龍。
龍神の眷属。
またまた新たな用語が出てきた。
ドラゴンスパイラル、竜と龍の違い、龍神とは?
僕はさらに追及する。
ドラゴンスパイラル
説明・大陸中央に存在する山。
窪地のように中心を覆い隠している。
中央部は外界から隔離されており、不可侵領域と呼ばれている。
八方向それぞれの山頂は、龍が守護している。
種族「龍」
説明・竜の上位種族。
龍神「ハザデス」
説明・唯一無二の龍の神。
うん、いろいろと解った。
この世界の情報だろう。
もしかしたら、その龍の神様が僕の転生について知っているかもしれない。
会えるかどうかも不明だが、覚えておこう。
脱線したが、話を戻そう。
次は、固有能力に関してだ。
あいつらは、アチーブメントを一つ達成している。
アチーブメント〔魔物殺し〕。
ユニークスキルは、【畏怖】だ。
固有能力【畏怖】
機能
『威圧』:相手を威圧し、動きを鈍くする。
『恐怖覇気』:相手を恐怖させる覇気を放つ。
精神攻撃タイプのスキルのようだ。
つまるところ臆さず挑めということだ。
ゴリ押しの脳筋のように聞こえるかもしれないが、これしかないのだ。
今の僕には、対抗手段と言えば、【恐怖耐性】くらいなものだ。
以上が相手の情報だ。
このスキルに本来の性能が上乗せされる。
ハッキリ言えば、勝ち目など無いに等しい。
しかし、僕には、前世の知識と人格がある。
それさえあれば、勝ち目はグンと上がる。
まず、通用しそうな攻撃手段だが、「竜砲」くらいだろう。
風魔法全般は、通用しない。
威力不足だ。
僕の物理攻撃も微々たるものだ。
僕は、それを撃ち、あいつらを殲滅しなければならない。
撃つには、魔力の充填が必須だ。
数秒かかる。
初撃は、当たるとしても、一発では全てを倒しきることはできない。
充填と回避を同時に行うしかない。
できないことでもない。
前までは、できなかっただろうが、今なら『並列思考』がある。
これを使えば、両立が可能だ。
僕は、『並列思考』を使い、役割を分ける。
これで大丈夫だ。
作戦も十分。
僕は、初撃の準備を始めた。
◆ ◆ ◆ ◆
魔力を溜める。
狙うは、最も多くを巻き込める射線上。
発射前にバレてはいけない。
最大限隠れる。
そして、ひっそりとしたその場所へ一撃を放つ。
熱線。
それは、アースドラゴンの分厚い装甲の役割を果たす鱗を溶かし、貫通する。
数体を巻き込み、何体かは重要な器官を壊されたのか、死亡する。
そして、もちろん全ての個体が僕を認知する。
敵として。
僕は、空へ逃げる。
これで奴らは、追ってこれない。
地上特化のやつらは、絶対に届かない。
その速さも意味をなさない。
しかし、あいつらは、大地から岩を出現させ、砲弾のように発射する。
対空攻撃もしっかり備えている。
簡単ではないな。
僕は、【空流感知】と『攻撃予測』でそれらを華麗に避ける。
速いが難しくはない。
順調にチャージがたまる。
数秒と踏んでいたが、十秒と少しはかかっている。
『並列思考』での発見だ。
予想外だが、計画には支障がない。
『竜砲』の準備ができた頃、一匹のアースドラゴンの足元の地面が盛り上がる。
そして、他の岩石と同じように飛んでいく。
違いは、アースドラゴンも一緒に飛んでいくということ。
アースドラゴンは、僕のすぐ近くまで迫る。
僕は、「竜砲」を放つ。
近いので命中する。
ひとまず、その一体は、倒せたが、これはまずい。
他にもアースドラゴンはいるのだ。
僕だったら、今の奴を模倣する。
僕の予想のとおり、他のアースドラゴンも自身を飛ばす。
これだから、集団は強い。
発明を一気に広めることができる。
岩に乗った個体が別の岩へ飛び移る。
空の利が無くなった。
そいつらは、地上と同じように岩から岩へと移って接近する。
そして、僕の元へたどり着き、その前足を狂暴に振り下ろす。
しまった。
僕は、『緊急回避』を使用する。
間一髪だった。
攻撃を外したそいつは、足場が無くなり、落下して行く。
それで終わりではない。
今も砲撃は続いているし、こっちまで飛んでくるものもいる。
そして一つ懸念点が出てきた。
僕の魔力量だ。
おそらく僕の魔力量は有限だ。
現在、『竜砲』2発と『緊急回避』1回で消費した。
ここまで使うと自身でその量が近くできる。
まだ、残っているが、あと数発が限界だろう。
普通ならば、そこまで消費しない。
しかし、相手を全て仕留め切るには、工夫が必要だ。
数にして、残り6体。
一発ずつでは、足りない。
空中だと初撃のように巻き込みずらい。
ピンチだ。
生命に関わる。
魔力が切れたらどうなるか解らない。
気絶するのか、死ぬのか、仮にただMP切れのようだとしても攻撃手段と回避手段を失う。
つまり、魔力切れは、論外だ。
僕が考えている間にも忍び寄るものがいる。
僕は、後ろへ逸れて回避する。
これでは追撃されるだろう。
狙い通りだ。
僕は、「竜砲」を放つ。
もちろん、目の前の個体へ向けてだ。
それは貫通し、地上へ降る。
地上にいた1体にも命中する。
これで残りは、4体だ。
しかし、解る。
次の1発を撃てば、魔力が足りなくなる。
底を突くのではない。
中途半端に残る。
残り1発で奴らを全滅させなければならない。
だが、射線上に4体がいるなんてことはない。
精々、2、3体が限界だ。
どうにか方法を考えなければいけない。
時間もない。
早いところ方法を考えなくては。
誘導するか、何かの方法を。
僕は、発想を前世の知恵に託す。
何かあるかあるはずだ。
応用が利くはずだ。
何か………………一本の熱線で全てを蹴散らすような方法があるはずだ。
必死に脳内の開けまくって探り、僕は一つの答えらしき知識を思い出す。
実現が可能かもしれない。
その時、丁度攻撃を回避し、相手は地上にいた。
『竜砲』も発射可能だ。
僕は、その策を実行に移す。
一体へ向けて、『竜砲』を放つ。
そして、頭を動かす。
熱線の向かう先が変わる。
こんな簡単なことだった。
熱線で次々とアースドラゴンを倒す。
今まで放った時の衝撃で頭を動かせるなんて考えなかった。
先入観というやつだ。
正に頭を使う。
そのままだった。
僕は打ち終えると地上に下りる。
倒しきった。
殲滅完了。
ノーダメだ。
一撃命中していたら重症だろう。
油断していた僕は、背後に眩しい何かを感じる。
振り返ると、体の大半が焼けたドラゴンが最後の力で『竜砲』を撃とうとしていた。
もう、撃つ寸前だった。
普通に飛んで逃げることはできそうにない。
熱線が僕の眼前に迫る。
僕は、『緊急回避』を使用する。
それで何とか避けきった。
撃ったドラゴンは、力尽きたのが見える。
同時に眠気が襲ってくる。
なるほど、魔力切れは、体力が尽きるようなものなのか。
僕は、勝利を感じながら眠りについた。




