第2話 え、そういうこと!?
どうしよう……
もう二分ぐらいたっているが、まったく進展がない。
那須さんはいまだに、キマった目で僕をみている。
体制もまったく変わっていない。
ただ、ボタンが空いたシャツの向こうに渓谷がみえるのだけは勘弁してほしい。
だから、しかたなくこの二分、那須さんと目を合わせ続けている。
僕もどうしたらいいか正直わからない。
まずはこちらから話しかけて……
「あぁ……あ!!」
那須さんの顔が一気に赤く染まる。
「いやぁぁあ!!」
悲鳴と共に逃げるように後ずさる。
またいきなりなんなんだ!
しかも、僕が悪いみたいになってるぞ。
わからないけどなんかごめん。
「あの……那須さ……」
「あぁ!!!」
駄目だ。彼女の悲鳴が止まらない。
彼女はパニックなのか無駄に四方八方へ小走りを繰り返している。
「ちょっと……落ち着い……」
「こないで!!」
バタン!!
彼女は特別室のロッカーの中へ逃げるように飛び込んだ。
えぇ……
いきなり連れてこられて、叫ばれて。
しかも、“こないで!!”って言われたんだけど。
もしかして……嫌われてる?
そして、またロッカー?
那須さんはロッカーが好きなのか?
とりあえず会話しないと……
僕はロッカーの前に立って呼吸を整える。
よし、臨戦体制完了だ。
「あの……那須さん、落ち着いた?」
「……」
「那須さん、どうしたの?」
「……」
あ、駄目だ。僕は多分嫌われてる。
あー泣きそう。
しかもロッカーと話してる人みたいだし。
「……あの!!」
ロッカーが……那須さんが喋ったぞ。
「ほんとにごめんなさい!!」
「え、」
「私、そんなつもりなくて…気づいたらこうなってて……」
「うん……」
よかった……。嫌われてはいなかった。
「ほんとに…ほんとにごめんなさい……」
ロッカーの中からすすり泣く音が聞こえる。
「大丈夫?」
「あ、あ……」
「那須さんは僕に何か用があったの?」
「あ!う、うん……」
那須さんってすごく純粋で素直な人だな。
まぁ、これだけの事になったぐらいだから、多分すごい用事があったに違いない。
「勉強を教えてほしくて……」
勉強……それだけ?
てっきりパシられるとばかり思ってた。
「勉強を教えてほしい?」
「うん、私テストの成績が悪くて、今度赤点取ったら補習になるから教えてほしくて……」
「いいけど、僕より頭いい人周りにたくさんいるんじゃない?」
「私そこまで迷惑かけたくなくて……」
僕にはいい判定なのはなぜだ。
「あと、そこまで勉強したいわけじゃないから、平均の点数をとってて普通で話しかけやすいの雨宮くんに頼みたいと思って。」
ちょっと失礼な気もするが僕にとってはうれしい言葉だ。
まぁ勉強ぐらいならいいか。
「……いいよ。」
「ほんとに!ありがとう、雨宮くん!」
素直に感謝されると嬉しいもんだな。
それはそうと。
「……あのロッカーから出てきてもらえたりするかな……」
「あ、ごめん!わかった。」
彼女がロッカーから出てくる。
少し照れた表情をしている気がする。
「ごめんね……私、パニックになるとロッカーに隠れちゃう癖があるの……だから図書室の時もああなっちゃったの。」
彼女は照れ隠しに笑う。
あーそういうことか。合点がいった。
「勉強はいつから教えればいいの?」
「明日から!放課後の図書室だとうれしいかも…」
「わかった。」
「じゃあ、明日からよろしく!あと……今日のことは忘れてね!」
彼女はあっさりそう言って、特別室を後にした。
いや、今日のこと忘れてねって……そんなことできるわけないだろ!
はぁ……変な事になったな。
普通に戻りたいよ……
こうして、僕と破茶滅茶な那須さんとの勉強同盟が成立した。




