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無能と追放された財務官、実務能力だけで世界を買い叩く  作者: 月城カナタ


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第22話:『アセット・ハッキング ――中央銀行の心臓部を監査せよ』

「……三、二、一。はい、その論理、破綻しました」


 白亜の塔の最上階。私は自分と瓜二つの顔をした少女、アインツベルン00(ゼロゼロ)に向かって、淡々と告げた。

 彼女の背後に浮かぶ数千のモニターが、一斉にノイズを吐き出す。アイテールの全経済活動をリアルタイムで演算していた「完璧な数式」が、私のたった一言の指摘で赤く染まっていく。


「……計算不能。クロエ、貴女は何を……。私が提示したのは、この世界の資源を最適に分配し、三〇〇年後の破綻を回避するための『正解』よ。そこに誤りはないはず」


「『正解』ですか。……00、貴女の演算には、一つだけ致命的な欠陥があります。貴女は人間を、一ゴールド単位で分割可能な『統計上の数値』として扱っている。ですが、現場の人間は、不合理で、感情的で、時に帳簿の整合性を無視してパンを盗む『不採算なバグ』の塊です」


 私は手帳を閉じ、一歩前に出た。


「貴女の描く未来には、その『盗まれたパン一つ分』の誤差を埋めるための予備費が計上されていない。……美しすぎる帳簿は、それだけで改ざんの温床になるのです」


「……感情的な反論は、演算の邪魔よ。排除します」


 00が指先を動かした瞬間、オフィスの床が液状化するように波打ち、無数の光の糸が私を拘束しようと迫る。

 だが、その糸が私に触れる直前、鋭い鋼の閃光がそれを断ち切った。


「……悪いな。俺の財務官は、数字以外に縛られるのを嫌う」


 アラリックが、漆黒の剣を鞘に納める音を響かせた。彼は不敵に笑い、00の瞳を真っ向から見据える。

 同時に、オフィスの隅で端末にへばりついていたライラが、叫び声を上げた。


「やった! ボス、バックドア開いたよ! ここのシステム、論理が綺麗すぎて逆に読みやすい! 『美しい道は歩きやすい』ってことだね!」


「よくやりました、ライラ。……ハッキング開始。アイテール中央銀行の『心臓部』……全アセットの管理ログを強制監査します」


「……っ! 侵入を許可した覚えはない!」


 00の無機質な表情が、初めて「焦り」によって歪んだ。

 私は黄金の印章を床に突き立てた。

 印章から溢れ出す黒いインクのような影が、白亜の塔のシステム回路を侵食し、アイテールの「真実」を暴き出していく。


 私の網膜に、凄まじい速度でデータが流れる。

 【総債務:大陸三つ分】

 【債権者:???】

 【担保:人類の『明日』】


「……00。貴女、この負債を誰に返そうとしているのですか? 星のステラ・コアへの支払いは、私が第2部ですでにリスケジュール(条件変更)を済ませたはずです」


 モニターに映し出された文字を読み解き、私は凍り付いた。

 アイテール中央銀行が隠していた「真の債権者」。

 それは、神でも、星でも、ましてや自然現象でもなかった。


「……これは……別の『文明』……? 海の向こうですら、ない……」


「……気づくのが早すぎるわ、クロエ」

 00が静かに告げた。彼女の周囲の空間が歪み、現実がデジタルな砂嵐に変わっていく。


「私たちが返済しているのは、この星の外側にある『管理組合』へのリース料よ。……この惑星は、彼らにとっての『賃貸物件』に過ぎない。魔法というエネルギーは、彼らが貸し与えた設備。……そして、魔法を止めた貴女は、彼らにとって『勝手にリフォームを行った不良店借人』なのよ」


 塔全体が、激しく揺れた。

 空が裂け、アイテールの輝かしい光が、どす黒い「請求書」のような影に覆われていく。


「警告。滞納期間が臨界点を突破。……強制立ち退き(エクスターミネーション)の準備が開始されました」


 アラリックが私の肩を強く抱き寄せた。

「……おい、クロエ。次は何を買い叩くつもりだ。重力の次は、宇宙の大家とでも交渉するか?」


「……。……。……いいですね。やりがいのある案件です」


 不眠症。

 しかし、私の脳内ではすでに、地球という物件の「不動産価値」を再定義し、外宇宙の債権者を沈黙させるための『敵対的買収スキーム』の策定が始まっていました。


「ライラ。新大陸の全資源、および旧大陸の蒸気エネルギー……これらすべてを『現物出資』としてまとめなさい。……今から、この惑星の『オーナー』を交代させます」


 私は印章を強く握りしめた。

 アインツベルンの血が、世界の寿命を「価格」として計算し始めていた。

クロエ、ついに「世界の大家」に宣戦布告!

アイテールが隠していた真実……それは、地球そのものが外宇宙の文明からの「賃貸物件」であったという衝撃の事実でした。

魔法はただのリース設備、そしてクロエは「勝手に設備を壊した不良住人」。


絶望的な状況。しかし、クロエの答えは「惑星そのものの買収」でした。

一財務官の仕事が、ついに宇宙規模の不動産トラブルへと発展します。

彼女は一体、どんな「実務」でこの立ち退き要求を跳ね除けるのか?


次回、第23話。

『電子の聖女 ――AIが導き出す「最も効率的な死」』


不眠症の実務官、神話を超えて宇宙の帳簿を書き換えます。

「このスケール、たまらない!」と感じた投資家の皆様。

ぜひブックマークと、評価【☆☆☆☆☆】という名の「資本注入」をお願いいたします!

皆様の評価が、惑星買収の「手付金」になります!

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