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翡翠さんタイムトラベル――巫女が女神に送り込まれた歴史や物語に介入して胸くそを潰します  作者: 青い水


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翡翠さん、パリに現れた女神にびっくりする

試練の女神ちゃん、参加できることになって本当にうれしそう。金満女神の画像の破壊力!

「おい、青水、まだるっこしいぞ!」


「ん?どうした、女神、プンスカして。」


「あのアルマンというやつ、さっさと殺せば問題解決だろ。」


「んなわけあるか。それのどこが調律だよ。」


「原作読んだけどな、典型的な“信用できない語り手”じゃないか。オデュッセウス以上だ。」


「まあそうだな。しかもたちが悪いのが、デュマ・フィスの体験を元にした小説なのに、語り手が“私”ではなくてアルマンという架空の人物だ。自分の邪な感情を架空の他人に転嫁している。」


「なので殺そう。」


「おい、翡翠に何をさせる気だ。調律の巫女だぞ。殺戮の巫女ではない。」


「じゃあどうするんだよ?」


「最終的にはマルグリットと別れてもらう。」


「ああ、あれか?翡翠の得意技、性欲を爆発させてベート・ダムールに変えてしまうアフロディジアークム。これを使えばそこらへんの熟女とカップリングできるぞ。」


「それは安易すぎて読者に申し訳ない。」


「ならば私が出張って誘惑してやろうか?」


「おまえにそんな魅力があるとは思えないんだが。」



挿絵(By みてみん)



「ふふふ、舐めるなよ。私は美の女神アフロディーテを泣かせたことさえあるんだ。」


「そりゃおまえはいじめて泣かせるのが得意だからな。別に美しさで勝ったわけじゃない。どうせデブとか言ったんだろ?」


「言ったよ。古代ギリシャの美の基準は脂肪過多だからな。そういえば甘やかしの女神もデブだったな。甘味ばかり食べているからだ。」


「はいはい。ともかくここでおとなしく梅酒でも飲んでろ。」


「良いけど、私が出ないで翡翠ひとりで何とかできるのか?あのアルマン、狂信者寄りのストーカーだぞ。」


「何とかするんだよ。今回は翡翠も出し惜しみはしない。出し惜しみと言えば、女神、前に翡翠の火照りを収めるためにダンジョンでダイヤモンドドラゴンを狩っただろ。今回のミッションは、資金が必要だ。あれを翡翠に渡せ。」


「は?セイレーンのプロデュース資金だといってエラに全部取られたよ。あいつ、芸能界で舐められないためだとか抜かして、ハイブランドを爆買いして散財した。もうない。」


「ならばちょっとダンジョンへ行って一匹倒してこい。おまえならわけないだろ。」


「やだ。面倒くさい。」


「ダイヤを持ってパリへ行くことを認めよう。」


「本当か?ならば一肌脱ぐか。」


「服は脱ぐなよ。」









 

 女神は大量のダイヤモンドを持って1842年のパリに現れた。翡翠の位置座標は女神の翡翠GPSで瞬時にわかる。翡翠はオデオン座から出てきた。


「おい、翡翠。」



挿絵(By みてみん)



「あ、女神様。なぜこんなところへ?」


「まあそう警戒するな。軍資金を持ってきた。今回のミッション、汚い金の殴り合いになりそうだからな。」


「って、それダイヤモンドじゃないですか。そんな大きな塊、換金できませんよ。」


「そうか、ならば...フンッ!」


 女神が力をこめるとダイヤが砕けた。


「ちょっと、こんな道の真ん中で何をやってるんですか。とりあえず私のホテルの部屋へ参りましょう。砕いたダイヤの破片、ちゃんと拾っておいてくださいね。」



 ホテルの部屋に入り、翡翠は力なくベッドに腰掛けて女神を見た。


「ミッションの途中で変な介入をしないでくださいよ。私のやり方でしっかり調律できますから。」


「まあ、そう言うな。地味な調律では読者もつまらないだろ。ともかく、今回の一件には大量の金が必要になる。純愛のロマンだと世間では思われているようだが、一読して私はわかったぞ。これはカネの暴力の物語だ。カネの力で殴り倒せばそれで勝ちだ。なので私はこのダイヤを上手に売りさばいてくる。」


「上手に?」


「そうだ。こんな大量のダイヤを一度に換金なんかしたら、希少な宝石であるダイヤモンドの価格崩壊が起こる。そうなればそれに付随してどんな経済危機が発生するか、女神である私にも予測がつかない。なので、リスク分散だ。世界中に出張って、変装して売りさばく。まずは新興国でカネがだぶついているアメリカ合衆国のニューヨークだ。あそこには成金がたんまりいるからな。人間は成金になると、伝統的な富の所有者である貴族のものまねをしたがる。とりあえずアメリカに持ち出すダイヤを作るぞ。」


「作るって?」


「換金しやすいサイズに割るんだよ。ほれ、フンッ!」


 拳大のダイヤが小指の先ほどのサイズに割れた。


「ニューヨークはこれだけで十分だな。残りはおまえに預けておくから盗難や紛失に気をつけるように。」


「そんなあ...危険物を押しつけないでくださいよお。」


「あ、そうだ。アイテムボックスを持っていたんだった。ごめん、翡翠。大丈夫だ。アイテムボックスに入れておけば万事解決だ。それでは行ってくるぞ。」



 女神はニューヨークのメイデンレーンに現れた。ここはニューヨークで貴金属や宝石を取引する中心地である。



挿絵(By みてみん)



「こんにちは。ちょっと良いかしら。主人の鉱山で拾ったダイヤなんだけど、鑑定して買い取ってくれないかしら。未亡人になっちゃったのでお金が必要なのよ。」


「ブラジルのダイヤ鉱山の方ですか?ちょっとお待ちを。」


 スタッフは女神が持ち込んだ5~10カラットのダイヤモンド鉱石の鑑定を始めた。ドラゴンを殺して手に入れた素材なので、まだ魔力が残っているだろうが人間の目には見えないだろう。そして5年も経てば魔力は消える。


「マダム、魅入られるような素晴らしい輝きです。」


 一流の鑑定人は魔力の痕跡をわずかながら感じ取れるようだ。だが、それはむしろこの石の価値を高める。


「5カラット8個、7カラット3個、10カラット5個、全部で12550ドルでいかがでしょう?」


「それで良いわ。現金でくださる?」


「はい、これで。」




「ふう、何とか無事に売れたわ。次はティファニーね。」



挿絵(By みてみん)



「こんにちは!ブラジルからやってきました。主人の鉱山で取れたダイヤモンドを買い取っていただけないかしら。品質には自信があります。主人の遺品です。」


 女神が店のカウンターに並べたダイヤの原石を見てチャールズ・ティファニーは、宝石商としての嗅覚が疼いた。顕微鏡を持ち出すまでもなく、魔力のような輝きをたたえたその石は紛れもなくめったに手に入らない高級素材だった。


「鑑定しますのでしばらくお待ちを。」


 チャールズは震える手で鑑定キットをセットして鑑定を始めた。異世界のドラゴン由来の原石は、彼がこれまで見たことがない輝きを放っていた。


「5カラットが7個、8カラットが3個、10カラットが5個で、合計99カラットです。とても品質が良いので全部まとめて10000ドルでいかがでしょう。」


「良いわ。現金でいただけるのかしら。」


「残念ですが、マダム、店舗内にそれだけの現金は用意しておりません。ですが、ニューヨークやロンドンですぐに現金化できる保証小切手を発行いたします。それでよろしいでしょうか?」


「かまわないわ。金貨より軽くて助かるし。」



 女神は人通りの少ない路地に入り、安宿を見つけて前金を払い、その部屋からパリの翡翠の元に転移した。



「売れたわよ。はい、22500ドル、フランにすると12万フランね。とりあえずこれでマルグリットの借金は返済できるわ。私はこれからロンドンへ行くので、あなたは、そうね、得意の分身とアフロディジアークムを使って、邪魔なN伯爵とG伯爵を適当な女にくっつけてしまいなさい。」


「わかりました。ねえ、女神様。これをフランに替えたら、女神様が女神として顕現してマルグリットに渡してもらえませんか。人知を超えた奇跡のようなお金なので、適当な嘘で納得させるよりもそのほうが良いと思うんです。」


「そうね、そういえば女神なんだから女神として渡したほうが良いわね。」



 翡翠は分身壱を召喚して命じた。


「これからG伯爵をマークしなさい。社交界で彼がマルグリットの隣人プリュダンスと接触するチャンスをねらってアフロディジアークムを発動してカップリングを成立させること。たぶん劇場の桟敷席にチャンスがあるので、彼女の店に行って帽子を買うついでに、最近の演劇の話でもして動向を探ると良いでしょう。」


 次に翡翠は分身弐を召喚した。


「あなたはN伯爵の担当よ。マルグリットに最もつきまとっている男なので、別の女をあてがいましょう。こっちは簡単ね。原作で最後のほうに実際に付き合ってるし、若手の野心家オランプ嬢が良いわ。2人が接触してしまえばあとは簡単だけど、そこまで持って行くには少し手間がかかるでしょう。まず社交界に潜入してオランプ嬢と言葉を交わす仲になる。ご同業のふりをすればそんなに難しくないでしょう。でカップリングの狙い目は、N伯爵がマルグリットに拒絶されて気落ちしてアパルトマンから出てきたところね。そこで声をかけて、これからきれいな子と食事するんだけど、ご馳走してくれる殿方を募集中です、とか言えばひょいひょい付いてくるわ。」



挿絵(By みてみん)



「これであとは老公爵だけね。こっちはもっと慎重に当たらないと。ともかく女神様のダイヤモンド大作戦の結果を待ちましょう。」



いよいよカネの力で殴る作戦と、欲望なんて媚薬を使えば自在に相手を変えられるわ作戦、発動です。

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