女神と青水の差し飲み、そしてこれまでの総集編
正月でだらだらしていたので、女神と青水にもだらだらさせました。
「ただいま、青水。ほれ、お土産だ。ロードス島の蜂蜜とワイン。古代のワインって、生足で踏んで作るんだ。」
「あー、それな。一般のワインは男の奴隷が踏む重労働だけど、祭儀用や贈答用の高級品は乙女が踏むんだ。これ、高級品なんだろ?」
「さあ?梅干しのお礼だと言って帰るときにポセイドニオスがくれた。たぶん贈答品だから乙女製じゃね?」
「まあ、そう思って飲もう。古代のワインは水割りが基本だったな。」
「そうなのか?」
「ドロドロして濃厚なんだ。バルバロイはそのまま飲むがヘレネスは水で割る。」
「なるほどな。すぐ酔っ払うとシンポジオンも成り立たなくなるしな。」
「それにしても、おまえ、ずいぶんとぎりぎりを攻めたな。」
「そうか?まじめに務めを果たしたと自負しているが。」
「キリストを磔から助けただろ?あれやっちゃうとキリスト教がほぼなくなっちゃうからな。イエスの犠牲があってはじめて世界宗教になり得た。」
「処刑されて死なないと誰も感動しないってか?ひどい話だな。」
「有り体に言えばそうなる。だけどおまえは上手いことやった。ダミーバルーンという超科学を使うことで、あたかも処刑が実行されたように見物人たちには見えた。そしてその処刑によってキリストの神性が明らかになった。なにせ、槍でブスリとやったら中から空気がプシューって出てバルーンは空高く飛んで行くからな。処刑と昇天が同時に起こって話がシンプルになり、ますますリアリティが増した。」
「ふふふ、すべて計算尽くだ。」
「本当か?怪しいな。まあ、おまえにしては良くやったよ。」
「“おまえにしては“は余計だ。私はできる女神だからな。」
「そろそろ翡翠が帰ってくるな。」
「もう少し冬休みが欲しい。どこにも遊びに行ってない。」
「小学生かよ。」
「なあ、これまでいろんな作品や歴史に介入してきただろ。だんだんリソースが心許なくなってきたな。」
「そうだな....これまで介入したの、順番に挙げていくか。」
「いいな、それ。これまでの総集編みたいで。ならば、せっかくだから炬燵を出して差し飲みで語り合うか。なんか最近、私たちの言葉遣いに違いがなくなってきたから、わかりやすくするために台詞の前に“女”や“青”ってつけようぜ。」
青「おまえ、最初は女神っぽく“なのじゃ”とか言ってたのにな。差し飲みするのはかまわないが、古代ギリシャから何かつまみを持ってきてないのか?」
女「あるよ。干しイチジクとナッツだ。これはシンポジオンの定番だったらしい。ゼウスの宴にいっぱいあったから私のユニークスキル“体内摂取無限増殖”を使ってでたくさん持ってきた。」
青「それ、言わなければ良かったのに。食べづらくなった。」
女「さて、では介入の物語、では私からだ。第1話は白雪姫と眠り姫、2人とも王子の不同意接吻から守った。」
青「そうだったな。そして次はシンデレラ。自立したガラス細工職人に育ててゲスな王子との結婚を止めた。」
女「あいつはゲスだったな。母親と結託して舞踏会に招いた女を次々にシャンブル・ダムールで毒牙にかけていた。まだ“ピッコロ”の技の開発前だったのが悔やまれる。そして次は白虎隊の少年たち。いやあ、あれは私がやりたかったな。少年たちを救う美人お姉さん。」
青「おまえがやると官軍を全滅させて日本の歴史が変わるからダメだ。次はマノン・レスコー、恋するために生まれた天使だ。」
女「翡翠の意外な一面が見られた。水商売のプロモーターをするとは。合衆国に渡って紳士のムフフな店を開いて大成功だった。」
青「次はちょうど真夏だったので、日本の怪談、お岩とお菊を救った。翡翠が隅田川の花火を観てたっけ。」
女「次のジャンヌ・ダルクはもっと長くなると思ったが、意外とあっさりと終わったよな。」
青「翡翠がルーブルの屋根の上で敵の大将と一騎打ちして勝ったからな。やはりチャンバラは映える。」
女「次が長かった。みんな大好き義経。最後は南国の王にしてやった。」
青「次はかぐや姫。最後は帝と星空のデートという俺らしくないディズニーっぽいエンディング。」
女「そして次がフランケンシュタインだった。怪物の名前がフランケンシュタインじゃないとこれを読んで知った人もいたかもしれない。」
青「翡翠はヴィクター・フランケンシュタインを近代的なロボット工学者に育てたっけな。」
女「次は箸休めで、ヘンゼルとグレーテルと赤ずきんの二本立て。楽勝だったな。私が行けば良かった。」
青「そして次は、フランケンシュタインに続いてまたもや人造人間の話。リラダンの“未来のイブ”だ。」
女「SFとして読むとなんだか物足りない。だらだらどうでも良い記述が長すぎる。」
青「そこで翡翠は中断して、第二次世界大戦末期の日本に飛んだ。これは史実が絡むのでちょっとやっかいだったな。」
女「少し早めに降伏して沖縄や被爆地で死ななくても良かった人命を助けたんだが、これも私が行けばもっと簡単に...」
青「だから、おまえが行くと日米両軍に壊滅的な被害を出しそうだから、史実への介入は禁止なんだってば。」
女「次はファウストだった。これも私に任せれば...」
青「メフィストと一騎打ちして物語のすべてを台無しにしただろうな。」
「ちっ!」女神は頬を膨らませながら古代ワインの水割りを作って酒瓶に入れる。
女「次はアンデルセンとディズニーの人魚姫ふたつ。水着回だった。」
青「その次は同じ水の人外、ウンディーネ。水着は着なかったが翡翠が温泉に入ってたな。」
女「翡翠も大胆なところがあるな。私はもっと大胆だが。」
青「その次は女ヴァンパイアのカーミラ。」
女「その話では私が大活躍したぞ。ヴァンパイアの真祖にお願いに行ったらあの忌々しい甘やかしの女神と鉢会って...」
青「その醜いケンカに真祖もあきれて出てきたところで、最後は翡翠が上手にまとめた。」
女「あれれ?私、もっと活躍したと思ってたのに。」
青「次はスケコマシ大王のドン・ジョヴァンニだったな。」
女「あれは最高だった。地獄に堕ちる前にエラとメロが助け出してからの“ピッコロ!”」
青「地獄にあのまま堕ちた方が幸せな人生だったかもしれんな。」
女「次はフランダースの犬と小公女セーラをお手軽に救済。あれは私が行っても良かったんじゃないか?」
青「おまえが主人公じゃないんだから、いちいちしゃしゃり出るな。」
女「次は古英語の世界、勇者ベオウルフ。弱っちい怪物が出てきたな。私なら指先でひねり潰せるぞ。」
青「人間と戦う怪物だからな、怪獣と戦えるおまえと比べてはいかん。そして次は国辱ものの胸くそ案件だ。」
女「国辱に敏感反応するネトウヨが不思議と反応しないあれか?プッチーニの“マダム・バタフライ”。」
青「弄んで捨てたのがアメリカ軍人だから、こぶしを振り上げる気にもならなかったんだろうよ。そもそもネトウヨは芸術なんか目に入らないし。」
女「あのときはたしかマーズ翡翠になって領事に掛け合ったんだっけ。」
青「使える権力は上手に使う。何でも破壊するおまえも見習えよ。」
女「私、今回のイエスのパパ捜しでは何一つ破壊してないからな。」
青「うむ、でかした。成長してるな、女神よ。」
女「人間の分際でその上から目線が超むかつくんですけど。」
青「まあ、そう怒るな。飲みの席ではよくあることよ。」
女「おまえの孤独の原因がなんとなくわかる。まあ飲め、古代のワインを。」
青「すっぱ!おまえ、梅干し入れるなよ、焼酎じゃないんだから。」
女「そういえば、そのマーズの姿で初期形態のエラに会ったんだっけ。」
青「フレッセンが助けに来る前のな。今とエラの顔が違う。」
女「当時はキャラ固定が難しかったのね。」
青「なんか若いな。そして翡翠は少し老け気味。」
女「2人並ぶといろいろ干渉する仕組みだったのかもね。」
青「次は有名な“ハムレット”に介入だ。これは有名な話なので慎重に、しかし楽しく。」
女「チャンバラもあったな、それも2回。」
青「チャンバラは大事だ。」
女「賢者翡翠がハムレットの突きを弾いてポローニアスを救った。えーと、何か英語の名前を名乗ってたっけか?」
青「ジェイディだな、英語圏では。フランス語圏ではジャディー、ドイツ語圏ではヤーディア。」
女「そのジャディーが今度はフランス革命に介入か。」
青「あれは長かった。ルイ16世とマリー=アントワネットを無事にアメリカ合衆国に連れて行って...」
女「かつて救ったマノン・レスコーにしばらく匿ってもらったのね。」
青「2人はそこで英語を学んで、ケンタッキーのルイヴィルで醸造業を始めて...」
女「ブルボン家の末裔がバーボンを作るって安易なオチ。」
青「安易って言うな。それより、おまえ、勝手に翡翠に休暇を与え、その隙に乗じて好き勝手しやがったな。」
女「いや、翡翠を酷使し続けるとブラック作家と呼ばれることになるからな、おまえを気遣ってのことだ。」
青「嘘をつけ!わくわくが止まらないみたいな顔をしていたくせに。」
女「まず介入したのはルートヴィヒ・ティークの“金髪のエックベルト”。ベルタにまず梅干しの試練を与えた。」
青「森で道に迷って空腹で倒れそうな幼女になてことするんだ。」
女「この物語の悲劇は、兄妹であることを知らずに結婚してしまったということなので、その源を断った。やつらの父親の不倫が原因だったからな。エラに頼んでピッコロにしてやったわ。」
青「えげつな!」
女「そういえば、翡翠の真似して式神を呼び出したんだが、なぜか子リスの姿でな、忌々しい甘やかしの女神と間違っていたようだ。しかもこいつ、何か頼むたびにカネを取る。」
青「まあ仕方ないな。ゲームに金策はつきものだ。」
女「この介入ではずっと金策ばかりしていたような気がする。」
青「おまえの大好きな戦闘なんだから良いじゃあないか。」
女「まあ、そうだがな。ともかくエックベルトとベルタの結婚は阻止し、魔女は教会にチクって異端審問官に任せた。」
青「おまえ、本当にえげつないな。それにしても古代のワイン、もう飽きた。ウィスキー飲みたい。」
女「ならばルイ改めルイスになった元国王の銘酒を大量にもらってきているので飲ませてやろう。Bourbon of the Bourbon、氷を入れたいなら北極の氷もあるぞ。」
青「なんで北極の氷があるんだ?」
女「アメリカに狙われているグリーンランドの人々に梅干しを配って励ましてきた。」
青「うれしくねーだろ、そんなの。」
女「いや、喜んでたぞ。私をちゃんと女神と認識していたからな。なので、女神パワーで魔物を置いてきた。米軍が来たら解き放って攻撃だ。内陸氷河の最深部に陸軍、深いフィヨルドの海底に海軍。陸軍はドラゴンを中心にデーモンの歩兵で構成、海軍はクラーケンやリヴァイアサンだ。ふっふっふ、来るなら来てみろ、後悔することになるぞ。」
青「おまえ、もはやヴィランモードじゃねえか。まあ国際法の埒外だから良いか。」
女「翡翠は“裸の王様”にサイバーアンダーウェアを着せて助けたあと、西部劇に介入したんだよな。いいなあ、私もガンマンしたかった。」
青「翡翠は撃ってないからな。エミリーを応援に呼んだけど。」
女「圧倒的銃捌きで敵を沈黙させた。さすがクインシー・モリスの妹。」
青「そして翡翠は、なんとドイツロマン主義の夭逝した詩人ノヴァーリスを救ったのだった。」
女「ゾフィーを転地療養させ、ノヴァーリスにはもう会わないで愛の詩を書くだけにしろと説得したんだな。」
青「ああ、ドラクエの賢者コスでな。」
女「ひょっとしてそのときドラクエ3のリメークやってたか?」
青「うん。」
女「清々しいほどわかりやすいな、おまえ。」
青「次はネタに困ってシェイクスピアの“ヴィーナスとアドニス”だった。オネショタの元祖だ。」
女「マルスの猪に貫かれる前にセレスとステラに頼んでアマゾネスの国に匿ってもらった。」
青「思い出した。あのあとおまえは俺からたんまりと金をふんだくって魔法屋で魔法を爆買いしたな。」
女「当然だ。魔法を使えない女神などあってはならないからな。」
青「治癒魔法の適性がない無慈悲な女神。」
女「ふん、ポーションを爆買いしたから問題ない。治癒なんて金でどうとでもなる。」
青「次のターゲットは、まさかのヒトラー。世紀の大悪人を救出か?炎上案件だ。」
女「おまえが書いたんだろ。画家として大成させたらどうなるんだろうって。」
青「そうだった。てへぺろ。」
女「キモいから舌を出すな。」
青「あれ、手を付けたら20世紀初頭の芸術問題が絡んでくるので手が抜けずに長編になってしまった。」
女「アンドレ・ブルトンがフロイトにけんもほろろにあしらわれていたな。」
青「ブルトンが勝手に接点があると誤解しての行動だから当然だ。」
女「で、次はロリータか。あれは楽しい介入だった。私も活躍できたし。」
青「本来は悲惨な物語だが、翡翠の介入によって悲劇は防がれ、ロリータはシンガーとして覚醒する。」
女「ロリータにギターを教えたのは私だからな。」
青「わかった、わかった。おまえはかっこよかったよ。
女「最後はビートルズに先駆けてバンド音楽というジャンルをガールズバンドで成立させた。快挙だろ。すべて私あっての...」
青「わかった、わかった、音楽の女神だったんだろ?」
女「そして20世紀のニューヨークから日本昔話の世界へ。」
青「浦島太郎と桃太郎だな。」
女「そういえば翡翠がアンブローシアを...」
青「はい、ストップ。それには触れるな。翡翠の黒歴史だ。」
女「浦島太郎の息子、浦島太助がひどかったな。ガキのくせに性欲の塊。」
青「エラとメロにさんざん吸われ尽くして廃人直前になったから許してやろう。」
青「そして最後は“オデュッセイア”への介入か。」
女「ギリシャ古典なのでいろいろ大変そうだったな、青水よ。おまえの浅学がもろ見えになって...」
青「やめろ!これでも苦労したんだ。」
女「まあ、そういうことで総集編も終わりだ。次回からは通常操業だな。」
青「いや、違うぞ。おまえ、勝手なことしたじゃないか。こともあろうにイエス・キリストの出生の秘密に迫るとか言って。」
女「あ、そうだった。名探偵試練ちゃん。」
青「日本の投稿サイトだから良いようなものだが、英語圏なら炎上案件だからな。」
女「きれいにまとめてやったんだから結果オーライだ。で、次回からは通常操業か?」
青「何のネタも思いついてないが。」
思えばすごいページ数ですね。これ、始まったのは8月だったので、まだ半年未満ですね。これからも精進します。




