翡翠さんがエーゲ海に留まっている間に女神はセイレーンを連れて東京へ
はい、年内中にオデュッセイア編を終わらせるのですが、午前中にインテルメッツォを挟みます。
「おい、青水、勢いで東京にセイレーンを連れてきちゃったけど、どうしよう?」
「どうしようって、おまえ、勝算があったから連れてきたんだろ?」
「そのつもりだが、細々しいことが苦手で。」
「しょうがねえなあ。おまえ、東京で使えるリアルマネー、どのくらい持ってる?」
「さあ、金額はわからんが鉱物の金とダイヤモンドはそれなりに持っている。アンブローシアでたぎりまくった翡翠とダンジョンで暴れたからな。」
「なら問題ない。まずは換金だ。金は貴金属買い取り店、ダイヤは宝石買い取り店、それぞれネットで検索しろ。銀座にいくつかあるはずだ。ただし、一度に大量に持ち込むと怪しまれる。金は握りこぶし程度、ダイヤは小指の先程度に砕いて持ち込め。」
「わかった。で、そこで得たカネで何をする?」
「セイレーンたちの住居を確保だ。セキュリティの高いマンション。賃貸ならすぐ入れるだろう。次に、楽曲作りだ。セイレーンたちにいくつかアカペラのスキャットで思いついたメロディーを録音してもらって、音響スタッフと契約して音源を作ってもらう。ここでカネは出し惜しむなよ。インストの音源とカラオケ伴奏の音源ができたら、スタジオで収録だ。ライブのセットリストは10曲ぐらい欲しいが、とりあえず3曲を完成させろ。それができたら自主ライブだ。ここではカラオケは使うな。安っぽくなるからな。実力のあるバックミュージシャンを雇え。金に糸目をつけずに最高のスタッフを揃えるんだ。カネだけでは舞台に上げてくれない老舗の箱を選んで、パフォーマンスを認めてもらった上でライブを打つ。事務所に所属していないフリーランスだから全部やらなければならないぞ。セットリストはオリジナルの3曲と、あと5曲ぐらいは既存の曲からセイレーンたちに選ばせろ。」
「うわ、面倒くさい。」
「仕方ないだろ。無名の新人がデビューにこぎつけるためだ。ニューヨークでロリータを育てた実績があるじゃないか。」
「あのときは翡翠がだいたいお膳立てをしてだな、ロスチャイルド財団という大きな後ろ盾もあったから。」
「なら、翡翠に頭を下げてノウハウを教えてもらうんだな。」
「うぐぐ...」
「とりあえず、いつまでも異世界の宿屋に泊めておくわけにもいかないのだから、さっさと現代日本に転移していまできることをやってこい。」
「ふう、とりあえず換金とマンションはできた。でもこれ以上は業界にコネがない素人では無理だな。どこか芸能事務所に入れてしまおう。」
「女神様、人間になったらすごくお腹が空きますね。お寿司食べたい。」
「私も。そしてデザートにクレープ。」
「わかったわかった。ただし、食べ過ぎると太るからな。太ったら芸能人失格だ。さて、家があれば何とかなるわけじゃないな。現代人に必須のスマホ、そしてパソコン。家電量販店に行くか。」
「女神様、ここで歌っていい?」
「ダメだ!人が集まってきて交通事故になる。家に戻るまで耐えろ。マンションは防音仕様だからな。うーむ、私ではこいつらを捌ききれないな。どうしたものか?誰か暫定的にマネージメントをこなせるやつはいないか?家に生活用品を整えたら、いったん異世界へ帰って今後の体制を整えよう。」
「どうした、女神?戻ってきたのか?」
「換金して、部屋を借りて、家財道具を揃えて服も買った。とりあえず一段落ということで戻ってきた。」
「セイレーンたちは?」
「エラの店に置いてきた。歌いたがって仕方がないので。」
「ああ、コンカフェなら歌っても大丈夫だろう。」
「おまえが作ったロードマップ、私にはできそうにないのだが。」
「確かにな。おまえはものを依頼したり頼んだりできるタイプじゃない。偉そうすぎる。」
「女神だからな当然だ。偉そうじゃなくて偉いんだ。」
「で、どうするつもりだ?」
「早急に芸能事務所に入れる。そしてあとはお任せだ。」
「うん、それが良いな。野外ライブは規模を問わずにNGという条件で頼め。」
「だから、私は頼んだりできるタイプではないんだってば。」
「そうか。ではどうする?」
「エラに任せる。」
「なるほど、ベストチョイスだ。あいつはそつがない。」
女神がコンカフェに戻ると、セイレーンたちがステージで歌っていた。観客はうっとりとしているが、別に危険はなさそうだ。
「あら、女神ちゃん。この子たち、なかなか良いわ。」
「神話級の歌姫だからな。ところでエラに頼みがある。」
「何かしら?」
「東京にマンションを借りた。そこを拠点にセイレーンをデビューさせたい。」
「良いわね。夢は武道館ね。」
「それなんだが、どうも私ではプロモーションができそうにない。」
「まあ女神ちゃんのキャラじゃ人にものを頼めそうにないもんね。偉そうだし。」
「く...まあ、そうなんだが。そこでだ、おまえにその役を頼みたい。」
「え?私?だって私サキュバスよ。東京なんかに放って良いの?」
「悪さはするな、命令だ、いや、お願いだ。」
「大江戸で大捕物になるのはイヤだから悪さなんかしないわよ、メロじゃあるまいし。」
「やってくれるか?」
「いいわよ。じゃあ、はい!」
「何だ、その手は?」
「活動資金よ。換金していっぱいお金持ってるんでしょ。そうだ、まだ換金してない金とダイヤも渡しなさいよ。私が安全に換金してあげる。」
「おまえ、抜け目ないな。」
「だって、東京よ。お金なんていくらあっても邪魔にならないわ。」
「わかったよ。ほれ、無駄遣いするなよ。」
「毎度ありい。」
「その返し、何だか不安になるな。」
「大丈夫。私が全部有意義に使ってあげる。」
そんなやりとりをしていた2人の前に双子のアイドルくノ一のミナとルナが現れた。
「ねえ、何の話してるの?」
「セイレーンの東京デビュー計画だ。」
「あ、いいなあ。ズルい。私たちも東京へ行く。」
「え...っと、東京へ行って何するんだ?」
「私たち、歴が長いアイドルよ。ライブしたりちやほやされるに決まってるじゃないの。」
長い台詞もすべてユニゾンで言うのでうるさい。
「いいわよ。一緒に行こう。」
エラが無責任に引き受けた。
「やったー!東京デビューだ!じゃ、私たち、次のステージだから観ていって♪」
2人はしばらく観ないうちにレパートリーを増やしていた。どうやらソラで散々暴れていたようだ。BPM130の軽快な、そしてデュオの持ち味を最大限活かした”Shiny Love”は圧巻だった。
「ねえねえ、女神様~、私たちの歌、どうだった?」
「いや、びっくりしたよ。進化してるな、おまえたち。」
「でしょ?これなら東京デビューも夢じゃない。」
「おまえらもデビューするの?」
「それはダメですよ。」
エラが割って入った。
「デビューするのはセイレーンだけ。あなたたちは賑やかしで付いていくのよ。あなたたちまで東京に行っちゃったらコンカフェが困る。いいわね?」
「はーい...」
少し不満そうだったが、ミナルナもエラには逆らえない。
「そのかわり東京でいっぱい遊んでいっぱいお買い物してもいいわよ。女神様からたんまり軍資金をいただいたから。」
「女神様、ありがとー!(ユニゾン)」
「ふう、何とかエラに押しつけたわ。」
「すっかりむしり取られたみたいだけどな。」
「仕方がないわ。どうせお金なんて私には意味がないし。」
「おまえ、巨大化できるんだったら、ダイヤモンドドラゴンをホールドして圧砕できそうじゃん。」
「やめろ、かわいさゼロになるわ!」
セイレーンたちはどうなるのでしょう。まあエラに任せておけば大丈夫そうですね。抜け目ないし。午後は翡翠さんがエーゲ海で活躍して、無事にオデュッセイア編を終わらせます。




