翡翠さんがいよいよ直接介入、そして試練の女神も大活躍
年内中にオデュッセイア編を終わらせるためにアクセルを吹かせます。
「なあ、青水よ。“オデュッセイア”という西洋の古典だが、アニメ化されるラノベと似てないか?」
「は?何を言い出す。」
「だってさ、どこへ行ってもすぐ女が言い寄ってくる自動ハーレム製造機だぞ。」
「うん、まあそうだな。都合良すぎるな。」
「しかも手をつけても揉めない。あ、これ、接触はできてもモミモミできないっていう意味じゃないからね。」
「余計な説明するな。でもまあ、現実なら包丁を持ち出される場合もありそうだ。」
「しかも、“故郷で奥様が待ってるなら仕方がないわね、うふふ”、と悲しみを押し殺した笑顔。」
「ホメロスという個人がいたかどうかは判明していないが、古代ギリシャのおっさんの夢が詰まっているのは確かだ。」
「だろ?しかもカリプソやキルケは神格がある女神だぞ。人間ふぜいがエッチしてポイ、それも女からお願いしてのエッチで。」
「うらやまけしからん!」
「オデュッセウスの二つ名は“知略に富む”だけど、むしろ“歩くフェロモンの泉”だな。」
「二つ名にチンコが入らなかったのはおまえにしては上出来だ。」
「チンコが入らなかった?やだもうw」
「くっそー、おまえの最低ぶりには油断も隙もないな。」
「いよいよ12歌で魔物たちとエンカウンター。果たして魔物にチンコが役に立つのか、乞うご期待!」
「ああ、もう、フェロモンを捨ててチンコになっちゃったよ。」
「ベールを脱ぎ捨て剥き出しの...」
「やめいっ!」
冥府を脱出したオデュッセウス一行はキルケの島へ戻り、約束通りエルペノルの遺体を武具とともに丁寧に火葬して、そこに墳墓を築き、彼が愛用していた貝を墓標としてそこに立てた。墓標には後世への戒めとして、「オデュッセウスの部下エルペノル、泥酔して屋根から落ちここに眠る。屋根から降りるときは階段を確認せよ。彼はこのことを後世に伝えたかっただろう。」
葬儀が終わるとキルケが現れ、一行のために冥府と葬儀の汚れを祓う宴を催してくれた。海の見える岬に女中たちが酒や食べ物を運んできて、オデュッセウスたちは夜が白むまで杯を交わした。宴の最中、キルケはオデュッセウスにこれからの航海において注意すべき点を説明した。オデュッセウスが突破しなければならないもの、それは歌う魔女セイレーン、多頭の怪物スキュラ、そして激しい渦を生み出すカリュブディスだ。しかもやっかいなことに、スキュラとカリュブディスの間を突っ切らなければならない。
どう攻略すべきか悩んでいたオデュッセウスの元に翡翠が現れた。
「困っているようですね、オデュッセウス。」
「おお、アテナの巫女イアスピア、はい、最後の最後で難題に突き当たっています。」
「みなまで言わずともわかります。私も傍らで聞いておりました。ひとつお手伝いしましょう。あなたがセイレーンに会わずにすむように。もっともそれによってあなたは彼女たちの歌を聴く機会も失います。彼女たちの歌はただ美しいだけではなく、この世の過去と未来についての知識も授けてくれます。ですがその歌を聴けなくてもかまいませんね。」
「はい、問題ありません。安全が何よりも優先します。」
「ふ、その言葉があなたから出るとは。だって、あなたはさんざんやらかしてきたでしょう?好奇心を抑えきれない、功名心の誘惑に抗えない。男性の拭い去ることができない特徴です。」
「返す言葉もありません。」
「では、セイレーンのことは私に任せて、スキュラとカリュブディスの対策を考えてください。アテナ様の加護がともにありますように。」
翡翠はセイレーンが住む島に降り立った。お花畑の上に少女が2人立っていた。魔物らしさの欠片もないふつうの可愛らしい少女だった。
「こんにちは。」
「あら、あなた船に乗らずにどうやってここに来たの?」
「私はアテナ様の巫女なので、ふふ、いろいろと裏道があるんですよ。」
「なーんだ。でも船に乗っていたとしても、女のあなたじゃ私たちの歌は効き目がなさそうね。」
「女には好奇心も功名心もありませんからですね。」
「そうよ。男はみな名声のために命を投げ出し、未知のものへの好奇心に逆らえない。でも女は家で竈を守っているだけなので、生活に直結しない役立たずの知識に興味はないもの。」
「まあ、この時代の常識ではそうなるでしょう。それを争う気はありません。」
「ならば何しに来たの?何か私たちに言いたいことがあったのではなくって?」
「はい。お二人はずっとこの島を離れずに通る船を待っていますね?」
「ええ、島を離れる手段もないし、離れなくても困ることもないから。私たちは流れる時間の中にいないのだから。」
「なるほど。でも知識の媒介者であると同時に、いえそれ以上にお二人は歌手ですよね。歌を聴かせる、聴いて喜んでもらう、そんな存在ではありませんか?」
「そうよ。こんなお花畑じゃなくて、もっとたくさんの聴衆の前で歌いたい。」
「叶えて差し上げられますよ、その願い。」
「本当に?」
「はい、時を超えて別の世界へ移るのです。そこにはたくさんの人々が2人の歌を待っています。」
「そんな世界、あるの?」
「あります。私、いまはアテナ様の巫女をやっていますが、実は別の女神様にも伝手があるのです。その女神様、ちょっとくせが強いのですが、悪い女神ではありません。純情でまっすぐな心を持っています。その女神様にお願いすれば、時を超えて別の世界へ移ることも可能です。」
「ぜひお願いしたいわ。」
「別の世界にもいろいろありますが、何かご希望は?」
「時間が流れるふつうの人間になりたい。不老不死はもういらない。恋もしたい、子どもも産みたい。それから....歌うだけで他に何も仕事をしたくない。」
「わかりました。ちょっと待っていてくださいね。」
翡翠は女神回線を開いた。
「あら、翡翠ちゃん、珍しいわね。何かご用?」
「はい、セイレーンの2人を現代日本に転移させてください。ビジュアルが日本人寄りなので、西洋よりも日本が良いかと。はい、そこでアーティストとしてデビューしてもらいます。神話的な歌唱力ですから成功間違いなしです。」
「あら、なんだかお金の匂いがするわね。」
「女神様は試練さえあれば良いのですから、お金なんかいらないでしょ。」
「ん~、そうだけど、ロリータちゃんの件でアメリカに長期滞在してたら、ショービジネスで稼ぐお金の魅力にはまっちゃって。」
「まあ少しぐらい稼ぐのはかまいませんから、しっかり2人をデビューさせてくださいね。」
「了解了解、任せなさい。ちょっと待ってて、そっちに行くから。」
「えー、来るんですか?無茶なことしないでくださいね。」
「大丈夫、わきまえているから。じゃあ行くわよ。」
「やっほー!来ちゃった。」
自らも超自然的な存在であるセイレーンたちも、何の前兆もなく突然出現した試練の女神に驚いた。
「あ、本物の女神様だ。」
「こんにちは~、大丈夫よ、こわくないからね。」
「女神様、さっそくお願いしても良いですか?」
「ええ、でもその前に、オデュッセウスは困っているんでしょ?」
「はい、このあとスキュラとカリュブディスの間を突破しなければなりません。」
「あれって物語ではどうなったんだっけ?」
「スキュラに部下が6人食べられてなんとか突破しました。」
「あ、思い出した。オデュッセウスらしいずる賢い作戦だ。キルケは戦っちゃダメと教えてくれたのに、まるで戦うようなふりをして武器を取って船の前方に立ち、背後から襲ってくるスキュラに部下たちを食べさせて、その隙に逃げたんだった。いつもながら、あいつは自分勝手だな。」
「そうなんですよ。でもどうしようもありません。カリュブディスのほうに近づけば船ごと持って行かれて全滅ですから。」
「よし、スキュラをやっつけよう。」
「無理ですってば。不死で手強く凶暴だと原作に書いてありますよ。」
「なーに、人間には無理でも無敵の女神、インヴィンシブル・ガッデスの私にかかれば不可能ではない。翡翠、おまえも手伝え!」
「え、イヤですよ。私は人間ですからね。噛まれると痛いし、死んじゃいます。」
「そうか。おまえが仕えてるアテナは、ローマ神話ではミネルヴァとなり、その二つ名は Minerva Invicta 無敵のミネルヴァだ。その巫女なら同じく無敵じゃないのか?」
「無茶言わないでください。鬼退治じゃないんですから。やるなら私抜きでどうぞ。負けたら骨ぐらい拾って差し上げます。」
「ふむ、ソロで立ち向かえと。良いだろう。巨大化してガチの殴り合いに持って行こう。」
「えー?ギリシャ神話を怪獣映画にしないでくださいよぉ。」
「怪獣が出てくるんだから仕方がない。そうだ、何か武器がいるな。翡翠、何か持ってないか?」
「家宝の浄化の刃は貸しませんからね。」
「ふむ、ならば自前で作るか。ふんっ!」
女神は謎の力で三つ叉の鉾を召喚した。
「あ、ちょっと、女神様、それってポセイドンのトライデントじゃありませんか。怒られますよ。」
「あれ?三つ叉になっちゃった?ごめんごめん。IP違反だね。じゃあ、はい、四つ叉。」
「なんだか農機具っぽいですよ、それ。」
「ちっ、面倒くさいな。ならば、ふんっ!」
女神が力をこめると女神にピッタリの優雅な薙刀が現れた。
「あ、女神様、それです、それ。めちゃ似合います。」
「そうか?よし、では行ってくる。火打ち石をカチャカチャしてくれ。」
女神は巨大化してスキュラの住む島にやってきた。
「おーい、スキュラ!私は試練の女神。いざ尋常に勝負だ!」
「ふ、人型の女神か。目障りだな。この怪異の姿を笑いに来たか?」
「いや、笑いに来たわけではないぞ。」
「私とて元は美しき乙女だった。すべてはあのおぞましいキルケのせいなのだ。」
「えーと、何だか複雑そうね。何があったの?」
「変な草を食べて海神になってしまったグラウコスという男が私に懸想して、私はそんなタコみたいな怪物はイヤだから逃げた。」
「ふむ、そりゃそうなるわな。」
「グラウコスは諦めきれずに魔女のキルケに相談した。キルケはグラウコスに一目惚れして、そんな人間の女なんかあきらめて自分と結婚しろと迫った。でもグラウコスは、スキュラ以外の女に興味はない。なんとかしてスキュラをものにする薬をくれと懇願した。」
「ほう、ずいぶんと一途だな。キルケは女神の中でもかなりレベルが高い美女だが。」
「キルケはプライドを傷つけられて腹を立て、なぜか憎しみを私に向けた。私を怪物にする薬を調合したんだ。」
「あちゃー、キルケさん、やってしまいましたね。怖い怖い、女の嫉妬は怖い。」
「そして今日に至る、というわけ。で、どうするの?私を殺すの?」
「いやあ、そんな話を聞かされて、薙刀を振るう気にはなれませんわ。ちょっと仲間と相談してくるので待っててね。」
女神は翡翠の元に帰るとこの話を伝えた。
「女神様、えらい。よく耐えました。そのまま“問答無用!”と切り捨てるのかと思いました。」
「おまえね、私を何だと思ってるの?」
「さて、どうしましょう?このままでは部下が6人食べられてしまいますけど。」
「それなんだが、人を食べる口はスキュラを魔物にするためにキルケが放った犬なんだ。本体は人間のまま。人間の身体に犬の身体が脚部のように6体くっついてる。」
「ふつうにキモいですね。」
「なので、本体が犬部分を支配しているから、人間部分が納得すれば無事に通してくれる。」
「なるほど、ではそうすれば良いでしょう。」
「ふっふっふ、そこでオデュッセウスの出番だよ。あいつ“歩くフェロモンの泉”だろ?どんな女神も魔女もいちころ。なのでオデュッセウスをスキュラに差し出すんだ。」
「えー、でも差し出されちゃったら物語はそこで終わりですよ。」
「バスケの監督か?うちらの物語は終わらないんだよ。思い出せ、オデュッセウスのフェロモン術の狡猾さを。あいつは女をコロリとものにしたあと、故郷に妻が待ってると悲しげな憂い顔でキュン死させるという超高等テクニックを使える最低野郎だぞ。しばらくスキュラと同棲したあと、いつもの手でお土産もらって送り出してもらえるに決まってる。」
「すごい、女神様、マーヴェラス!今までただの気まぐれ暴走女神だと思っていましたが、そんな深謀遠慮を働かせることができるなんて。」
「誰が暴走女神だ!」
「素晴らしい作戦です。さっそくオデュッセウスに伝えましょう。本人は嫌がるかも知れませんが部下の命には替えられません。」
「その通り。さあ、行ってこい。」
セイレーンたちは盛り上がっている翡翠と女神をポカンとした顔で見ていた。
「ああ、おまえたちか。安心して私に任せろ。夢のような景色が見られるぞ。ほら、アイドルとか言うじゃないか。武道館ライブが決まると、こんな景色が見られるなんて、と。うん、おまえたちにも景色を見せてやろう。ニューヨークでシンガーを育てた私がついている。さっそく行くぞ。心残りはないな?」
「ありません(ユニゾン)。」
「よーし、行こうぜ、東京、夢の街!」
試練ちゃんが出てくるとラノベらしいチート感が爆発して爽快ですね。セイレーンがまさかの東京で芸能界デビュー。武道館まで最速で突っ走りそうです。




