5.生存競争
で…やっとの事、回想は終わり現在時空。
死体を漁り、ブレスレットに課金し、また騎士姿に戻った俺は娼館で、ユイカと楽しんで…
(イヤ、さすがにするわけないだろ。そこまで鬼畜じゃ無い)
「あれから、大変だったみたいだな」
「イヤッ…聞かないで…もう、私…うっ」
地面に顔を伏せ、泣き崩れるユイカ。
一瞬、彼女の背中がモザイク割れした様に感じた。過去にもあったそれは、以前チャンに千切れたゴウの腕を見せられた時…
(たぶん気のせいだが、何かのヒントかも知れない。心に留めとこう)
その後俺は、店の主人に魔王軍の権威を使って脅し、ユイカを解放させる事に成功する。
「マリス…この娘を不戦地域に飛ばす事、出来るか?」
「そんなの無いよ…」
「だろうな」
情容赦無いマリスとの会話に、俺の足にすがるユイカ。
「お願い…見捨てないで」
店から適当に持って来て、彼女に着せた服は…奇しくも、例のビキニアーマーっぽかった。
(こんな時ムラムラして、さっきしとけば良かったな…イカンイカン不謹慎な妄想が)
「アナタ、アチシのママになってくれる?」
また突拍子の無い事を言う娘に、もう慣れっこの俺は、聞いてみる。
「えっ、そういやマリスの母さんは?魔族なんだろ、それに魔王の娘のはず」
「あぁ、言って無かったっけ。王位継承戦争で…アチシに負けて、お腹の中さ。ポンポンッ!」
母親を食した事を教える様に、手で腹鼓を打つ。
「と、言う事は…」
「うん、アチシが次期魔王だよっ」
「お願い、私達を元の世界に帰して…」
(わたし…達?)
同意見である事には間違い無いが、俺の意志を無視してマリスにユイカは、一緒に助けを求めてくれた。
「ソレより先に、さっきの返事あんだろ…おっ?」
妙に凄みのあるマリスは、ユイカに詰め寄る。
「わ、分かったわ…ママになってあげる。マリスちゃん、いい子いい子…ナデナデ」
俺と同じ様にノリのいいユイカは、まだ小さいマリスを撫でる。
「エヘヘ〜ッ、ママ出来た。ワ〜イ」
ユイカに抱きつき、スリスリするマリス。
(ヤバイね〜、この二人)
屍の街(マリスの仕業)を出て…俺達は、外に停めてあった今は亡き(俺の仕業)チャンの馬車に乗って、旅立った。
手綱を持つのはマリス、魔獣の扱いは手慣れたモノだ。
「これから私達、どうなるのかしら?」
「妹を、見つけたい…」
「こんな世界だもの、きっと死んでるわ…私達だけで逃げましょ」
ユイカは、俺が一番聞きたくないセリを口走る。だが、それに反論出来る要因が何一つ無いのも事実。
「王宮へ行ったら何か分かるかもね。パパ達が来た世界の事も、叔母ちゃまの事も」
親切で妙に物分かりがいい…そんなマリスへの不信感は、やはり払拭出来ない。でも彼女の存在だけが、唯一のライフラインだったので、優しくする事に。
「頼むよマリス…ナデナデ」
「エヘヘ〜!今度のパパ、優しい」
しばらく砂漠を進むと、遠くで花火が上がる…微かな爆発音。
馬車の片輪が、落とし穴にはまる。以前マリスに破壊された時修理されて、補強が進んだ車体は壊れはしなかったが、そのまま横倒しになってしまう。怪獣の様な奇声を上げる巨大トカゲ、そのまま外に放り出される俺とユイカ(ユイカを抱きしめ、ダメージを食い止める)、羽根で宙に浮きノーダメージのマリス。
「本物のレジスタンスよ」
以前チャンが名乗っていたのは、魔王側の偽物で、今度は本物の反乱軍だと、マリスは言いたいらしい。
(あくまでも、俺の憶測)
ガスマスクを付けた、ズタ袋の様な薄汚い砂漠仕様の扮装の、銃を持った人間達に囲まれる。
気がつくと、奥に戦車の様な乗り物も待機していた。
(イヤイヤ、世界観…)
「大丈夫か?魔族の奴隷にされてたんだろ」
一番手前の男が、見た目の厳つさと違い…優しい口調で話かけてきた。
「お、俺達は…」
ユイカを横目で見ながら状況を把握し、慎重になろうと努力した。
(さて、どうする?)
どっちにつくのが正解か、と言うズル賢い思考が駆け巡る。
「バ〜カッ!」
両拳からトゲトゲの魔弾を発射し、マリスは
次々と後方の兵士から串刺しにする。
「バ〜ンッ!」
彼女がそう言い、掌を開くと一気にトゲは爆発…血と肉片が飛び散り、火薬の匂いが充満した。
(どんな仕掛けだ?何でもアリか)
「撃てっ!」
屍を踏みつけ、次々と前進する兵士達は一斉に構えた銃から、緑色の銃弾を発射する。
「効くかよ…ん、何?このベタベタ…」
「馬鹿め、人類を舐めるな。お前の魔力を無力化するポイズンゼリーだよ」
「イヤ…動けないよ、パパ助けて…」
俺の方に手を伸ばすマリスから、視線を外す…関係を悟られ無いようにする俺は、悪辣だ。
「ち、違うの…私達はこの女にダマサれて」
(おいおい…もっと上手く誤魔化せよ)
逆にバレそうな事を言う、ユイカにイライラさせられる。
「お前…キライ、ママじゃ無いっ!」
謎の液体に包まれ、地面にひれ伏しながらも目の光を失わないマリスは、断末魔のビームを瞳から発射する。
「ぎゃっ!」
悲痛な叫びと共に、足元に転がるユイカの生首が、少し笑っている様に見えたのは…俺が正気を失っている証拠に他ならなかった。




